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第四十五話
しおりを挟む馬車に揺られて密談中。
僕は全身が痺れて動けなかった中で、アラナは自習に勤しみ、舐めたり、突っついたり、引っ掻いたりで、決して「入れたり」はしなかったのが、それは次回の授業にね。
僕は痺れたままの身体で朝食も貰えず、馬車の荷台に「あっ!? この荷物は積むんだっけ?」的に投げ入れられた。荷物の扱いがなっておらん! せめて梱包はしてね、裸で荷台はちょっと……
プリシラさんとオリエッタが前の方で密談し、僕は両手に薔薇の花。自前のバスターソードをソフィアさんが採白濁液中だったのもあって、口だけが動くのを調子に乗ってプリシラさんに文句の一つも言ってみた。
「プリシラ、こっちに来いよ」
と、言ったらナイフを投げ付けられました。採白濁液中のソフィアさんの顔の側に落とされた事もあってか、危うくバスターがペティナイフに変わる所だったので二度としない事を心に決めました。
問題が大きくなったのはここから……
「プリシラさん、危ないじゃないですか!?」
ソフィアさんが文句を言うのも無理はない。バスターソードの先っぽを指でいじりながら、付け根をペロペロ舐めていた所にナイフを落とされたんだから。
「てめぇも、いつまでヤってやがる! いい加減にしろ!」
それには激しく同意します。身体が動かないからって、僕のバスターソードで遊ぶのは止めて欲しいです。
「プリシラさんだけがバスターソードを使えると想ったら大間違いです!」
珍しく言い返すソフィアさんに、僕は心の中で拍手を送ろう、両手は動かないから。そして出来るなら…… 出来るならでいいが、僕の盾代わりにして言うのを止めようか。
「てめぇ!」
怒りに駆られたプリシラさんは、いつの間にか持っていたナイフをこちらに向けて投げ付けて来た! が、さすがプリシラさん。僕の右後ろに隠れているソフィアさんの反対側。僕の左側に向かって、角度からも誰にも当たらない威嚇の為の投げナイフ。
「痛ってぇぇぇ!」
投げナイフは誰も居ない所を通る筈が、僕の左腕に命中した。角度は誤ってない、僕は動けない。 ……ソフィアさん、押したね。
「なんて事をするんですか!?」
いや、あんた、今、押したろ。僕が当たる様に押したよね。僕は動けないんだから、他に当たる理由が見つからないよ。
「ソ、ソフィアさん……」
今度は背中から腹に掛けて貫く痛みが走り、プラチナ色の光がプリシラさんの横を通った。あんた、今、僕事、撃ったろ。
「洒落た事をしやがって……」
今度は全力の投擲がソフィアさんに向かう、これはヤバい。神速で掴んでやりたいが、僕は絶賛麻痺中です。
「がはっ!」
今度は引いたな! ソフィアさんは僕の後ろに隠れて盾になった僕の喉にナイフが刺さった。これってヤバいだろ。頸動脈は外れたのか!?
「へたくそ……」
二発目の光は胸から飛び出て、プリシラさんの足を外れて彼方へ消えて行った。ナニコレ? ナニコレ?
「下手はてめぇだ!」
投げナイフ五本の乱れ撃ち。もちろん全弾、僕に命中。ソフィアさんは僕の後ろで安寧をむさぼる。だけど聞こえた小さな声で、悪魔の様な囁きが…… 「プリシラの野郎……」
乱れ撃ちには乱れ撃ち。残りを撃ち尽くすべく放ったソフィアさんのプラチナレーザーは、全て僕を貫通してプリシラさんに襲い掛かるが、全て外れて消えて行った。
「下手くそが!」
「わざと外してるんですよプリシラさん。 ……これには当てられますか!?」
ソフィアさんは僕のバスターソードの亀頭を握り、正面に立たせた。止めてくれ、唯一無事な場所なんだ!
「どるるるるる……」
なんだ!? ドラムロールが鳴ってるのが聞こえる。これが見せ場なのか? クライマックスか? こんな時に脳内シチュエーションが始まったのか!?
「舐めるなよ!」
ナイフを掴み目隠しをするプリシラさん。やっぱりここが見せ場か!? 話で聞いた事がある! 確か自分の子供を立たせ、頭の上にリンゴを置いて射つそんな話が…… だから息子か!? それとルフィナ! ドラムロールで場を盛り上げるんじゃねぇ!
「止めてくれ!」と言う前に、首に刺さったナイフを弄び、「静かにして下さいね」と言うソフィアさんの優しい声が怖い。そしてドラムロールが鳴り止み、一瞬の静寂が…… 外れろ!
割れんばかりの喝采が白百合団の馬車を埋め尽くす。目隠しを取ったプリシラさんは事の次第に大満足し、皆とハイタッチを交わした。
「ソフィア…… ちょっと言い過ぎたな、わるかった」
「いえ、わたしの方こそご免なさい……」
二人は抱き合いお互いのわだかまりが消えた。こうして二人の友情は硬い絆となって…… おい! おい! おい! この〇〇〇に刺さったナイフと貫通した穴は、どうしてくれる!?
「……うるさい」
美の化身、この世の天使、クリスティン様の声に皆が耳を傾け、胸を押さえてのたうち回る。クリスティンさんの清んだ瞳には何が写ってるのだろう。僕は写ってますか? 何で僕の心臓も痛いのですか?
