異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第十五話

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    第一印象は野盗。第二印象は剣豪。その実態は神速チート持ちのミカエル・シンだ。
 

 「お前、なかなかやるじゃねぇか!」
 
 プリシラさんは僕の肩を抱き寄せながら頭を叩いて誉めてくれた。プリシラさんは僕より大きく、皆の所に戻るまで肩を抱き寄せ歩く姿は捕まった宇宙人の様だ。胸をわざと当ててるのかな。少しの役得。
 
 「強かったのであるが、バラバラではゾンビが出来ないのである」
 
 出会った頃からゾンビ好き。変わらないねルフィナは。これで僕をゾンビ化する計画も変わっていてくれたら嬉しい。
 
 「これで依頼は片付いたろ。ゾンビに証拠を取らせて死体は始末しろ。場所を変えて飯にするぞ」
 
 ゾンビ達は以外に働き者。動作は遅いが数が多いし時間は余りかからなかった。辺りに漂う腐敗臭も変わらないんだね。
 
 「すみません、刀を勝手に借りちゃって」
 
 「いいって事よ。お前、なかなか戦えるんだな。気に入ったぜ。一緒に飯でも食ってきな」
 
 気に入られ作戦成功。プリシラさん、チョロいからなぁ~。後は食事に盛られるはずの催淫剤に注意しないと。
 
 ゾンビが仕事を終え場所を変えたら火を囲む様に食事になった。隣にはプリシラさんとオリエッタが座り両手にライカンスロープと薬を盛る予定の花に囲まれた。逃がす気ないね、逃げないけど。
 
 食事にはお酒も出て来て盛り上がり、一時間くらい経つとシビレを切らしたプリシラさんが怒鳴って来た。
 
 「全然効かねえじゃねぇか!」
 
 罵声を浴びせて僕を森の方へ引っ張って行く。催淫剤の事だと思うけど初めのうちに固い物を噛んだ時に見えないように吐き出した。盛られるのを分かっていて飲むわけないでしょ。
 
 
 
 「拉致られたである」
 
 「かなり我慢してましたからね。いつ暴れだすかとハラハラしてました」
 
 「催淫剤は効かなかったです~」
 
 「しかし良かったであるか?    プリシラが連れていけばバラバラになるである」
 
 「……」
 
 「仕方がないッスよ。戦時団則は次の村で男を捕まえるしかないッス」
 
 「いい男である。クリスティンが行けばバラバラにならずゾンビにしておけたである」
 
 「どのくらい持ちますか~」
 
 「三十分、いや二十分もてばいいと思いますよ」
 
 「首だけでも持ち帰って欲しいである」
 
 
 が、三十分たってようやく森を響かす唸り声が聞こえた。
 
 「やっとライカンスロープになったである」
 
 「時間がかかりましたね。まだ生きてるんですね」
 
 「ソフィア姉さん、嬉しそうッス」
 
 「そんな事ないわよ。ちょっと以外なだけよ」
 
 「確かにあの体つきでプリシラさんに絡める何て不思議です~」
 
 「でも、終わりですね」
 
 「終わりである」
 
 「……」
 
 
 
 勝手な事を言ってるんじゃねぇ!    こっちは命懸けなんだぞ!
 
 森に拉致られて、これから何が起こるか分かってる僕は、そのつもりだったから気合いを入れてた。いつでも神速が使える様に。
 
 プリシラさんに腕を捕まれ森の奥まで来て、いきなりのボディーブロー。神速を使わなかったら死んでたかも。
 
 「お前、何者だ!」
 
 「僕はミカエル・シン……」
 
 「そんな事を聞いてるんじゃねぇ! さっきの戦いといい、今の避ける速さといい、ただ者じゃねぇ!」
 
 さすが団長だけやってるだけありますね。だけど震えてますよ。団長としての責務と個人としての感情とどちらを優先させるか。
 
 こんな時は神速で近づい押し倒してキスをする。バスターソードを持ってるプリシラさんを相手に無傷で出来るのか!?
 
 僕も借りてきたショートソードを使うか!?    いくら神速が有るからって傷を付けずにプリシラさんを圧倒出来るのか!?    これからする事が夜の営みの一貫なら、世界でも一番激しい営みなんだろうな。
 
 「プリシラさん、知りたいのなら遠慮はしませんよ」
 
 「バカかめてぇは!    捻り切ってやる!」
 
 女の子が「捻り切ってやる」何て言うもんじゃないよ。それなら僕は「ハメ殺してやる」かな。そんな事を言えるほどの余裕が今なら有る!    ……少し有る!
 
 僕はショートソードを捨て、これも借りてきたナイフを右手に掴んだ。速さを生かすのにショートソードでもまだ大きい。
 
 僕はボクサーの様な軽いフットワークを見せ、プリシラさんを撹乱する。プリシラさんは警戒もせず正面から突っ込んできた。僕はバスターソードを避けプリシラさんの唇を奪って一歩下がった。
 
 「てめぇ、いきなり舌まで入れやがって……」
 
 顔を赤らめるプリシラさんも可愛い。これでバスターソードが無ければ、優しく押し倒したのに残念だ。優しく出来ないのが……
 
 プリシラさんの剣を避けてキスをするの繰り返し、チャンスがあれば積極的に胸やお尻へのタッチを狙っていった。
 
 「てめぇ……」
 
 息が切れているより、息が荒くなって来た。さっきから何合も剣を交わして体力を使った所に甘い誘い。神速のタッチは有効打を与えてる。このままダウンを奪ってもいいが、観客は納得しないだろうし、何より力を見せ付けてヤりたい。
 
 「プリシラさんもこれまでですか?    今なら優しく出来ますよ」
 
 「舐めるなバカヤロー。勝負は……」
 
 最後まで話を聞いてやる義理は無い。神速で近付き顔面へのパンチ。わざと遅く放ってガードさせ、その手を取って関節技で地面に叩き付けた。
 
 プリシラさんは顔を守る為に左手を使い僕は右手を握っている。そしてお尻を突き出すように不恰好だが、これでいい。
 
 左手のナイフでボトムスの紐を切り裂き、ショーツごと膝まで一気に引き下ろした。これはレイプでは無い。レイプに見えるだろうがレイプでは無い。
 
 今の白百合団が見たらレイプに見えるのだろうけど、プリシラさん相手にこのくらいしないと相手にさえならない。
 
 僕は右手を押さえたままプリシラさんの後ろに周りボトムスを脱ぐ。スライムから鋼鉄のペティナイフへ変身を遂げて準備万端だ。
 
 「てめぇ!」
 
 何をされるのか理解するのが遅かったね。僕が素直に殺されるかと思ったのか!    渾身の一突きはプリシラさんの濡れた秘部へと突き刺さった。
 
 「うぐっ、    そ、そんなもんか、てめぇ……」
 
 甘い!    何の為に神速をもらったと思ってるんだ。戦う為だけじゃない、僕のペティナイフを凶器に変える為でもあるんだ!
 
 直径三十ミリ、射程百四十ミリ、毎分七百発を誇るチェーンガン!    攻撃ヘリコプターにも搭載され戦車だって破壊できる威力を思いしれ!
 
 僕はバックの体勢から叩き出した神速の三十ミリ、チェーンガン。射程は短いが威力は、毎分七百発。それを全て叩き出す!
 
 「あっ、てめぇ、あっ、あっ、あふぁ……」
 
 秘部から漏れ出す愛液と力無く崩れるプリシラさんを見て、僕は勝利を確信した。最後には言葉も出せなかっただろ。前世とは違うのだよ前世とは!
 
 僕は勝利の余韻を噛み締めながらボトムスを履いた。うん、完璧な仕事の後は気持ちいい。プリシラさんは腰だけを上げ、気を失ってる様だが、どうやって運ぼうか。
 
 周りを見渡しても森の中。役に立ちそうな物は無いし、背負うには遠いし重い。仕方がないから行ける所まで背負うかと振り替えればボディーブロー。
 
 足から崩れ両膝を地面に着いた所で膝蹴りを顔面にもらった。鼻を押さえて引っくり返る僕にボトムスを下ろすプリシラさん。
 
 「て、てめぇ、    ……いい物、持ってんじゃねぇか!」
 
 下ろされたボトムスから顔を出すペティナイフ。さっきは必死に撃ち尽くす事を考えてトリガーを絞ったけど、撃ちきった訳ではない鋼鉄のペティナイフ。

 プリシラさんはそれを握ると自分のにあてがい、自ら突き刺された。「うっ、あぁぁ」と声を漏らしながらも僕を見る目は野獣の様に変わり身体も野獣に変わっていった。
 
 ライカンスロープ。久しぶりでもない恐怖の対象に僕はここからが命を掛けるのに相応しいのだろうと……    エッチするのに命をかけるのか。
 
 「この姿を見てもビビらねぇか?!」
 
 「慣れてますから」
 
 「面白い男だ。気に入ったが、ここからが本番だぜ。引き千切ってやる!」
 
 「ええ、本番はこれからです」
 
 もう一度、チェーンガンを喰らわせる!    ライカンスロープが相手なら本気出すぜ。と、言っても上から乗られてるし「引き千切る」と言うだけに締まり方が凄すぎる。
 
 動かない!    チェーンガンは締め付けられ回転がしないように、神速での突き上げが出来ない。ライカンスロープの体格もプリシラさんより二回りは大きくなっているようだ。
 
 負けるもんか!    伊達に神様からもらったチートじゃないんだ。ここで使わず、いつ使う!    神速は速さのチート。力が強くなる訳じゃない。僕は渾身の力を腰に込めてライカンスロープになったプリシラさんを持ち上げた。
 
 崩れ落ちる腰、乗り掛かるライカンスロープ。だが、一瞬の光は見えた。地面に腰を落とした時、跳ねたのかプリシラさんが浮いたんだ。
 
 「てめぇは、ここで死ね」
 
 首に掛かる鋭い爪が生えた手。それを押さえて、もう一度。地面に腰を着いて浮かんだ二センチ。射程十四センチ、プリシラさんが落ちてくるまでコンマ五秒。
 
 神速、チェーンガン!
 
 わずかな隙をついて放つ全力のチェーンガンは締め付けられた力をものともせず、全弾発車された。
 
 「うおおぉぉ!」
 
 「なっ、ちょっと待て!    おい!     おっう、あぁぁ」
 
 下からの突き上げに逃げ腰になったプリシラさんを、僕は手から腰に回して離さなかった。今がチャンスだ。絶対に逃がすな、止めを刺すまで!
 
 さすがのプリシラさんも現代兵器のチェーンガンには勝てず、僕の上に乗って野獣の咆哮を上げ初め、最後には「てめぇ……」とだけ言って気を失った。       
 
 
 異世界に来る際には速さのチート一択だな。
 
  
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