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4章 実らせる為の一歩
4-5 私の王子様
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その日の夜。
試合の映像が、何度も頭の中で巻き戻る。
ベッドに仰向けになり、天井を見つめていた駿のスマホが震えた。
――果奈。
『今から電話しても大丈夫?』
珍しい。
胸が少しだけ跳ねる。
『大丈夫』
送った瞬間、着信。
「どうしたの?果奈から電話なんて珍しい」
「うん……ちょっと話したくて」
少し照れた声。
「今日ね、美生と料理の特訓してたの」
「へぇ。何作ったんだ?」
「肉巻きと、きんぴら」
一瞬、あの塩辛い肉巻きが脳裏をよぎる。
「へ、へぇ……」
「絶対、前の弁当思い出したでしょ」
「いや、そんなことないって」
電話越しに、くすっと笑う気配。
「でもね、今回はちゃんと上手くいったよ」
その一言に、胸が温かくなる。
「……そうなんだ」
少し間を置いてから、口に出す。
「美生に教わったとしても、2回目で出来たのはすごいと思う。
それにさ――」
言うつもりはなかったのに。
「俺のために頑張ってくれたの、普通に嬉しい。
次の弁当、今から楽しみにしてる」
言ってから、急に恥ずかしくなる。
沈黙。
……あれ?
「果奈? 聞こえてる?」
「う、うん。聞こえてる」
「その……楽しみにしててね」
「私、お風呂入らなきゃだから切るね。じゃあ、また明日!」
「う、うん。また明日」
通話が切れる。
急すぎないか……?
スマホを見つめたまま、しばらく動けなかった。
——その頃。
果奈は自分の部屋で、枕に顔を埋めていた。
(何してるの私……!お風呂なんてとっくの前に済ませてるじゃん)
耳の奥で、さっきの声が反響する。
『俺のために頑張ってくれたの、嬉しい』
顔が熱い。
(しかも私から電話したのに、何で先に切ってるのよ……)
枕をぎゅっと抱きしめる。
(そもそも、駿がいきなりあんなことを普通に言うのもどうなのかと思う。しかも、そういうことを言う時って、私が油断している時ばかりだし……油断していた私も悪いけど)
そして、1つの結論に辿り着く。
(でも、そこも駿の良いところなんだけどね)
ノックの音。
お母さんが部屋に入ってくる。
「そんなに驚いてどうしたの? 例の彼氏くんと電話?」
「ち、違うって!それよりもこんな時間にどうしたの?」
「翔太がね、『お姉ちゃんと寝たい!』って言って聞かないのよ。彼氏君と電話するなら、無理にとは言わないけど」
「分かった。後、いちいち彼氏の事を話題に出さないでよ」
「ごめん、ごめん。とにかく、翔太の元に行ってやって」
「は~い」
リビングに居る、翔太の元へ。
「お姉ちゃんと寝る」
眠たそうな声。
「こんなところで寝てないで、お姉ちゃんと一緒に自分の部屋に行くよ」
手をそっと引き、翔太の部屋のベットに2人で横になる。
「今日は特別だからね。小学生になったんだからお姉ちゃんと寝るのは卒業しないと駄目」
「嫌、まだお姉ちゃんと一緒に寝るもん」
翔太がくっついてくる。
これでも、保育園の時よりかは一緒に寝る回数は少なくなっていた。
「もう、しょうがないんだから」
即興の物語を語る。
王子様が、お姫様を助ける話。
「ふぁ~、話をしているこっちが眠くなっちゃった」
翔太はまだ微かに起きていた。
「お話、面白かった」
「ありがとう」
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なに?」
「お姉ちゃんにも王子様いるの?」
一瞬、迷わず浮かんだ顔。
「……いるよ」
「その王子様って、お話に出てきた王子様みたいに強い?」
「うん。でも、いつも強いわけじゃないの。
普段は普通の男の子で――」
少しだけ、笑う。
「でもね、私がピンチの時は、誰よりも強くなるの。
だから、私はその王子様が」
返事がない。
「……あれ?」
すう、と寝息。
「もう、聞いてないじゃん」
額をそっと撫でた。
翔太が起きないように、そぉっと部屋を出て、自分の部屋に戻る。
天井を見つめる。
(ちょっと待って……私、翔太に何言ってるの……)
顔が、また熱い
枕に顔を埋める。
電気を消した後も、しばらく眠れなかった。
――王子様の声が、耳から離れなくて。
試合の映像が、何度も頭の中で巻き戻る。
ベッドに仰向けになり、天井を見つめていた駿のスマホが震えた。
――果奈。
『今から電話しても大丈夫?』
珍しい。
胸が少しだけ跳ねる。
『大丈夫』
送った瞬間、着信。
「どうしたの?果奈から電話なんて珍しい」
「うん……ちょっと話したくて」
少し照れた声。
「今日ね、美生と料理の特訓してたの」
「へぇ。何作ったんだ?」
「肉巻きと、きんぴら」
一瞬、あの塩辛い肉巻きが脳裏をよぎる。
「へ、へぇ……」
「絶対、前の弁当思い出したでしょ」
「いや、そんなことないって」
電話越しに、くすっと笑う気配。
「でもね、今回はちゃんと上手くいったよ」
その一言に、胸が温かくなる。
「……そうなんだ」
少し間を置いてから、口に出す。
「美生に教わったとしても、2回目で出来たのはすごいと思う。
それにさ――」
言うつもりはなかったのに。
「俺のために頑張ってくれたの、普通に嬉しい。
次の弁当、今から楽しみにしてる」
言ってから、急に恥ずかしくなる。
沈黙。
……あれ?
「果奈? 聞こえてる?」
「う、うん。聞こえてる」
「その……楽しみにしててね」
「私、お風呂入らなきゃだから切るね。じゃあ、また明日!」
「う、うん。また明日」
通話が切れる。
急すぎないか……?
スマホを見つめたまま、しばらく動けなかった。
——その頃。
果奈は自分の部屋で、枕に顔を埋めていた。
(何してるの私……!お風呂なんてとっくの前に済ませてるじゃん)
耳の奥で、さっきの声が反響する。
『俺のために頑張ってくれたの、嬉しい』
顔が熱い。
(しかも私から電話したのに、何で先に切ってるのよ……)
枕をぎゅっと抱きしめる。
(そもそも、駿がいきなりあんなことを普通に言うのもどうなのかと思う。しかも、そういうことを言う時って、私が油断している時ばかりだし……油断していた私も悪いけど)
そして、1つの結論に辿り着く。
(でも、そこも駿の良いところなんだけどね)
ノックの音。
お母さんが部屋に入ってくる。
「そんなに驚いてどうしたの? 例の彼氏くんと電話?」
「ち、違うって!それよりもこんな時間にどうしたの?」
「翔太がね、『お姉ちゃんと寝たい!』って言って聞かないのよ。彼氏君と電話するなら、無理にとは言わないけど」
「分かった。後、いちいち彼氏の事を話題に出さないでよ」
「ごめん、ごめん。とにかく、翔太の元に行ってやって」
「は~い」
リビングに居る、翔太の元へ。
「お姉ちゃんと寝る」
眠たそうな声。
「こんなところで寝てないで、お姉ちゃんと一緒に自分の部屋に行くよ」
手をそっと引き、翔太の部屋のベットに2人で横になる。
「今日は特別だからね。小学生になったんだからお姉ちゃんと寝るのは卒業しないと駄目」
「嫌、まだお姉ちゃんと一緒に寝るもん」
翔太がくっついてくる。
これでも、保育園の時よりかは一緒に寝る回数は少なくなっていた。
「もう、しょうがないんだから」
即興の物語を語る。
王子様が、お姫様を助ける話。
「ふぁ~、話をしているこっちが眠くなっちゃった」
翔太はまだ微かに起きていた。
「お話、面白かった」
「ありがとう」
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なに?」
「お姉ちゃんにも王子様いるの?」
一瞬、迷わず浮かんだ顔。
「……いるよ」
「その王子様って、お話に出てきた王子様みたいに強い?」
「うん。でも、いつも強いわけじゃないの。
普段は普通の男の子で――」
少しだけ、笑う。
「でもね、私がピンチの時は、誰よりも強くなるの。
だから、私はその王子様が」
返事がない。
「……あれ?」
すう、と寝息。
「もう、聞いてないじゃん」
額をそっと撫でた。
翔太が起きないように、そぉっと部屋を出て、自分の部屋に戻る。
天井を見つめる。
(ちょっと待って……私、翔太に何言ってるの……)
顔が、また熱い
枕に顔を埋める。
電気を消した後も、しばらく眠れなかった。
――王子様の声が、耳から離れなくて。
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