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第二章
真珠の使い道 5
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「赤い龍と女の伝説をただ消すだけでは味気ないと思ってな。代わりに白紙のページを埋める感動的な話を思いついたのだ。題名は、『軍将と青い魔法使い』という」
サニは三ページに渡りびっしり書かれた、癖のある字を読む。
ある一国の軍将が、通りがかった青い瞳の魔法使いに戦を助けられる。
その魔法があまりに強く、美しかったので魅了された軍将は契約を申し出た。
魔法使いはしぶしぶながらも申し出を承諾する。二人は戦を勝ち抜く中で距離を縮めていく。
軍将は真面目で芯の通った魔法使いに、魔法使いは強く優しい軍将にやがて恋をする。
そこには、自分たちの話が書かれていた。
「これ、……リエイムが考えたのですか?」
移動に費やした二日間だったが、合間で何かを熱心に書きためているとは思っていた。
「どうだ、なかなか素敵な話だろう? 恋愛小説好きが、こんなところで役立つとはな」
「強く優しい軍将って」
「登場人物には魅力が必要だろう? 不満は今だけ受け付けるが」
「いいえ、合ってますよ」
「同意されるとそれはそれで恥ずかしいのだが」
「最後はどうなるのです?」
「もちろん、最強の二人は国を平和にして、結ばれるさ」
「とてもいいお話ですね」
サニは素直に笑った。
赤い龍の伝説に代わり、ドラマティックな展開もない平凡な二人の話が、今後語り継がれると思うと視界が少し曇った。
リエイムについての記憶が自分の中から消されてしまえば、付随する全てのことも一緒に消えてしまうのだろうか。
オーフェルエイデの家族と笑い合った食卓は、二人で見た湖の景色は、勧められた恋愛小説のストーリーは、覚えているのだろうか。
「記憶が消えて、もう一度会ったら……モントペリエールを、また勧めてくれますか」
「当たり前だろう。サニの一番好きな飲み物だからな」
「そしたら、えくぼを作って大きく笑ってくださいよ。初めにすると、うさんくさいと私は思うので、きっと嫌な顔をするでしょう」
「ひどいな、あの時そんなことを思っていたのか?」
「でも、そのうち段々魅力的に感じてくるはずです。何度もめげずにやってください。会話では、あなた自身の話も忘れずに聞かせてください。そうすればそのうち、あなたの表情で私が一番好きな顔になるはずです」
「なるほど。予行演習でやっておよう。こうか?」
鼻が触れあいそうに近い距離で、リエイムは笑ってみせる。
神々しくて力強い、太陽のような笑顔。
この顔に、自分は幾度救われてきただろうか。
走馬灯のように、リエイムと過ごした日々や様々な場面がサニの脳裏をよぎっていった。
サニは涙を流しながらも、強い引力にひかれるようにつられて笑顔になってしまう。
そして、一つ大きな決断を心の中でした。
サニは三ページに渡りびっしり書かれた、癖のある字を読む。
ある一国の軍将が、通りがかった青い瞳の魔法使いに戦を助けられる。
その魔法があまりに強く、美しかったので魅了された軍将は契約を申し出た。
魔法使いはしぶしぶながらも申し出を承諾する。二人は戦を勝ち抜く中で距離を縮めていく。
軍将は真面目で芯の通った魔法使いに、魔法使いは強く優しい軍将にやがて恋をする。
そこには、自分たちの話が書かれていた。
「これ、……リエイムが考えたのですか?」
移動に費やした二日間だったが、合間で何かを熱心に書きためているとは思っていた。
「どうだ、なかなか素敵な話だろう? 恋愛小説好きが、こんなところで役立つとはな」
「強く優しい軍将って」
「登場人物には魅力が必要だろう? 不満は今だけ受け付けるが」
「いいえ、合ってますよ」
「同意されるとそれはそれで恥ずかしいのだが」
「最後はどうなるのです?」
「もちろん、最強の二人は国を平和にして、結ばれるさ」
「とてもいいお話ですね」
サニは素直に笑った。
赤い龍の伝説に代わり、ドラマティックな展開もない平凡な二人の話が、今後語り継がれると思うと視界が少し曇った。
リエイムについての記憶が自分の中から消されてしまえば、付随する全てのことも一緒に消えてしまうのだろうか。
オーフェルエイデの家族と笑い合った食卓は、二人で見た湖の景色は、勧められた恋愛小説のストーリーは、覚えているのだろうか。
「記憶が消えて、もう一度会ったら……モントペリエールを、また勧めてくれますか」
「当たり前だろう。サニの一番好きな飲み物だからな」
「そしたら、えくぼを作って大きく笑ってくださいよ。初めにすると、うさんくさいと私は思うので、きっと嫌な顔をするでしょう」
「ひどいな、あの時そんなことを思っていたのか?」
「でも、そのうち段々魅力的に感じてくるはずです。何度もめげずにやってください。会話では、あなた自身の話も忘れずに聞かせてください。そうすればそのうち、あなたの表情で私が一番好きな顔になるはずです」
「なるほど。予行演習でやっておよう。こうか?」
鼻が触れあいそうに近い距離で、リエイムは笑ってみせる。
神々しくて力強い、太陽のような笑顔。
この顔に、自分は幾度救われてきただろうか。
走馬灯のように、リエイムと過ごした日々や様々な場面がサニの脳裏をよぎっていった。
サニは涙を流しながらも、強い引力にひかれるようにつられて笑顔になってしまう。
そして、一つ大きな決断を心の中でした。
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