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第1章 物語りの始まり
第一話 十年前
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「いやいや、其れは無理って言うか、妹ならまだしも知らない女の子と一緒に寝るって・・・。どうかと思うんだが」
「大丈夫ですよ。リリスは気にしませんし。其れに、この街にいずれは用があったので」
「用が?一体、どんな?」
「十年前。この街に何かあったのか、ご存知ですか?」
「まあな」
高人は思い出したくはない、思い出である。
十年前、高人が六歳の時。この街である事件が起きた。
高山公園爆発事件。
高山公園とは、この家から歩いて五分程の所にある公園で、今も子供達がかけっこや、遊具などで遊んでいる。
当時も今と同じように、近所の子が集まって遊んでいた。
あの日。高人は妹の理沙と公園へと向かった。
「おにいちゃん。ーーーちゃんいるかな?」
「いるとおもうぞ」
「なんでわかるの?」
「なんとなく」
すでに公園には数人の子供が遊んでいた。
「あっ、たかちゃん。りさちゃん。また会ったね」
「ーーーちゃん!」
その後、高人の記憶では三人で楽しく遊んだという記憶がある。だか、高人は其れからの記憶がない。いや、実際にはもうワンシーンだけ覚えている。其れは、名前を忘れた少女に耳元で何か言われた。何を言われたのか、未だに思い出せない。
気付いた時には、病院のベットの上にいた。親父が安心した様な顔で見ており、右隣を見ると、理沙がスヤスヤと寝ていた。
「ねえ、おかあさんは?」
幼い高人は純粋な気持ちで親父に問いかけた。高人の親父は、言いづらそうな表情を見せた。そんな親父の表情は、幼い時の高人にはインパクトがあったのか、其れともその後の衝撃の一言の所為か、高人はその時の事ははっきりと覚えている。
親父は黙っていても意味がないと思ったのか、ゆっくりと重い口を開いた。
「いいか、よく聞け。おかあさんは・・・死んだ・・・」
『死んだ』その言葉は幼い高人には、意味を理解するのにすごい時間を要した。
後で詳しく聞いて見ると、おかあさんは高人を庇って死んだという。
高人はその日から涙が枯れるまで泣いた。お母さんが死んだのもそうだが、自分を庇って死んでしまった為に二度と会えない事を知った理沙、一生を誓い合った親父の気持ちなどを考えると、申し訳ない気持ちになり、再び涙が出てきた。そして、あの日公園何かに遊びに行かなければ良かったと言う後悔の気持ちが、思えば思うほどに涙が出てきた。
其れから3日後、高人と理沙は退院した。そんな高人の首からは、お母さんの大事にしていた青く光るペンダントがぶら下がっていた。
死者一名、怪我人七人。爆発原因不明。とされた。
「嫌な思い出を思い出させてしまいましたかね?」
「ああ、全くだよ」
「ちなみに原因はご存知ですか?」
「いいや。世間では不発弾が爆発したとか、誰が爆弾を置いたとか言われているが、はっきりとした原因は不明だったはずだ」
「其れはそうでしょうね~。だって、あの爆発は、魔力の暴走によるものですから」
「魔力の暴走?」
リリスはコクリと頷いた。
「十年前、リリス達は強い魔力を感じました。急いで、この街に来たんですが、魔力痕が残っているだけで、やった本人はもう・・・。もしかしたら、まだこの街に居るのではないかとずっと思ってて・・・。だから、その・・・このリリスをここに泊まらせてはくれませんか?」
「はあ~。しゃーねえな。ただし、条件がある。タダで住まわせるんだ。家事やら洗濯などをやってもらうぞ?其れでもいいか?」
「契約成立です!」
「よろしく、リリス」
「こちらこそ。そう言えば、あなたの名前をまだ聞いてないです」
「高人だ。よろしくな!」
「はい!」
こうして自称魔王のリリスと一緒に住むことになったのだが・・・。
「所で、ご家族は?」
「母さんはお前が言っていた十年前に。親父と妹がいるんだが、今二人とも遺跡発掘に行くって言って、今この家に居るのは、俺だけだ」
其れを聞いたリリスは顔を真っ赤にして、
「つ、つつつまり、今こここの家に居るのは、ふふふ二人だけということですか?」
「そうだが・・・」
リリスはボフンと言う音と共に湯気を上げながら、倒れた。
リリスが起きた時には、あれから一時間が経っていた。リリスはゆっくりと体を起こし、状況を整理する。
「そう言えば、リリス、倒れちゃったみたいですね」
リリスは誰もいないリビングで、ぽつりと呟いた。
「おっ、起きたみたいだな。気分はどうだ?」
高人は風呂上がりなのか、パジャマに着替え、濡れた髪を拭きながら、リリスにそう訊いた。
あの後、高人はどうしたらいいのか一瞬判断に迷いつつもリリスを抱え上げ、数秒考えたのちにソファーに寝かすことにした。高人はと言うとご飯の支度や風呂を沸かしたり、起きるのを待った。だが、其れでも起きなかったため、高人は先に風呂に入って、出てきたところ、リリスが起きていたと言うと場面である。
「はい、何とか」
「そうか、そりゃあ良かった。ところで先に風呂にするか?其れとも、飯にするか?俺的には、先に風呂にして欲しいんだが」
「?どうしてですか?」
「簡単な話だよ。料理の方は大方完成しているんだが、完成はしていない。従って、君がお風呂に行っている間に料理を完成させ、君がお風呂から出た頃には、料理が完成してすぐに食べられる」
「な、なるほどー!頭いいですね~!そういう事なら、お風呂に行ってきます」
「ああ。ゆっくりと浸かっておいで」
「はい!」
リリスはそう返事をし、お風呂場に向かった。
「さて、仕上げるか!・・・と、その前にリリスの着替えを用意をしなくちゃな。・・・あいつの部屋に、か・・・、はあ~」
高人は重い重い溜息をついた。
一方、リリスはというと・・・
「ふあ~!小さくて可愛いお風呂です!」
小さなお風呂を見て、テンションが上がっていた。
高人は重い足取りで二階にある、とある部屋の前に来ていた。
「さっさと済ませて、料理を完成させねば」
高人はドアノブに右手で掴み、ゆっくりとドアを開けた。
「これは一体なんでしょう?」
その頃、リリスはシャンプーの容器を手に悩んでいた。
「髪サラッ?・・・あっ、もしかして髪を洗うものですかね?じゃあ、こっちは・・・ボディソープ?確か、ボディと言うのは、この世界では体を意味していたはずですね~。つまり、これは体を洗うものみたいですね~。面白いですね、人間って」
一方、高人はというと、理沙の部屋に入っていた。
「確か、左に二歩、前に三歩。右に五歩、後ろに一歩。そして、左に四歩、前に五歩。だったかな?」
『トラップの解除を確認しました』
「ふう~!何とか行けた」
高人の妹理沙はI.Q三百という半端じゃない数値を叩き出し、其れを活かしてこのトラップを仕掛けた。誰も入らせない為に。本人曰く、この部屋にはとても大事なモノがあるらしい。
「とりあえず、服を探すか」
高人は部屋の一番奥にあるタンスに向かった。そして、一番下の引き出しを開けた。
そこにあったのは、白いパンツ、絵柄のパンツ、勝負用と書かれた黒いパンツ。そして、何故だか、高人のパンツまで入っていた。
「・・・」
高人は自分のパンツだけをその引き出しからとると、静かに引き出しを閉めた。
次に真ん中の引き出しを開けてみた。すると、当初の目的だったパジャマや服が入っていた。
高人はパジャマだけを取ると、スッと立ち上がり、ドアの方をみた。
実は、問題はここからなのだ。部屋には二つのトラップがあり、一つは扉側半分の部屋を迷路トラップ。二つ目は、窓側半分の赤外線トラップがある。トラップ解除とは言っていたのは、赤外線トラップで、扉側半分の迷路トラップは未だに発動している。抜け出す方法は来た道を戻ること。だが、一つ残念な事に行きはわかるのだが、帰りの順番が分からない。其れ以前にスタート地点が分からないのだ。
「こうなったら・・・。強行突破のみ!」
高人はドアに向かって走った。
ブーーー!
部屋中にトラップの発動音が響いた。と、同時にドアがバタンと閉まった。
「・・・・・」
ドン!
勢い良く走った高人は、急には止まることは出来ず、豪快に顔をドアにぶつけた。
その瞬間高人は思った。諦めよう、と。
その後、高人に何があったのかは、高人本人以外分からない。
その頃、リリスはというと。
「髪がサラサラ。肌も。其れにいい匂い。すごいですね、人間って」
人間の作ったモノに感動し、お風呂を満喫していた。
高人はやっとの思いで、妹の部屋から抜け出した。
「し、死ぬかと思った・・・」
階段をゆっくりと力なく降りていく。
「そうだ。これを渡しに行かないと」
高人は手に持っているパジャマを脱衣所にいるリリスに届けるべく、とぼとぼと廊下を歩いていく。そして、脱衣所の前で、ふと思った。
漫画やアニメなどのこういう場面では大概、出て来ていないと思って開けたら、そこにヒロインが居て、怒らせたり桶が飛んで来たりと面倒な事になる。つまり、そういった事が無いようにあらかじめ、ドアをノックすればいい。で、出て来ているようなら返事をするだろうから、その場合さっとドアの前に置いておく。出て来ていないのなら洗濯機の上に置いておけば気付いてくれるだろう。
よし、これで作戦は完璧!と自分で自分を褒め、ドアをノックする。
「よし、返事が無い」
高人は何処から来たのか分からない自信でドアを開けた。と、同時に湯船から上がったリリスは、脱衣所に向かうべく、風呂場のドアを開けた。
つまり、鉢合わせになった。
「・・・なっ!」
「あわわわわ・・・!」
お互いにどんどん顔が赤くなる。
「きゃあああーーー!!!」
リリスは咄嗟に左手でできる限り体を隠し、右手を前に突き出し、高人に向けて魔力弾を放った。
高人は何も出来ぬまま、魔力弾をくらった。
全く、今日は付いていないと、傷を治してもらいながら、そう思った。
「でも、すごいな。傷が完全に治ってる」
額に出来た傷はものの数分で完全に消滅していた。
「あの~、すみませんでした。その・・・やるつもりは無かったんです・・・」
「うん、大丈夫だ。こっちこそ、すまないな。別に覗こうとは思ってなかったんだ。パジャマを届けに・・・。所で、サイズはどうだ?」
「少し大きいですけど、大丈夫ですよ」
「そうか、なら良かった。よし!じゃあ飯にするか!」
「はい!」
高人は袖をまくり、料理の仕上げに取り掛かった。
「美味しかったです」
「そりゃあ、良かった」
「あの~、タカヒト。一つ聞いていいですか?」
「何だ?」
「どうして、リリスをここに泊めてくれるんですか?」
「さあ~。俺でも分からない。けど、強いて言えば面白そうだったから、かな?」
「面白そう?」
「ああ」
どうしてなのかは高人本人でも分からない。ただ、そんな予感がするのだ。
こうして、リリスとの生活、初日が終わった。
「大丈夫ですよ。リリスは気にしませんし。其れに、この街にいずれは用があったので」
「用が?一体、どんな?」
「十年前。この街に何かあったのか、ご存知ですか?」
「まあな」
高人は思い出したくはない、思い出である。
十年前、高人が六歳の時。この街である事件が起きた。
高山公園爆発事件。
高山公園とは、この家から歩いて五分程の所にある公園で、今も子供達がかけっこや、遊具などで遊んでいる。
当時も今と同じように、近所の子が集まって遊んでいた。
あの日。高人は妹の理沙と公園へと向かった。
「おにいちゃん。ーーーちゃんいるかな?」
「いるとおもうぞ」
「なんでわかるの?」
「なんとなく」
すでに公園には数人の子供が遊んでいた。
「あっ、たかちゃん。りさちゃん。また会ったね」
「ーーーちゃん!」
その後、高人の記憶では三人で楽しく遊んだという記憶がある。だか、高人は其れからの記憶がない。いや、実際にはもうワンシーンだけ覚えている。其れは、名前を忘れた少女に耳元で何か言われた。何を言われたのか、未だに思い出せない。
気付いた時には、病院のベットの上にいた。親父が安心した様な顔で見ており、右隣を見ると、理沙がスヤスヤと寝ていた。
「ねえ、おかあさんは?」
幼い高人は純粋な気持ちで親父に問いかけた。高人の親父は、言いづらそうな表情を見せた。そんな親父の表情は、幼い時の高人にはインパクトがあったのか、其れともその後の衝撃の一言の所為か、高人はその時の事ははっきりと覚えている。
親父は黙っていても意味がないと思ったのか、ゆっくりと重い口を開いた。
「いいか、よく聞け。おかあさんは・・・死んだ・・・」
『死んだ』その言葉は幼い高人には、意味を理解するのにすごい時間を要した。
後で詳しく聞いて見ると、おかあさんは高人を庇って死んだという。
高人はその日から涙が枯れるまで泣いた。お母さんが死んだのもそうだが、自分を庇って死んでしまった為に二度と会えない事を知った理沙、一生を誓い合った親父の気持ちなどを考えると、申し訳ない気持ちになり、再び涙が出てきた。そして、あの日公園何かに遊びに行かなければ良かったと言う後悔の気持ちが、思えば思うほどに涙が出てきた。
其れから3日後、高人と理沙は退院した。そんな高人の首からは、お母さんの大事にしていた青く光るペンダントがぶら下がっていた。
死者一名、怪我人七人。爆発原因不明。とされた。
「嫌な思い出を思い出させてしまいましたかね?」
「ああ、全くだよ」
「ちなみに原因はご存知ですか?」
「いいや。世間では不発弾が爆発したとか、誰が爆弾を置いたとか言われているが、はっきりとした原因は不明だったはずだ」
「其れはそうでしょうね~。だって、あの爆発は、魔力の暴走によるものですから」
「魔力の暴走?」
リリスはコクリと頷いた。
「十年前、リリス達は強い魔力を感じました。急いで、この街に来たんですが、魔力痕が残っているだけで、やった本人はもう・・・。もしかしたら、まだこの街に居るのではないかとずっと思ってて・・・。だから、その・・・このリリスをここに泊まらせてはくれませんか?」
「はあ~。しゃーねえな。ただし、条件がある。タダで住まわせるんだ。家事やら洗濯などをやってもらうぞ?其れでもいいか?」
「契約成立です!」
「よろしく、リリス」
「こちらこそ。そう言えば、あなたの名前をまだ聞いてないです」
「高人だ。よろしくな!」
「はい!」
こうして自称魔王のリリスと一緒に住むことになったのだが・・・。
「所で、ご家族は?」
「母さんはお前が言っていた十年前に。親父と妹がいるんだが、今二人とも遺跡発掘に行くって言って、今この家に居るのは、俺だけだ」
其れを聞いたリリスは顔を真っ赤にして、
「つ、つつつまり、今こここの家に居るのは、ふふふ二人だけということですか?」
「そうだが・・・」
リリスはボフンと言う音と共に湯気を上げながら、倒れた。
リリスが起きた時には、あれから一時間が経っていた。リリスはゆっくりと体を起こし、状況を整理する。
「そう言えば、リリス、倒れちゃったみたいですね」
リリスは誰もいないリビングで、ぽつりと呟いた。
「おっ、起きたみたいだな。気分はどうだ?」
高人は風呂上がりなのか、パジャマに着替え、濡れた髪を拭きながら、リリスにそう訊いた。
あの後、高人はどうしたらいいのか一瞬判断に迷いつつもリリスを抱え上げ、数秒考えたのちにソファーに寝かすことにした。高人はと言うとご飯の支度や風呂を沸かしたり、起きるのを待った。だが、其れでも起きなかったため、高人は先に風呂に入って、出てきたところ、リリスが起きていたと言うと場面である。
「はい、何とか」
「そうか、そりゃあ良かった。ところで先に風呂にするか?其れとも、飯にするか?俺的には、先に風呂にして欲しいんだが」
「?どうしてですか?」
「簡単な話だよ。料理の方は大方完成しているんだが、完成はしていない。従って、君がお風呂に行っている間に料理を完成させ、君がお風呂から出た頃には、料理が完成してすぐに食べられる」
「な、なるほどー!頭いいですね~!そういう事なら、お風呂に行ってきます」
「ああ。ゆっくりと浸かっておいで」
「はい!」
リリスはそう返事をし、お風呂場に向かった。
「さて、仕上げるか!・・・と、その前にリリスの着替えを用意をしなくちゃな。・・・あいつの部屋に、か・・・、はあ~」
高人は重い重い溜息をついた。
一方、リリスはというと・・・
「ふあ~!小さくて可愛いお風呂です!」
小さなお風呂を見て、テンションが上がっていた。
高人は重い足取りで二階にある、とある部屋の前に来ていた。
「さっさと済ませて、料理を完成させねば」
高人はドアノブに右手で掴み、ゆっくりとドアを開けた。
「これは一体なんでしょう?」
その頃、リリスはシャンプーの容器を手に悩んでいた。
「髪サラッ?・・・あっ、もしかして髪を洗うものですかね?じゃあ、こっちは・・・ボディソープ?確か、ボディと言うのは、この世界では体を意味していたはずですね~。つまり、これは体を洗うものみたいですね~。面白いですね、人間って」
一方、高人はというと、理沙の部屋に入っていた。
「確か、左に二歩、前に三歩。右に五歩、後ろに一歩。そして、左に四歩、前に五歩。だったかな?」
『トラップの解除を確認しました』
「ふう~!何とか行けた」
高人の妹理沙はI.Q三百という半端じゃない数値を叩き出し、其れを活かしてこのトラップを仕掛けた。誰も入らせない為に。本人曰く、この部屋にはとても大事なモノがあるらしい。
「とりあえず、服を探すか」
高人は部屋の一番奥にあるタンスに向かった。そして、一番下の引き出しを開けた。
そこにあったのは、白いパンツ、絵柄のパンツ、勝負用と書かれた黒いパンツ。そして、何故だか、高人のパンツまで入っていた。
「・・・」
高人は自分のパンツだけをその引き出しからとると、静かに引き出しを閉めた。
次に真ん中の引き出しを開けてみた。すると、当初の目的だったパジャマや服が入っていた。
高人はパジャマだけを取ると、スッと立ち上がり、ドアの方をみた。
実は、問題はここからなのだ。部屋には二つのトラップがあり、一つは扉側半分の部屋を迷路トラップ。二つ目は、窓側半分の赤外線トラップがある。トラップ解除とは言っていたのは、赤外線トラップで、扉側半分の迷路トラップは未だに発動している。抜け出す方法は来た道を戻ること。だが、一つ残念な事に行きはわかるのだが、帰りの順番が分からない。其れ以前にスタート地点が分からないのだ。
「こうなったら・・・。強行突破のみ!」
高人はドアに向かって走った。
ブーーー!
部屋中にトラップの発動音が響いた。と、同時にドアがバタンと閉まった。
「・・・・・」
ドン!
勢い良く走った高人は、急には止まることは出来ず、豪快に顔をドアにぶつけた。
その瞬間高人は思った。諦めよう、と。
その後、高人に何があったのかは、高人本人以外分からない。
その頃、リリスはというと。
「髪がサラサラ。肌も。其れにいい匂い。すごいですね、人間って」
人間の作ったモノに感動し、お風呂を満喫していた。
高人はやっとの思いで、妹の部屋から抜け出した。
「し、死ぬかと思った・・・」
階段をゆっくりと力なく降りていく。
「そうだ。これを渡しに行かないと」
高人は手に持っているパジャマを脱衣所にいるリリスに届けるべく、とぼとぼと廊下を歩いていく。そして、脱衣所の前で、ふと思った。
漫画やアニメなどのこういう場面では大概、出て来ていないと思って開けたら、そこにヒロインが居て、怒らせたり桶が飛んで来たりと面倒な事になる。つまり、そういった事が無いようにあらかじめ、ドアをノックすればいい。で、出て来ているようなら返事をするだろうから、その場合さっとドアの前に置いておく。出て来ていないのなら洗濯機の上に置いておけば気付いてくれるだろう。
よし、これで作戦は完璧!と自分で自分を褒め、ドアをノックする。
「よし、返事が無い」
高人は何処から来たのか分からない自信でドアを開けた。と、同時に湯船から上がったリリスは、脱衣所に向かうべく、風呂場のドアを開けた。
つまり、鉢合わせになった。
「・・・なっ!」
「あわわわわ・・・!」
お互いにどんどん顔が赤くなる。
「きゃあああーーー!!!」
リリスは咄嗟に左手でできる限り体を隠し、右手を前に突き出し、高人に向けて魔力弾を放った。
高人は何も出来ぬまま、魔力弾をくらった。
全く、今日は付いていないと、傷を治してもらいながら、そう思った。
「でも、すごいな。傷が完全に治ってる」
額に出来た傷はものの数分で完全に消滅していた。
「あの~、すみませんでした。その・・・やるつもりは無かったんです・・・」
「うん、大丈夫だ。こっちこそ、すまないな。別に覗こうとは思ってなかったんだ。パジャマを届けに・・・。所で、サイズはどうだ?」
「少し大きいですけど、大丈夫ですよ」
「そうか、なら良かった。よし!じゃあ飯にするか!」
「はい!」
高人は袖をまくり、料理の仕上げに取り掛かった。
「美味しかったです」
「そりゃあ、良かった」
「あの~、タカヒト。一つ聞いていいですか?」
「何だ?」
「どうして、リリスをここに泊めてくれるんですか?」
「さあ~。俺でも分からない。けど、強いて言えば面白そうだったから、かな?」
「面白そう?」
「ああ」
どうしてなのかは高人本人でも分からない。ただ、そんな予感がするのだ。
こうして、リリスとの生活、初日が終わった。
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