1 / 10
漂流、そして出会い
しおりを挟む
私の搭乗したAN127便は、原因不明のトラブルで37,000フィートから一気に急降下を始め太平洋上へ墜落した。
何とか救命ボートにしがみつき、灼熱の太陽にさらされながら3日間の漂流の末、赤道近くの無人島に漂着した。
同乗していた何人かは遺体で流れ着いたが、それ以外の者はどうなったかわからない、まして生存者がいたかどうかは見当もつかない。ここから私の孤独なサバイバル生活が始まった。
◇◇◇
見渡す限りにコバルトブルーの静かな海面が広がり、私の全ての気力を吸い尽くそうとしている。空からはジリジリと太平洋の鋭い日差しが肌を尽突き刺している。
目的もなく歩き出すとすぐにも大粒の汗が滝のように滴り落ち、喉が悲鳴を上げ始めたのはそう時間もかからぬ頃であった。口唇の皮がボロボロとこぼれ落ち、心臓の音がドクンドクンと聞こえるようになってきた。
どうやら脱水症状のようだ。漂流中からの体力の衰えもあり、私の体では無いような違和感を覚え始めている。
きっと何かがあるだろうと島の高台を目指して、とにかく無心で歩き続けた。しばらくし、中腹に差し掛かったところで黄色い野球ボール大の果実が目に入った。その時はまだ、私に運が残っていると錯覚したのであった。
一目散に黄色い柑橘類をむしりとり、分厚い皮を向いて口に放り込んだ。
「うっ、」
想像していたのとは別次元の苦さと酸っぱさが口の中を襲うが、それと同時に糖分とミネラルの何とも言えぬ旨味に包まれ、私は一瞬で生気を呼び戻すことが出来た。
しかし、ここでは今後水の確保が問題となることを痛感せざるを得ない出来事となった。
高台の上から見渡す景色は、私の心を離さなかった。東京では一生得られないような解放感が私の五感に絶え間なくアクセスしてくる。
西の海に太陽が落ち始め、辺りを夕闇が包み込み始めると、私は急いで海辺に戻り、テレビの真似事をしながら火を起こした。火打ち石の原理で石をぶつけ、乾いた樹皮に火花を飛ばすとすぐに着火した。テレビのようにガチガチとぶつけるのでは無く擦り合わせるようにぶつけると案外簡単に火花が飛び散った。
ろくに動く気力も無いため、そこらに落ちている貝を火の中に突っ込み、とにかく胃袋に突っ込んだ。
──その時何かに私の意識が吸い寄せられた
草むらの茂みがゴソゴソと葉を揺らしながら、静かに何かが近寄って来る。私は咄嗟に火打ち石を握りしめ、茂みに向かって身構えている。
黒い物体がゆっくりと近づいてくると同時に私は手に汗を握りながら一点を凝視し続けていた。
その黒い物体は残り火の薄明かりに徐々に近づいてくると共に、私の不安とは真逆の姿が浮かび上がってきた。
そこには長い黒髪に整った顔立ちをした若い女性が震えながら立っていた。その女性は太平洋の海よりも透き通った瞳で私の方をじっと見つめており、右腕からは出血なのか、どす黒くなった血糊のようなものが確認できる。
「すぐにこちらで休んで下さい」
私はそう優しく声を掛けると、緊張の糸がほどけたかのようにその場に跪いてしまった。すぐに私は彼女を横にすると女性はウトウトと深い眠りについていった。
私は透き通るような白い肌を横目に、隣で火種を絶やさぬようチビチビと薪をくべながら天を仰ぐ。
そこには無数の淡い光に彩られる天の川が浮いており、水平線上に輝く南十字星が黙って私を見つめ返していた。
To be continued.
何とか救命ボートにしがみつき、灼熱の太陽にさらされながら3日間の漂流の末、赤道近くの無人島に漂着した。
同乗していた何人かは遺体で流れ着いたが、それ以外の者はどうなったかわからない、まして生存者がいたかどうかは見当もつかない。ここから私の孤独なサバイバル生活が始まった。
◇◇◇
見渡す限りにコバルトブルーの静かな海面が広がり、私の全ての気力を吸い尽くそうとしている。空からはジリジリと太平洋の鋭い日差しが肌を尽突き刺している。
目的もなく歩き出すとすぐにも大粒の汗が滝のように滴り落ち、喉が悲鳴を上げ始めたのはそう時間もかからぬ頃であった。口唇の皮がボロボロとこぼれ落ち、心臓の音がドクンドクンと聞こえるようになってきた。
どうやら脱水症状のようだ。漂流中からの体力の衰えもあり、私の体では無いような違和感を覚え始めている。
きっと何かがあるだろうと島の高台を目指して、とにかく無心で歩き続けた。しばらくし、中腹に差し掛かったところで黄色い野球ボール大の果実が目に入った。その時はまだ、私に運が残っていると錯覚したのであった。
一目散に黄色い柑橘類をむしりとり、分厚い皮を向いて口に放り込んだ。
「うっ、」
想像していたのとは別次元の苦さと酸っぱさが口の中を襲うが、それと同時に糖分とミネラルの何とも言えぬ旨味に包まれ、私は一瞬で生気を呼び戻すことが出来た。
しかし、ここでは今後水の確保が問題となることを痛感せざるを得ない出来事となった。
高台の上から見渡す景色は、私の心を離さなかった。東京では一生得られないような解放感が私の五感に絶え間なくアクセスしてくる。
西の海に太陽が落ち始め、辺りを夕闇が包み込み始めると、私は急いで海辺に戻り、テレビの真似事をしながら火を起こした。火打ち石の原理で石をぶつけ、乾いた樹皮に火花を飛ばすとすぐに着火した。テレビのようにガチガチとぶつけるのでは無く擦り合わせるようにぶつけると案外簡単に火花が飛び散った。
ろくに動く気力も無いため、そこらに落ちている貝を火の中に突っ込み、とにかく胃袋に突っ込んだ。
──その時何かに私の意識が吸い寄せられた
草むらの茂みがゴソゴソと葉を揺らしながら、静かに何かが近寄って来る。私は咄嗟に火打ち石を握りしめ、茂みに向かって身構えている。
黒い物体がゆっくりと近づいてくると同時に私は手に汗を握りながら一点を凝視し続けていた。
その黒い物体は残り火の薄明かりに徐々に近づいてくると共に、私の不安とは真逆の姿が浮かび上がってきた。
そこには長い黒髪に整った顔立ちをした若い女性が震えながら立っていた。その女性は太平洋の海よりも透き通った瞳で私の方をじっと見つめており、右腕からは出血なのか、どす黒くなった血糊のようなものが確認できる。
「すぐにこちらで休んで下さい」
私はそう優しく声を掛けると、緊張の糸がほどけたかのようにその場に跪いてしまった。すぐに私は彼女を横にすると女性はウトウトと深い眠りについていった。
私は透き通るような白い肌を横目に、隣で火種を絶やさぬようチビチビと薪をくべながら天を仰ぐ。
そこには無数の淡い光に彩られる天の川が浮いており、水平線上に輝く南十字星が黙って私を見つめ返していた。
To be continued.
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる