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第3話:ドキドキの実食タイム
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デミアルド様のお父様は、とても厳めしい見た目の怖そうな方です。
彼よりも頭一つ分は背が高く、肩幅は二倍以上はあります。
何より金細工で飾られたその立派な角は存在感が凄まじく、親子で並び立つとデミアルド様の角がおもちゃに見えるほどでした。
料理中のトリップ状態から戻ってきた私は冷静になり、自分が何をしでかしたのか震えながら顧みます。
今からあの方に先ほどの料理(?)をお出しするなんて、国へ帰るどころか死刑になりに行くようなものではないのでしょうか……。
「ご無沙汰している。エルネット嬢、息子との生活は順調か?」
「……はい」
「ほう、それはよかった。あまり急かすつもりはないが、孫の顔を見るのが今から楽しみだ」
デミアルド様のお父様は、低く渋いテナーボイスでそう仰られました。
ごめんなさいお義父様。
子どもを作るどころか指一本触れられてはおりません……。
「して本日は、そなたの手料理が振る舞われると思ってよいのかね?」
「は、はい……」
「ふむ? そう緊張せずともよい。以前に食べたそなたの国の料理は素晴らしいものであったが、何もあれと同じ物を出せと言っているわけではないのだとも」
お義父様はそう仰ってくださいますが、彼の中でハードルが上がっているのは明らかでした。
期待の眼差しから逃れるために顔を伏せると、そんな私にデミアルド様の冷ややかな声がかけられます。
「親父殿、あまり期待をかけないでやってくれ。どうやら彼女の国では本来、料理は男しかしないものらしいのだ」
「ほう? それは初耳だが」
「なに、俺は他ならぬ妻からそう聞いているぞ。そうだろう? エルネット。そうでなければおかしいよなぁ?」
「…………」
もちろん、そんなことを言った覚えはありません。
私は彼の皮肉に対し肯定も否定も返すことなく、にこやかな微笑みを顔に浮かべて言いました。
「本日は、デミアルド様の大好物を作りましたのよ。ぜひご堪能くださいましね」
「はあ? 俺の好物だと……?」
「む……? こやつの、好物……?」
デミアルド様とお義父様が、揃って訝しげな表情をなさいます。
夫のほうはともかくとして、どうしてお義父様まで疑問符を浮かべていらっしゃるのでしょうか……?
……まあ、ともかく。
もう後戻りはできません。
広い食堂の入り口から給仕の方々が現れて、私たちが着くテーブルの上に例のスープを並べていきます。
ごろごろと怪しげな食材の入ったそれはスープというよりもはやシチューで、紫色にぽこぽこと泡立つ液体には謎のとろみがついておりました。
魔族の給仕の方々は皆、麻布で顔を覆っています。
恐らくは、匂いを吸い込むと咽てしまいそうになるからでしょう。
「こ、これは……!?」
戦慄したご様子で、お義父様が声を漏らします。
私は、もうどうにでもなれ……! という気持ちで努めて不敵な笑みをデミアルド様へと向けました。
「いつもの味付けでは物足りないと仰いますので、私あなたのことを想って一生懸命に作りましたのよ? さあどうぞ、お召し上がりになってください」
そう言いながらも心の中では、大変なことをしでかしてしまったな……と焦りと後悔が激しく渦巻いておりました。
きっと私はこれまで以上に酷くなじられ、お義父様からも厳しいお叱りを受けることになるでしょう。
でも、もはや私は限界なのです。
魔族と人間族の将来なんて知ったことではありません。もう国へ帰らせて……っ!
――しかし、デミアルド様の反応は、私の予想とは大きく違うものでした。
「…………」
彼は黙ってスプーンを手に取ると、震えるそれでシチュー(?)をすくい、ゆっくりと口へと運びました。
一口、二口……三口。
デミアルド様の口の中へと、謎の液体が消えていきます。
彼は、もはや何だか分からない肉をもきゅもきゅと咀嚼しながら何事ゆえか何度も頷き、そしてつっと、その頬を涙が伝いました。
……え!? 何あれ!? 怖っ!?
理解不能な光景に、今度は私のほうが慄きます。
デミアルド様は感極まった様子で天井を仰ぐと、声を震わせて仰いました。
「これだ……これこそは、母上の味だ」
??? は? え? はい? 今何と?
私が困惑した瞬間でした。
「ッッッ、この、マザコン息子がッ!! その腐った舌をなおせとあれほど言っただろうがッ!! それが事もあろうに、自分の妻になんて物を作らせているのだッ!!」
お屋敷が崩れてしまうかと錯覚するほどの大音量で、お義父様の怒鳴り声が響き渡りました。
彼よりも頭一つ分は背が高く、肩幅は二倍以上はあります。
何より金細工で飾られたその立派な角は存在感が凄まじく、親子で並び立つとデミアルド様の角がおもちゃに見えるほどでした。
料理中のトリップ状態から戻ってきた私は冷静になり、自分が何をしでかしたのか震えながら顧みます。
今からあの方に先ほどの料理(?)をお出しするなんて、国へ帰るどころか死刑になりに行くようなものではないのでしょうか……。
「ご無沙汰している。エルネット嬢、息子との生活は順調か?」
「……はい」
「ほう、それはよかった。あまり急かすつもりはないが、孫の顔を見るのが今から楽しみだ」
デミアルド様のお父様は、低く渋いテナーボイスでそう仰られました。
ごめんなさいお義父様。
子どもを作るどころか指一本触れられてはおりません……。
「して本日は、そなたの手料理が振る舞われると思ってよいのかね?」
「は、はい……」
「ふむ? そう緊張せずともよい。以前に食べたそなたの国の料理は素晴らしいものであったが、何もあれと同じ物を出せと言っているわけではないのだとも」
お義父様はそう仰ってくださいますが、彼の中でハードルが上がっているのは明らかでした。
期待の眼差しから逃れるために顔を伏せると、そんな私にデミアルド様の冷ややかな声がかけられます。
「親父殿、あまり期待をかけないでやってくれ。どうやら彼女の国では本来、料理は男しかしないものらしいのだ」
「ほう? それは初耳だが」
「なに、俺は他ならぬ妻からそう聞いているぞ。そうだろう? エルネット。そうでなければおかしいよなぁ?」
「…………」
もちろん、そんなことを言った覚えはありません。
私は彼の皮肉に対し肯定も否定も返すことなく、にこやかな微笑みを顔に浮かべて言いました。
「本日は、デミアルド様の大好物を作りましたのよ。ぜひご堪能くださいましね」
「はあ? 俺の好物だと……?」
「む……? こやつの、好物……?」
デミアルド様とお義父様が、揃って訝しげな表情をなさいます。
夫のほうはともかくとして、どうしてお義父様まで疑問符を浮かべていらっしゃるのでしょうか……?
……まあ、ともかく。
もう後戻りはできません。
広い食堂の入り口から給仕の方々が現れて、私たちが着くテーブルの上に例のスープを並べていきます。
ごろごろと怪しげな食材の入ったそれはスープというよりもはやシチューで、紫色にぽこぽこと泡立つ液体には謎のとろみがついておりました。
魔族の給仕の方々は皆、麻布で顔を覆っています。
恐らくは、匂いを吸い込むと咽てしまいそうになるからでしょう。
「こ、これは……!?」
戦慄したご様子で、お義父様が声を漏らします。
私は、もうどうにでもなれ……! という気持ちで努めて不敵な笑みをデミアルド様へと向けました。
「いつもの味付けでは物足りないと仰いますので、私あなたのことを想って一生懸命に作りましたのよ? さあどうぞ、お召し上がりになってください」
そう言いながらも心の中では、大変なことをしでかしてしまったな……と焦りと後悔が激しく渦巻いておりました。
きっと私はこれまで以上に酷くなじられ、お義父様からも厳しいお叱りを受けることになるでしょう。
でも、もはや私は限界なのです。
魔族と人間族の将来なんて知ったことではありません。もう国へ帰らせて……っ!
――しかし、デミアルド様の反応は、私の予想とは大きく違うものでした。
「…………」
彼は黙ってスプーンを手に取ると、震えるそれでシチュー(?)をすくい、ゆっくりと口へと運びました。
一口、二口……三口。
デミアルド様の口の中へと、謎の液体が消えていきます。
彼は、もはや何だか分からない肉をもきゅもきゅと咀嚼しながら何事ゆえか何度も頷き、そしてつっと、その頬を涙が伝いました。
……え!? 何あれ!? 怖っ!?
理解不能な光景に、今度は私のほうが慄きます。
デミアルド様は感極まった様子で天井を仰ぐと、声を震わせて仰いました。
「これだ……これこそは、母上の味だ」
??? は? え? はい? 今何と?
私が困惑した瞬間でした。
「ッッッ、この、マザコン息子がッ!! その腐った舌をなおせとあれほど言っただろうがッ!! それが事もあろうに、自分の妻になんて物を作らせているのだッ!!」
お屋敷が崩れてしまうかと錯覚するほどの大音量で、お義父様の怒鳴り声が響き渡りました。
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