無理やり攫ってきておいて、運命の番と出会ったからと捨てられました

九条 雛

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第2話

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 リカルド侯爵様は獣人です。
 私のようなただの人間とは違い、獣の耳と、ふさふさの尻尾が生えています。

 そしてこの国は私以外、全てのひとが獣人です。
 ここは獣人の国なのです。

 私はこの国に、召喚の儀によって呼び出されました。
 いわゆる、異世界召喚というものです。

 私がこの国に召喚されたのは、私が『聖女』というものであるかららしいです。

 この世界のものは皆、魔力というものを持っていて、それは生き物の輪廻とともに、循環しているのだそうです。
 ですが何百年に一度かの周期で、魔力の循環が滞る事があり、そうすると淀んだ魔力溜まりができてしまいます。

 私には、聖女としてその『悪い魔力溜まり』を散らす力があるそうで、元いた国からこの世界に召喚されました。

 事前に了承などはなく、つまりは拉致されてきたという事です。
 この国に来て最初のうちは、私は日々を塞ぎこんで過ごしておりました。

 もう元いた世界に帰る事はできず、家族とも会えません。
 私は人間ではなく浄化装置として、この国の離宮に軟禁される事となったのです。

 悲しみに暮れるなか、私のもとに足しげく通い、慰めの言葉をかけてくれたのがリカルド様でした。

 初めのうちは、私は彼の気遣いを拒否し、むしろ煩わしいと嫌ってさえおりました。
 彼はそれでも諦めず、根気よく私に寄り添って、少しずつ、少しずつ私の心を溶かしていきました。

 そうして私はいつしか笑えるようになり、この世界での生活も、受け入れる事ができるようになってきた頃の事です。

「ユイ、きみさえよければ、僕と結婚して家族になろう。僕がきみの、この国での居場所になりたいんだ」

 リカルド様のその申し出を、私はたくさん悩んでから、お受けしました。

 本音を言ってしまえば、少しだけ『怖い』という気持ちもありました。
 彼と結婚してしまえば、それこそ私は、本当にこの国の人間になってしまいます。
 それは元いた世界との繋がりを、完全に捨て去ってしまう事のように思えたのです。

 ですが、彼の優しさに支えられ、彼とともに歩みたいと思う気持ちがあるのも事実です。
 私は彼と婚約し、諸々の政治的な準備が整ったのちには、この離宮を出て彼の屋敷へと行く予定でした。

 そんなときです、彼が『運命の番』と出会ったのは。
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