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第二章
真剣な眼差し 2
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布を一枚羽織るだけだったので、首の根元から腰まで入れ墨がちらりと見えていた。
背中を向け、少し肩を晒す。
「聖舞師になる為の、契りのようなものです。独り立ちするときに彫るんです」
「痛かった?」
子供のようなことを聞くのでサニは少し笑った。沢山戦場に出て、よっぽど多くの痛みを経験してきただろうに。
「はい、それなりに」
「サニは、沢山の困難を乗り越え、強くなってきたのだな」
感嘆を交えて息を吐く。またそうやって、心の壁を取り払おうとする。
故意なら止めてほしいと思いながら、閉ざしていた扉を開けてしまう。
自分は強くなんかない。こんなに、何もできない、弱い人間だ。
「聖舞師じゃない自分なんて、生きる価値のない人間です」
自虐的にこぼすと、リエイムは眉をひそめゆっくりと首を横に振った。
「そんなことを言うな。聖舞師でなくても、サニがサニであることに変わりはない。俺は聖舞師じゃない君も、魅力的で好きだ」
「趣味もなく気の利いたことのひとつも言えない、つまらない人間です」
「俺は、正直なことを言うと、……本当に最低な発言だとわかっていてあえて言うんだが、君に力が無くなって良かったとある意味で思っているんだ」
「な……」
リエイムから発せられた耳を疑うような言葉にサニは絶句した。
「もちろん舞術は抜きん出て強いし、聖舞師としてはまれに見る才能の持ち主だ。でもサニの優れたところはそれだけじゃない。それを、自分自身が聖舞師であることに捕らわれすぎていて、気づいていないのを悔しいとずっと感じていた」
「だって、それ以外の魅力など、私にはありませんから」
「そういうところだ。例えば馬丁がさじを投げるほどのじゃじゃ馬だったグラニが、なぜサニにだけ懐いたのだと思う?」
「私が……厩舎で、馬たちの世話するからですか」
「単なる世話じゃない。グラニに一生懸命語りかけたからだろう。馬は人間をよく見ている。グラニはサニの真摯な心を見抜いたんだ。それからセディシア民の村に行ったときもそうだ。みんながサニの前に祝福をもらいに並んだのも、君が人を上下で判断することない人だと伝わったからだ。そういう人間に、祝福を与えてもらいたかったんだ」
背中を向け、少し肩を晒す。
「聖舞師になる為の、契りのようなものです。独り立ちするときに彫るんです」
「痛かった?」
子供のようなことを聞くのでサニは少し笑った。沢山戦場に出て、よっぽど多くの痛みを経験してきただろうに。
「はい、それなりに」
「サニは、沢山の困難を乗り越え、強くなってきたのだな」
感嘆を交えて息を吐く。またそうやって、心の壁を取り払おうとする。
故意なら止めてほしいと思いながら、閉ざしていた扉を開けてしまう。
自分は強くなんかない。こんなに、何もできない、弱い人間だ。
「聖舞師じゃない自分なんて、生きる価値のない人間です」
自虐的にこぼすと、リエイムは眉をひそめゆっくりと首を横に振った。
「そんなことを言うな。聖舞師でなくても、サニがサニであることに変わりはない。俺は聖舞師じゃない君も、魅力的で好きだ」
「趣味もなく気の利いたことのひとつも言えない、つまらない人間です」
「俺は、正直なことを言うと、……本当に最低な発言だとわかっていてあえて言うんだが、君に力が無くなって良かったとある意味で思っているんだ」
「な……」
リエイムから発せられた耳を疑うような言葉にサニは絶句した。
「もちろん舞術は抜きん出て強いし、聖舞師としてはまれに見る才能の持ち主だ。でもサニの優れたところはそれだけじゃない。それを、自分自身が聖舞師であることに捕らわれすぎていて、気づいていないのを悔しいとずっと感じていた」
「だって、それ以外の魅力など、私にはありませんから」
「そういうところだ。例えば馬丁がさじを投げるほどのじゃじゃ馬だったグラニが、なぜサニにだけ懐いたのだと思う?」
「私が……厩舎で、馬たちの世話するからですか」
「単なる世話じゃない。グラニに一生懸命語りかけたからだろう。馬は人間をよく見ている。グラニはサニの真摯な心を見抜いたんだ。それからセディシア民の村に行ったときもそうだ。みんながサニの前に祝福をもらいに並んだのも、君が人を上下で判断することない人だと伝わったからだ。そういう人間に、祝福を与えてもらいたかったんだ」
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