軍将の踊り子と赤い龍の伝説

糸文かろ

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第一章

赤い龍の伝説 5

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「サニは子どもに好かれるオーラがあるのだな。さて、前回はどこで終わったっけ? ああ、ここからだな。……その昔、世界は混沌としていました。地は荒れ果てて干ばつが続き、食べ物が育たなくなったため多くの人々が飢えて命を落としました」
 リエイムの朗読する声に耳を澄ませる子供たちと一緒に、サニも静かに耳を傾けた。



 ——人々は食べ物を奪い合い、戦争があちこちで絶えなかった。
 そんな時、小さな村の美しく若い女が、天に向かって願った。
 神様、どうか私たちを救ってくださいと。すると雲の中から赤い龍が現れた。
 天界で何万年も生き孤独だった龍は、女の祈る声を聞いて、興味が湧き地上に降りてきたのだった。
 龍は女を一目見て恋に落ちた。
 龍は女を嫁にする代わりに世界を平和に導いてやると約束した。
 女は龍の条件を受け入れ、結婚した。女はたいそう謙虚な性格で、妻になってからも龍に尽くした。
 何万年も孤独だった龍は家族と愛を手に入れた。
 龍は女との約束通り、願いを叶える七色の真珠を地底に採りに行った。
 人間ではたどり着けぬ、深い海の底へと龍は潜り、龍は真珠をそっとつまんで水面へと向かう。
 その真珠は千年に一度生まれ、一人の願いだけを一度叶えてくれるという魔法の真珠だった。
 地上に戻ってきた龍は、真珠を抱いて平和を願った。
 すると荒れ果てていた大地には雨が降りそそぎ、植物は息を吹き返した。人々は争いをやめ、平和がもたらされた。
 年老いた龍は、地上で愛する妻と子供たちに囲まれ、孤独から解放され安らかに死んで行ったのだった。



「龍、幸せになってよかったね」
 リエイムの左に座っていた女の子が涙ぐみながら感想を述べたのを皮切りに、次々に意見が飛び交う。
「でも龍、死んじゃったよ」
「当たり前じゃん、みんないつかは死ぬんだもん。ずっと生きてるのがへんだよ」
 ひとりが大人びたことを言うのでサニは感心した。そしてベッドで眠るように召される龍の最期を想像してみる。

 きっと、愛する家族たちに看取られて、安らかな笑みを浮かべていたに違いない。

「リエイム様! 今朝うちで取れたディーク菜です。持って行ってくださいな」
 朗読が終わった頃合いを見計らって声がかかった。
 満足した子供たちも四方に散らばっていく。
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