42 / 57
39.どうしてこうなってしまったの~
しおりを挟むA's eyes
私はかなり焦っている。
朝早くからイキシ邑を出てお昼ごろにケイくんがいる岩山の洞穴に到着したのに。
なぜかケイくんとリナという女性がいなかった。最初は周辺に出掛けているのかと思ったのだけど。それならリナさんはこの洞穴にいるはずだわ。
となると二人で出かけている事になるのだけど。この洞穴を放棄する訳が無いと思うのよね。
私を待っていると約束してくれたし。洞穴内も荒らされていないし。食事を摂った形跡もあったし。
そうなるとどこに出掛けたのかしら。嫌な予感しかしない。
もしかしたらキュメネ邑へ様子を見に行っているかも。だってこの岩山からキュメネ邑は意外と近いのよ。最近の状況から考えると様子を見に行ってしまったかも。
とりあえずお母様とロッタは洞穴内で休んでもらう事にした。移動に同行してもらった分家の男の子に念のため警戒をお願いしておいた。
私は全力でキュメネ邑に向かう。
ケイくん達の足跡を辿りながら走る。私の異能”追跡”は狩りの獲物を探す能力だ。これは人間にも応用できるの。だから簡単に追跡ができるだ。
新しい足跡を見つけたら予想通りキュメネ邑方向に向かっているんだもの。相手の正体はまだ分かっていないのに。万が一があったらどうするの?
とにかく無事を確認しないと。
ある程度追跡したらキュメネ邑が見えて来た。やっぱりだわ。
またひたすら追いかける。・・・見えた!ケイくん!
え?誰?あの男達は?
何か争っている、というか戦っているみたい。
一人倒したわ!凄い!ケイくん強いじゃない!
ああ、でも凄い怪我をしているわ。
早く助けないと!
そういえばリナさんはどこに?二人でキュメネ邑に向かっていたのよ。足跡はケイくんの近辺まで続いているし。どこかに隠れているのかしら?
あれ?男達が消えた?
え?ケイくんが倒れてしまった。何かが頭にぶつかったような感じで倒れる。いやだ!大丈夫よね!
でもどこから攻撃されたの?
遠距離攻撃!
私は矢をつがえながら不審者を探す。その間にもケイくんは攻撃を受けている。意識を無くしているのか攻撃を受け続けている。まずいわ!
焦る気持ちを抑えながら探す。
いた!
キュメネ邑の物見櫓から投擲をしている男を見つけた!
遠い・・・。普通の人間が投げれる距離じゃない。明らかに異能を持っている。
どれだけ異能持ちがいるの?
その間にも近くにいる男達はケイくんに集中して足蹴にしている。あれはもういじめよ!
ケイくんを助けなきゃ!
でも遠距離攻撃を封じないと。あれだけの距離で正確に攻撃してくるのは明らかに見えている。もしかしたら私も気づかれるかもしれない。
物見櫓から攻撃している男はどういう人かは分からなくていいわ。詮索しても意味はないし。明らかに投擲でケイくんを殺そうとしている。
そんな男に容赦をする必要性を感じない!
でもこの距離だと私の弓では殺傷能力は低いわね。少なくても投擲を防げればよい。相手は驚いたことに腕を振って投げている。本当に信じられない距離だわ。だから腕を封じればいいのよ。
片膝で射的体勢を取る。
素早く狙いを定めて矢を放つ。
続けて次の矢を放つ。
更に放つ。
命中確認は後で!
次は逃げる準備よ!
ケイくんを担いで逃げる所は見られたくない。
狩猟用に持っている煙玉をつかって身を隠して逃げましょう。
これは半径五十メートルの範囲で煙が広がる煙玉。
これを周辺に投げればそう簡単に視認はできないはずよ。
ケイくんは未だに男達の攻撃を受けている。気を失っているのか抵抗はしていない。不安しかないわ。
あ?誰か出て来た。
・・・リナさん!
あの窪みに隠れていたの!でも、多分だけどリナさんは戦う能力はないはずよ。それでも助けに行こうとしているの?
無理よ!危険よ!
え?
どういう事?
リナさんが投げた何かが男の一人に当たったのだけど。信じられないくらいダメージがあったみたい。のけ反って倒れたわ。
え?
どういう事?
リナさんって戦う力があったの?
いいえ、そもそもケイくんも同じだわね。
ケイくんは戦う力が無いと思っていたわ。でも、さっき勝ったのは見たわ。邑の男達には敵わないけど戦う力自体はあったということなのよね。
戦える根拠があったからケイくんはキュメネ邑に向かったのかもしれないわ。
でも、このあたりの追及は後よ!
まずは助けないと。
リナさんの攻撃で男達三人は狼狽しているようにも見えるわ。あ、誰かがリナさんに手をだしたわ!
急がないと!
その前に邑の物見櫓からの投擲はどうなったのかしら。攻撃がくるなら簡単に近づけないもの。
・・・今の所攻撃はなさそう。櫓にも人は見えないわね。私の矢が相手に当たるかまでは分からなかったけど近くには届いたはずだし。
そもそも倒すより威嚇が目的だから。
こちらからの攻撃があると分かれば攻撃の手数も少なくなるはずだわ。
とりあえず上手くいったかもしれないわ。
その隙に逃げないと。
ケイくん達に目を戻すと・・・あれ?
男達が居なくなっているわ。どういうこと?
ケイくんとリナさんは二人とも倒れているわ。リナさんは起き上がってケイくんの元に向かっているようね。
男達だけいなくなっている。
なぜ?警戒すべきなのかもしれないけど。
私はチャンスだと思う。
ここが逃げるチャンス!
煙玉を更に着火。
そして投げる。
コロコロと転がり煙が立ち込めていく。
うん、周辺に十分な煙が充満できたわ。
煙玉はまだあるわよ。
逃げながらも使えばこちらを容易に補足できないと思うけど。敵は異能持ち。油断はできないわね。
ケイくんの救出が最優先だわ。リナさんが側にいるけど手当の心得はあるのかしら?
二人に警戒されれないように声を掛けながら近づく。
「ケイくん。リナさん。助けに来たわ。私はアイナよ。ソリヤ家のアイナ。ここはとても危ないわ。だから逃げるわよ」
リナさんはちょっと驚いたように肩をピクリとして、慌ててフードを被りなおしたわ。それを確認してからフードの隙間から私を確認してくる。
私を見てコクリと頷いてくれた。敵認識されなくてよかったわ。洞穴内での対面は相当警戒されていたから。ちょっと不安だったのよね。
でも、まだ顔は隠すのね。多分だけどケイ君には見せているのよね。一体何を隠しているのやら。でも後ろから長い綺麗な金髪を見れたわ。
「ケイくんの様子はどう?」
「・・・重傷です。ですが歩くのは問題ないようですわ。意識も先程戻りましたので。一応本人も大丈夫と言っています」
「そう、わかったわ~。ケイくんは私が支えながら逃げるわね。リナさん。体力は大丈夫?悪いけど私はケイくんに集中するから、あなたまで支えるのは難しいわよ」
「だ、大丈夫です。最悪私は置いて行ってもらっても構いません。ケイ君を助ける事を優先としてください」
「それで良いの?あなたのペースで逃げる事も可能だと思うけど」
「いいえ、不要ですわ。必死でついて行きますのでペース配分はお任せします」
・・・驚いたわ。
自分は置いて行ってもいいなんて。ケイくんを優先するという気持ちは一緒なのね。
いいでしょう。あなたも可能な限り助けてあげるわ。
いつのまにかケイくんは私を見ている。少し目は虚ろだけど、確かに意識はきちんとしているようね。ああ、血が沢山流れているわ。本当に大丈夫かしら?
全くよ。本当に無茶するわ。
「ア、アイナさん。・・・どうしてここに?」
「その説明は後よ~。まずはここから逃げないと」
「は、はい。そうですね。僕はまだ体フラフラしています。だけど歩く事なら大丈夫だと思います。暫くすれば早足くらいまでなら回復できるかも」
「元気で結構よ~。でも、無理は禁物ね。見ての通り今は煙で満たしたから逃げても気づかれないわ。でも、急いで逃げるわよ」
ケイくんに手を貸して立ってもらう。確かにふらついているけど。歩けない程じゃないわね。うん、頑張って逃げましょう。
リナさんもきちんとついてきてね。
それにしてもこの二人の行動力を見くびっていたわ。
何が元で決断したのかきちんと聞かないとね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる