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ベルフォール帝国編
四は四番目ではない
しおりを挟む「それで君の本当の目的は何かな?」
「臣は武術の修行で参りました」
四の皇子様の性格を知らないんだ。修業と主張するしかない。
「なかなかに強情だね。確かにフォレット家は武家だというのはこっちでも知られている。但し、修行先場所は違うよね?確かレハールだったかな。何故かレイ君は帝都で修行だ。気になるだろ?」
あ、う~ん。きっちり調べていますね。
下手な言い訳は無理かも。
「それに君が滞在しているハッテンベルガー家は帝国にとっては重要な家なんだよ。そこで武術以外の何かを学んでいるという事はないのかな?」
ホント調べている。ある程度は仕方ないか。
「臣は田舎貴族の出身です。ハッテンベルガー家の家格については基本的な事をこちらで学んで知りました。その厚情に甘えて学ばせて頂いております」
「学んだ知識を我が国に役立てようという気持ちはないのかい?」
あ~、スカウトなのか。成程。そっちが一番納得できそうだ。
手駒は多いほうがいいだろう。
そこからは言質を取られないように慎重に言葉を選びながら応対する。
直接ではないけと配下になる事を匂わせてきている。
四の皇子様はボクとの会話を楽しんでいるような感じがする。ちょっとだけ、ちょっとだけ安心しながら応対を続ける。
どうやら絶対に配下になれという強制ではなさそう。
話題も色々変わる。ボクの品定めという所かも。
護衛官の威圧・・・殺気から威圧に変わっているけど。それに晒されながらの応対は結構しんどいぞ。
当然だけど知らない事も沢山ある。勉強と思いながらも応対を続ける。
脳ミソがしんどい。
四の皇子様は楽しそうな声なんだけどね。相変わらず顔を上げられないから雰囲気での推測だし。
結構な時間が経過したと思うんですけど。
背後の護衛官が四の皇子様に時間切れを報告する。
「殿下。そろそろお時間です」
「そうか。早いな。次の予定は後回しには・・」「できません」
「そう言うなよ。見ての通り久しぶりに楽しい時間を過ごせているんだ」
「この場の時間を確保するだけでも大変だった事をお忘れなく。今後の事も考えるのであれば、これ以上はどうか」
「仕方ないね。分かったよ」
どうやら解放されそうだ。つ・・疲れた。
「残念だけど今日はここまでだね。またどこかで話そうか」
ええ!!
今回で終わりじゃないの。マジ?
かなり・・かなり困るけど。表向きは拒絶できない。
「は。ありがたき幸せ」
「なにか、嫌そうな感じだね。王太子を使って会うのは今回限りだよ。次は別の方法を考えるから安心しなよ」
ああ・・、ええ。はい。
次も確定なんですね。
よし、早めに逃げるぞ。これも確定だ。
さっさと出よう。
と、軽く腰を浮かせようとしたら。
なんか言われた。
「私と仲良くしていると良い事があると思うよ。例えばフレーザー領の回復とかね」
は?
思わず四の皇子様を見てしまう。それ程の衝撃だった。
何故それを・・?
四の皇子様はうっすらと笑みを浮かべてボクを見ている。
・・やられた。
まずい。嘘はついていないけど正直に話しはしていなかった。今の反応で心の内を探られたと思う。
・・最悪不敬に問われる。
どうする?
口封じは絶対無理だ。
ボクが使える魔法で、この場の反応を無かった事にするモノは無い。
何か・・別の方法を考えないと。
「何か焦っているようだけど安心しなよ。私は咎めたいのではないんだよ。君の助けになりたい気持ちもあるんだよ」
・・どうしよう。
「臣を配下に加えたいという事でしょうか?」
「肯定はするよ。皇子といっても兄や姉と違って私には力が無いからね。少しでも能力のある臣下は欲しいのは否定しない。サンダーランド王国の貴族家でも臣下として活躍した人はいるようだよ」
「臣はまだ幼いです。今は殿下のご評価を頂いていますが、数年後にはどうなっているかは自分でも自身がございません。殿下に恥をかかせるかと」
「君が将来良くない方向に向かう事を私は想像できないな。だから手間がかかる方法で君に会ったんだよ。私の目を信じて貰いたいな。それに君の戦歴は入手できる範囲だけど知っているよ。相当頑張っているじゃないか」
・・理由はまだ分からない。四の皇子様は相当ボクを評価している事は分かった。
それと帝国の情報網はすごい事も分かった。
どうしよう。
いずれにしても今じゃない。
「過分なお言葉ありがとう存じます。殿下が臣のような者を欲し、臣が望んだ者になれた時に実現するのではないかと存じます」
「随分と慎重だね。確かに初対面で丸ごと信じろと言っても無理だろうね。私自身も君の主たる者になるよう鍛錬をしないとね」
「は。ありがとう存じます。では、これにて失礼致します」
問題を先送りにする。当面四の皇子様と周辺の者には会わないよう十分に注意する。情報面の強化は必須だ。
それはさておき今は立ち去らないと。これ以上はマズイ。
さっさと逃げます。
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