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第二章
真珠の使い道 4
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「だから私は、あなたのことを忘れたくない。伝説の女も、その結末を知っていたら絶対に止めたでしょう。私はわがままかもしれません。でも全世界の平和よりも、あなたを愛するこの気持ちを、あなたとの思い出を忘れてたくはないのです。だから、真珠の力は使わないでください。どうにか、違う手を考えましょう」
リエイムは力なく首を横に振る。
「だめだ。これ以上思案する時間は残されていない。セディシア王は今も我が城に向かっているだろう。城がもぬけの殻だと知ればそうすれば王はどんな手を使ってでも絶対に追ってくる。やるならなるべく早く……今日明日しかない」
幾度となく見てきた、一度やると決めたときの顔だ。
「では、私もリエイムと一緒に願います」
「伝説を読んだだろう。真珠は、一人の願いしか叶えてくれない」
「何か、何か必ず違ういい方法が残っているはずです……! 例えば、記憶を失いたいと思っている人を探すとかっ、もしくはもう記憶がほとんど消えてしまった人を探すとかっ」
現実味のない案を出しながら、そんなことはこの短期間で無理だと自分でもよくわかっていた。
そして、幾度となく一緒に出向いた戦いで散々思い知らされてきた。
リエイムが考え抜いた決断はいつだって一番正しい。
サニは自分が発した言葉に傷つき、顔をくしゃりとゆがめる。
「そんな顔をしないでくれ。サニの気持ちを聞いて、今俺は逆に希望で満ち足りた気持ちなんだ。だって、サニが記憶を失ってしまっても俺さえ覚えていれば、またアタックすればいいだけじゃないか。一度好きになってくれたということは、少なくとも勝算はあるということだろう? だったら俺は何度でも挑戦するさ」
サニは途方に暮れ、顔を両手で覆い涙を流した。
その手をそっと離して、濡れた頬を指で拭き取ると、リエイムはとびきりの笑顔を見せた。
「心配するな。君がたとえ俺のことを覚えていなくても、絶対にまた好きにさせてみせるから。ほら、そう思うとわくわくしてこないか? 俺たちの物語は、必ずハッピーエンドで終わらせよう」
「絶対に、ですか?」
「ああ、絶対にだ。……そうだ、これをちょっと読んでみてくれ」
リエイムは服のポケットから四つ折りの紙を取り出し、渡してくる。
「なんですか、これ?」
リエイムは力なく首を横に振る。
「だめだ。これ以上思案する時間は残されていない。セディシア王は今も我が城に向かっているだろう。城がもぬけの殻だと知ればそうすれば王はどんな手を使ってでも絶対に追ってくる。やるならなるべく早く……今日明日しかない」
幾度となく見てきた、一度やると決めたときの顔だ。
「では、私もリエイムと一緒に願います」
「伝説を読んだだろう。真珠は、一人の願いしか叶えてくれない」
「何か、何か必ず違ういい方法が残っているはずです……! 例えば、記憶を失いたいと思っている人を探すとかっ、もしくはもう記憶がほとんど消えてしまった人を探すとかっ」
現実味のない案を出しながら、そんなことはこの短期間で無理だと自分でもよくわかっていた。
そして、幾度となく一緒に出向いた戦いで散々思い知らされてきた。
リエイムが考え抜いた決断はいつだって一番正しい。
サニは自分が発した言葉に傷つき、顔をくしゃりとゆがめる。
「そんな顔をしないでくれ。サニの気持ちを聞いて、今俺は逆に希望で満ち足りた気持ちなんだ。だって、サニが記憶を失ってしまっても俺さえ覚えていれば、またアタックすればいいだけじゃないか。一度好きになってくれたということは、少なくとも勝算はあるということだろう? だったら俺は何度でも挑戦するさ」
サニは途方に暮れ、顔を両手で覆い涙を流した。
その手をそっと離して、濡れた頬を指で拭き取ると、リエイムはとびきりの笑顔を見せた。
「心配するな。君がたとえ俺のことを覚えていなくても、絶対にまた好きにさせてみせるから。ほら、そう思うとわくわくしてこないか? 俺たちの物語は、必ずハッピーエンドで終わらせよう」
「絶対に、ですか?」
「ああ、絶対にだ。……そうだ、これをちょっと読んでみてくれ」
リエイムは服のポケットから四つ折りの紙を取り出し、渡してくる。
「なんですか、これ?」
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