軍将の踊り子と赤い龍の伝説

糸文かろ

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第一章

リエイムの家族 1

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 朝、普段着として着用しているスーラの民族衣装を身に纏いホールに足を運ぶと、五歳ほどの小さな子供が二人勢いよく駆け寄ってきた。
「聖舞師さんだ! 白い服かっこいい!」
「素敵な髪の毛ね! とってもさらさらー! 三つ編みしてもいーい?」
 両側から手を引かれ目を白黒させていると後からリエイムがやってきて笑いながら二人を制した。
「こらこら、客人を驚かせちゃいかん。サニ、昨日はよく眠れたか?」
 リエイムは初めて出会ったとき同様白シャツにベルトを締め、綿のズボンとブーツを着用していた。
 つまり、宿屋では平民と区別が付かないようにわざと変装していたわけではなく、普段からこの格好だということだ。
 動きやすそうではあるが、一応領主公子ではあるのに軽装すぎやしないだろうか。
「はい、とても快適なお部屋をありがとうございます」
「それはよかった。ではこちらへ。朝食がてら家族を紹介させてくれ」
 案内され食堂に入る。長テーブルに近づくと、腰掛けていた全員が立ち上がった。

「聖舞師殿、ようこそ我が城にいらっしゃいました。そして息子のリエイムが率いる軍のご加護を、誠にありがとうございました」
 一番奥に座っていた一番歳を取った男性、つまりオーフェルエイデ公が真っ先に握手を求めてきた。
 恰幅が良く、笑うと目尻が下がりまぶたのしわで瞳がほとんど隠れる。見るからに優しそうな人相の男性だ。
「お招きありがとうございます。聖舞師のサニ・マラヤートです」
 続いて城主の左側にいた人物が胸に手を当てる。
 栗毛の短髪で、リエイムと比べると身長が若干低く、肩幅もそれほど広くはない。どちらかと言えば華奢な部類だ。笑った目元がオーフェルエイデ公によく似ていた。思えばリエイムも同じ表情筋を使った人なつこい笑い方をする。
「私は第一子息のヘンリ・オーフェルエイデです。こちらは妻のフロレイン」
 サニと同じくらい長い金色の緩い巻髪をハーフアップにした女性が恭しく膝を折る。
「どうかごゆっくりおくつろぎくださいね」
「そしてこっちが兄さんの双子の子供たち、おてんばベロニカといたずらティモシー」
「僕いたずら!」
「私おてんば!」
 即座に二人が勢いよくそれぞれ右手を挙げる。いつもされる決まり文句なのだろう、慣れた様子がおかしくてサニはくすりと笑った。
「よろしくお願いいたします」
 女の子のベロニカが父の栗毛を受け継いで、男の子のティモシーは金髪のカールだった。双子を見たことがなかったサニは二人を見比べ、熱心に共通点を探す。
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