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碧の秘密

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暗闇を照らすと、そこには太古の世界が広がっていた。

まるでエジプト神話に出てくるアヌビスのようなゴールデンウルフの頭部を持つ半獣の神の絵が描かれている。壁一面に多くの神々が現れ、5000年前のエジプトのアルマナ様式を彷彿させる抽象的な表現で描かれている。

しかし、あるひとつの違いに気づいた。彼らには皆刺青のような模様が施されているということである。

私はある仮説を立てた。ここはもしかしたら最強の種族と呼ばれた古代ポリネシア人の住んでいた神殿ではないか。昨日見た南十字星の位置といい、格闘技選手のマーク・ハントのような刺青の模様といい、幾つか確証が得られるものがあった。

私は壁画を眺めながら、今いる場所を推理していった。恐らくオーストラリアと南米の間のポリネシアン・トライアングルの中であろうと考えた。確かにこの付近にはイースター島のように古代文明が栄えた地域もあり、太古から幾つかの種族が流れ着いてきたとも考えられる。

二人はひたすら階段を下りていくと、壁画が途切れていることに気がついた。最後に描かれている絵は何とも奇妙なものであった。

大きな雲が描かれ、その先に螺旋状の長い紐のようなものが、数種類の規則的に並んだ象形文字らしきもので繋がれている。そして、2本の紐は白い人らしき絵の頭部につながっている。しかし、人にしては妙に大きく体調3メートルほどの背丈はあるのでは無いだろうか。

──何故、この種族は滅んでしまったのだろうか。

ようやく地下の石畳にたどり着くと、水滴がポタポタと落ちてきて水たまりが出来ている。

「ハル、水だ。生き返るよ」

二人はそう言いながら浴びせるように水を飲んだ。幸いこの地下水は淡水で、私たちにとってまさに生命線となるものとなった。

そして、私たちの目の前には青い石で出来た巨大な扉が現れた。二人で押して見たが全くびくともしない。

どうすることも出来ず途方に暮れているとハルが自分の判断を悔やみ申し訳無さそうにしていた。

「アオ」

そうハルが私の名を呼んだ時、石の扉が動き出した。まるでデパートの自動ドアが開くかのように滑らかに扉は開いた。

まるで何かに導かれ、プログラミングされた運命を進んでいるかのようだ。

◇◇◇

その瞬間、私の目には眩しいばかりの空間が広がっている。みずみずしく草木が生い茂り、中央の丸いガラスのような物体からは水色の光が発せられているのだが、これまでに見たことが無い何か異様な状況に、私はとまどいを隠せないでいる。

まるで核融合炉で発生するチェレンコフ光のような水色の光は美しくも、恐ろしい輝きを放っている。

二人は何か途轍もない恐怖を感じ、その場にじっと立ち尽くしていた。

To be continued.
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