24 / 64
3章 それぞれの変化
3-12 気遣い
しおりを挟む
昼休み。
駿は購買でパンを買い、倉庫裏へ向かった。
先に来ていた果奈が、壁に背を預けて空を見上げている。
「待った?」
「ううん。今来たところ」
本当は少し前から居たのだろう。けれど、それ以上は聞かない。
座れるところまで移動し、並んで腰を下ろす。
校舎のざわめきが、ここまで来ると遠い。
「……教室で一緒に食べるのは、流石に無理だよな」
ぼそりと呟く。
果奈はすぐに顔を上げた。
「無理。絶対無理」
「そんなに?」
「だって、見せつけてるみたいで嫌」
少しだけ頬が赤い。
その横顔を見ながら、小さく笑ってしまう。
「でもさ。場所はどこでもいい。こうして隣にいられるなら、それだけで良い」
言ったあとで、少しだけ気恥ずかしくなる。
果奈は一瞬固まり、そっぽを向いた。
「……急にそういうこと言うの、ずるい」
「変なこと言った?」
「言った」
その声は小さいが、嬉しさを隠しきれていない。
その時だった。
――ガサ、と足音がする。
2人同時に振り向く。
「……誰かいる」
立ち上がり、音のした方へ歩み寄る。
角を曲がった瞬間、背中が見えた。
「直己!」
呼ばれた本人はぴたりと止まり、ゆっくり振り返る。
「……バレたか」
申し訳なさそうに片手を立てて近づいてきた。
「何してんだよ」
「いや、その……ちゃんと元通りになってるか気になって」
呆れて、ため息が出てしまう。
「親かよ」
「悪かったって。後で、ジュース奢るから許してくれよ」
そこへ果奈がやって来る。
「どうしたの?」
事情を聞き終えた果奈は、じっと直己を見た。
「最低」
直己は固まる。
だが、次の瞬間。
「……でも、ありがとう」
「え?」
「私がいない間、駿の背中押してくれたんでしょ?」
直己は目を逸らす。
「別に、大したことしてねぇよ」
「してるよ」
果奈ははっきり言った。
直己は観念したように笑う。
「もう覗かない。約束する」
「次やったら本気で怒るからね」
「はい」
軽く手を振って、直己は去っていった。
静けさが戻る。
少しだけ、空気が柔らかい。
「直己の親友として、今回の事はごめん」
「確かに、鈴木君がやっていた事は許せない」
「でも、私達の関係を見守ってくれる人が居るってことが知れて少し嬉しかった」
「いい友達だね」
「ああ」
チャイムが遠くで鳴り始める。
教室へ戻る道すがら、ほんの一瞬だけ指先が触れた。
握るわけでもなく、離れるわけでもない。
昼の光が、2人の影を短くしていた。
駿は購買でパンを買い、倉庫裏へ向かった。
先に来ていた果奈が、壁に背を預けて空を見上げている。
「待った?」
「ううん。今来たところ」
本当は少し前から居たのだろう。けれど、それ以上は聞かない。
座れるところまで移動し、並んで腰を下ろす。
校舎のざわめきが、ここまで来ると遠い。
「……教室で一緒に食べるのは、流石に無理だよな」
ぼそりと呟く。
果奈はすぐに顔を上げた。
「無理。絶対無理」
「そんなに?」
「だって、見せつけてるみたいで嫌」
少しだけ頬が赤い。
その横顔を見ながら、小さく笑ってしまう。
「でもさ。場所はどこでもいい。こうして隣にいられるなら、それだけで良い」
言ったあとで、少しだけ気恥ずかしくなる。
果奈は一瞬固まり、そっぽを向いた。
「……急にそういうこと言うの、ずるい」
「変なこと言った?」
「言った」
その声は小さいが、嬉しさを隠しきれていない。
その時だった。
――ガサ、と足音がする。
2人同時に振り向く。
「……誰かいる」
立ち上がり、音のした方へ歩み寄る。
角を曲がった瞬間、背中が見えた。
「直己!」
呼ばれた本人はぴたりと止まり、ゆっくり振り返る。
「……バレたか」
申し訳なさそうに片手を立てて近づいてきた。
「何してんだよ」
「いや、その……ちゃんと元通りになってるか気になって」
呆れて、ため息が出てしまう。
「親かよ」
「悪かったって。後で、ジュース奢るから許してくれよ」
そこへ果奈がやって来る。
「どうしたの?」
事情を聞き終えた果奈は、じっと直己を見た。
「最低」
直己は固まる。
だが、次の瞬間。
「……でも、ありがとう」
「え?」
「私がいない間、駿の背中押してくれたんでしょ?」
直己は目を逸らす。
「別に、大したことしてねぇよ」
「してるよ」
果奈ははっきり言った。
直己は観念したように笑う。
「もう覗かない。約束する」
「次やったら本気で怒るからね」
「はい」
軽く手を振って、直己は去っていった。
静けさが戻る。
少しだけ、空気が柔らかい。
「直己の親友として、今回の事はごめん」
「確かに、鈴木君がやっていた事は許せない」
「でも、私達の関係を見守ってくれる人が居るってことが知れて少し嬉しかった」
「いい友達だね」
「ああ」
チャイムが遠くで鳴り始める。
教室へ戻る道すがら、ほんの一瞬だけ指先が触れた。
握るわけでもなく、離れるわけでもない。
昼の光が、2人の影を短くしていた。
0
あなたにおすすめの小説
∞
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。
入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。
しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。
抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。
※タイトルは「むげん」と読みます。
※完結しました!(2020.7.29)
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる