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4章
20。身に纏う色
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「あの、ここは?」
「見ての通り、ヘアアクセサリーの店ですよ」
一応仲直りだか一時休戦だかをした後で「じゃあそろそろ買い物に行きましょう」と言われて連れてこられた場所がここだった。当然女性向けの店である。
「買い物って、あなたの買い物じゃなかったの?」
「ええ、僕の買い物ですよ」
「……シアンがつけるの?」
似合いそうではあるけれど。
そう言い足せば、笑ってない笑顔を返された。もう、冗談の通じないネコね。
「もちろん、つけるのはソフィーですよ。プレゼントを買いにきたんです」
「強請ってもないのに?」
「贈りたいんですよ、いいでしょう?」
そのままあれよあれよという間に中に連れ込まれ、シアンと一緒に店内を回ることになった。
カチューシャにシュシュ、飾りつきのヘアゴムに簪にバレッタ。
どれもとても綺麗でーーたまに目に入る値札はどれも心臓に悪いものだった。
うん、ここのは金物は全てリアルの金銀細工、布はシルクで石はもれなく宝石なんだろう。じゃないと値段の説明がつかないし。
まあこういう小物を見るのは好きだ。可愛い物は見ているだけでもテンションが上がるもの。
ただ買ってもらってまで欲しいかというとーー正直に言えば要らない。お値段のこともあるし、見るだけで十分だ。
そもそもこの前助けてもらったこともあって、何か二匹にそれぞれお礼がしたかったから、今日はシアンの好みを探ろうと思ってきたのに。
まあシアンやマゼンタの欲しがる物が、私がこっそりとやっていたバイト代で賄えるかはアヤしいところではあるのだけど。
それでも今すぐにじゃなくても先にリサーチだけしておいて、そのうちプレゼントできないかなとか思ってたんだけど。これじゃ完全に逆だわ。
ーーやっぱりプレゼントは断ろうかな。
「シアン、もう十分見せてもらって楽しんだから、次はあなたの見たい物を見にいきましょう?」
「そうですか? なら早めに買うものを決めて、次の店に行きましょうか」
「えっと、プレゼントとか本当に私……」
「ダメですよ、断らないでください。そこに座って」
それ以上有無を言わさず鏡の前に座らされ、後ろが見えるように手鏡まで渡された。
そのままいつの間にかシアンが持ってきていた髪飾りを次から次へと頭にあてがわれる。
気になったからといってじっくり見ていたわけでもないのに、そのどれもが私が可愛いなと思っていたもの。
……この猫変なセンサーでもついてるんじゃないかしら。
「今日のように髪をアップにされるのでしたらこっちのバレッタがいいですかね? ああでも、普段遣いならいつものポニーテールでも使いやすいものでないとーー」
シアンがお店の人に何か言付けると、しばらくして色とりどりのリボンが入った箱が準備された。
その中から迷わず一本を抜き出し、背中側から手を回したシアンが私の首にするりとリボンを巻きつけ、胸元で蝶々結びにする。
「……器用よね」
「猫ですからね。」
巻かれたリボンは艶やかな水色で、縁に銀糸で刺繍がされていた。
宝石つきのバレッタよりはお値段も良心的で、見た目も文句なく好み。
私はシアンの好きなものとか何も知らないのに、向こうにはこんなに把握されているのかと思うとちょっと悔しいくらいだ。
「このリボンはどうですか? とても良く似合ってますよ」
「ありがと。とても素敵だけどーーこれ、色に意味はあるのかしら?」
「それはもちろん。実は、前からちょっと気に喰わなかったんですよね」
何が、と問う前に、首元のネックレスを掬われる。
「ーー女王は自分の色というつもりでピンクの魔石にしたのでしょうが、光源によってはマゼンタにも見えますよね?」
マゼンタの色だけ纏って、僕の色がないのは不公平だなと、前から思っていたんですよ。
そう言ってシアンは私が何かを言う前に早々に会計を済ませてしまった。
「今日は折角の髪型を崩すのはもったいないのでそのままで。明日から毎日使ってくださいね?」
ーーどうもこのプレゼントを断るという選択肢は、最初からなかったらしい。
