5 / 10
1章
Episode.4
しおりを挟む
「お父さんとお母さんが逮捕されました。」
心をえぐられたものの心のどこかでは「安心」の言葉が浮かび上がっていた。
やっと解放される。
妹と2人で幸せに暮らせる。
そう思っていたのもつかの間、今度は病院の先生が慌てた様子でやってきて少し落ち着いた後、まじめな声で私にこう伝えた。
「この度はご愁傷さまです。」
先生はいったい誰が亡くなったのかわからなかった私の手をそっと引いてどこかに案内してくれた。
ついた部屋のような場所は質素だった。
唯一そこにあったのは台の上に白い着物を着て顔に白い布を一枚かけている小さな子供のような人だった。
目の前に移る光景で私はようやく何が起こっているのか理解することができた。
そして先生に
「この布めくってもいいですか?」
と聞き、承諾を得たうえで布をめくった。
その顔を見た瞬間、私は腰を抜かした。
美聖だったのだ。
見間違いかもしれない。
でも名前には「美聖」という字があったのだ。
涙があふれて止まらなかった。
ガラス越しに妹を見た時よりも衝撃が大きかった。
「妹の死因は何ですか?」
「睡眠薬の多量接種です。」
「えっ、病気じゃなかったんですか?」
「でもご遺体からバルビツール酸系の睡眠薬が検出されているんです。身に覚えはないですか?」
「いえ、全く。」
私の返事をする声は震えていた。
まず睡眠薬を何かしらのタイミングで飲んでしまっていたこと。
自分よりも妹の方がその睡眠薬を多く摂取していたこと。
極めつけは睡眠薬で妹が亡くなったこと。
そのすべてがわからず、私は現実を受け入れることができなかった。
その後病室に戻り私は尋問とまではいかなかったがいくつか質問された。
「妹さんの死因はご存じですね?」
「はい。」
「誰の意志で妹さんが亡くなったかは?」
「それは、わかりません。私は先ほど先生から睡眠薬の多量接種で亡くなったとだけ聞かされました。」
「…では、すべてお話ししましょう。」
「お願いします。」
「妹さんは妹さん自身で死を選んだ、つまり自殺だったわけです。」
「それはどういうことですか?私が妹を寝かしつけた後、妹がこっそり起きて睡眠薬を飲んだということですか?」
「違います。睡眠薬はあなた方が食べたお菓子の中に入っていたんです。」
「…お菓子ですか?」
「はい。睡眠薬が検出されたのはタブレット菓子のヨーグルト味とラムネの2つです。実行日の一か月前から妹さんが書かれたと思われる日記が家宅捜査で出てきてどのように小細工をしたのか、なんで死のうと思ったのか、一番多く書かれていたのはお姉さんへの謝罪の文でした。日記の最後には必ず「ごめんね、おねーちゃん」と書いてあったと現場の者が言っていました。」
謝らないでよ。
自殺の計画を立てていたのなら初めから謝らないでよ!
パパとママは逮捕されちゃって、美聖は死んで、じいじとばあばももういない。
私、一人ぼっちになっちゃうんだよ?
家族がだれもいなくなっちゃうんだよ?
…なんで死んだの?
一番死にたかったのは姉ちゃんなのに!
美聖を独りにしたくなくて、歯を食いしばって毎日生きていたのに。
私を放っておいて自分は楽になろうとでも思ってたわけ?
それに美聖はまだ小学2年生じゃん!
