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大神くんの秘密
大神くんの朝
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人間、生きていればどうしても他人には言えない秘密と言う物の一つや二つはあるだろう。それは県立校に通う、ごく平凡な男子高校生である俺こと大神優人も例外ではないー。
俺の朝は他の高校生同様に目覚ましのアラームから始まる。遠くから聞こえる電子音の発生源であるデジタル表示の目覚まし時計に手を伸ばし、ボタンを押して黙らせる。目覚ましが沈黙した後、布団に潜って二度寝と洒落込もうとする。ここまでもまあ、他の高校生たちと同じだろう。中にはその一度のアラームで素早く起きれるしっかり者もいるかもしれないが。
他の高校生たちと違って来るのはそこからだ。ガチャリと音を立てて開く自室のドア。微かな足音、それに続いて聞こえてくる女性の声。
「大神くん・・・朝ですよ。起きてください。起きなければ遅刻してしまいます」
「すみません・・・あと5分、いや15ふ」
「ダメです」
食い気味に提案を却下され、観念して身を起こし、顔を上げる。目の前に立つのはグレーのスーツの上から、真っ赤な地元プロ野球チームのマスコットキャラのイラスト入りのエプロンを着た若い女性。母親でも無ければ、妹でも姉でも許嫁でも、彼女でもメイドでも異世界とかから来た居候でもないその女性は、職場にいる時と変わらない真面目な表情で、軽くメガネをずり上げてからこう言う。
「おはようございます、大神くん」
「おはようございます・・・緒方先生」
彼女は俺の通う高校のクラス担任である女性教師で、俺の住む賃貸マンションの住人だ。
「朝食はもう出来てますから、着替えて食べに来て下さいね」
丁寧な口調でそう言った彼女に、俺は答える。
「いつもありがとうございます・・・」
「いえ」と言って静かに部屋を出ていく女性。バタンと小さな音と共に閉まるドア。遠ざかる足音ーの代わりに聞こえてくる「きゃうっ!」という悲鳴と盛大にすっ転ぶ物音。内心溜息を吐きつつ、俺は着替えを済ませて部屋を出た。
目の前の廊下で尻餅をついたまま、勢いよく打ったらしき腰を押さえるたまま「イタタ・・・」と呻く女性。転んだはずみか眼鏡はずれ、エプロンの裾とスーツのタイトスカートはめくれ、黒のタイツに包まれたスラリとした足やら、見えちゃいけない淡いレモンイエローの布地やらがチラ見えしている。特に下半身辺りに視線を移動させてしまいそうになるのを必死で堪えながら声をかけた。
「大丈夫ですか、先生?ものっそい音してましたけど」
「へ、平気です・・・心配かけて・・・うっ、すみませんでした」
先生はそう言って立ちあがろうとする。そこで自分の恰好にようやく気づいたらしく、フリーズした。俺は目を逸らしつつ答えた。
「ごちそ・・・もとい、何も見てませんからね!!」
「それって確実に見ちゃった人の台詞ですよね!?何をとは言いませんけど!」
「そんなことでより、朝ごはん食べますね!献立何じゃろ~」
実にごもっともなご指摘に、俺はますます視線を泳がせ、急いでダイニングへと向かうのだった。
俺の朝は他の高校生同様に目覚ましのアラームから始まる。遠くから聞こえる電子音の発生源であるデジタル表示の目覚まし時計に手を伸ばし、ボタンを押して黙らせる。目覚ましが沈黙した後、布団に潜って二度寝と洒落込もうとする。ここまでもまあ、他の高校生たちと同じだろう。中にはその一度のアラームで素早く起きれるしっかり者もいるかもしれないが。
他の高校生たちと違って来るのはそこからだ。ガチャリと音を立てて開く自室のドア。微かな足音、それに続いて聞こえてくる女性の声。
「大神くん・・・朝ですよ。起きてください。起きなければ遅刻してしまいます」
「すみません・・・あと5分、いや15ふ」
「ダメです」
食い気味に提案を却下され、観念して身を起こし、顔を上げる。目の前に立つのはグレーのスーツの上から、真っ赤な地元プロ野球チームのマスコットキャラのイラスト入りのエプロンを着た若い女性。母親でも無ければ、妹でも姉でも許嫁でも、彼女でもメイドでも異世界とかから来た居候でもないその女性は、職場にいる時と変わらない真面目な表情で、軽くメガネをずり上げてからこう言う。
「おはようございます、大神くん」
「おはようございます・・・緒方先生」
彼女は俺の通う高校のクラス担任である女性教師で、俺の住む賃貸マンションの住人だ。
「朝食はもう出来てますから、着替えて食べに来て下さいね」
丁寧な口調でそう言った彼女に、俺は答える。
「いつもありがとうございます・・・」
「いえ」と言って静かに部屋を出ていく女性。バタンと小さな音と共に閉まるドア。遠ざかる足音ーの代わりに聞こえてくる「きゃうっ!」という悲鳴と盛大にすっ転ぶ物音。内心溜息を吐きつつ、俺は着替えを済ませて部屋を出た。
目の前の廊下で尻餅をついたまま、勢いよく打ったらしき腰を押さえるたまま「イタタ・・・」と呻く女性。転んだはずみか眼鏡はずれ、エプロンの裾とスーツのタイトスカートはめくれ、黒のタイツに包まれたスラリとした足やら、見えちゃいけない淡いレモンイエローの布地やらがチラ見えしている。特に下半身辺りに視線を移動させてしまいそうになるのを必死で堪えながら声をかけた。
「大丈夫ですか、先生?ものっそい音してましたけど」
「へ、平気です・・・心配かけて・・・うっ、すみませんでした」
先生はそう言って立ちあがろうとする。そこで自分の恰好にようやく気づいたらしく、フリーズした。俺は目を逸らしつつ答えた。
「ごちそ・・・もとい、何も見てませんからね!!」
「それって確実に見ちゃった人の台詞ですよね!?何をとは言いませんけど!」
「そんなことでより、朝ごはん食べますね!献立何じゃろ~」
実にごもっともなご指摘に、俺はますます視線を泳がせ、急いでダイニングへと向かうのだった。
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