全てを失った僕は生きていけるのだろうか?

ナギサ コウガ

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50.   俺がボスだ!

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KK's eyes

 
「で、降伏はしそうな雰囲気なんか?」
「まだじゃない?向こうもそんな簡単には判断できないと思うよ。何しろ邑全部が誰かの支配下におかれることになるんだから」
「ちっ!苛々するぜ。力じゃ敵わないんだ。被害が大きくなる前に降伏すりゃいいんだよ。前の邑もそうだ。勝てないのなら諦めて従えばいいだろうが」
「まあ、もう少し待とうよ。会長の指示は力は極力使わず威嚇程度にして降伏させる方針なんだからさ。一応交渉は僕が任されているからもう少し待ってみてよ」
「だからと言ってこんな野っ原で何もしないで待つのかよ!俺はいなくてもいいんだろ?面白くないからどっかで狩りしてくるぞ!」
「だ、ダメだよ。万が一邑から反抗があったら魁君が居ないと。僕じゃ全然ダメだからさ。それに狩りってなにすんのさ。どこかの岩場のように無差別に殺さないでよ」
「けっ!いいじゃんかよ。あんな岩場に一人でいるほうが悪い。試し撃ちのいい的だったぜ」
「本当に勘弁してよ。この辺りでそれやられたら交渉にならないから」
「そん時は邑人全員皆殺しにすりゃいいだろ。従わないヤツはどうせ要らないんだ」
「それじゃダメなんだって。なるべく邑をそのままの状態で支配下に置かないと。お願いだからもう少し待ってて」
「ちっ!本当に面倒くせぇ。わぁったよ。夕方には俺の拠点に戻るからな。それまで待ってやる」

 くそっ!
 外で暴れられると思ったが殆ど何もできちゃいない。邑の外壁に一発ぶっ放して終わりだろうが。戦闘も何もない。全く退屈だぜ。
 早く俺の拠点であるクージ邑に帰りたいもんだ。目の前のネルヤ邑の連中も降伏する気はないようだ。俺の異能で外壁を破壊してやったんだぞ。勝てる訳がないと分かっているだろうが。諦めが悪いってんだ。
 真白のヤツもさっさと交渉をまとめろよな。困った顔をする前にさっさと終わらせて来いってんだ。
 俺は知っているんだぞ。真白のヤツは会長の命令で動いているんだ。俺の命令じゃヤツは本当は動かない。俺と一緒に行動しているが俺の命令じゃ動かないのは分かっている。
 
 所詮、会長の指示でしか動かないってことだ。俺の事はどうだっていいと思っているんだ。
 
 苛々するぜ。
 
 しかしだ。どんどん話が変わって来るな。
 どこが優雅な生活ができるんだよ?
 ブルーノが言うようにやっぱり俺は騙されているのか?

 忌ま忌ましい。
 
 どうやら会長の使いが来ているようだ。真白が交渉状況を報告している。
 部分的に話が聞こえるんだが・・・今後の交渉は使いのヤツが交代して行うようだな。俺達はお払い箱のようだ。やれやれだ。
 俺達は拠点のキュメネ邑に戻るように指示らしい。そこは俺の拠点じゃないんだがな。
 
 くそっ!
 誰が素直に戻るかっての。
 しかし面倒だな。クージ邑に戻って相談してみっか。
 このままじゃ俺は会長のパシリで終わってしまう。
 クージ邑の長であるあいつとなら俺の今後は約束されているからな。
 ふん。会長は知らんだろうな。あの女は俺の手中にある。あれは俺のモノだ。会長に絶対に渡すものか。
 俺の力とブルーノの知恵、それに従属する兵隊がある。これがあれば周辺の邑は俺達が先に制圧できるはずだ。今の交渉も俺の異能ありきでの交渉だ。有無を言わさず降伏させられるからな。
 第一、キュメネ邑の占拠さえ俺の力が無ければ何もできなかったんだ。
 俺が居ないと会長は何一つ力押しできやしない。クージ邑の占拠だって俺の異能が起点になっているんだ。俺の異能が一番なんだ。
 会長は特殊な異能を持って粋がっている。所詮三流の使い手しか生み出せないクソ異能だ。俺に敵うヤツは誰一人いやしない。
 結局は俺様を無視しては何もできないんだ。俺を放置して自分主導で進めるのが気に入らない。
 ならば俺は好きにしてもいいだろう。俺がボスになってもおかしくない。そうだよ。それが一番いいじゃねぇか。
 ふん!
 ほえ面拝むのが楽しみだせ。

 となると問題は真白の扱いだ。こっちに向かっているがどう思っているか確認しておかないとな。
 実は俺の異能は真白の異能とは相性が悪い。盾と矛とはよく言ったもんだ。
 できれば真白は俺の仲間としたい。チビでいかつい顔の坊主頭のくせにメンタル柔なんだよなぁ。顔だけで何人も人殺している顔しているくせに。
 こいつはなんで俺に靡かないんだ。十分にメリットは伝えているんだぞ。現に使者のヤツは俺達にビビりまくっている。
 ビビりとの話が終わったようで真白は俺のほうに向かっているが、使者のヤツはでっけぇため息ついてやがる。殺されると思っているのかね。チキンが!


「キュメネ邑本部から指令が来たよ。話は聞いていたかい?」

 本当にコイツの声と言葉遣いは真反対なのにな。ま、知っているヤツが知っていればいいか。意外と真白は誤解されているからな。俺はそこを利用してコイツと動いているんだ。

「はっ、聞こえるわけないだろ?邑の連中を皆殺しにして良いってか?」
「そんな訳ないじゃないか。交渉役は交代だって。僕達はキュメネ邑本部に戻るように指示されたよ。すぐに戻ってくるようにとの事らしい」
「なんだそりゃ。ここの交渉も終わらないまま戻れってかよ。向こうで何か問題が出たのか?」
「そこまでは分からないな。戻れという事だけみたいだよ」
「ガキの使いじゃあるまいし。俺がここにいると迷惑なのかよ」
「違うと思うよ。適材適所の判断じゃないかな?キュメネ邑も完全に掌握できないらしいからね。魁君の力が必要なんじゃないかな?」
「どこがだよ。どっちかというとお前の異能だろうが。まあ、いいさ。戻ってやるよ。但し、今日は遅いからクージ邑に泊まるぞ」
「え?急げば間に合うと思うんだけど」
「緊急じゃないんだろ?クージ邑の連中とは俺は上手くやっているからな。友好を深めてから戻るさ。クージ邑と同盟結べたら兵隊も増えるし食料もちったあマシになるってもんだ。いくぞ!」
「それって魁君独自に交渉進めていないよね?」
「なんだ文句あるのかよ?会長がクージ邑と交渉しないからだろうが。近くに邑があって敵から味方に変わるなら誰が交渉したって問題ないだろうが」
「それはそうだけど。本当に何か進めていない?」

 なんだ?やけに粘りやがるな。こいつ何か掴んでいるのか?その手の話は全くしていないんだが。

「よくわからねぇな。親交深めるだけだっての。今日は遅いから近くのクージ邑に泊まりたいだけだ。ついでに近隣の情報も拾えればと思っているだけさ」

 なんか変だな。本当に粘りやがる。周りに流されるヤツなのに偶に頑固になるんだよな。何が気になるんだ?

「・・・不破さんの事だけど。彼女は何処にいるか知ってない?」
「はぁ?なんだそりゃ。お前何が言いたいんだ?」
「不破さんが行方不明でしょ?会長のほうで探索隊も編制しているらしいんだけど。まだ見つかっていないみたいなんだよ。何か知らない?」