人生これからなのになんで死んじゃったのよ。
…姉ちゃんも死にたいよ、美聖。
「美聖…あんたはほんとにバカだねぇw あーしがまだ天界にいたとき聞いた話だけどあんたは天界のブラックなところで無休暇労働させられてるみたいじゃないw 姉ちゃんを置いてった罰だねぇ。それにもうあんたなんか妹だなんて思ってない。私より格下のバカな亡者だよww 」
そうやって1人で笑っていると後ろから声がした。
「お前、際にいないと思ったらここにいたのか。」
「おぉ!魔野っちじゃん!つーかよくあーしのいる場所が分かったねぇ。」
「天界で監視されているからな。要注意人物として。」
「…魔野っちはひどいこと言うなぁ。」
「そもそも俺はこんなこと言いに来たわけじゃない。転生手続きの書類を届けに来たんだ。もう冥土の最低限滞在年数は過ぎてるしお前はなんてったって要注意人物だからとっとと転生した方がこっちも楽なんだよ。」
「転生?ふっ、アハハハハッww」
「何笑ってるんだ。」
「何って、私は転生する気はさらさらないよってこの前言ったよね。まだこの世界に飽きてないし復讐だって終わってない。今を生きてるやつらは生きてるだけで幸せなのにつらいってだけで簡単に命を投げ捨てるような馬鹿な奴らなんだよ。そんな面白いやつらをこのまま放っておいて、転生して、また命をもらって、同じ立場になるなんて、死んでるけどごめんだね。」
「復讐ってなんだ?やることによってはお前の今の身分が180度変わるぞ。」
「えーっ!…じゃあ、何やってるか教えてあげる。それはね…」
「命を軽んじている奴らを際で見極めて生きるに値するなら助言する。死ぬに値するなら殺す。でも大体が死に値するんだよ。それもそうで楽しいんだけど一番は命を軽んじている身で殺される立場になると命乞いをする奴らを笑いものにすることかなぁ。」
「お前ってやつは…」
「あれ?見逃してくれるの?」
「無差別に殺ってるわけじゃないからな。殺す1つにも肉体的死だけじゃなくて社会的死もあるからすべての悪人を殺しているというわけでもない。暇つぶしにはちょうどいいんじゃないのか?」
「死神様はわかってるねぇ。」
「俺は殺しているんじゃない。死んだ生者の魂を回収しているだけだ。」
「あっそ。」
「じゃあ、俺は戻るからな。お前も早いうちに際に帰れよ。」
「はーい!お疲れちゃんでーす!」
さ、まだ復讐は始まったばっか。
これからどんどん楽しくなるんだから。
To be continued…
心をえぐられたものの心のどこかでは「安心」の言葉が浮かび上がっていた。
やっと解放される。
妹と2人で幸せに暮らせる。
そう思っていたのもつかの間、今度は病院の先生が慌てた様子でやってきて少し落ち着いた後、まじめな声で私にこう伝えた。
「この度はご愁傷さまです。」
先生はいったい誰が亡くなったのかわからなかった私の手をそっと引いてどこかに案内してくれた。
ついた部屋のような場所は質素だった。
唯一そこにあったのは台の上に白い着物を着て顔に白い布を一枚かけている小さな子供のような人だった。
目の前に移る光景で私はようやく何が起こっているのか理解することができた。
そして先生に
「この布めくってもいいですか?」
と聞き、承諾を得たうえで布をめくった。
その顔を見た瞬間、私は腰を抜かした。
美聖だったのだ。
見間違いかもしれない。
でも名前には「美聖」という字があったのだ。
涙があふれて止まらなかった。
ガラス越しに妹を見た時よりも衝撃が大きかった。
「妹の死因は何ですか?」
「睡眠薬の多量接種です。」
「えっ、病気じゃなかったんですか?」
「でもご遺体からバルビツール酸系の睡眠薬が検出されているんです。身に覚えはないですか?」
「いえ、全く。」
私の返事をする声は震えていた。
まず睡眠薬を何かしらのタイミングで飲んでしまっていたこと。
自分よりも妹の方がその睡眠薬を多く摂取していたこと。
極めつけは睡眠薬で妹が亡くなったこと。
そのすべてがわからず、私は現実を受け入れることができなかった。
その後病室に戻り私は尋問とまではいかなかったがいくつか質問された。
「妹さんの死因はご存じですね?」
「はい。」
「誰の意志で妹さんが亡くなったかは?」
「それは、わかりません。私は先ほど先生から睡眠薬の多量接種で亡くなったとだけ聞かされました。」
「…では、すべてお話ししましょう。」
「お願いします。」
「妹さんは妹さん自身で死を選んだ、つまり自殺だったわけです。」
「それはどういうことですか?私が妹を寝かしつけた後、妹がこっそり起きて睡眠薬を飲んだということですか?」
「違います。睡眠薬はあなた方が食べたお菓子の中に入っていたんです。」
「…お菓子ですか?」
「はい。睡眠薬が検出されたのはタブレット菓子のヨーグルト味とラムネの2つです。実行日の一か月前から妹さんが書かれたと思われる日記が家宅捜査で出てきてどのように小細工をしたのか、なんで死のうと思ったのか、一番多く書かれていたのはお姉さんへの謝罪の文でした。日記の最後には必ず「ごめんね、おねーちゃん」と書いてあったと現場の者が言っていました。」
謝らないでよ。
自殺の計画を立てていたのなら初めから謝らないでよ!
