飛ばない魔法は魔法じゃない!? ~no distance,no magic~

セビィ

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プロローグ 出会いは衝撃(物理的な意味)と共に

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「さぁ、いらっしゃい…」

 少年からやや離れた所にいる金髪の少女が、銀髪の少年を迎え入れるかのようにそっと両手を広げる
 足元が砂地、四方が3マルトルメートル程の壁に囲まれた正方形のだだっぴろい空間。

 時刻は真夜中。

 天窓から入る月明かりだけがうっすらと二人と辺りを照らしている。

「で、でも…」

 少年は及び腰でおろおろと慌てふためく。

 年の頃は互いに十四、五歳。
 スカートとズボンの違いはあるが、二人が身にまとっているのは全く同じ色とデザインの服だった。
 学校の制服、と言った方が分かりやすいだろうか。

「遠慮しなくていいのよ…」

 シャリ…と砂を鳴らして少女が微笑みながらじわりと距離を詰める。
 詰められた距離と同じくらい少年が後ずさる。

「遠慮とかじゃなくってっ!こう…倫理的に、ね?」

 必死に友好的な笑顔を浮かべてこんな茶番を終わらせようと試みた少年だったが、少女はそれを聞いてかぶりを振る。

「違う…違うわ……」

 キッッ!と少女がブルーの瞳で少年を真っ直ぐ見据えた。

「私が…。私がそうして欲しいと言っているのよっ!!」

 真剣な顔でビシィ! っと自分の顔を親指で指しながら少女が吠える。

「さぁ!! アル!!」
「神様ぁ…」

 どうしてこんな事になってしまったんだろう。
 神に祈りながらアルは空を仰ぎ見る。

 空に浮かぶ銀色の月が目に映り、まるで僕の瞳みたいだなぁ…なんて詩的な事を考えてアルは現実から逃避しようとするが彼女はそれを許さなかった。

「アルベルト=ランケス!! 早く私を―――――思いっきり殴りなさいっ!!」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・


 四方を海に囲まれたヴァレシアーノ大陸。

 その大陸の西部一帯を領土とする国家、フォルティナ魔法王国。
 国家の名に「魔法」が入っているだけあって魔法によって栄えている国。

 国内にある村や集落を除いた中規模以上のほぼ全ての町に国家が運営する「魔法学院」なる機関が存在し、魔法を使う者、すなわち魔法師の育成に力が入れられている。

 数ある学院の中でも首都フォルテナにある学院は規模、技術共に最大・最高を誇り全国各地から秀でた能力を持った魔法師達が自薦、他薦を問わず集まっていた。

首都の学院に入学するという事は優秀な魔法師であると言うことが国によって証明されたという証拠であり、能力によっては将来的には国の中核を担う存在ともなりうる。

 そう。

 フォルテナ魔法学院に入学している魔法師は、全魔術師達にとって羨望せんぼうと憧れの存在と言っても過言ではないのである。

 これは、そんな首都の学院に通うこととなったアルベルト=ランケスという特異な力を持った一人の少年と周囲の者達が織り成す物語である。

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