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3章

6。服くらい自分で脱げますから!

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落ちていく時の胃の中身が逆流しそうな感覚が消えたのを感じ、そっと目を開けるとーー死んでいなかった。

地面に皆の足がついているのを見て大きく息を吐く。


よ、良かった……

「あー……し、死んだかと思った……」
「大丈夫ですよ、死なせませんから」

あの程度普通に落ちても全く問題ありませんと言われたけど、問題ありまくりだからね?!


「なになに、フィアってば高所恐怖症だったりした?」
「そんなことないわ、むしろ高いところは好きなくらいだけどーーでも高いところから落ちるのはまた別でしょ……」
「大した高さじゃないでしょう」
「普通三階の窓から飛び降りるなんてあり得ないのよ!」

この高さでも、打ち所が悪ければ普通に死ねる。人間は意外と脆いのだ。

窒息死を免れた次の日に墜落死とか、冗談でも笑えない。


改めて周囲を見回すと、足元には大きな魔法陣、目の前には見慣れた城壁。
ーーいつの間にか城の前に転移していた。

つまり窓からの飛び降りの道連れにはされたが、地面に激突する直前に転移したらしい。
転移魔法陣って空中にも描けたのね……要らない知識が増えたわ。


「ええと……それで、なんでまたお城に?」
「女王陛下に謁見です。今後のことで相談があるもので」
「あ、もうローブはいいぜ! あちいだろーし脱いじまえよ」

言いながらマゼンタはさっさと元の格好に戻っていた。着替えるの早いわね。

感心して見ていたらいつの間にかシアンの手が頭に添えられ、パサりとフードを落とされた。
ついでのように、汗ばんでいたらしい額をローブの袖で拭われる。

「へっ? ……あ、ありがとう?」
「どういたしまして。ソフィー、なんなら全部僕が脱がせてあげましょうか?」

一応訊ねるていはとっているが、シアンの手はすでにローブの留め具に掛けられていた。

あれ、これってーー抱きかかえられながら胸の中で服を脱がされている……?
そっ、それはちょっと世間体的にもマズいのではーー?

「シ、シアン! 降ろして、自分で脱ぐから!」
「へえ、ソフィー……意外と大胆なんですね?」
「そーゆー意味じゃない!」

だからイチイチそうやって揶揄わないでっ!

思いっきり睨みあげたら、まあ分かってますけどねと笑いながら、少し離れた地面に下ろされた。

はあ……とりあえず、色んな意味で無事で良かったわ。
ようやく自分の足で地面に立てるとつま先をつけてーーそのまま座り込んでしまった。

ーーえ?


「!! フィア、大丈夫か!?」
「え、ええ……なんとか」

別に足を捻ったとか、そういうのではない。
単純に落下の恐怖で腰を抜かしてしまっただけだ。

ーー腰って本当に抜けるんだ。イヤな初体験だわ、全く。

諦めて地面に座り込んだままローブを脱ぎ、シアンに手渡した。


「さて、返すものも纏まりましたし。女王のところまで行きましょうか」
「あ、そのローブってエリザに借りたものだったの?」
「正確には女王で借りたものですね。なので、返す相手は違います」

ーー? エリザに頼んで別の人のものを貸してもらったってことよね。
そもそもこのローブ、何のために借りたのかしら? 結局説明してもらえていないのだけど……

「さて、さっさと女王の部屋まで移動しますか」

あの人結構時間にはシビアなんですよね、と言いながら、再度シアンに抱き上げられた。

「え、ええ? な、なんでまたーー?!」
「だって、歩けないのでしょう? このまま女王の前に転移します」
「ちょ、ちょっとだけ待って! すぐに動けるようになると思うから!」
「だーめ、諦めなフィア? 女王様、待たせるとめっちゃ機嫌悪くなるんだって」
「……それとも、このままお姫様抱っこで城内を移動したいですか?」

僕はそれでも構いませんけどね。ソフィーは僕のだって宣伝できますし、悪くないです。

そう言ってニヤリと笑われると、それ以上の反論はできずーー

私はエリザが待っているという場所まで、転移で連れて行かれることになった。


ーーこれ、城内で晒しあげられることはないにせよ。エリザには見られて、揶揄われることは確定だよね。
……どっちがマシだったのか、分からないわ。

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