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第五十四話
しおりを挟む今だに止まらぬ脳内妄想。
外資系に就職して初めての契約を取ったご褒美が女上司からの個室指導…… 教育的個別指導、性教育的特別課外授業、超法規的性少年育成条例…… 何だっていいんだよ! この状況をどう理解すればいいんだ!?
さっきから上手そうに肉棒をしゃぶる上司に何て言えばいい! 「止めて下さい」か? 止めてもらっていいのか自分? ここまでしてもらって、それは無いだろ。
「しっかり咥えてろ、動かすからな!」 ……と、こっちを言いたい! 言ったら間違いなくクビだろな。二年目でリストラなんて大学まで行かせてくれた親が泣く。
「ん…ちゅ、ず…ず…ぅっ…んんぷ…っんむん」
どうすりゃいいんだ、これ! と、取り敢えず、このまま待機しよう。勝手な判断をせずに上司にお伺いを立てるのがサラリーマンの道だよね。お忙しそうなんで話し掛けられないが……
「あむっあむ…っんんっっ…あぁ…っむ…っっ」
忙しそうだ。話し掛けられる状態じゃないけど、いつまでもこうしていたい…… こうしてはいられない!
「ぶ、部長! どうしたんですか!? 飲み過ぎたんですか!?」
テキーラを一人で一本空ける程の酒豪なら、お酒の間違いだってあるに違いない。そう、これはお酒の力で間違いを犯してしまった事にしようよ。
「もっと早く落とせると思ったのにミカエル君は、なかなか頑張るのね。でも、それの方が楽しめる時間が多くていいわ」
ギーユ部長はスカートを捲り上げ、ショーツを降ろして僕にお尻を突き出した。白い肌は外人さん特有なのか、それとも現代のエルフか。
このまま見入ってしまいそうだけど…… 見入ってどうする! 覚悟を決めろ! ヤれ! ヤるんだ自分! ヤってやるぜ! ヤってもいいのかな? ヤらせてもらいます……
恐る恐る、先っぽが侵入。出迎えは暖かい肉圧と卑猥な声。一気に突き刺し、「パンっ」と鳴る肉と肉の音と反り返るギーユ部長。
「いいわぁぁ~」
部長からのゴーサイン。営業としては目的向かって走るのみ…… いや、突くのみ! 突いては引き、引いては突き刺しの繰り返し! 辞表ならいつでも出してやる!
「ああ…あ…あっはんんは…はあっ」
いい声で鳴くじゃねぇか! 漏れ出す愛液が肉棒を加速させる。日本人の肉棒を忘れられなくしてやる!
「は…ぁっあぁん… ああああぁ」
この締め付けられる肉壁がたまらん。やっぱり外人さんは違う。それに思った通りデカい胸。何を食ったらこんなに育つんだ!
「気…っ持ち…ぃいぃいい…あぁ…っあぁん…」
僕は咄嗟にギーユ部長の口を押さえて、腰の動きを止めた。声が大き過ぎるし、トイレのドアが開くのが見えたから。
「見返、大丈夫かぁ~」
便りになる先輩、武田。こんな時に心配しなくても良かったのに。いや、逆に有難いか…… 「先輩、ゴム持ってませんか?」と聞きたい。
「だ、大丈夫ですよ先輩!」
「本当かぁ~。結構、長いから心配してんぞ。無理しないで出しちまった方が楽になるからな」
ここで出すのはマズイだろ。我慢するより出した方がいいが、中出しはちょっと……
「ばぁっと、出しちまえ。汚さない様に狙いを決めて出せよな」
狙いならもう銃口が入ってるんで外しようはありませんよ。「ばぁっ」と言うより「ドピゅ」と出しますけど、それはマズイ。
「大丈夫ですよ。もう少しで出ますから」
色んな意味で出そうだ。それにギーユ部長! 動くなよ! 自分で動いて肉棒を出し入れしてる。
「これって中からは見えてないのか? こっち側は鏡になってんぞ」
「うっ、 ……こ、こっちからは薄暗く見えてます。マジックミラー…… み、みたいです」
動くなって! 僕は押さえていた口から手を離して腰へ。思わず突いてしまった。
「あぁぁん」
「お前、変な声を出してるけど本当に大丈夫か?」
「大丈夫です! ウォシュレットの温度が低かったんでビックリしたんですよ」
「なんだ、クソかよ。大丈夫ならいいんだけどよ」
武田先輩の優しさに僕は心がドキドキする。マジックミラーが消えて透明なガラス張りになるカウントダウンを見てしまったからだ。早く皆の所に戻ってくれ! 出来ればゴムを一つ……
「取り敢えず何かあったら携帯に連絡入れろよ。先に戻ってるからな」
ありがとう先輩。貴方の優しさに甘えられませんが、感謝はします。自分の用を足さずに早く戻ってくれ! カウントダウンが……
「んんんっ! ……ぁああ」
あんたも人がいるのに腰を動かすなよ。僕のカウントダウンも早まるだろうが! 冷静になって考えれば簡単だ。一度、抜いてから延長のスイッチを押し、また続ければいい。
そして僕は冷静ではいられない。だって気持ちがいいから。やばっ! 動かしていたのは僕もか。取り敢えず左手はギーユ部長の口を押さえ、右手は豊満な胸をまさぐる。
「ううん…ん…あぁ…んん…」
誰が一番だ!? 武田先輩が部屋から出るのか早いか、マジックミラーが消えるのが早いか、僕が出すのが早いか。
三つ巴の戦いに、一番最初に脱落したのはマジックミラーだった。スッと消え辺りが明るくなる。武田先輩は手を洗い外に出て行った。
「見られたかしら……」
「ど、どうでしょう…… 見られたかも……」
「それならクビね。見返君はどうする?」
それはどういう意味ですか? ここで止めたらクビですか? 辞表を出す覚悟はありますが、どうせなら中に出してから。
僕は下半身で答えた。たぶん正解だったのだろう。二次会に誘う新人君達をおいて僕とギーユ部長は契約書の確認の話の為に、皆と別れて朝まで仕事に励んだ。
二人で食べた魚焼き定食が美味しかった。
「団長、この魚は本当に美味しいッスね」
「……あっ、えっ、えっと、そうだね。本当に美味しいよ」
「どうしました?」
「いえ、何でもないですよ。 ……ギーユさん、あの後ろにいる方は……」
「彼らは私の護衛で着いて来てます。ハスハントの部長ともなると付くんですよ。タッケー、ご挨拶を」
どこかで見た事のある風貌。豪快で大雑把なあの人に似ている。確かタケ……
「ハリル・タッケーと申します。お見知りおきを」
ゴム持ってませんか? 聞きたいが止めておこう。ギーユ部長との夢の様な一時は夢か幻か。
食事が終わり僕とアラナは部屋に戻った。アラナは独占出来ると迫って来たので、前からラブラブした。ギーユ部長には後ろからしたからね。
アラナには前からしてはいけなかった。アラナはその鋭い爪で僕の背中を抉るから。背中の痛みが僕を現実へと引き戻した。
マウガナの北に半日ほど行くと大きな森に並ぶようにトクンの村がある。ここが襲撃されている村の様だが着いてみても被害らしきものは見当たらなかった。
村長に話を聞くと森で頻繁にゴブリンやオークを見るだけで襲撃まではされていないと言う。村長には素早い対応に感謝されたが、まだ襲われていないんだよね。
襲われるよりいいし、先制攻撃した方が勝率は上がる。問題はどうやって探すか。
「こんな物を預かって来たッス」
アラナが出したのは四つのプロペラが付いた、どう見てもドローンに見えるもの。
「これってオリエッタが作ったの?」
「そうッス。団長の記憶から作ったと言ってたッス。夜営した時なんか索敵にいつも使ってるッスよ」
その時は輪番中です。だから知らないのか。しかしこんな物まで作るとはオリエッタは出来る子なのね。帰ったら誉めてあげないと。
アラナは両手に水晶玉を持ち荷台の上にも水晶玉を置いて覗き込んでいた。
「これで何がわかるの」
「ネツリョウって言ってたッス。この小さい赤い点が僕で少し大きいのが団長ッス」
なるほど、赤い点が熱量を出す物を表して大きさもわかる訳ね。オークなら僕より大きいからもっと大きな点になる訳か。
「範囲はどれくらい分かるの?」
「一番、高く上げて五百メートルくらいッス」
範囲は余り無いけどスピードは出そうだ。索敵はアラナに任せて僕は一休み。する暇もなくアラートが鳴った。
「団長、小型の点を見つけたッス。数は五十くらい。こっちに向かって来てるッス」
「ゴブリンかな。五十くらいなら問題無いね。大きな点とかは見えないかな」
「大きいのはまだ無いッスね」
「村に入る前に片付けてくるよ。場所はどこ?」
「このまま東に一キロくらいです」
「サクッと終わらせて戻るね。アラナは索敵を続けて村に何かあったら守ってね」