パパとママは逮捕されちゃって、美聖は死んで、じいじとばあばももういない。
私、一人ぼっちになっちゃうんだよ?
家族がだれもいなくなっちゃうんだよ?
…なんで死んだの?
一番死にたかったのは姉ちゃんなのに!
美聖を独りにしたくなくて、歯を食いしばって毎日生きていたのに。
私を放っておいて自分は楽になろうとでも思ってたわけ?
それに美聖はまだ小学2年生じゃん!
人生これからなのになんで死んじゃったのよ。
…姉ちゃんも死にたいよ、美聖。
「美聖…あんたはほんとにバカだねぇw あーしがまだ天界にいたとき聞いた話だけどあんたは天界のブラックなところで無休暇労働させられてるみたいじゃないw 姉ちゃんを置いてった罰だねぇ。それにもうあんたなんか妹だなんて思ってない。私より格下のバカな亡者だよww 」
そうやって1人で笑っていると後ろから声がした。
「お前、際にいないと思ったらここにいたのか。」
「おぉ!魔野っちじゃん!つーかよくあーしのいる場所が分かったねぇ。」
「天界で監視されているからな。要注意人物として。」
「…魔野っちはひどいこと言うなぁ。」
「そもそも俺はこんなこと言いに来たわけじゃない。転生手続きの書類を届けに来たんだ。もう冥土の最低限滞在年数は過ぎてるしお前はなんてったって要注意人物だからとっとと転生した方がこっちも楽なんだよ。」
「転生?ふっ、アハハハハッww」
「何笑ってるんだ。」
「何って、私は転生する気はさらさらないよってこの前言ったよね。まだこの世界に飽きてないし復讐だって終わってない。今を生きてるやつらは生きてるだけで幸せなのにつらいってだけで簡単に命を投げ捨てるような馬鹿な奴らなんだよ。そんな面白いやつらをこのまま放っておいて、転生して、また命をもらって、同じ立場になるなんて、死んでるけどごめんだね。」
「復讐ってなんだ?やることによってはお前の今の身分が180度変わるぞ。」
「えーっ!…じゃあ、何やってるか教えてあげる。それはね…」
「命を軽んじている奴らを際で見極めて生きるに値するなら助言する。死ぬに値するなら殺す。でも大体が死に値するんだよ。それもそうで楽しいんだけど一番は命を軽んじている身で殺される立場になると命乞いをする奴らを笑いものにすることかなぁ。」
「お前ってやつは…」
「あれ?見逃してくれるの?」
「無差別に殺ってるわけじゃないからな。殺す1つにも肉体的死だけじゃなくて社会的死もあるからすべての悪人を殺しているというわけでもない。暇つぶしにはちょうどいいんじゃないのか?」
「死神様はわかってるねぇ。」
「俺は殺しているんじゃない。死んだ生者の魂を回収しているだけだ。」
「あっそ。」
「じゃあ、俺は戻るからな。お前も早いうちに際に帰れよ。」
「はーい!お疲れちゃんでーす!」
さ、まだ復讐は始まったばっか。
これからどんどん楽しくなるんだから。
To be continued…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる