全てを失った僕は生きていけるのだろうか?

ナギサ コウガ

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39.どうしてこうなってしまったの~

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A's eyes

 私はかなり焦っている。
 朝早くからイキシ邑を出てお昼ごろにケイくんがいる岩山の洞穴に到着したのに。
 なぜかケイくんとリナという女性がいなかった。最初は周辺に出掛けているのかと思ったのだけど。それならリナさんはこの洞穴にいるはずだわ。
 となると二人で出かけている事になるのだけど。この洞穴を放棄する訳が無いと思うのよね。
 私を待っていると約束してくれたし。洞穴内も荒らされていないし。食事を摂った形跡もあったし。
 そうなるとどこに出掛けたのかしら。嫌な予感しかしない。
 もしかしたらキュメネ邑へ様子を見に行っているかも。だってこの岩山からキュメネ邑は意外と近いのよ。最近の状況から考えると様子を見に行ってしまったかも。
 とりあえずお母様とロッタは洞穴内で休んでもらう事にした。移動に同行してもらった分家の男の子に念のため警戒をお願いしておいた。
 私は全力でキュメネ邑に向かう。
 ケイくん達の足跡を辿りながら走る。私の異能”追跡”は狩りの獲物を探す能力だ。これは人間にも応用できるの。だから簡単に追跡ができるだ。
 新しい足跡を見つけたら予想通りキュメネ邑方向に向かっているんだもの。相手の正体はまだ分かっていないのに。万が一があったらどうするの?
 とにかく無事を確認しないと。
 
 ある程度追跡したらキュメネ邑が見えて来た。やっぱりだわ。
 
 またひたすら追いかける。・・・見えた!ケイくん!
 え?誰?あの男達は?
 何か争っている、というか戦っているみたい。
 一人倒したわ!凄い!ケイくん強いじゃない!
 ああ、でも凄い怪我をしているわ。
 早く助けないと!

 そういえばリナさんはどこに?二人でキュメネ邑に向かっていたのよ。足跡はケイくんの近辺まで続いているし。どこかに隠れているのかしら?
 あれ?男達が消えた?
 え?ケイくんが倒れてしまった。何かが頭にぶつかったような感じで倒れる。いやだ!大丈夫よね!
 でもどこから攻撃されたの?

 遠距離攻撃!

 私は矢をつがえながら不審者を探す。その間にもケイくんは攻撃を受けている。意識を無くしているのか攻撃を受け続けている。まずいわ!
 焦る気持ちを抑えながら探す。
 
 いた!
 キュメネ邑の物見櫓から投擲をしている男を見つけた!
 遠い・・・。普通の人間が投げれる距離じゃない。明らかに異能を持っている。
 どれだけ異能持ちがいるの?
 その間にも近くにいる男達はケイくんに集中して足蹴にしている。あれはもういじめよ!
 ケイくんを助けなきゃ!
 でも遠距離攻撃を封じないと。あれだけの距離で正確に攻撃してくるのは明らかに見えている。もしかしたら私も気づかれるかもしれない。
 物見櫓から攻撃している男はどういう人かは分からなくていいわ。詮索しても意味はないし。明らかに投擲でケイくんを殺そうとしている。
 そんな男に容赦をする必要性を感じない!
 でもこの距離だと私の弓では殺傷能力は低いわね。少なくても投擲を防げればよい。相手は驚いたことに腕を振って投げている。本当に信じられない距離だわ。だから腕を封じればいいのよ。
 
 片膝で射的体勢を取る。
 素早く狙いを定めて矢を放つ。
 続けて次の矢を放つ。
 更に放つ。
 命中確認は後で!
 次は逃げる準備よ!

 ケイくんを担いで逃げる所は見られたくない。
 狩猟用に持っている煙玉をつかって身を隠して逃げましょう。
 これは半径五十メートルの範囲で煙が広がる煙玉。
 これを周辺に投げればそう簡単に視認はできないはずよ。

 ケイくんは未だに男達の攻撃を受けている。気を失っているのか抵抗はしていない。不安しかないわ。
 あ?誰か出て来た。
 ・・・リナさん!
 あの窪みに隠れていたの!でも、多分だけどリナさんは戦う能力はないはずよ。それでも助けに行こうとしているの?
 無理よ!危険よ!
 え?
 どういう事?
 リナさんが投げた何かが男の一人に当たったのだけど。信じられないくらいダメージがあったみたい。のけ反って倒れたわ。
 え?
 どういう事?
 リナさんって戦う力があったの?
 いいえ、そもそもケイくんも同じだわね。
 ケイくんは戦う力が無いと思っていたわ。でも、さっき勝ったのは見たわ。邑の男達には敵わないけど戦う力自体はあったということなのよね。
 戦える根拠があったからケイくんはキュメネ邑に向かったのかもしれないわ。
 
 でも、このあたりの追及は後よ!
 まずは助けないと。
 
 リナさんの攻撃で男達三人は狼狽しているようにも見えるわ。あ、誰かがリナさんに手をだしたわ!
 急がないと!
 その前に邑の物見櫓からの投擲はどうなったのかしら。攻撃がくるなら簡単に近づけないもの。
 
 ・・・今の所攻撃はなさそう。櫓にも人は見えないわね。私の矢が相手に当たるかまでは分からなかったけど近くには届いたはずだし。
 そもそも倒すより威嚇が目的だから。
 こちらからの攻撃があると分かれば攻撃の手数も少なくなるはずだわ。
 とりあえず上手くいったかもしれないわ。
 その隙に逃げないと。
 ケイくん達に目を戻すと・・・あれ?
 男達が居なくなっているわ。どういうこと?
 ケイくんとリナさんは二人とも倒れているわ。リナさんは起き上がってケイくんの元に向かっているようね。
 男達だけいなくなっている。
 なぜ?警戒すべきなのかもしれないけど。
 私はチャンスだと思う。
 ここが逃げるチャンス!

 煙玉を更に着火。
 そして投げる。
 コロコロと転がり煙が立ち込めていく。
 うん、周辺に十分な煙が充満できたわ。
 煙玉はまだあるわよ。
 逃げながらも使えばこちらを容易に補足できないと思うけど。敵は異能持ち。油断はできないわね。
 ケイくんの救出が最優先だわ。リナさんが側にいるけど手当の心得はあるのかしら?
 二人に警戒されれないように声を掛けながら近づく。

「ケイくん。リナさん。助けに来たわ。私はアイナよ。ソリヤ家のアイナ。ここはとても危ないわ。だから逃げるわよ」

 リナさんはちょっと驚いたように肩をピクリとして、慌ててフードを被りなおしたわ。それを確認してからフードの隙間から私を確認してくる。
 私を見てコクリと頷いてくれた。敵認識されなくてよかったわ。洞穴内での対面は相当警戒されていたから。ちょっと不安だったのよね。
 でも、まだ顔は隠すのね。多分だけどケイ君には見せているのよね。一体何を隠しているのやら。でも後ろから長い綺麗な金髪を見れたわ。

「ケイくんの様子はどう?」
「・・・重傷です。ですが歩くのは問題ないようですわ。意識も先程戻りましたので。一応本人も大丈夫と言っています」
「そう、わかったわ~。ケイくんは私が支えながら逃げるわね。リナさん。体力は大丈夫?悪いけど私はケイくんに集中するから、あなたまで支えるのは難しいわよ」
「だ、大丈夫です。最悪私は置いて行ってもらっても構いません。ケイ君を助ける事を優先としてください」
「それで良いの?あなたのペースで逃げる事も可能だと思うけど」
「いいえ、不要ですわ。必死でついて行きますのでペース配分はお任せします」

 ・・・驚いたわ。
 自分は置いて行ってもいいなんて。ケイくんを優先するという気持ちは一緒なのね。
 いいでしょう。あなたも可能な限り助けてあげるわ。
 いつのまにかケイくんは私を見ている。少し目は虚ろだけど、確かに意識はきちんとしているようね。ああ、血が沢山流れているわ。本当に大丈夫かしら?
 全くよ。本当に無茶するわ。
 
「ア、アイナさん。・・・どうしてここに?」
「その説明は後よ~。まずはここから逃げないと」
「は、はい。そうですね。僕はまだ体フラフラしています。だけど歩く事なら大丈夫だと思います。暫くすれば早足くらいまでなら回復できるかも」
「元気で結構よ~。でも、無理は禁物ね。見ての通り今は煙で満たしたから逃げても気づかれないわ。でも、急いで逃げるわよ」

 ケイくんに手を貸して立ってもらう。確かにふらついているけど。歩けない程じゃないわね。うん、頑張って逃げましょう。
 リナさんもきちんとついてきてね。
 それにしてもこの二人の行動力を見くびっていたわ。
 何が元で決断したのかきちんと聞かないとね。
 
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