コミュ障なTS美少女吸血鬼とコミュ力高めで女の子好きな女騎士

ユウギリ

文字の大きさ
6 / 46

コミュ障吸血鬼、和解する(他力)

しおりを挟む

「もうっ、ティアナってば、勝手に外に出ちゃダメでしょ? 私が一緒にいたからよかったものの、私がいなかったらどうなってたか……」

 えっ、一緒にいた?
 確実に一人で出てきたはずなんだけど。
 それに、部屋の外に誰もいないことはちゃんと確認したし……。

「まぁ、今はそんなことよりも……。あなた、よくも私の可愛い可愛いティアナにそんな太いものいれようとしたわね!? ティアナにそんな太いもの入るわけないでしょ!? 新しい扉を開いちゃったらどうしてくれるの!?」

 あれ? なんか、卑猥な言い方に聞こえるんだけど……?

「ティアナの初めては、私がもらうんだから!」

 うん、これは、完全に誤解してるやつだ。
 吸血鬼の弱点になりそうなものを装備しまくった人が、吸血鬼の初めてをもらおうとするわけない。

「なぜ、吸血鬼を庇う? 吸血鬼は野蛮だ……誰彼構わず血を吸う野蛮な化け物なんだ! なのになぜ、吸血鬼を庇う!」

 杭を構えながら叫ぶオレ系美少女。

「えっ、あっ……やだ、私ったら、勘違いしてたのね……」

 オレ系美少女の態度から見てそういうことではないと気づいたアンナが、珍しく顔を真っ赤にして恥ずかしがった。
 うん、やっぱり誤解してた。
 っていうか、なに、アンナは、僕がそっちの意味で襲われてると思ったから、あんなに必死だったの?
 僕の面倒を見たい本当の目的は身体ってことなの?
 僕の初めてをもらうって言ったってことは、そういうことなんだよね?
 よし、お風呂の件は許さない。

「これはあれよ! 最近、女の子なら誰彼構わず犯す変態が出現しているという報告を受けていたから出た言葉であって、決して私の欲目じゃないわ!」

 なにその言い訳……。
 言い訳としては成立してなくもないけど、なんならその女の子なら誰彼構わず犯す〝へんたい〟はアンナでもおかしくないよね?
 僕の初めてを貰うって言ってたし。
 それに、その言い方だとアンナの欲目が本音ってことになると思うけど……。
 アンナって、女の人……だよね?
 そっか、女の子好きすぎてそっち系の人になっちゃったのか……可哀想に。
 当の本人は言ってから数秒した後、ハッとした表情になり〝言ってしまった……!〟という顔をしたから、本音だったんだなと思う。

「んなことはどうでもいいんだよ! なぜその吸血鬼を庇うのかって聞いてるんだ!」
「そんなの決まってるじゃない! ―――私のティアナだからよ!」

 ちょっと待って?
 今、アンナはなんて言った?
 僕がアンナのものだって言わなかった?
 確かに、これから家に住まわせてもうらうし、僕に部屋を与えてくれたことには感謝してる。
 面倒見てくれることも。
 でも、決して僕はアンナのものじゃない。
 もう一度言うけど、アンナのものじゃない。
 もう一度だけ言う、僕は決して――


 ――ア・ン・ナ・の・も・の・じゃ・な・い。


 僕には僕の意思があるわけで、ものみたいに扱われるのは癪に触る。
 うん、やっぱりお風呂の件はアンナがどんなに謝罪してこようと、絶対に許さない。
 加えてこの件も許さないし、一生……あ、いや、吸血鬼は不老不死だから、〝永遠〟に忘れない。
 僕、自分で言うのもなんだけど、結構根に持つタイプだから。
 これから、絶対なにかの度に「この前お風呂で……」とか「この前、僕のこともの扱いしたくせに……」とか引き合いに出す。
 それくらい根に持つ。
 僕が言うんだから間違いない。

「お前のだろうとなんだろうと、吸血鬼は人間の敵だ! 誰彼構わず血を吸う野蛮な奴らなんだ!」
「……一つ、あなたの知識を訂正しておくわ。吸血鬼は基本なにも食さなくても生きていける。それには当然血も含まれてる。美味しそうな血の匂いを嗅がない限り、吸血衝動は起こらないのよ」
「じ、じゃあ、なんでオレの村の人達は血を吸われたんだ! オレ以外全員吸血鬼にされたんだぞ!」
「それはおかしいわ。吸血鬼は吸血衝動を起こした場合、理性は損なわれても美味しそうな血の匂いをさせている人しか襲わないはず……」

 そういえば、さっきからオレ系美少女から美味しそうな匂いが……。
 アンナをツンツンする。

「どうしたの、ティアナ?」
「……この人、美味しそうな匂い、するよ?」

 オレ系美少女を指しながらそう言った。
 我ながら危ない発言しちゃったなと少し後悔する。
 アンナは少し考える素振りをした後、口を開いた。

「恐らくだけど、吸血鬼はあなたを狙っていたんだわ。でも、村の人達がそれを阻んだ。自分達を犠牲にしてでもあなたを守ったんだと思うわ」

 アンナの推測は筋が通ってると思うし、僕もそうなんじゃないかと思ってる。
 というか、僕、結構オレ系美少女の美味しそうな血の匂いを嗅いでたけど、別段吸血衝動が出る気配ないよ?
 なんか美味しそうな匂いするなぁ、ということしか感じない。

「もしそうなら、なんでこの吸血鬼は襲ってこないんだよ! 美味しそうな匂いがすると襲ってくるんだろ!?」

 同じ疑問を、変わりにオレ系美少女がアンナにぶつけた。

「それは、ティアナに【吸血衝動】というスキルが無いからよ」

 えっ、吸血鬼の吸血衝動って、スキルによるものだったの?
 まぁ、〝この世界の〟っていう前置きが付くけど。
 あれ? 吸血衝動がないってことは、自分の意思に反して人を襲うことがないってことだよね?
 それなら、なくてよかったと思う。
 といっても、あろうとなかろうと僕はコミュ障だから、理性が失われてても本能的に近づけなくて吸血できないだろうけど。
 見ず知らずの人に襲いかかるわけだからね。

「それって、吸血鬼って言えんのか……?」

 安堵する事実のはずなのに、オレ系美少女は違う反応を示した。

「スキルが一個ないくらいで吸血鬼じゃないわけないじゃない! 赤い目、鋭く尖った八重歯、サラサラな金の髪、少し幼さが残った可愛い顔立ち、ぷりぷりのくちびる……」

 待って、なんか関係ないこと言い始めてない?

「これのどこが可愛くないって言うの!?」

 やっぱり……。
 吸血鬼じゃないわけないってことを伝えたかったんじゃなかったっけ?

「ティアナは可愛い。可愛いは正義。つまり、ティアナこそが正義ということよ!」

 なにその超理論。
 可愛いは正義っていうのは道理かもしれないけど、だからといって〝僕=正義〟は言い過ぎだと思う。
 キメ顔してるけど、オレ系美少女には伝わってないんじゃないの?

「ぐっ……確かに。なんでオレはこんなに可愛い吸血鬼を倒そうだなんて思ってしまったんだ……」

 納得しちゃってる!?
 えっ、ウソ、本当に?
 あれで納得するなんて、頭大丈夫?
 洗脳されてるんじゃないの?
 そうとしか思えないほどすんなり納得してるよ?
 困惑する僕にオレ系美少女が近づいてきて僕の前に正座した。

 そして――

「えっと、ティアナ……だったな。オレはリオナという。襲いかかってすまなかった。許してほしい」

 そう言って頭を下げた。

 土下座だ。
 存在してたんだ。
 と、とりあえず、なにか言わなきゃ。

「あ、あの、その、えっと……」

 ダメだ、なにを言ったらいいのか全然わからない。
 普通ならここで「頭を上げてください!」って言うんだろうけど、頭が真っ白になっている僕がその言葉を思いつくはずもなく……。

「…………」

 黙り込んで、ただ土下座するオレ系美少女――リオナを見つめることしかできない。
 そこへ、抱きついてからずっと僕を後ろから抱き締めているアンナが口を開いた。

「許します。ただし、あなたには今日からティアナのお世話係をしてもらいます。いいですね?」

 ……えっ?

「わかった。それで償えるのなら」

 いやいやいやいや、ちょっと待って?
 コミュ障の僕に人を付ける?
 なにその拷問。
 もしかして、許してもらえないことを根に持ってるの?
 いや、でも、あれは完全にアンナが悪かったから、僕が恨まれる筋合いはないよね。

「私が日中仕事している間、ティアナのこと、頼むわよ?」
「任せろ」

 あ、なんだ、僕のためを思ってリオナをお世話係に任命したのか。
 まぁ、うん、それは嬉しいんだけど――


 ――やっぱり、コミュ障の僕に人を付けるのは、拷問としか思えない。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...