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第三章
公子の職務 1
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朝、城の城壁をくぐるとちょうど軍は訓練場に出向く準備をしているところだった。
リエイムはおそらくパロモを連れて行くだろうと、専用の装備を装着させ、手早く準備する。
どうせ馬は他の兵が迎えに来るだろうと踏んで気にせずてきぱき装着を終わらせたのだが、予想に反してリエイム本人が姿を現した。
完全に準備の行き届いた愛馬におや? という表情を見せる。
「奇妙なことは重なるものだ。教えていないのになぜ俺の馬がわかった? それに、俺の装備が完璧に備えられている」
「なんとなく……軍将の馬具は一番この中で使い込まれていますし、この馬は一番体格が良いのに穏やかな気性です。戦慣れしている証拠ですから」
物が置かれた場所の配置を覚えていただけだったが、咄嗟に小さな嘘をついた。
「なるほど、恐れ入った。並外れた推察力だ」
心底感心した表情に、わずかな罪悪感を覚える。
「いいえ……。どうかご無事でいってらっしゃいませ」
「ああ、今日は近場での訓練だから、戻りも早いだろう。行ってくる」
龍の伝説がなくなって、リエイムの予想通りセディシア帝国は大きな戦争を仕掛けてこなくなった。
国同士のいざこざが収まることはないが、脅威だった隣国からの侵略がなくなったことで少なくともクレメントとスーラはそこそこ平和になったと言える。
大きな戦いが減るに伴って、聖舞師はここ二年でそれほど必要とされなくなった。
リエイムの軍もこうして戦闘に備えてはいるが、専属の聖舞師は持っていないようだった。
その必要性が以前よりもうないのだ。今後クレメントとスーラの協定がなくなれば、それはそれでいいことだと思う。
リエイムが訓練から帰ってきたのは夕方、グラニに二回目の解毒剤を飲ませている最中だった。
パロモを繋いで城に戻っていったと思ったら、いくばもせずいそいそと厩舎に引き返してきた。
何やら隠れるようにして厩の中に入って行く。
首をひねってサニは話しかけた。
「あの、お忘れ物ですか?」
「いいや、城に客人がいたのでな。訓練が長引いたということにして、帰られるまでここにいさせてくれ」
「それは……なおさら早く戻ってご挨拶したほうがよろしいのでは?」
「カダーランド領の第三公女殿もいらっしゃっているから、行きたくないのだ」
馬用の毛ブラシを手にして聞き分けのない子どもみたいな口調で強く首を横に振る。
リエイムはおそらくパロモを連れて行くだろうと、専用の装備を装着させ、手早く準備する。
どうせ馬は他の兵が迎えに来るだろうと踏んで気にせずてきぱき装着を終わらせたのだが、予想に反してリエイム本人が姿を現した。
完全に準備の行き届いた愛馬におや? という表情を見せる。
「奇妙なことは重なるものだ。教えていないのになぜ俺の馬がわかった? それに、俺の装備が完璧に備えられている」
「なんとなく……軍将の馬具は一番この中で使い込まれていますし、この馬は一番体格が良いのに穏やかな気性です。戦慣れしている証拠ですから」
物が置かれた場所の配置を覚えていただけだったが、咄嗟に小さな嘘をついた。
「なるほど、恐れ入った。並外れた推察力だ」
心底感心した表情に、わずかな罪悪感を覚える。
「いいえ……。どうかご無事でいってらっしゃいませ」
「ああ、今日は近場での訓練だから、戻りも早いだろう。行ってくる」
龍の伝説がなくなって、リエイムの予想通りセディシア帝国は大きな戦争を仕掛けてこなくなった。
国同士のいざこざが収まることはないが、脅威だった隣国からの侵略がなくなったことで少なくともクレメントとスーラはそこそこ平和になったと言える。
大きな戦いが減るに伴って、聖舞師はここ二年でそれほど必要とされなくなった。
リエイムの軍もこうして戦闘に備えてはいるが、専属の聖舞師は持っていないようだった。
その必要性が以前よりもうないのだ。今後クレメントとスーラの協定がなくなれば、それはそれでいいことだと思う。
リエイムが訓練から帰ってきたのは夕方、グラニに二回目の解毒剤を飲ませている最中だった。
パロモを繋いで城に戻っていったと思ったら、いくばもせずいそいそと厩舎に引き返してきた。
何やら隠れるようにして厩の中に入って行く。
首をひねってサニは話しかけた。
「あの、お忘れ物ですか?」
「いいや、城に客人がいたのでな。訓練が長引いたということにして、帰られるまでここにいさせてくれ」
「それは……なおさら早く戻ってご挨拶したほうがよろしいのでは?」
「カダーランド領の第三公女殿もいらっしゃっているから、行きたくないのだ」
馬用の毛ブラシを手にして聞き分けのない子どもみたいな口調で強く首を横に振る。
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