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3章
12。誰が好きなのかは秘密です
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それからしばらくは、拍子抜けするくらいに前と変わらない生活が待っていた。
特に家に引き籠るわけでもなく普通に街へも出掛けて買い物なんかも済ませていたし、ご飯もしょっちゅう外に食べに行っていたし、相変わらずエリザやマヤさんとも会ってお茶を楽しんだりもした(もちろん今度は昼間にお酒なしで)。
シアンとマゼンタは仕事を少しセーブしているらしく、どこで過ごすにも常に二人のどちらかとは一緒に居てくれるようになった。
まあ流石に寝る時までどちらかと一緒にと言われた時は、全力でお断りさせていただいたけど。
年頃の男女が同じ部屋に寝るなんて、お姉ちゃんにバレたら泣かれてしまう。いや、夢の中のことだったらバレるわけもないのかも知れないが。
でももしどっちかが隣で添い寝してて、起きぬけに「おはよ」なんて言われたら間違いなく頭が沸騰する。例えそれが自分の飼い猫だったとしてもだ。
だいたい、二人とも見た目が無駄にイケメンすぎるのよ!
寝起きにドアップで見たら私が精神的に保たないわ!!
「それなら、ソフィーが起きそうになったら猫の姿になっておきますよ」
「あ、シアンも猫になれるんだ……じゃなくてっ! あの姿って裸でしょう!? ソッチの方がマズいじゃないの!」
「猫だったら当たり前じゃないですか」
「横で裸の男が寝てるのは当たり前じゃないわッ!!」
ヒトの貞操観念をなんだと思ってるのよっ?!
ーーというもはや恒例となった遣り取りを経て、なんとか独り寝の権利をもぎ取ったのだった。
そんな感じで更に一週間が過ぎた頃。
今日はマゼンタと街に買い出しに出ていた。
付き添いとして一緒に来てくれているけど、もちろん荷物持ちもやってもらう。
野菜とか牛乳とか、三人分の食材って結構重いのよね。
次々と食材を買い足しながら、少しずつ顔見知りになってきた商店の人達と軽く挨拶を交わす。
入院騒ぎの直後は街の噂として持ちきりだった『帝国による迷い子拉致疑惑』も最初に比べればだいぶ落ち着いてきて、あまり話題に上らなくなってきた。
よしよし、いい傾向だわ。
予定していた買い物も粗方終わってあとはお茶菓子でも買い足しておこうかと思ったところで、ふとマゼンタに聞いてみる。
「そういえばマゼンタ、チョコレートの美味しいお店知らない?」
「は? なんで急に?」
「んー、お使い? じゃなきゃ賄賂か、もしくは授業料?」
「……余計にワケ分かんねー」
ちゃんと説明しろよと言われて、一瞬口を噤む。
もちろんこのチョコレートはこの前クレイに頼まれたお使いの品なんだけどーーここでクレイの名前を出すのはきっとマズいわよね?
あんなに言うのを渋っていたからには、多分あまり人に教えたくない話なんだろうし。
マゼンタもクレイ宛てのお菓子だって聞いたら嫌な顔をするだろうけど、それ以上にチョコレート好きって情報を漏らしたらクレイから本格的に嫌われてしまう。
この後クレイにはお願いしたいこともあるし、これ以上嫌われるのは避けたい。
「ええと…この前エリザにお茶菓子の差し入れをしたらすごく喜ばれたじゃない? だから、ペンダントのアップグレードのお礼にまたお菓子を持って行こうと思うの」
「アップグレードって言葉も良く分かんないけど……なんでまたチョコレート?」
「エリザが次はミルクティーに合うお菓子が良いって言っていたから。チョコレートなら間違いないかと思って」
言ってることは全部本当だから、バレないはず。
エリザに渡す分とクレイに渡す分でかなりたくさん買うことにはなるけど、それくらいならどうとでも誤魔化せる。
「ふーん、女王様、そんなにチョコ好きだったかな~。…ま、いっか。ただ、オレもそんなに詳しくないんだよねー」
「やっぱり知らないかぁ。ひょっとして、マゼンタはチョコレート食べられなかったりするの?」
一般的に猫にとってはチョコレートは毒だ。食べたら中毒になってしまう。
でもマゼンタもシアンも紅茶とかのカフェイン入りの飲み物を普通に飲んでるし、玉ねぎとかも平気っぽいのよね。
本人達は自分はネコだと言い張るけど、どこまで普通の猫と同じなのかは聞いてみないと分からないのだ。
「ん? 全然平気ー。でも、特別好きってわけじゃないからなー。あったら食べるけど、わざわざ買いに行ったりはしねーな」
「……そうよね。マヤさんに聞けば分かるかしら?」
チョコレートはワインにもぴったりだから、詳しいかもしれない。あ、マヤさんにもチョコレート買っていこうかな?
「あー、アイツ買い物好きだから、この辺の店なら大体把握してそーだな。他に詳しそーな奴って言えば……あ。」
「誰か心当たりあるの?」
「ちょうどいい奴いるかも! 今から広場の方行こーぜ!」
良いこと思いついた! って感じで目をキラキラさせたマゼンタが、私の腕を取ってグイグイ引っ張っていく。
広場なら転位陣もあるから一旦家に荷物置いてくかー、と言っているから、このままお店探しも付き合ってくれるみたい。
どのみち一人で出歩くのはまだダメだから、付き添いしてくれるのは嬉しいのだけどーー
チョコレートがクレイへのプレゼントだということは、絶対に秘密にしとかないと。
特に家に引き籠るわけでもなく普通に街へも出掛けて買い物なんかも済ませていたし、ご飯もしょっちゅう外に食べに行っていたし、相変わらずエリザやマヤさんとも会ってお茶を楽しんだりもした(もちろん今度は昼間にお酒なしで)。
シアンとマゼンタは仕事を少しセーブしているらしく、どこで過ごすにも常に二人のどちらかとは一緒に居てくれるようになった。
まあ流石に寝る時までどちらかと一緒にと言われた時は、全力でお断りさせていただいたけど。
年頃の男女が同じ部屋に寝るなんて、お姉ちゃんにバレたら泣かれてしまう。いや、夢の中のことだったらバレるわけもないのかも知れないが。
でももしどっちかが隣で添い寝してて、起きぬけに「おはよ」なんて言われたら間違いなく頭が沸騰する。例えそれが自分の飼い猫だったとしてもだ。
だいたい、二人とも見た目が無駄にイケメンすぎるのよ!
寝起きにドアップで見たら私が精神的に保たないわ!!
「それなら、ソフィーが起きそうになったら猫の姿になっておきますよ」
「あ、シアンも猫になれるんだ……じゃなくてっ! あの姿って裸でしょう!? ソッチの方がマズいじゃないの!」
「猫だったら当たり前じゃないですか」
「横で裸の男が寝てるのは当たり前じゃないわッ!!」
ヒトの貞操観念をなんだと思ってるのよっ?!
ーーというもはや恒例となった遣り取りを経て、なんとか独り寝の権利をもぎ取ったのだった。
そんな感じで更に一週間が過ぎた頃。
今日はマゼンタと街に買い出しに出ていた。
付き添いとして一緒に来てくれているけど、もちろん荷物持ちもやってもらう。
野菜とか牛乳とか、三人分の食材って結構重いのよね。
次々と食材を買い足しながら、少しずつ顔見知りになってきた商店の人達と軽く挨拶を交わす。
入院騒ぎの直後は街の噂として持ちきりだった『帝国による迷い子拉致疑惑』も最初に比べればだいぶ落ち着いてきて、あまり話題に上らなくなってきた。
よしよし、いい傾向だわ。
予定していた買い物も粗方終わってあとはお茶菓子でも買い足しておこうかと思ったところで、ふとマゼンタに聞いてみる。
「そういえばマゼンタ、チョコレートの美味しいお店知らない?」
「は? なんで急に?」
「んー、お使い? じゃなきゃ賄賂か、もしくは授業料?」
「……余計にワケ分かんねー」
ちゃんと説明しろよと言われて、一瞬口を噤む。
もちろんこのチョコレートはこの前クレイに頼まれたお使いの品なんだけどーーここでクレイの名前を出すのはきっとマズいわよね?
あんなに言うのを渋っていたからには、多分あまり人に教えたくない話なんだろうし。
マゼンタもクレイ宛てのお菓子だって聞いたら嫌な顔をするだろうけど、それ以上にチョコレート好きって情報を漏らしたらクレイから本格的に嫌われてしまう。
この後クレイにはお願いしたいこともあるし、これ以上嫌われるのは避けたい。
「ええと…この前エリザにお茶菓子の差し入れをしたらすごく喜ばれたじゃない? だから、ペンダントのアップグレードのお礼にまたお菓子を持って行こうと思うの」
「アップグレードって言葉も良く分かんないけど……なんでまたチョコレート?」
「エリザが次はミルクティーに合うお菓子が良いって言っていたから。チョコレートなら間違いないかと思って」
言ってることは全部本当だから、バレないはず。
エリザに渡す分とクレイに渡す分でかなりたくさん買うことにはなるけど、それくらいならどうとでも誤魔化せる。
「ふーん、女王様、そんなにチョコ好きだったかな~。…ま、いっか。ただ、オレもそんなに詳しくないんだよねー」
「やっぱり知らないかぁ。ひょっとして、マゼンタはチョコレート食べられなかったりするの?」
一般的に猫にとってはチョコレートは毒だ。食べたら中毒になってしまう。
でもマゼンタもシアンも紅茶とかのカフェイン入りの飲み物を普通に飲んでるし、玉ねぎとかも平気っぽいのよね。
本人達は自分はネコだと言い張るけど、どこまで普通の猫と同じなのかは聞いてみないと分からないのだ。
「ん? 全然平気ー。でも、特別好きってわけじゃないからなー。あったら食べるけど、わざわざ買いに行ったりはしねーな」
「……そうよね。マヤさんに聞けば分かるかしら?」
チョコレートはワインにもぴったりだから、詳しいかもしれない。あ、マヤさんにもチョコレート買っていこうかな?
「あー、アイツ買い物好きだから、この辺の店なら大体把握してそーだな。他に詳しそーな奴って言えば……あ。」
「誰か心当たりあるの?」
「ちょうどいい奴いるかも! 今から広場の方行こーぜ!」
良いこと思いついた! って感じで目をキラキラさせたマゼンタが、私の腕を取ってグイグイ引っ張っていく。
広場なら転位陣もあるから一旦家に荷物置いてくかー、と言っているから、このままお店探しも付き合ってくれるみたい。
どのみち一人で出歩くのはまだダメだから、付き添いしてくれるのは嬉しいのだけどーー
チョコレートがクレイへのプレゼントだということは、絶対に秘密にしとかないと。
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