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1章
Episode.3
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そして俺と双葉は喧嘩した。
殴ったのはあれきりでほとんど口喧嘩。
気づけは日は暮れていて最終下校時刻になったため俺らは和解もせずにそれぞれの家に帰った。
次の日、俺へのいじめはパタリとやんだ。
あの後イヴのことが気になってしばらくはネットサーフィンをしていた。
本当はイヴ本人に聞いた方が早かったのだがもうあれ以降イヴのことを見かけなくなったので仕方なくって感じだ。
でもイヴに関する情報はどこを探しても見当たらず、俺は最終手段に出た。
ネット上で「○ちゃんねる」などと呼ばれる電子掲示板だ。
俺はこのことでスレを立ててみた。
ちょっと経ってから確認してみるとかなり反応がよく、嘘か誠かまではわからないものの同じ経験をしたというスレ民までいた。
「ま、もう俺には関係ないことか。」
そう思い俺はそっと掲示板を閉じた。
「もう、木坂のもとに行くのはやめにしよう。」
「…」
「はぁ…」
「やだねぇ。自殺って言葉を聞くたびにあの日のことを思い出すのほんとやだ。」
私には妹がいた。
可愛くて優しくて自慢の妹。
でも両親は嫌いだった。
私が物心つく前から変な宗教に夫婦そろってどっぷりはまっていて私がやめろと言ってもやめる気配がしない。
今考えてみれば私たちの名前も宗教がらみの名前だろう。
私が「聖良」、妹が「美聖」。
別に変なキラキラネームとかではないから不満はないが、宗教がらみということころが私は嫌だった。
そんな生活を送っていたある日、妹は私が中学2年生の時に睡眠薬の過剰摂取でこの世を去った。
その時のことは今でも覚えている。
今思えばこれが私にやってくる悪夢の前兆だったのだろう。
「おねーちゃん!」
「美聖、どうしたの?」
「あのねあのね、お友達からね、お菓子いっぱいもらったんだけど一緒に食べない?」
「でもお菓子は…」
「今日はパパとママが「すうはい?」っていうのに行くから明日の朝まで帰ってこないよ!」
「じゃあ、食べた後にごみをしっかり片付けるなら食べようか。」
「やったぁ!」
うちでは私が幼稚園の頃から市販のお菓子を食べることを宗教的理由で禁じていて食べてしまうとDVを伴うほどの虐待を両親から受けていた。
だからお菓子を食べるときは友達の家か、両親が教祖指定の礼拝堂に崇拝をしに行くときに家に持ち込み、帰ってくる頃には初めからお菓子なんてなかったような状態にしておくのがマイルールだった。
そしてこの日もいつも通り2人でお菓子を食べていた。
「わぁ!このお菓子初めて食べたけどレモンの味する!これ好き!」
妹が食いついたのはレモン味のポリポリ噛んで食べるタブレット菓子だった。
「美聖、こっちはねそのレモンのと一緒だけどこれはヨーグルトの味がするんだよ。」
「えっ!おねーちゃんほんと!?食べる!食べる!」
それから妹はこのタブレット菓子とラムネばかりを食べていた。
「おねーちゃん、おいしかったねぇ。また食べたいね~」
「今度はお姉ちゃんが駄菓子屋さんでいっぱい買ってくるからね。」
「じゃあじゃあ、またこのレモンとヨーグルトのやつ買ってきて!また食べたいの!」
「はいはい。」
妹のこの執着心に圧倒されながらも笑顔で2つ返事した。
食べ終わった後に2人で学校の宿題をしていたところ急な眠気が襲ってきた。
「おねーちゃん。美聖、眠いよぅ…」
「私も眠いや。2人でちょっとお昼寝しようか。」
「うん…」
私が妹に布団をかけてあげると妹はそのままぐっすり眠った。
私も日ごろの疲れがたまっていたのか、意識を失うように眠りについた。
目が覚めると目の前には知らない天井があった。
そこは病院だった。
「…ここは?」
「先生!お姉ちゃんのほうが目を覚ましました!」
女の人の声が聞こえた。
ピンクの服でまるで両親が入っている宗教の寓話に出てくる女神のような女の人だった。
眠気で意識がもうろうとする中、何とか立ち上がりお手洗いに行くことにした。
そのとき通路にはガラス窓がついている何やら厳重そうな部屋に一人の女の子らしき子が寝ていた。
大きな機械がたくさんついて口には酸素マスクがしてある。
気になって覗いてみるとそこに寝ていたのは疑いたくなるような人物だった。
妹だった。
お手洗いのことなんかすっかり忘れてガラス越しに妹のことを見つめた。
病院の大きな廊下に私の妹を呼ぶ声が何回も響いた。
「美聖!美聖!」
でもその声はまったく妹には届いていなかった。
眼が熱くなりそしてそのまま視界がにじんだ。
私は冷たい廊下の床に座り込み、そのまま泣き続けた。
翌朝、両親が病院にやってきておそらく先生らしき人物と怒鳴りあっていた。
その時のことは今でも覚えていて現実から逃げたいばかりだったからテレビをちょっとうるさいんじゃないの?って思うくらい音を大きくして、ぼーっと見つめていた。
しばらくして先生と警察の人が私のもとにきてその警察の人が私に質問してきた。
「パパとママがいない間、2人はなにをしていたの?」
「…」
「大丈夫。パパとママには言わないから。」
「…本当?」
「うん。お兄さん、約束守るから。」
「わかった。」
そして私はあの時のことを全部話した。
それ以外に今までのことも、両親の宗教のことも何もかも全部話した。
地獄から解放されたかった。
数日後、警察の人が私の病室にまたやってきた。
そして口を開くや否やまた心をえぐられるような言葉が耳に入ってきた。
To be continued…
殴ったのはあれきりでほとんど口喧嘩。
気づけは日は暮れていて最終下校時刻になったため俺らは和解もせずにそれぞれの家に帰った。
次の日、俺へのいじめはパタリとやんだ。
あの後イヴのことが気になってしばらくはネットサーフィンをしていた。
本当はイヴ本人に聞いた方が早かったのだがもうあれ以降イヴのことを見かけなくなったので仕方なくって感じだ。
でもイヴに関する情報はどこを探しても見当たらず、俺は最終手段に出た。
ネット上で「○ちゃんねる」などと呼ばれる電子掲示板だ。
俺はこのことでスレを立ててみた。
ちょっと経ってから確認してみるとかなり反応がよく、嘘か誠かまではわからないものの同じ経験をしたというスレ民までいた。
「ま、もう俺には関係ないことか。」
そう思い俺はそっと掲示板を閉じた。
「もう、木坂のもとに行くのはやめにしよう。」
「…」
「はぁ…」
「やだねぇ。自殺って言葉を聞くたびにあの日のことを思い出すのほんとやだ。」
私には妹がいた。
可愛くて優しくて自慢の妹。
でも両親は嫌いだった。
私が物心つく前から変な宗教に夫婦そろってどっぷりはまっていて私がやめろと言ってもやめる気配がしない。
今考えてみれば私たちの名前も宗教がらみの名前だろう。
私が「聖良」、妹が「美聖」。
別に変なキラキラネームとかではないから不満はないが、宗教がらみということころが私は嫌だった。
そんな生活を送っていたある日、妹は私が中学2年生の時に睡眠薬の過剰摂取でこの世を去った。
その時のことは今でも覚えている。
今思えばこれが私にやってくる悪夢の前兆だったのだろう。
「おねーちゃん!」
「美聖、どうしたの?」
「あのねあのね、お友達からね、お菓子いっぱいもらったんだけど一緒に食べない?」
「でもお菓子は…」
「今日はパパとママが「すうはい?」っていうのに行くから明日の朝まで帰ってこないよ!」
「じゃあ、食べた後にごみをしっかり片付けるなら食べようか。」
「やったぁ!」
うちでは私が幼稚園の頃から市販のお菓子を食べることを宗教的理由で禁じていて食べてしまうとDVを伴うほどの虐待を両親から受けていた。
だからお菓子を食べるときは友達の家か、両親が教祖指定の礼拝堂に崇拝をしに行くときに家に持ち込み、帰ってくる頃には初めからお菓子なんてなかったような状態にしておくのがマイルールだった。
そしてこの日もいつも通り2人でお菓子を食べていた。
「わぁ!このお菓子初めて食べたけどレモンの味する!これ好き!」
妹が食いついたのはレモン味のポリポリ噛んで食べるタブレット菓子だった。
「美聖、こっちはねそのレモンのと一緒だけどこれはヨーグルトの味がするんだよ。」
「えっ!おねーちゃんほんと!?食べる!食べる!」
それから妹はこのタブレット菓子とラムネばかりを食べていた。
「おねーちゃん、おいしかったねぇ。また食べたいね~」
「今度はお姉ちゃんが駄菓子屋さんでいっぱい買ってくるからね。」
「じゃあじゃあ、またこのレモンとヨーグルトのやつ買ってきて!また食べたいの!」
「はいはい。」
妹のこの執着心に圧倒されながらも笑顔で2つ返事した。
食べ終わった後に2人で学校の宿題をしていたところ急な眠気が襲ってきた。
「おねーちゃん。美聖、眠いよぅ…」
「私も眠いや。2人でちょっとお昼寝しようか。」
「うん…」
私が妹に布団をかけてあげると妹はそのままぐっすり眠った。
私も日ごろの疲れがたまっていたのか、意識を失うように眠りについた。
目が覚めると目の前には知らない天井があった。
そこは病院だった。
「…ここは?」
「先生!お姉ちゃんのほうが目を覚ましました!」
女の人の声が聞こえた。
ピンクの服でまるで両親が入っている宗教の寓話に出てくる女神のような女の人だった。
眠気で意識がもうろうとする中、何とか立ち上がりお手洗いに行くことにした。
そのとき通路にはガラス窓がついている何やら厳重そうな部屋に一人の女の子らしき子が寝ていた。
大きな機械がたくさんついて口には酸素マスクがしてある。
気になって覗いてみるとそこに寝ていたのは疑いたくなるような人物だった。
妹だった。
お手洗いのことなんかすっかり忘れてガラス越しに妹のことを見つめた。
病院の大きな廊下に私の妹を呼ぶ声が何回も響いた。
「美聖!美聖!」
でもその声はまったく妹には届いていなかった。
眼が熱くなりそしてそのまま視界がにじんだ。
私は冷たい廊下の床に座り込み、そのまま泣き続けた。
翌朝、両親が病院にやってきておそらく先生らしき人物と怒鳴りあっていた。
その時のことは今でも覚えていて現実から逃げたいばかりだったからテレビをちょっとうるさいんじゃないの?って思うくらい音を大きくして、ぼーっと見つめていた。
しばらくして先生と警察の人が私のもとにきてその警察の人が私に質問してきた。
「パパとママがいない間、2人はなにをしていたの?」
「…」
「大丈夫。パパとママには言わないから。」
「…本当?」
「うん。お兄さん、約束守るから。」
「わかった。」
そして私はあの時のことを全部話した。
それ以外に今までのことも、両親の宗教のことも何もかも全部話した。
地獄から解放されたかった。
数日後、警察の人が私の病室にまたやってきた。
そして口を開くや否やまた心をえぐられるような言葉が耳に入ってきた。
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