僕は木を避け草を飛び、見えてきたゴブリン。一、二、三、頂き! 三匹のゴブリンの首が宙に舞って、カッコ付けて前に立つ。
「今晩はゴブリンの皆さん。そして、さようなら」
ゴブリンは剣を抜く間も無く、十匹が別れを告げた。最初に対応したのは「グヒッ」と言う間抜けた声だけ。それは「さよなら」の挨拶なのかな。ゴブリン語は分かりませんので、さようなら。
この黒刀、気に入った。ゴブリンがまるで紙のように切れる。後はどのくらいの耐久力があるかだな。
試し切りには充分過ぎるほど切れた。返り血も受けなかったのは神速のお陰か。血は出来るだけ浴びたくない。臭いし服がガビガビになるし。
さっさと終ったのでアラナの所に戻る事にしよう。情報ではオークがいるみたいだ、ゴブリンならともかくオークが村に入るのは不味い。行きより早く戻ったつもりだけどアラナはまだ索敵をしていた。
「アラナ、魔物は見つかったかな?」
「静かッスねぇ。何も見えないッス」
「オークがいるはずだから気を付けて見てね。村のみんなは、もう寝たみたいだね」
「そうッスね。さっき最後の明かりが消えたッス」
出来れば今日中に終わらせたかったけど情報のオークを倒すまでは帰れないかな。皆、ちゃんとやってるかな。ドレスは買えただろうか。セクシー系ならクリスティンさんがいいね。オリエッタはゴスロリのドレスになるのかな。プリシラさんはあの長い足が見える様なスリットの入ったのを買って欲しい。ルフィナはいつも黒のローブだからせめてダークパープルのドレスなら似合いそう。ソフィアさんは白で決まりでしょ。アラナは……
「団長、敵ッス」
アラナは…… 敵!?
「敵はなに? 数と場所は」
「それが…… オークの三倍以上の大きな赤点で数は一、場所はさっきのゴブリンのいた所ッス」
「三倍!? オークが三匹いると言う事なの?」
「動きにばらつきが無いッス。おそらく一匹ッス」
オークの三倍の大きさの生き物? 関わりたくない気がする。だから魔物相手は嫌なんだよ。人間サイズでお願いしますよぉ。
「 動きは?」
「ゴブリンの所で細かく動いているようッス」
ゴブリンの死体と合流? 調べてるのかな。赤点だけだと分からない。行ってみるか、でもオークも気になるし。
「索敵範囲を広げてオークを探して。こいつは僕が行って見てくるよ」
「僕は魔物について詳しくは分からないッスが、トロール並に大きいッスよ」
「トロールなら何とかなるよ。あいつら動きが鈍いから。ヤバくなったら逃げ帰ります」
さてと、同じところなら道は分かる。風の如く静かに移動しゴブリンの死体が集まってる所から二百メートルくらい離れて止まる。ここからはゆっくりと。
木を折らないように音を立てないように、相手が分からないから慎重に。オークの三倍って何だろう。トロール? 巨人? ゴーレム? 思い当たるのはこれくらい。
もう少しミリタリー以外の事も勉強しておけばよかった。後、大きいのと言えばドラゴンぐらいしか思いつかないよ。近づいて行くと「ゴリッ」とか「バキッ」とか何か大きな物が大きな物を噛み砕く様な音がした。
「はぁ~」心の中で、ため息が出ちゃう。この時点で帰りたい。見なくてもヤバそうなのが分かるよ。でも確認しないで帰る事も出来ないし僕はいつも以上に静かに忍び寄った。
寄れば寄るほど「ゴリッ」って言う音が近づいてくる。絶対にゴブリンを食ってる音に違いない。ゴブリンさえも食べるほどの大きさなんて帰りたくなって来る。
そいつは四本足で体には黒鉄色のウロコに覆われている巨大な大トカゲだった。なんて可愛いげのあるものじゃなく、コモド大トカゲを十メートルサイズにしたくらいのヤツ。
これは「逃げ」だね。勝てるかどうかより、この廻りに漂う死臭を伴う臭い。ゴブリンは死んだばかりだから匂わないし、原因は大トカゲの口臭だろう。口の臭い男はモテないぞ、少しは気を使って欲しい。
逃げ、決定。と思ったら、何やら回りの臭いを嗅ぎ始めた。こちらの方に巨体には似合わない小さな細い目で睨むと、そいつは木々を薙ぎ倒して驚くほどの速さで迫ってきた。
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