全てを失った僕は生きていけるのだろうか?

ナギサ コウガ

文字の大きさ
40 / 57

37.キュメネ邑へ

しおりを挟む

 僕達が保護したソニヤさんをアイナさんとライラさんが連れて行った翌日の朝は一先ず穏やかだった。
 エリナさんにとってはかもしれないけどね。
 今日もエリナさんは僕の寝床に潜り込んでいる。たった数日なのに僕も慣れてしまったみたいだ。
 昨日も寒いからとしれっと言ってきた。多分それは言い訳だ。これはもう意図して潜り込んできている筈。
 僕も悪い気はしないのだからお互い様という事なのだろうか?でも一緒に寝ているだけで何をしたという訳でもない。・・・と、思う。
 何しろ僕は一度眠ってしまうと容易に起きないらしい。でも朝になればきちんと起きれるんだけどね。だから僕の寝床には容易に忍び込めるということみたいだ。
 よく考えたらこれって僕一人で野宿していたらアウトじゃないか?緊張感が足りないのだろうか?改善できるようなら検討しないと。
 などと穏やかなエリナさんの寝顔を見ながら考えていた。
 火傷の傷は痛々しいのだけど綺麗な顔だよな。長い金髪は本当にツヤツヤで綺麗で触り心地が抜群にいい。癖になる感触だから暫く梳いていたら唐突に僕の胸に顔をくっつけてきた。
 あれ?起きていたのか?見ると顔は見えないけど耳が真っ赤になっている。
 これは羞恥か?怒りか?
 ・・・・・前者である事を願おう。

「エリナさん。もしかして結構前から起きてました?」
「・・・・」

 おおぅ。頭がゴリゴリ押し付けられてくる。しかも無言。これは前者だろう。何か可愛らしい。
 結構素な所を見せてくれるようになったよね。それだけ頼って貰っているのかと思うと、無条件で嬉しい。こんな好い人の信頼を得ているんだよ。問答無用で嬉しい。
 ついついエリナさんの髪を触ってしまう。胸枕のような体勢だな。うん、ありがとうございます。
 ・・・なんかずっとこうしていたいな。
 どうやら僕もエリナさんに心地よいものを感じているかも。
 寝起きなのに既に安心しているってなんだろ。もう少しこうしていよう。
 
  
「・・・なんでかな。ケイ君とこうしていると凄い安心するよ。もうちょっとこうしていて良い?」
「うん。いいよ。僕も安心できるんだ。つい最近まで酷かったから、その反動なのかな?」
「え~。それって誰でも良いって事なの?」

 僕の胸に埋めていた顔をあげ避難するように僕を見つめてくる。
 怒ってますよアピールのような体だけど。怒って無いのはなんとなく分かる。勿論エリナさんが聞いてくるように誰でも良い訳じゃない。
 エリナさんは僕の体にのっかって這い上がって来る。・・・近いデスヨ。

「まだ数日なのに僕は何言っているんだと思うけど、エリナさんだからだと思う。最初はビックリしたけど慣れると安心するんだよ。ほんとだよ」
「本当に?口だけではなんとでも言えますからね~」
「う~ん。それは難しいですね。どうしたら信じてもらえるかな?」
「それはケイ君が考えてください。言葉よりも・・・ね?」
「・・考えときます」

 う・・・課題が増えた。
 でも、本当に話し方が砕けてきている。それに距離感も近い。
 二人でいるときは常に一緒にいたがるようになってきたんだもの。僕が思うのもなんだけど・・・俗にいう恋人関係でないんだからね。
 この位の年齢の親子、兄弟でもこんなに近くはならないだろう。だけども僕等二人には嫌悪感は全くない。
 恥ずかしいときは時折あるんだけどね。なんか妙な間になるときがある。お互いに踏み込みたいけど踏み込めないような感じ。
 僕は僕がまだ色々分かっていない。記憶が戻ってないからだ。少しでも戻れば考えようもあるのだけど。どうにも戻らないんだ。これについてはもどかしい。
 だけど今はこの場所で生活していくのが最優先だ。それができずにあれこれ考えたりしてもね。
 なんだけど、今は周辺の邑が存続の危機にあるようだ。僕は現地を見ていないから状況が全く分からない。
 今の所ソニヤさん、アイナさん、ライラさんからの話だけだ。彼女達は嘘はつかない。特にソニヤさんはキュメネ邑で襲撃を受けた当事者だ。あの様子で嘘などある筈がない。
 そして僕達はそのキュメネ邑に向かうのだ。周辺の邑の状況が分からないのに、この岩場で生活が確保できるかも怪しい。危険ではあるけど、やはり知っておかないといけない。
 うん。頑張ろう。
 

 しばらくのんびりとした時間を過ごして僕達は起床する。食事は昨日から採集している木の実や果物。昨日獲った川魚は軽く焼いて持ち運ぶ。今日の移動中に食べる予定。
 エリナさんの助言もあってキュメネ邑にはお昼位に確認する予定だ。なんでもキュメネ邑は牧畜の邑でお昼は邑人は皆休んでいるそうだ。
 夜明け前から働きお昼前に休んで夕方に働くパターンなんだと。だからお昼に様子を見れば分かりやすいのでは、と助言してくれたんだ。
 これもエリナさんの知識からなんだけどこの岩場からキュメネ邑までは近いらしい。走れば鐘一つ分(4時間)の距離なんだって。これはかなり近い。やっぱり周辺の安全確認は必要だ。

 出かける準備を整えてからキュメネ邑に向かう。
 キュメネ邑はこの岩場から南西の方角で途中に川がある。上流のほうが浅いから最初は西に向かって川を渡ったら川沿いに進めばいいとの事。これはソニヤさんの助言。
 エリナさんもソニヤさんの助言を全面的に賛成みたい。僕は何も分からないから道順については従うだけ。
 僕の主な役目はエリナさんの安全確保だ。今回はエリナさんと一緒に行動する。エリナさんは戦う力は無い。護身程度の嗜みはあるそうだけど戦力として数えないで欲しいと言われている。
 何かあれば僕の異能を使って危機を回避するのだ。勿論キュメネ邑の確認が終われば異能を使った超速で戻る予定だ。
 危険な事は分かっている。でも今は一人で生きてくんじゃないんだ。エリナさんの安全が確保できなければ意味がない。この岩場が無理なら遥か北の邑を目指すのも良い。
 僕は僕の意思で行動している。誰かに言われるだけでなく自分で考えて判断している。
 これが良い判断なのかは記憶の無い僕には判断ができない。でも何もしないで襲われるのはまっぴらだ。
 ならば可能な限り相手の情報を知らないといけない。

 さて何が分かるのか。不安が多いけどやっぱり動かないと。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...