19 / 292
第十九話
しおりを挟むおはようございます。こんにちは。こんばんわ。挨拶は大切だ。白百合団の団則に入れたいね。幸にも生きてたよ。幸いなのか分からないけど。
僕たち白百合団は一名を除いて無事にトーワの村に着き、一名を除いて村長と依頼の話をし、一名を除いて村の祝賀会に呼ばれた。その馬車に残された一名に祝賀会のご飯を持ってきてくれたのはプリシラさんだった。
「怪我はどうだ。これは上手かったぞ、食え」
「ありがとうございます、プリシラさん。怪我はなんとか…… でも魔法は便利ですね。ソフィアさんは傷口は治してくれなかったけど流れた血液は補充してくれたみたいで……」
「ルフィナが欲しがってたぞ、いったい何に使うのやら」
絶対に悪い事です。呪いとか、間違いないく死人が関係する様な人に迷惑をふんだんに掛けるに違いないよ。
「それでこれからの事なんだが……」
そうだよなぁ、考えないと。今の場所は前世と同じなら、ここは帝国の西にあるトワルソルヤ王国のはず。 ここで領主を殺してしまって隣の国のハーベマー王国で反乱貴族の鎮圧に参加してからヌーユに行くことになってる。
「とりあえず脱げ」
「へっ?!」
「へっ?! じゃねえよ。団則読んでないのかよ。渡したろ!」
そう言えば馬車に乗る時にもらいましたね。僕は右手にムチ、左手で止血をしてたので読めるわけないだろう!
「すみません、読んでません」
読んだのは前世で規則。確か怪我をした場合は免除させるんだったよね。 僕は後方で馬車に乗って安全な所にいたから怪我をした事なかったけど、他の人は何回かあったよね。
「まぁ、怪我しちまってるからな」
そうです。僕は怪我人です。ナイフで刺された重病人です。全治に二週間は欲しいです。清潔なシーツとグラマーなナース付きでお願いしたい。
「ライカンスロープにはならねえでやるよ。あっちの方がいいんだけどな」
却下です! 僕の意見が。きしむベッドでは無く、固い荷馬車の上で優しさ持ちより、きつく体、抱き締めあえば。 ……死ねる。
三十分ぐらいだったが、人型のプリシラさんは情熱的で馬車が壊れるかと思った。ずっと僕の上に乗って腰を振っていたのは、僕の怪我を労ってくれていたのか。
「後でソフィアに言っておいてやるよ。毎度、血だらけじゃあな」
「お願いします。 ……ちょっと聞いてもいいですか?」
「ん? なんだ?」
プリシラさんと一つの毛布を掛け合ってピッタリとくっつきながら寝るのは最高だ。プリシラさんは僕より大きくて筋肉もあるけどマッチョでは無くて褐色の肌に赤い髪。例えるなら水泳選手の様な肉付きの機能美。抱き心地は最高ですよ。
プリシラさんがライカンスロープになると僕よりもかなり大きく筋肉も黒毛で隠れて着ている服が破れるくらい。例えるならゴリラと狼を足して狂暴にした感じ。抱き心地は命懸けですよ。
「村長にも話をしたし明日には戻って報告ですか?」
「そうだな。戻って領主に報告したら、次の仕事を探すかな」
「他の国まで行ったりするんですか?」
「そうだなぁ~、行ってもいいかな。マクジュルなら近いしな」
マクジュル? 聞いた事がない名前だ。白百合団意外は神様の悪戯が効いてるのか? 悪戯ぐらいで国の名前が変わるのとか有りなのか?
「ここはどの辺りになります?」
「お前、旅をしてたのにそんな事も知らないのかよ。ここはプロメリヤの端っこだぞ。マクジュルはすぐ隣だ」
やっぱり聞いた事がない。マクジュルとプロメリヤ。どちらも前世では無い名前だ。これだとヌーユも無いのか。神様は送った所を間違ってるんじゃないの? ちゃんと配達しないなら判子は押せねぇ。
「色々な所に行くと場所がわからなくなって……」
「方向音痴の旅人なんて聞いた事がねえよ。だいたいどっから来たんだ? 東の帝国か?」
帝国と言えば僕の記憶ではアシュタール帝国になる。大陸で最大、最強の国家になるんだけど、この世界にもあるのかな?
「いえ、もっと北の方からきました」
「ケイベックかロースファー? まさかハルモニアか?」
この三つはある! これは前世と同じだ、帝国の名前が分からないのと帝国より西にあるはずの国の名前が違う。やっぱり神様の汚い罠があって、迂闊に前世を話すと墓穴を掘りそうだ。
「ハルモニアです。ハルモニアの東の方から来たんです」
「ハルモニアだぁ!? こんな遠い所までご苦労なこったな。 ……それで団には慣れそうか?」
「まだ分からない事もありますが精一杯、がんばります」
「そうか、それならもう少し頑張ってくれ!」
そう言うとプリシラさんはライカンスロープになった。 ……ならないって言ったのに。
領主様の所までは場所で二日あまり。馬車にゆられた旅はこの上なく順調で、隣の席に座ったアラナは緊張が抜けなかった様だ。
馬車に乗ってアラナが隣に座ったら開口一番ソフィアさんが「今度やったら心臓刺す」なんて聞いた事も無いドスの効いた声で話すもんだからアラナなんか漏らしてやがんの。笑っちゃうね。
笑っちゃうよ、僕だってチビったもん。本当に怖かった。プリシラさんとは違う怖さ、ソフィアさんてこんなに怖かったかな?
