68 / 104
第二章
真珠の使い道 3
しおりを挟む
「だから、俺はもう一度、同じように伝説をなぞる。そして龍の伝説をこの世から消し去って、全く平和な世の中にはならずとも、少なくともこの世から最終兵器を国同士が取り合う未来を塗り替えてみせる。サニがこの先も元気で、幸せでいてほしいから」
いつの間にか、青い瞳からははらはらと大粒の涙が流れていた。サニは濡れた頬を指の腹で拭った。
「サニが一緒にどこか遠い所へ逃げようと言ってくれて、どれだけ救われたことか。龍になってから、ずっと足かせをつけられ水中に沈んでいるような気持ちだった。でもサニに逃亡を持ちかけられて、唐突に心に羽が生えたみたいに軽くなって、開放的な気持ちになれた」
「あと少し、村長の到着が遅ければ、……私の手を取っていましたか」
しばしの沈黙が訪れる。
「……サニ。俺の、世界で一番好きな人。俺に希望を与えてくれてありがとう。俺の前に現れてくれて、ありがとう」
リエイムは、一番聞きたい問いには答えなかった。
いつも肝心なところで、重大なことを言わずにそうやってひとりで重圧を両肩に引き受けるのだ。
サニがわずかに口調を強めた。
「いつもあなたは自分だけ……そうやって言いたいことだけ言って、さっさと私の前から去るんですね。勝手に自己解決したあなたはそれで納得していいかもしれませんが、残った私の気持ちはどうなるのです?」
「気持ち、とは?」
「私がリエイムのことを好きだという気持ちです」
「……嘘だろう?」
リエイムはまるで予想外だと言うように、目をぱちくりとさせる。
「それはいくらなんでも失礼でしょう。自分は、婚約の提案までしておいて」
「いや、そうなんだが……でもまさか、同じ気持ちが返ってくるとは思わないだろう」
「重ねて失礼ですね。本当は植物園で言おうとしていました。あの夜、ふたりで逃げようと提案したのは、あなたを守りたいと心から思ったから。……リエイムのことが、好きだという自分の気持ちに気づいたからです」
「本気なのか……」
「本気じゃなかったら、こんなことまでしてません」
まくし立てていた声を落とし、リエイムに向き直ると真剣な表情を作る。
いつの間にか、青い瞳からははらはらと大粒の涙が流れていた。サニは濡れた頬を指の腹で拭った。
「サニが一緒にどこか遠い所へ逃げようと言ってくれて、どれだけ救われたことか。龍になってから、ずっと足かせをつけられ水中に沈んでいるような気持ちだった。でもサニに逃亡を持ちかけられて、唐突に心に羽が生えたみたいに軽くなって、開放的な気持ちになれた」
「あと少し、村長の到着が遅ければ、……私の手を取っていましたか」
しばしの沈黙が訪れる。
「……サニ。俺の、世界で一番好きな人。俺に希望を与えてくれてありがとう。俺の前に現れてくれて、ありがとう」
リエイムは、一番聞きたい問いには答えなかった。
いつも肝心なところで、重大なことを言わずにそうやってひとりで重圧を両肩に引き受けるのだ。
サニがわずかに口調を強めた。
「いつもあなたは自分だけ……そうやって言いたいことだけ言って、さっさと私の前から去るんですね。勝手に自己解決したあなたはそれで納得していいかもしれませんが、残った私の気持ちはどうなるのです?」
「気持ち、とは?」
「私がリエイムのことを好きだという気持ちです」
「……嘘だろう?」
リエイムはまるで予想外だと言うように、目をぱちくりとさせる。
「それはいくらなんでも失礼でしょう。自分は、婚約の提案までしておいて」
「いや、そうなんだが……でもまさか、同じ気持ちが返ってくるとは思わないだろう」
「重ねて失礼ですね。本当は植物園で言おうとしていました。あの夜、ふたりで逃げようと提案したのは、あなたを守りたいと心から思ったから。……リエイムのことが、好きだという自分の気持ちに気づいたからです」
「本気なのか……」
「本気じゃなかったら、こんなことまでしてません」
まくし立てていた声を落とし、リエイムに向き直ると真剣な表情を作る。
1
あなたにおすすめの小説
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
Please,Call My Name
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』最年長メンバーの桐谷大知はある日、同じグループのメンバーである櫻井悠貴の幼なじみの青年・雪村眞白と知り合う。眞白には難聴のハンディがあった。
何度も会ううちに、眞白に惹かれていく大知。
しかし、かつてアイドルに憧れた過去を持つ眞白の胸中は複雑だった。
大知の優しさに触れるうち、傷ついて頑なになっていた眞白の気持ちも少しずつ解けていく。
眞白もまた大知への想いを募らせるようになるが、素直に気持ちを伝えられない。
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる