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第百四話
しおりを挟む倒れたサンドドラゴンの首に食い込んだハルバート。オリエッタは渾身の力を込めてハンマーを振るう。
「ツーベースヒットだ! 続けろホームランバッター!」
「ツーベースヒットって何ですか~」
聞くな! いいから殴ってくれ! せっかくのチャンスなんだから。オリエッタが叩き付けたハルバートは外皮を破り肉に食い込んだが致命傷には至ってない。
「オラ~ オラ~ オラ~ オラ~」
人のセリフを奪うなら正確に頼む。殴り付けてるハンマーの側には危なくて寄れないぐらい激しく、もうハルバートを食い込ませる為に殴っているのか、殴る為に殴っているのか分からないほどだ。
小さな傷からダムが決壊するように、オリエッタはハルバートで付けた傷からサンドドラゴンの首を殴り千切った。
「オラです~」
千切られた首から出る大量の出血にオリエッタの装甲服は真っ赤になる。最後の「オラ~」は血で濡れた地面を叩いて僕の方まで飛んで来た。
「団長~、終わりました~。血だらけですけどケガでもしたんですか~」
いえ、違います。幸いな事に無傷ですよ、僕は。右手が少々、痛みますが。僕達は平然としていたが、周りは違った。
「ウオォォー、やったぜ!」
「倒した。やったんだー!」
サンドドラゴンを倒した者を見ようとしてか、死にざまを見ようとしてか、僕達がいる千切れた首の回りに集まり嵐のような歓声が上がり始める。
まあ、ここで…… あるんじゃないかと思ったんだけど…… 僕と装甲服に帰り血を浴び巨大なハンマーを持っているオリエッタの、どちらに注目が集まるか……
戦いに参加した者達はオリエッタの周りに集まり、ときの声を上げ始める。オリエッタも調子に乗ったみたいで深紅に染まった装甲服の上に乗り上げ右手の拳を空に向かって高々と掲げた。
純白のスク水で可憐なオリエッタは、きっと天使にでも見えたのだろう。見いる冒険者からは感嘆の声が聞こえた。
「ドラゴンスレイヤーだ」
「竜殺しだ」
「可愛い……」
僕は完璧に蚊帳の外に追いやられ、オリエッタを中心に野球の優勝したチームみたいだった。お前ら調子に乗ってオリエッタを胴上げとかして触ったら殺す。見ているだけでもムカつくのに。
「……終わりましたね。お疲れ様です」
コアトテミテスからも駆け付けた人だかりの中で、クリスティンさんは僕を見つけて優しい言葉を掛けてくれた。オリエッタがいなかったら勝てなかったかも知れないが、一番槍は僕だからね。それなりに誉めてくれてもいいのに。
クリスティンさんは項垂れている僕の頬に軽いキスをしてくれた。単純な僕はそれでもいいと思った。
喜んでばかりもいられない。コアトテミテスの北側の城門は破壊され、城壁さえも三割くらいは魔岩の為に崩壊している。これを直すのにどれ程の人材とお金が掛かるか、領主様は大変だね。
このサンドドラゴンの魔石やら素材は領主の物になるらしい。実質、白百合団が狩ったのだから、報償金として一割くらいは欲しい。そのお金で新しい服を買って、オリエッタにはスク水じゃない服で装甲服に乗り込んでもらいたい。暗部だから。
コアトテミテスから来たクリスティン軍団の生き残りと、後から来て一緒に戦った冒険者達はサンドドラゴンの解体を始めてしまっているが、まだトロールやオーガが襲って来るかもしれないのに、そんな事をしててもいいのだろうか。
きっと明日の…… もう今日になるけど朝御飯はドラゴンステーキとか出るのかな。焼き方はミディアムでお願いしたい。
しかし、トロールやオーガは何処に行ったんだ? もしかしてサンドドラゴンに恐れてをなして森に逃げ帰ってくれたらと思うが、ハーピィの様に戦術を考えて来る魔物がいる以上、油断は出来ないよ。油断が出来ないんだから解体なんかしてんじゃねぇ。
最近は忙しくて寝不足気味。この後の事を考えると気が重くなってくる。確かオーガを一と考えて戦時報酬を出すんだよね。サンドドラゴンはオーガの何倍あるんだろう。 ……考えたくない。
僕とクリスティンさん、オリエッタは着替えてゴスロリ姿でコアトテミテスに帰った。オリエッタの召喚する錬金術は、巨大なハンマーも装甲服も取り出せるし送還して戻す事も出来るが、いったい何処に戻るんだろう? その先には拷問器具もあるのだろうか。
解体が終わってコアトテミテスに帰るまで、オリエッタは腕を組んで離れなかった。ぶら下がられたり、いけない所に手を誘導されたりオリエッタの戦いの高揚が見て取れる様だった。
これも戦時報酬の一貫か。冒険者達からの羨望と嫉妬の眼差しを一身に受け、僕達はコアトテミテスに戻った。……クリスティンさんの視線が一番痛かった。
北門の指揮官に報告を済ませ、今日は休んでくれと言う言葉に僕はやっと眠れる訳でもなく、昼頃まで二人を相手に戦時報酬に明け暮れ最後には寝ながらヤってたような気がする。
クリスティンさんは思いのほかオリエッタの白い服を気に入ったようで…… いや、気に入ったのとは違うか。僕が気にしているのを見ていた様で、自分も着てみたいと言いだす始末だ。是非! と、言いたいが僕の暗部には蓋をしておこう。
ミカエルは「寝ながらでもヤれる」を覚えた。
メリット :寝れる
デメリット:気付かれたら往復ビンタ
「あ………あぁ…っんん!気っ持…!ち……いっ!いぃい…い…い…で………すぅ…ぅっ」
いったい何時から腰を振り続けていたのだろう。隣ではクリスティンさんが、裸で眠っていた。オリエッタは僕が腰を振る度に揺れる、小振りな胸を揺らしていた。
羨ましい…… すやすやと寝息を立てているクリスティンさんは横になって寝ているものだから、胸が押し潰されいつもよりバストアップしていた。
オリエッタは目隠しを手を縛りベッドにくくりつけられている。今ならクリスティンさんの胸に触れてもオリエッタも気が付きはしまい。
そっと手を伸ばし胸に触れる。柔らかい…… 起こさないか心配だけどもう少し触ってみたい。腕で隠れてしまった乳首は何処かと、腕を動かせばピンクのイチゴさんが。
舐めてしまいたい。その衝動はオリエッタに入れていれば体勢的に無理だ。そこまで身体は柔らかくないんだよ。
「団長のが… 中をっ かきまぁ…わすぅでぇすっ!」
いかん、いかん。オリエッタに集中しよう。首筋を舐めようと覆い被さると暖かいオリエッタの温もり。段々と眠くなる……
クリスティンさんは団内、最弱の力の持ち主。オリエッタは団内、最高の力持ち。オリエッタの往復ビンタでサンドドラゴンがどんな気持ちで首を千切られて逝ったのか、少しだけ知ったよ。
午後には回復魔法使いを探して顔の腫れと首の痛みを取ってもらい、気持ち悪さが少し残っただけだった。本当なら僕の中の悪魔の血で多少の怪我なら治るけれど脳挫傷は怖いからね。
影の三人のうちジビル村に向かったユイナちゃんは昼前には戻って来た。帝都に向かったニイナちゃんと後方の街に向かったシイナちゃんは無事に着いてくれるといいけど。
僕達は北門で何か手伝いをと考えていたが、到着早々オリエッタを見つけたら人から「ドラゴンスレイヤーだ」と言っている声が聞こえた。
中には握手を求める人がオリエッタを囲み、一時は騒然としたのだか、クリスティンさんの頑張りで皆さん地面に倒れ込んだ。
僕の頑張りはオリエッタの影に消えたみたいだけど、これでオリエッタにも二つ名が付いてくれたら嬉しいね。
北門には待ち人がいた。男。コアトテミテスの領主が会いたいと使用人が待っていたんだ。僕を名指しで呼ぶなら、女の子を寄越せよ。
だが都合がいい。一度、会って今回の魔物件に付いて話をしたかった。それに向こうから会いたいなんてサンドドラゴンを倒した報償金でもでるのかな。
領主への館の道すがら使用人さんに領主の話を聞いてみたが、無口な男で愛想がない。使用人として雇い主の事を話すより立派なんだろうが、最初の用向き以外は話さないのは照れ屋なんだろうか。
コアトテミテスの街中は閑散として、初めて来た日とは思えないくらい寂しくなってる。それでも残ってる人達がいる。ここはもうダメかも知れないのに。
領主の館は鉄の柵があるくらいで簡単に引き倒せそうな簡素なもので、ここまで攻められるなんて考えもしていないのだろう。城壁がボロボロの今となっては立て籠るより逃げた方がいい。
僕達は報償金に期待しながら屋敷の門をくぐった。
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