ニッコリと笑ったシアンに、私は引き攣った笑みしか返せなかった。
「見ての通り、ヘアアクセサリーの店ですよ」
一応仲直りだか一時休戦だかをした後で「じゃあそろそろ買い物に行きましょう」と言われて連れてこられた場所がここだった。当然女性向けの店である。
「買い物って、あなたの買い物じゃなかったの?」
「ええ、僕の買い物ですよ」
「……シアンがつけるの?」
似合いそうではあるけれど。
そう言い足せば、笑ってない笑顔を返された。もう、冗談の通じないネコね。
「もちろん、つけるのはソフィーですよ。プレゼントを買いにきたんです」
「強請ってもないのに?」
「贈りたいんですよ、いいでしょう?」
そのままあれよあれよという間に中に連れ込まれ、シアンと一緒に店内を回ることになった。
カチューシャにシュシュ、飾りつきのヘアゴムに簪にバレッタ。
どれもとても綺麗でーーたまに目に入る値札はどれも心臓に悪いものだった。
うん、ここのは金物は全てリアルの金銀細工、布はシルクで石はもれなく宝石なんだろう。じゃないと値段の説明がつかないし。
まあこういう小物を見るのは好きだ。可愛い物は見ているだけでもテンションが上がるもの。
ただ買ってもらってまで欲しいかというとーー正直に言えば要らない。お値段のこともあるし、見るだけで十分だ。
そもそもこの前助けてもらったこともあって、何か二匹にそれぞれお礼がしたかったから、今日はシアンの好みを探ろうと思ってきたのに。
まあシアンやマゼンタの欲しがる物が、私がこっそりとやっていたバイト代で賄えるかはアヤしいところではあるのだけど。
それでも今すぐにじゃなくても先にリサーチだけしておいて、そのうちプレゼントできないかなとか思ってたんだけど。これじゃ完全に逆だわ。
ーーやっぱりプレゼントは断ろうかな。
「シアン、もう十分見せてもらって楽しんだから、次はあなたの見たい物を見にいきましょう?」
「そうですか? なら早めに買うものを決めて、次の店に行きましょうか」
「えっと、プレゼントとか本当に私……」
「ダメですよ、断らないでください。そこに座って」
それ以上有無を言わさず鏡の前に座らされ、後ろが見えるように手鏡まで渡された。
そのままいつの間にかシアンが持ってきていた髪飾りを次から次へと頭にあてがわれる。
気になったからといってじっくり見ていたわけでもないのに、そのどれもが私が可愛いなと思っていたもの。
……この猫変なセンサーでもついてるんじゃないかしら。
「今日のように髪をアップにされるのでしたらこっちのバレッタがいいですかね? ああでも、普段遣いならいつものポニーテールでも使いやすいものでないとーー」
シアンがお店の人に何か言付けると、しばらくして色とりどりのリボンが入った箱が準備された。
その中から迷わず一本を抜き出し、背中側から手を回したシアンが私の首にするりとリボンを巻きつけ、胸元で蝶々結びにする。
「……器用よね」
「猫ですからね。」
巻かれたリボンは艶やかな水色で、縁に銀糸で刺繍がされていた。
宝石つきのバレッタよりはお値段も良心的で、見た目も文句なく好み。
私はシアンの好きなものとか何も知らないのに、向こうにはこんなに把握されているのかと思うとちょっと悔しいくらいだ。
「このリボンはどうですか? とても良く似合ってますよ」
「ありがと。とても素敵だけどーーこれ、色に意味はあるのかしら?」
「それはもちろん。実は、前からちょっと気に喰わなかったんですよね」
何が、と問う前に、首元のネックレスを掬われる。
「ーー女王は自分の色というつもりでピンクの魔石にしたのでしょうが、光源によってはマゼンタにも見えますよね?」
マゼンタの色だけ纏って、僕の色がないのは不公平だなと、前から思っていたんですよ。
そう言ってシアンは私が何かを言う前に早々に会計を済ませてしまった。
「今日は折角の髪型を崩すのはもったいないのでそのままで。明日から毎日使ってくださいね?」
ーーどうもこのプレゼントを断るという選択肢は、最初からなかったらしい。
ニッコリと笑ったシアンに、私は引き攣った笑みしか返せなかった。
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