「アラナ、大丈夫?」
「話しかけないで欲しいッス。まだ死にたくないッス」
こんな感じの二日間で旅は順調に進んだ。夜も順調です。やっぱり順番があってクリスティンさんソフィアさんが夜の輪番の相手だった。
クリスティンさんは発作を起こされる前に、ソフィアさんは最初から、神速のチェーンガンの威力は絶大だったけど、「エッチした」より「戦った感」が多かった。
領主様の所には夕方に着き挨拶は明日にしようとした意見はプリシラさんに却下された僕は団長です。依頼は成功したので、プリシラさんが領主様を切る前世の記憶の事はないだろうけど念のため。
「プリシラさん、初団長の仕事をやらせて下さい。領主様に依頼の報告をしたいのですが…… 」
「いいぜ。固い仕事はこれから全部、団長の仕事だ。頑張ってきな」
丸投げされた様にも聞こえるけど、これで領主様を殺すことは無くなったね。一人だと淋しいのでクリスティンさんに付き合ってもらった。
依頼の時に会ってるらしいし、何より美人を連れていって覚えが良ければ仕事を回してもらえるかも知れない打算と美人が隣にいるのは男として気分がいいね。
屋敷の前庭に馬車を止め二人で入って行った。屋敷の中は思いの外、豪華でさすが伯爵になると違う物だと思ったけれど、僕の記憶では帝国の西の三か国は戦争ばかりして裕福では無かった筈だが今は違うようだ。
お陰で僕たちは仕事にあぶれる事もなく過ごせているけど、平和ならこの後の仕事があるか心配だ。今は傭兵より魔物退治がメインなのだろうか。
「ご苦労だったな。貴様が新しい団長なのか?」
「はい、ミカエル・シンと申します」
「ふんっ、まぁ良いか。今、下で確認をしておる。しばらく待っておれ」
ん!? なんか嫌な予感。何で待たせるんだ? この人の態度からあまり居て欲しくない様に思えたんだけど。
「パパ~、来たよ~。この娘がそうなの~?」
人の事は言えないけど、「バカっぽいヤツが来たなぁ~」が、第一印象の男がドアを開けて入ってきた。
「遅かったな。この女が話していた者だ」
「へぇ~、かなり可愛いじゃない。僕の妾にしてあげるよ~ん」
アンタダレ、ナニイッテルノ? シニタイノ?
「領主様、この方はどちら様でしょうか?」
「わしの息子だ。その女を息子の妾にでもと思ってな。待っていたぞ」
ナニイッテルノ? シニタイノ?
「申し訳ありません、領主様。この女性は白百合団の貴重な戦力でありますので、お譲りする事は出来ません」
「安心せい。白百合団ごと雇ってやるわ。お前達は、わしの領土を守っておればよい」
「パパ~。そんな話しはいいよ。見て見て、この娘の肌。透き通る様な肌だよ」
クリスティンさんに、その汚い手で触らないで欲しい。それに勝手に話を進めるのも止めて。クリスティンさんを渡すわけないでしょ。
「ご子息様、お止め下さい。この女性は白百合団にとって大切な人なのです」
ちょっとムカついたので肩をつかんで引き離そうとしたら逆に両手で押されて尻餅をついてしまった。僕、カッコ悪いです。
シニタイノ?
「ボンッ!!」
子息の胸が一瞬だが膨らみ膝から倒れて行く。賢明な読者ならってやつだろうね。こんな事が自然と発生してたら大変だよ。
「フィル!」
おそらく息子の名前だろう。領主が側に寄ると、ご子息様は口から血を流し動かなくなっていた。 ……南無。
「クリスティンさん?」
思わず呼んでしまったけれど、これはクリスティンさんの「不幸にも心臓発作」以上のものだ。胸があんなに膨らむなんて、心臓が爆発したんだと思う。
「……団長に危害を加えました」
静かに美しく、ただそれだけを言った。
「貴様! 何をした?!」
「ボンッ!!」
クリスティンさんの足元に崩れ落ちる領主。第二の犠牲者。この人は何もしていないよ。
「……証人も」
クリスティンさんにとって僕に危害を加える者は全て敵の様だ。敵は殺せ。邪魔する者も全て殺せ。そんなのが団則にあったような。
表情一つ変えないクリスティンさん。僕から顔を背けた時に見えた眼に光った涙の様な物はなぜ? 美人を泣かすのは男としてどうだろか? どうすれば良かったんだろう? クリスティンさんを連れてきたのは僕だ。良かれと思っていたのに……
これで記憶通りに領主を殺してしまったのだから、僕達は逃げる。領主を殺した事で記憶通りに成るのなら、隣のマクジュル王国で反乱貴族の鎮圧に参加してヌーユを目指す。
この二人を殺すことは何とも思わないけど、クリスティンさんの涙は心に痛い。
「……寝不足です」
ああ、そうかい!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる