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コミュ障吸血鬼、和解する(他力)
しおりを挟む「もうっ、ティアナってば、勝手に外に出ちゃダメでしょ? 私が一緒にいたからよかったものの、私がいなかったらどうなってたか……」
えっ、一緒にいた?
確実に一人で出てきたはずなんだけど。
それに、部屋の外に誰もいないことはちゃんと確認したし……。
「まぁ、今はそんなことよりも……。あなた、よくも私の可愛い可愛いティアナにそんな太いものいれようとしたわね!? ティアナにそんな太いもの入るわけないでしょ!? 新しい扉を開いちゃったらどうしてくれるの!?」
あれ? なんか、卑猥な言い方に聞こえるんだけど……?
「ティアナの初めては、私がもらうんだから!」
うん、これは、完全に誤解してるやつだ。
吸血鬼の弱点になりそうなものを装備しまくった人が、吸血鬼の初めてをもらおうとするわけない。
「なぜ、吸血鬼を庇う? 吸血鬼は野蛮だ……誰彼構わず血を吸う野蛮な化け物なんだ! なのになぜ、吸血鬼を庇う!」
杭を構えながら叫ぶオレ系美少女。
「えっ、あっ……やだ、私ったら、勘違いしてたのね……」
オレ系美少女の態度から見てそういうことではないと気づいたアンナが、珍しく顔を真っ赤にして恥ずかしがった。
うん、やっぱり誤解してた。
っていうか、なに、アンナは、僕がそっちの意味で襲われてると思ったから、あんなに必死だったの?
僕の面倒を見たい本当の目的は身体ってことなの?
僕の初めてをもらうって言ったってことは、そういうことなんだよね?
よし、お風呂の件は許さない。
「これはあれよ! 最近、女の子なら誰彼構わず犯す変態が出現しているという報告を受けていたから出た言葉であって、決して私の欲目じゃないわ!」
なにその言い訳……。
言い訳としては成立してなくもないけど、なんならその女の子なら誰彼構わず犯す〝へんたい〟はアンナでもおかしくないよね?
僕の初めてを貰うって言ってたし。
それに、その言い方だとアンナの欲目が本音ってことになると思うけど……。
アンナって、女の人……だよね?
そっか、女の子好きすぎてそっち系の人になっちゃったのか……可哀想に。
当の本人は言ってから数秒した後、ハッとした表情になり〝言ってしまった……!〟という顔をしたから、本音だったんだなと思う。
「んなことはどうでもいいんだよ! なぜその吸血鬼を庇うのかって聞いてるんだ!」
「そんなの決まってるじゃない! ―――私のティアナだからよ!」
ちょっと待って?
今、アンナはなんて言った?
僕がアンナのものだって言わなかった?
確かに、これから家に住まわせてもうらうし、僕に部屋を与えてくれたことには感謝してる。
面倒見てくれることも。
でも、決して僕はアンナのものじゃない。
もう一度言うけど、アンナのものじゃない。
もう一度だけ言う、僕は決して――
――ア・ン・ナ・の・も・の・じゃ・な・い。
僕には僕の意思があるわけで、ものみたいに扱われるのは癪に触る。
うん、やっぱりお風呂の件はアンナがどんなに謝罪してこようと、絶対に許さない。
加えてこの件も許さないし、一生……あ、いや、吸血鬼は不老不死だから、〝永遠〟に忘れない。
僕、自分で言うのもなんだけど、結構根に持つタイプだから。
これから、絶対なにかの度に「この前お風呂で……」とか「この前、僕のこともの扱いしたくせに……」とか引き合いに出す。
それくらい根に持つ。
僕が言うんだから間違いない。
「お前のだろうとなんだろうと、吸血鬼は人間の敵だ! 誰彼構わず血を吸う野蛮な奴らなんだ!」
「……一つ、あなたの知識を訂正しておくわ。吸血鬼は基本なにも食さなくても生きていける。それには当然血も含まれてる。美味しそうな血の匂いを嗅がない限り、吸血衝動は起こらないのよ」
「じ、じゃあ、なんでオレの村の人達は血を吸われたんだ! オレ以外全員吸血鬼にされたんだぞ!」
「それはおかしいわ。吸血鬼は吸血衝動を起こした場合、理性は損なわれても美味しそうな血の匂いをさせている人しか襲わないはず……」
そういえば、さっきからオレ系美少女から美味しそうな匂いが……。
アンナをツンツンする。
「どうしたの、ティアナ?」
「……この人、美味しそうな匂い、するよ?」
オレ系美少女を指しながらそう言った。
我ながら危ない発言しちゃったなと少し後悔する。
アンナは少し考える素振りをした後、口を開いた。
「恐らくだけど、吸血鬼はあなたを狙っていたんだわ。でも、村の人達がそれを阻んだ。自分達を犠牲にしてでもあなたを守ったんだと思うわ」
アンナの推測は筋が通ってると思うし、僕もそうなんじゃないかと思ってる。
というか、僕、結構オレ系美少女の美味しそうな血の匂いを嗅いでたけど、別段吸血衝動が出る気配ないよ?
なんか美味しそうな匂いするなぁ、ということしか感じない。
「もしそうなら、なんでこの吸血鬼は襲ってこないんだよ! 美味しそうな匂いがすると襲ってくるんだろ!?」
同じ疑問を、変わりにオレ系美少女がアンナにぶつけた。
「それは、ティアナに【吸血衝動】というスキルが無いからよ」
えっ、吸血鬼の吸血衝動って、スキルによるものだったの?
まぁ、〝この世界の〟っていう前置きが付くけど。
あれ? 吸血衝動がないってことは、自分の意思に反して人を襲うことがないってことだよね?
それなら、なくてよかったと思う。
といっても、あろうとなかろうと僕はコミュ障だから、理性が失われてても本能的に近づけなくて吸血できないだろうけど。
見ず知らずの人に襲いかかるわけだからね。
「それって、吸血鬼って言えんのか……?」
安堵する事実のはずなのに、オレ系美少女は違う反応を示した。
「スキルが一個ないくらいで吸血鬼じゃないわけないじゃない! 赤い目、鋭く尖った八重歯、サラサラな金の髪、少し幼さが残った可愛い顔立ち、ぷりぷりのくちびる……」
待って、なんか関係ないこと言い始めてない?
「これのどこが可愛くないって言うの!?」
やっぱり……。
吸血鬼じゃないわけないってことを伝えたかったんじゃなかったっけ?
「ティアナは可愛い。可愛いは正義。つまり、ティアナこそが正義ということよ!」
なにその超理論。
可愛いは正義っていうのは道理かもしれないけど、だからといって〝僕=正義〟は言い過ぎだと思う。
キメ顔してるけど、オレ系美少女には伝わってないんじゃないの?
「ぐっ……確かに。なんでオレはこんなに可愛い吸血鬼を倒そうだなんて思ってしまったんだ……」
納得しちゃってる!?
えっ、ウソ、本当に?
あれで納得するなんて、頭大丈夫?
洗脳されてるんじゃないの?
そうとしか思えないほどすんなり納得してるよ?
困惑する僕にオレ系美少女が近づいてきて僕の前に正座した。
そして――
「えっと、ティアナ……だったな。オレはリオナという。襲いかかってすまなかった。許してほしい」
そう言って頭を下げた。
土下座だ。
存在してたんだ。
と、とりあえず、なにか言わなきゃ。
「あ、あの、その、えっと……」
ダメだ、なにを言ったらいいのか全然わからない。
普通ならここで「頭を上げてください!」って言うんだろうけど、頭が真っ白になっている僕がその言葉を思いつくはずもなく……。
「…………」
黙り込んで、ただ土下座するオレ系美少女――リオナを見つめることしかできない。
そこへ、抱きついてからずっと僕を後ろから抱き締めているアンナが口を開いた。
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……えっ?
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「任せろ」
あ、なんだ、僕のためを思ってリオナをお世話係に任命したのか。
まぁ、うん、それは嬉しいんだけど――
――やっぱり、コミュ障の僕に人を付けるのは、拷問としか思えない。
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