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ゴルイニチ13
10、目的
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「ヴィスナ……」
その目がから何も感じ取れない。生意気な言葉も帰ってこない。
まるで人形だ。
仕方がない……
ミッシェルは蝙蝠の群れに姿を変えた。
正確には蝙蝠の群れを模したものだ。だがそれはミッシェルの想像力が作り出した姿に過ぎない。物質のようなものではなく光とか影とかそういった類のものだ。
テレキネシストへの戦術は、この娘と一緒にいる時、常に考えていた。テレキネシスという未知の能力に対抗する手段をだ。それがこれだった。恐らく蝙蝠の群れに変化した時、テレキネシスで捉えることはできない。
その予想は当たった。
ヴィスナは周囲を飛び回る蝙蝠の群れを目で追う事しかできないでいる。ただしその表情に焦りは感じられない。聞き慣れた憎まれ口も聞こえてこない。74(エリータ)のマインドコントロールで自分の意思がないからだろう。
ミッシェルは素早くヴィスナの背後に降り立つと首に注射を打った。
強力な睡眠剤だ。能力者が手に負えなくなった時にとCIAから渡されたものだった。使うつもりではなかったが、図らずも役に立ってしまう。
倒れるヴィスナをミッシェルは抱きとめた。
「子供は寝る時間だよ」
ミッシェルは意識を失ったヴィスナを床に寝かせた。
「さて……」
立ち上がってヴィクター・インユシン博士の方を見る。
エリータの傍の機械を操作していたが、立ち上がったミッシェルに気がついた。
「役に立たない能力者だ。お前にどのくらい予算をかけたと思ってるんだ」
ヴィクター・インユシン博士が吐き捨てるように言うと最後のスイッチを入れた。
塩化樹脂製のチューブを通してエリータの血液が博士の大動脈に流れ込む
怪物たちの間をすり抜けて博士のそばにたどり着いたミッシェルは彼の胸ぐらを掴み上げると男一人を難なく片手で持ち上げた。
「あんた、最初から嫌なヤツだと思ってたわ」
「化け物め!」
その表情は人とはいえないものになっている。皮膚の下に虫のようなものが蠢いていた。
「お前に言われたくないね」
超能力者といったものはないとミッシェルは直感的に感じ取った、むしろ悪魔とか魔物の類。ミッシェルの側に近い存在としか思えない。
「一体何者なんだ……?」
その時、ミッシェルは背後の視線に気づいた。
見ると装置ヘルメットシールドを外したエリータがこっちを見ている。その眼は冷たく感情は感じられない。
マインドコントロールを受けてるヴィスナにそっくりだ。妙だ……何かおかしい。
違和感を感じるミッシェルの腕を突然、何かが掴んだ。見えない何かだ! インユシン博士を掴んでいた手を無理やり引き剥がされてしまう。
サイコキネシス? いや、違う、実際にいる何かだ!
その腕が引きちぎられる!
痛みでミッシェルは思わず叫び声を上げた。吸血鬼の能力で再生力はあるものの鈍くなっても痛覚は残っている。さすがに身体の一部をもがれるのは堪えた。大量の赤い血液が床一面に飛び散っていく。
一体、なんだ?
姿は見えないがそこには何かがいるのだ! そしてそいつはミッシェルを狙っている。
ミッシェルは失った右腕の根本を押さえると、できるだけ敵から距離を置こうとした。だが敵の姿は見えず位置もわからない。
大きく広がる自分の血を見る。その時、広がる血だまりの中に足跡らしきものがあるのに気がついた。それはミッシェルの正面にいた。そして次第に近づいてくる。
いた!
ミッシェルは、姿を蝙蝠の群れ変えるとその場から逃げだした。
インユシン博士は必死で装置を動かそうとしていた。
「さあ、74(エリータ)。今準備をするから少し遊んでおいで」
次々と装置のスイッチが入っていく。同時に屋上の巨大なアンテナが動きだしていた。
§
その頃、特殊部隊が制圧の終わった地下の廊下に侵入していた。
コンクリートの床には無数の7.62mmの薬莢と血溜まり、それと怪物と先に突入していた兵士たちの死体が倒れていた。
その間を縫って特殊部隊の隊員たちが慎重に、そして素早く進んでいく。
「大尉、ここにもう敵はいません。上に戻りますか?」
特殊部隊の指揮官であるマカロフ大尉は、部下の言葉に頷くとライトで廊下を照らした。その中である部屋を見つけると近づいていく。
「いや、それは通常の部隊に任せる。我々は、あの部屋から研究資料の回収を優先させる」
大尉は部下に部屋を開けさせると中をライトで照らした。
中にはよくわからない装置とロッカー。そしてその先にはジュラルミン製の人間大のカプセルが並んでいる。テーブルには古いフィルムやビデオテープが山積みになっている。
「全部、回収だ。この部屋の物を全て持ち出せ」
命令された隊員たちがバッグを持ってくと次々をロッカーの資料を詰め込んでいく。
「大尉、これも回収しますか?」
隊員は人器を指差した。
マカロフ大尉が容器の中を覗き込む。
強化ガラスの窓の中には人ではない。地球上のどの生物にも当てはまらないものだった。
強いて言えば深海の軟体動物に似ているが、違う特徴も多く含んでいた。
「そうだな……こんなものでも重要らしい。運び出せ」
隊員たちがバーナーでカプセルを固定している金具を焼き切り始めた。
その目がから何も感じ取れない。生意気な言葉も帰ってこない。
まるで人形だ。
仕方がない……
ミッシェルは蝙蝠の群れに姿を変えた。
正確には蝙蝠の群れを模したものだ。だがそれはミッシェルの想像力が作り出した姿に過ぎない。物質のようなものではなく光とか影とかそういった類のものだ。
テレキネシストへの戦術は、この娘と一緒にいる時、常に考えていた。テレキネシスという未知の能力に対抗する手段をだ。それがこれだった。恐らく蝙蝠の群れに変化した時、テレキネシスで捉えることはできない。
その予想は当たった。
ヴィスナは周囲を飛び回る蝙蝠の群れを目で追う事しかできないでいる。ただしその表情に焦りは感じられない。聞き慣れた憎まれ口も聞こえてこない。74(エリータ)のマインドコントロールで自分の意思がないからだろう。
ミッシェルは素早くヴィスナの背後に降り立つと首に注射を打った。
強力な睡眠剤だ。能力者が手に負えなくなった時にとCIAから渡されたものだった。使うつもりではなかったが、図らずも役に立ってしまう。
倒れるヴィスナをミッシェルは抱きとめた。
「子供は寝る時間だよ」
ミッシェルは意識を失ったヴィスナを床に寝かせた。
「さて……」
立ち上がってヴィクター・インユシン博士の方を見る。
エリータの傍の機械を操作していたが、立ち上がったミッシェルに気がついた。
「役に立たない能力者だ。お前にどのくらい予算をかけたと思ってるんだ」
ヴィクター・インユシン博士が吐き捨てるように言うと最後のスイッチを入れた。
塩化樹脂製のチューブを通してエリータの血液が博士の大動脈に流れ込む
怪物たちの間をすり抜けて博士のそばにたどり着いたミッシェルは彼の胸ぐらを掴み上げると男一人を難なく片手で持ち上げた。
「あんた、最初から嫌なヤツだと思ってたわ」
「化け物め!」
その表情は人とはいえないものになっている。皮膚の下に虫のようなものが蠢いていた。
「お前に言われたくないね」
超能力者といったものはないとミッシェルは直感的に感じ取った、むしろ悪魔とか魔物の類。ミッシェルの側に近い存在としか思えない。
「一体何者なんだ……?」
その時、ミッシェルは背後の視線に気づいた。
見ると装置ヘルメットシールドを外したエリータがこっちを見ている。その眼は冷たく感情は感じられない。
マインドコントロールを受けてるヴィスナにそっくりだ。妙だ……何かおかしい。
違和感を感じるミッシェルの腕を突然、何かが掴んだ。見えない何かだ! インユシン博士を掴んでいた手を無理やり引き剥がされてしまう。
サイコキネシス? いや、違う、実際にいる何かだ!
その腕が引きちぎられる!
痛みでミッシェルは思わず叫び声を上げた。吸血鬼の能力で再生力はあるものの鈍くなっても痛覚は残っている。さすがに身体の一部をもがれるのは堪えた。大量の赤い血液が床一面に飛び散っていく。
一体、なんだ?
姿は見えないがそこには何かがいるのだ! そしてそいつはミッシェルを狙っている。
ミッシェルは失った右腕の根本を押さえると、できるだけ敵から距離を置こうとした。だが敵の姿は見えず位置もわからない。
大きく広がる自分の血を見る。その時、広がる血だまりの中に足跡らしきものがあるのに気がついた。それはミッシェルの正面にいた。そして次第に近づいてくる。
いた!
ミッシェルは、姿を蝙蝠の群れ変えるとその場から逃げだした。
インユシン博士は必死で装置を動かそうとしていた。
「さあ、74(エリータ)。今準備をするから少し遊んでおいで」
次々と装置のスイッチが入っていく。同時に屋上の巨大なアンテナが動きだしていた。
§
その頃、特殊部隊が制圧の終わった地下の廊下に侵入していた。
コンクリートの床には無数の7.62mmの薬莢と血溜まり、それと怪物と先に突入していた兵士たちの死体が倒れていた。
その間を縫って特殊部隊の隊員たちが慎重に、そして素早く進んでいく。
「大尉、ここにもう敵はいません。上に戻りますか?」
特殊部隊の指揮官であるマカロフ大尉は、部下の言葉に頷くとライトで廊下を照らした。その中である部屋を見つけると近づいていく。
「いや、それは通常の部隊に任せる。我々は、あの部屋から研究資料の回収を優先させる」
大尉は部下に部屋を開けさせると中をライトで照らした。
中にはよくわからない装置とロッカー。そしてその先にはジュラルミン製の人間大のカプセルが並んでいる。テーブルには古いフィルムやビデオテープが山積みになっている。
「全部、回収だ。この部屋の物を全て持ち出せ」
命令された隊員たちがバッグを持ってくと次々をロッカーの資料を詰め込んでいく。
「大尉、これも回収しますか?」
隊員は人器を指差した。
マカロフ大尉が容器の中を覗き込む。
強化ガラスの窓の中には人ではない。地球上のどの生物にも当てはまらないものだった。
強いて言えば深海の軟体動物に似ているが、違う特徴も多く含んでいた。
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******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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