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コミュ障吸血鬼、外出を試みる
しおりを挟むどんなスキルを持っているのかがわかったのはよかったけど、もっと早くに知っておきたかった。
【日光遮断】とか特に知っておきたかった。
アンナはなんで教えてくれなかったんだろうか。
いや、そんな暇なかったか……。
この世界に吸血鬼として産まれてまだ2日(?)なのに、アンナとリオナのせいと言うべきか、お陰と言うべきか、どちらにしろ濃かったわけだし。
なんにせよ、そんな便利なスキルがあるなら使わない手はないよね。
「……外行く」
「えっ? どこか行きたいところでもあるの?」
「アンナのとこ……」
「えっ!? なんであんな変態のところに行くの!? 私じゃ満足できないの!?」
いや、言い方……。
「……行きたくない、なら、ついてこなくて、いい」
「行くよ!? 行くけど……目的地があの変態なのが嫌なだけ!」
うわぁ、容赦ない口撃。
そんなことはさておき、僕はアンナからもらった服10着の中から、一番無難なものを選ぶ。
これを昔のアンナが着てたのか……想像もつかないな。
そう思いながら選んだのは、黒が基調で白のアクセントが入った、いわゆるゴスロリ服。
元男の僕がするチョイスではないけど、今の僕は女の子なわけだから、こういうのがいいかなと思って選んだ。
でもこれ、どうやって着るんだろう?
下着姿で四苦八苦していると、見かねたリオナが僕の手から服を抜き取り、着せてくれた。
「……ぷはぁ……ありがとう……」
腕を通して最後に頭が出て、服を着ることができた僕は、リオナにお礼を言った。
「ううん、これくらいなら、いくらでも手伝うよ!」
そう言って、笑顔で抱き付いてくるリオナ。
ちょっ、当たってる……。
ナニとは言わないけど、顔面に大きなお山が二つ当たってる……。
やば、だんだん苦しくなってきた。
大きなお山の人に抱き締められて顔が埋まって苦しそうにしてるシーンがあるけど、僕はそんなに苦しいものだとは思ってなかった。
まさに、〝そう思っていた時期が僕にもありました〟という感じで、本当に苦しい。
止める人がいないから、リオナがやめない限りこの苦しみは終わらない。
だんだんと意識が遠退いていった僕は――
――あっ、もうムリ……。
諦めて意識を手放した。
「あれ? ティアナ? ティアナ!?」
ぐったりする僕に気づいたリオナが僕を呼ぶが、時すでに遅し。
僕はすでに意識を失っている。
意識を失う間際、〝こっちの世界に来てから僕、気を失ってばかりな気がする……〟と思った。
◆
「ほんっとうに、ごめんなさい!」
僕が目が覚めるや否や、土下座までして謝るリオナ。
「私の胸が凶器だったなんて、知らなかったの! これからは気をつけるから、許してください!」
普通なら意識を失った時点で窒息死してるけど、僕は不死身の吸血鬼だから、意識を失うだけで済んだわけだ。
だからこそ、リオナは必死に許しを乞うている。
一つ言っておくと、僕はべつに怒ってない。
なぜなら、あの状況は、男の子が一度は夢に見たであろう状況だったから。
かくいう僕も前世は思春期真っ只中の男の子だったから、女の人の大きなお山に挟まれたいと夢見たことがある。
それがあんな形で叶うとは、夢にも思わなかった。
なので、全く怒ってない。
むしろ、感謝したいくらいだ。
〝ごちそうさまでした〟って。
ただ、女の子である僕としては、これ以上成長しない僕の、ちょっと起伏がある程度のお山をバカにされてる気分もあるんだよね……。
なんか、そう思うとちょっと怒りが……。
あっ、いけないいけない。
アンナのところに行くんだった。
時計を見れば、11時45分を指していた。
今から行けば、ちょうど昼休憩かな。
昼休憩が何時からか知らないけど。
働いてるところも見たかったけど、僕を見るなり仕事ほっぽりだしそうだし、そこは諦めよう。
そうと決まれば、急がないと。
そう思ってドアの前まで行ったところで、ハタと気づく。
「ど、どうしたのティアナ?」
「――スキルって、どうやって、使うの?」
と。
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