黒の文明 ─無人島からのメッセージ─

あす

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漆黒の世界に導かれて

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「碧(アオ)」

このプロジェクトは君に任せる。先輩がそう言うと私の手は震え、全てが希望に満たされていた。

私の企画した「日豪共同によるクイーンズランド州クリーンエネルギー転換プロジェクト」がコンペを勝ち抜き、両国の合同プロジェクトとして採択された。全く信じられなかったが、最年少の私がビックプロジェクトを任されることとなり三名のチームメンバーも合流することになった。

そして私は息つく暇もなくすぐに現地スタッフに会うためにAN127便に飛び乗った...

──「碧(アオ)」

ハルは私の名を呼び後方を指差した。遥か先の海からブクブクと泡が出ているのが見える。するとその瞬間、カタカタと石と石がぶつかり合う嫌な音がしたと思ったら、直後に東日本を彷彿させる激しい衝撃が二人に襲いかかった。

「ハル、捉まるんだ」

石畳が波のようにうねり、その場でじっと四つん這いになることしか出来ない。無数の鳥たちがけたたましい叫び声をあげて島の周囲を飛び回っているが、空気中にもこの激しい振動が伝播しているようで彼らのぎこちない動きが、いっそう恐怖を引き立てている。

二人は恐怖の中を抱き合いながら、じっと時が過ぎるのを待った。この時間があまりにも長く感じられここに来てからの非現実的な出来事が走馬灯のように頭の中を過っていった。

◇◇◇

何時間経ったのだろうか。

大きな揺れはおさまり余震が続いているものの、立ち上がって辺りを見渡すと、先ほどの海面から黒い煙が上がっていることが確認出来た。どうやらこの辺一体は海底火山の巣窟であろうか、早く脱出しないとこの島自体が沈んでしまうのではないのかと悟った。

「あれを、見て」

ハルが指差すと石畳中央にあった青い石が無くなっており、そこには真っ暗な空洞が地下に繋がっていた。

「ハル、進むかやめるか二人で決めようか」

そう言い終わる前にハルは頷き、すぐさま踵を返して歩きだしたと思ったらこっちに駆け寄ってきて、

「やっぱり、一緒に行きましょう」

私の気持ちを悟ったのか、お互いの決心は同じ結論に達し、漆黒の世界へ足を踏み入れることになった。口を開けた遥か太古の漆黒は私たちを招き入れようとしている気がしてならなかった。

漆黒の世界を上から覗き込むが何も見えない。すかさずハルがポケットからスマホを取り出して僅かばかり残ったバッテリーでライトを点灯する。

そこには螺旋階段がどこまでも深く、地の底に導かれるかのように二人を運んで行こうとしていた。しかし、前に進むしかない。そう言い聞かせ二人は黒の世界に包まれていった。

To be continued.
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