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コミュ障吸血鬼、吸血鬼ハンター(?)に遭遇する
しおりを挟むドアを開けて確認すると、アンナは本当にいなくなっていた。
このドアは内開きだからドアの裏に隠れることはできないし、ドアの両脇の壁に隠れていないことも確認した。
本当にどうしよう……いや、どうするべきなんだろう。
アンナがどこの部屋に入ったのかわからないからといって、部屋をしらみ潰しに当たるのは失礼になるし……。
悩みに悩んだ結果、僕は――
――よし、夜のうちに散歩でもしよう!
考えるのをやめた。
◆
寝間着のまま、僕は夜の街へ繰り出した。
あのフリル満点の服はもう着たくなかったし……。
それにしても、夜の間は本当に活力に満ちてて、疲れる気がしない。
かといってあまり遠くまで行くと日没までに戻ってこれない可能性があるから、気分転換程度にアンナの家の周りを1,2周するくらいにしておこう。
アンナの家、高さもそうだけど敷地も広いから。
窓から見ただけでも、100人呼んでBBQしても余裕でスペースが余るくらいの庭がある。
そんな庭を抜け、お金持ちの家で見るような大きな鉄柵の門のところまで来た。
と、ここでハプニング発生。
――野生の門番が現れた!
門番に野生とかあるのか、というツッコミは総スルー。
といっても口にしたわけじゃないからツッコミが来るはずないんだけど。
それよりも、これは僕にとっては死活問題だ。
初対面の、それも武器を持った人と、アンナ無しに話せるわけがない。
思考を巡らせているうちに、門番が僕に気づいてしまった。
「これはティアナ様。お出かけですか?」
さ、様!?
そ、そんなこと言われたの初めてだから、どんな反応をしたらいいか……。
「あ、申し訳ありません。武器を持っていたら怖くて話せませんよね」
そう言って門番のお兄さんは持っていた長槍を床に置いた。
それではなかったんだけど、確かにそれは思ってたから武器を置いてくれるのはありがたい。
心に少しだけ余裕ができた。
でも、初対面だということに変わりはないわけで、話せるかと問われれば即答でムリって答える。
「……そうか、そうですよね。人と話すのが苦手なんでしたね。配慮が足らず、申し訳ありません」
なんでこの人は初対面の僕に対し敬語を使い、安売りのように頭を下げるのか。
こういう何かの番をしてる人達って自分が仕えている人以外にあまり敬語を使わないイメージだったから、意外だ……。
礼儀正しいのはいいことなんだけど……ね?
何かの番をしてる人達って、こう、高圧的な物言いなことが多いでしょ?
だから、意外だなって。
……誰に言い訳してるんだろう、僕。
「ではどうか、お気をつけてお出かけください。とはいえ、朝までにはお戻りくださいね? 吸血鬼とはいえ、朝になったら一溜りもありませんので」
門番のお兄さんが、そう言って鉄柵の門を開けた。
というか、僕が吸血鬼だって知ってた。
それに様付けにビックリしてて気づかなかったけど僕の名前も。
でも、よく考えたら、倒れた僕を運び込んだときに、あの女の子好きなアンナが説明しないわけがない。
それよりも、門番のお兄さんに門を開けてくれたお礼を言わないと。
「あ、ありが、とう……!」
緊張して声が裏返っちゃった、恥ずかしい……。
門番のお兄さんは、一瞬目を見開いた後、優しげな微笑みを浮かべた。
「どういたしまして」
◆
門番のお兄さんにお礼を言い終えた僕は、門を抜けてすぐ左へ曲がり、反時計回りにアンナの家を回ることにする。
アンナの家の周りは寝室から見た限り家だらけで、特に目新しいものはなかった。
でも、夜だから人気がなくていい。
これなら人と遭遇する確率は限りなく低いはず。
そんな淡い期待を胸に歩いていく。
アンナの敷地の端まで来たため曲がろうとした矢先、角から誰かが出てきた。
なんというフラグ回収の速さ……!
自分でも驚いた。
そして、角から人が出てきたことにもビックリした僕は、ぶつかる前にぶつかったかのように尻餅をついた。
「痛ッ…………くない……?」
尻餅をついたから反射的に痛いって口にしたけど、全くと言っていいほど痛くなかった。
「だ、大丈夫か!? 怪我はないか!?」
角から出てきたであろう人が、心配そうに僕の前に膝をつく。
顔を上げると、目の前にいる人物を見て驚いてしまった。
なぜなら、首から十字架とニンニクが連なったものをかけ、背中に杭を背負い、腰に水が入った小瓶と短剣を提げた美少女がいたのだから。
そのあまりのギャップに言葉が出ない。
一つや二つのギャップならまだ萌えると思うけど、この人の場合、多すぎて萌えない。
容姿は、髪が茶色のショートで瞳は水色、小顔で可愛い感じだけど、ボーイッシュな雰囲気を漂わせている。
少なくとも僕より背が高くて、アンナほどではないけど胸が大きい。
というかこの人、絶対吸血鬼殺す気満々だよね?
前世での吸血鬼に効きそうなものばかり装備してるし。
いわゆる吸血鬼ハンターってやつだよね?
だとすると、腰に提げてる小瓶の中の水は聖水、短剣の方は銀製ってことになる。
これ、確実にヤバい状況だ。
どうにかバレないようにしないと……。
と思った矢先、
「お前……吸血鬼か?」
早速バレた。
なんでバレたんだろう?
というか、僕、魔法の使い方とかスキルの使い方とかまだわからないままだし争い事は苦手なんだけど……。
そうだ、いざとなったら速攻で逃げよう。
幸いアンナの家の前だから、門まで走ればなんとかなるはず。
「おい、聞いてんのか! さっさと答えろ!」
怒鳴られ、僕の頭の中は真っ白になる。
答えろって言われたって、吸血鬼だって答えたら殺されそうだから言いたくない。
かといってこのまま黙ってても殺されそうな気さえする。
そんなことを思って黙っていると、痺れを切らしたのか背中に背負っている杭を外した。
「もういい。その赤く光る目を見れば一目瞭然だからな。村の人達の仇、とらせてもらうぞ! 覚悟しろ、吸血鬼!」
終わった……。
思いっきり杭を僕の胸に向けて構えてるもん。
というか、村の人達の仇ってなに?
僕、今日この世界に転生したばかりなんだけど、完全に身に覚えの無さすぎることの罪を償わされそうになってるよね?
吸血鬼なら見境なしってこと?
ええっとええっと、なにか言わなきゃ。
ええっと……。
考えた末に僕が口にしたのは、
「ぼ、僕、悪い吸血鬼じゃ、ないよ……!」
前世で聞いた、どこぞのスライムのセリフのパクリだった。
「はぁ!? 吸血鬼にいい吸血鬼がいるわけないだろ!? ……わかったぞ。そうやって油断させておいて、オレの血を吸う気なんだろ!」
そう言われた僕は、即座に首をブンブン横に振って否定した。
ダメだ、なにを言っても聞く耳持たない……というより、向こうの都合のいいように解釈されてる。
「もういい、オレの恨みを晴らさせてもらう!」
そう言って杭を振り上げる。
鋭く尖った杭から目が離せない。
あの先端がこれから僕の胸に刺さるのかと思うと、震えが止まらない。
逃げようにも、震えのせいか動くことができない。
そして、遂に振り下ろされる杭。
今度こそ、本当に終わりだ……。
こんなことなら、アンナのこと、許してあげればよかった。
しかし、次の瞬間、振り下ろされていた杭が消えた。
なにが起こったのかと思った矢先、後ろから抱きつかれた。
「ティアナ……よかった、間に合った……!」
その声は、寝ているはずのアンナのものだった。
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