軍将の踊り子と赤い龍の伝説

糸文かろ

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第二章

恐れていた日 2

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 目隠しの術も他の術と同様やはりほとんど消えていて、聖舞師がいると向こうに勘づかれたのだ。
 しかし矢に気づくのが一歩遅く、逃げられる体勢ではなかった。
 このまま身体に刺さることを覚悟した。
 そのときなぜか、絶対にこの状況に気づくはずのないリエイムが背後を振り返ってこちらの存在を捕らえる。
「サニ……っ!」
 声を発した瞬間、ぴかっと空が光った気がした。
 目をつむりたくなるようなまばゆい光はそのままリエイムめがけて落ちてきた。
 続いてズドンと、晴天の雲一つない空から雷鳴が轟きわたった。地から唐突に咆哮が聞こえる。
 地上にいたのは、一匹の、見たこともない巨大な生き物だった。
 頭からは角が二本、背中に向かって伸びている。コウモリのような大きな羽が背中から生えながら、首から上に長い吻を持っている。
 四本足は胴の横から生えていて、尻尾は頭から後ろ足と同じくらいの長さだった。
 そしてその全身は赤色の鱗に覆われている。
 おかしな話だが、その全てが一瞬のことであるはずなのに、サニにはその一連の動きが何倍も遅く見えた。
 普通ならば矢が自分に刺さる方が早いだろうが、人間より何十倍も大きい生き物は背中の羽を一振りして高く舞い上がると雷のような早さでこちらに向かって飛んできて、いとも簡単にこちらに矢をたたき落とした。
 続いて大きな生き物はセディシア軍に向かって炎を噴いた。
 大地は一瞬にして火の海となり、敵軍はほぼ全滅した。
 生き物は更に空に円を描くように大きく一周すると、サニが隠れていた場所めがけて落ちてくる。
 倒れるように地面に降りると、しゅるしゅると肌色に戻っていった。
 それは、リエイムの姿だった。
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