 急にそんな話をするのは妙だな。今まで一回も話題にもならなかったんだが。使者の野郎何か吹き込んだのか?だが俺に繋がる証拠は無い。何しろ俺は直接動いてないからな。

「そうなのか。逃げたヤツは何人かいるかは聞いたような気がするが。根性無しが残っても役に立たないだろ?実際に逃がしたのも会長だ。そんで探索したのも会長なんだろ?俺は一切関係ない。だろ?」
「そうだとさ。クージ邑が周辺に人を使って何か探しているらしいんだよ。魁君はクージ邑の長から何か聞いていない?」
「はあ?普通に周辺調査じゃねぇのか?そもそも邑の方針は俺は知らんぞ」


 ・・・こいつ。何か掴んでいるのか?それなりに根拠は無いような話しぶりだな。
 ネタ元は真白というより会長か。やっぱりさっきの使者が何か情報を真白に伝えたんだろうな。
 ケッ!
 どうやら俺は本当に信頼されていないようだな。これからは特上の注意が必要なようだ。
 ばれないようにしないとな。
 問題は真白の同行をどこまで許すかだな。俺に従わないのなら口を塞ぐしかなんだが。面倒なんだよな。

 まぁ、こんな事を考えるのは俺の仕事じゃない。クージ邑にいって策を練らせるに限る。
 さっさと戻るか。

 
UM's eyes

 クージ邑への移動中。魁君は珍しく無言だった。
 やはりクージ邑の長と何か企んでいるのかも。会長も注意するようにとの指示があったけど。
 このような状況で全員が纏まって行動しないといけないのに。なんでこのように勝手に動く人が多いんだろう。
 元々魁君は団体行動ができない。所謂、はみ出し者、だ。だけど仲間の中では異常に目立つ異能を所持している。それに気分を良くして一緒に行動してくれているだけなのだろう。
 会長がトップにいる事が気に入らない発言が多くなっているの。それが、その証拠だ。
 
 魁君は一体何を企んでいるのだろう。
 不破さんについても魁君が何か手を回している可能性を会長は推測している。流石にそれは考えすぎだと僕は思うのだけど。
 正直言って会長の不破さんに対する妄執は異常だ。どうしてそこまで彼女に拘るのか全く理解できない。
 不破さんは学校の成績は優秀でスポーツもかなりできる。生徒会の副会長をやっている位だから人望もあるし、誰からも好かれていると思う。
 そんな不破さんを会長が欲しいと思うのは、まあ分かるかな。だけどあそこまで本人に嫌われているんだよ。見込みは全く無いのは僕にですら分かるのに。何故諦めない?
 そもそも不破さんが男嫌いになった原因は会長にあるというのに。本人は全く気づいていないんだ。もしくは気づいていないフリなのかな?
 そこまで彼女を欲するのはなんでだろう?
 全く分からない。考えつかない。
 思いが通じない相手を追いかける事にどんな理由があるのか。
 そして同じような執念を僕は魁君にも感じるのだ。
 不破さんが邑から逃げたのも魁君絡みだと会長は断定している。本当かな?真偽は僕にはよく分からない。何しろ証拠が無い。そう考えるのが分からない。
 加えてクージ邑の長と共謀している可能性があると会長は言っている。本当かな?
 魁君に謀略は似合わない。そんな事を考える思考が無い。なんでも力で切り開くタイプだ。
 クージ邑の長を僕は良く知らない。野盗と関係しているとかキナ臭い人物だから要注意だという会長情報くらいしか分からない。
 面倒な事にならないといいのだけど。
 
 とにかく今は魁君から離れないようにしないと。
 別に会長のために動いているわけじゃない。だけど最悪魁君が離反してしまうと収拾がつかない。僕らの最大火力が魁君なんだ。機嫌を悪くする訳にはいかない。
 実際に魁君はそんなに悪い人じゃない。話せばわかってくれる事も結構多い。イヤな事は殺さんばかりの殺意を振りまく事もあるのだけど。基本はいい人だ。と、思う。他の人は違うみたいだけど。
 こんな所に来てしまった以上全員で協力して生きていかないといけないと思うんだ。会長ももう少し柔軟に魁君の相手をして欲しいな。そうであれば僕が板挟みにならずにすんだのに。

 とにかくクージ邑での魁君の動向は要注意だ。
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