僕達はハイダ・クリーゼル男爵の邸宅に向かってる。もちろん挨拶と少しばかりの報償金をもらいに。同じ殿を買って出て、戦闘においては白百合団がメインだった訳だしギルド以外からもらってもバチは当たらないだろう。
クリーゼル邸に着くと使用人に呼ばれたハイダ男爵自ら大きな玄関まで来て抱き締めながら感謝の言葉を言われた。一介の傭兵風情を抱き締めて感謝するなんて貴族らしからぬ事をする、後ろから見ている団員の視線が痛い。 ……とても痛い。
屋敷の中を案内され執務室までに会う騎士達みんなから感謝や握手を求められ、殿をやって良かったと心から思った。ただクリスティンさんを抱き締めた騎士の方、ご愁傷さまです。死んでませんよ、先に「死人は無しで」って言っておきましたから。
「この度のご助力、ありがとうございました。これは些少ですがお受け取り下さい」
クリーゼル男爵が出して来た袋には見た目だけでもギルドからもらう袋の倍ほある。些少どころかかなり入っているのがわかる程だ。だけど何故に伯爵様はいないのか。こういう時は伯爵が出てくると思うのに傭兵風情には挨拶も無しかな。
「おう、金は受け取っておくぜ。だが何故、伯爵が出て来ない。伯爵の為にやったんだろう」
ナイスです、プリシラさん。ナイスフォローですが、言葉使いをもう少し穏やかに。
「申し訳ありません。ベルノルトは現在、臥せってますので……」
「臥せってるじゃあねえだろう。感謝の言葉を言うべきは伯爵様だろうが」
この世界には不敬罪というのをお忘れですかプリシラさん! だが言っている事は正しいです。
「ご挨拶だけでもしたいのですが」
僕の追い打ちでやっと腰をあげてくれたみたいで、連れて来ると言う。怪我や病なら悪いことをしちゃったかな。ハイダ男爵に連れられて来たのは若い女の子と男の子の子供。これってあれか……
「察しの通りでございます。長男ベルノルトはまだ五才、とても爵位を受領出来る歳では御座いません。ベルノルトが爵位を受けられる時まで娘のアウレリアが影武者として伯爵を勤めるのです」
五才の子供について戦場に行きたがる騎士はいないだろうからね。着いて行ったのはハイダ男爵が行っただろうか。とてもアウレリア嬢の為でも行けないだろうしね。
結局、降位してもクリーゼル家が戦争に巻き込まれハイダ男爵が戦争に行く事は変わらなかったのか。だが生きてる。ヌーユで死ぬはずだったハイダ・クリーゼルは生きてる。未来は変えられる。
事の真相を垣間見れたが「内密に」と言うし僕らも他言する事は無いだろう。アウレリア嬢はどう見ても戦いより政治より、庭に咲いているデルフィニウムが合いそうだ。
銀眼は母親ゆずり、だけどクリッとした目の童顔が銀眼との反作用で美しく見せる。もう少し胸があったほうがいいね。僕の好みの問題だけど。
アウレリア嬢はこちらを恥ずかしそうにチラリと見ては目を伏せて、顔を赤らめている。傭兵みたいな武骨者が珍しいんだろうか。
それにしてもさっきから、頭の方がチリチリする。きっとオリエッタの大槌をかわした時にかすめたのだろうか。ハゲなければいいけど。
ハイダ男爵は祝勝会を開いてくれると言うので参加させてもらう事にした。撤退しておきながら祝勝会と言うのも変だけど殿が上手く行ったからと言うので乗っかる事にした。
それに貴族様の食事が気になるしね。傭兵やってると主食にパン副食に豆、もしくは豆。豆が主食みたいな物で肉はたまにあるくらいで、後は魚を釣れば食卓に乗るね。今度、「ドキ! 美女だらけの魚釣り大会」でもやろうかな。水着で……
食事まで時間があるので僕達はハイダ男爵とアウレリア嬢とオーガの件について話が出来た。これも内密で、オーガやトロールを人間に従わせる技術は元々、プロメリヤの技術で、それをハイダ男爵の亡くなったご主人の弟が盗んで来た。
弟は伯爵になれない事から盗んだ技術を使ってお兄さんを見返してやりたかったらしい。お兄さんの伯爵が亡くなり自分がなれると思ったら、ハイダさんが伯爵になるものだから話がおかしくなった。
自暴自棄になったのだろうか。ハイダさん自身、「白のハイダ」と言われるぐらいの魔術師だから伯爵にもなれたんだろうけど、どこで人の恨みを買ってるか分からないね。
マクジュルはあの技術を嫌っていたし、弟は伯爵に攻めようとしていたので、仕方がなくクリーゼル伯爵の方から攻めたようだ。義理でも弟を攻める気持ちはどうなんだろう。
あの貴族の屋敷はプロメリヤから技術を盗んだ弟の屋敷で、今は行方知れず。おそらくプロメリヤに行ったんだろうとも聞いた。
貴族って面倒臭い。
アウレリア嬢だって影武者を十年くらいはしないといけないだろう。貴族は十代で結婚するものだが、晴れて自由の身になる時は二十五くらいか。影武者なんかやらなければ、クリーゼル家は辺境伯を名乗るくらい大きな貴族だし、どこか大きな貴族の正室になって苦労なく暮らしていけるだろうに。
二十五歳なら良くて側室くらいか。僕なら銀眼の瞳も美しい彼女を正室に迎えるのに。だってさっきから、チラチラとこっちを見ては顔を赤らめている。僕も貴族の一員になれるかな。
嫁になら貰ってやろうか。白百合団付きでいいのなら。 ……どうも今日は頭の上がチリチリする。
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