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第百十話
しおりを挟む進撃。
オーガ全体が雄叫びを上げコアトテミテスに向けて進む。城壁の内側には冒険者達が武器を持って待ち構え、プリシラさんを中心に左に僕、右にはアラナが城壁の外で暇を潰していた。
「やっと来たか。ババァになるかと思ったぜ」
「プリ姉ぇが、ババァになったらどうなるッスか」
「アラナ来ますよ、集中して下さい。回り込まれたら袋叩きですよ。プリシラさんはアラナをつねるのは止めて下さい。ある程度オーガを倒したら街に戻りますからね」
「つまんねぇ作戦だな。全員でドンっと出て討って出た方が面白いぜ」
ドンっと出て全滅だよ。プリシラさんの「暇だから出ようぜ」に釣られなければ良かったと、今更ながらに後悔している。止めたんだ、これでも。無謀とプリシラは同義語だなきっと。
「囲まれたら終わりです。アラナ、プリシラさんの右のフォローをお願いしますよ」
「任せるッス。スコア稼ぐッス」
死ぬなよ。ここで死んでも神様の望む面白いエンディングじゃないし街を死守するくらいなら逃げるぞ。
「遅れるんじゃねえぜ」
プリシラさんはハルバートを振り上げオーガの前線に突っ込む。オーガにはどう見えたんだろうか。悪魔がハルバートを振り回している様にでも見えるのか。
プリシラさんは一振りは盾や剣や筋肉も切り裂き、リッチでさえアンデッドに出来ないように肉塊に変えていく。僕とアラナはプリシラさんが見えない所から打ち込まれないように左右をフォローだ。
僕とアラナのフォロー? それは自前だ。プリシラさんの突貫をサポートするのみの存在だからね。僕は神速も超振動の盾も健在だがアラナが一番キツいはずだ。
プリシラさんの攻撃は異常だ。まるで草刈りをしている様にしか見えない、払えば払うほどオーガの首が飛ぶ。飛べば飛ぶほど前に進みプリシラさんが囲まれる。それを防ぐ為にも僕達が左右を守っているのだが、それでも進み過ぎれば後ろに回り込まれる。
「プリシラさん少し抑えて! 後ろに回り込まれる!」
「構わねえ! このまま突き抜ける!」
アホかこの人。と思った人、僕も含めて残念でしただ。オーガの一団の半分以上を血祭りに上げて突き抜けた。
城門前の前進を止める事が出来たが次がある。オーガの後方にはトロールが横に広がり進撃している。僕達はその中の一匹の前に出てしまっていた。
「プリシラさん、アラナ、来た所で悪いですが街中に戻りましょう。帰るまでか遠足ですから」
トロールとオーガに挟まれては分が悪いと来た道を帰ろうとしても既にオーガで来た道は埋まっていた。
「もう一回、殺るぜ」
まったく、男前だねえ。街中に戻れた時にはプリシラさんが片膝を着いて脇腹を押さえていた。オーガから一発いいのを貰っていたからだ。
「てめぇがフォローしねえからだ」
そう言われても正面のフォローなんて、僕も一緒に斬るつもりですか。アラナも肩で息をしている。ここまで殺れれば充分だ。
オーガはもう壊れた城壁に取り付き中に入ろうとしているが冒険者と殺り合って持ちこたえているが、時間の問題だろう。
「……で、あたいらはここに隠れてるのか」
「そうです。オーガをやり過ごしてリッチかトロールを狙いたい所ですね。って何でみんなで一つのクローゼットに入って来てるんですか。狭いですよ」
城壁を冒険者に任せ僕達は北門近くの一軒家のクローゼットに隠れ、オーガをやり過ごす作戦が、何故か狭い所に三人も入っている。ちゃんと三人分あるのに。
「団長が寂しいかと思ってな。しかし、なんだなぁ。こんな時にもバスターソードを振るうなんてたいしたもんだ」
僕達三人は狭いクローゼットに入っている。プリシラさんは僕の後ろに、アラナは僕の前に、背の順で並んでいた。しかも、この狭いクローゼットでバスターソードなんて振るえる訳が無いだろ。
「これは違いますよ。魔剣コアトテミテスが当たってるんです。僕のじゃない」
「そうなんッスか。……プリシラ姉さん、団長は今はペティナイフッスよ」
前から握ろうとしなくいいから。ペティって言うなよ、恥ずかしいだろ。アラナが押し付けてくるから育ったんじゃないか。
「何をしてるッスか?」
狭いクローゼットで、僕の両手はアラナの肩に置いているだけで何もしていない。何かしているならプリシラさんで僕は痴漢なんかしていないぞ。
「まあ、暇潰しだな……」
暗いし狭いしで、プリシラさんがアラナに何をやってるのか見えないが、これから奇襲を掛けるのを忘れていないか?
「ひゃ、何をするッスか!?」
何で二人で楽しそうな事をしてるんだよ。僕も入れてくれよ。一人だけなんて寂しいだろ。 ……と、思うとより早く、何か暖かい物が僕の太腿に当たる感触。
「これからだぜアラナ。報酬の前払いだ。■■■■、凝縮」
バカがバカな呪文をこの狭いクローゼットで唱えやがった。一気に膨らむ僕の相棒は、天を目指す。勿論、「融解」の呪文を唱えれば良かったのだが、唱えるより早くパンツを後ろから脱がされた。
「痛ってぇ、引っ掛かったろ、プリシラ! 何をしやがる」
呼び捨て上等。流石にアソコが引っ掛かった痛みは女には分かるまい。結構、痛いんですよプリシラさん。この凝縮の必要性が全く分かりません。
「報酬って言ったろ。狭いんだから騒ぐんじゃねぇ」
僕のパンツを降ろしたプリシラさんの両腕は、今度は前に進みアラナを持ち上げる。
「ほれ、報酬だ!」
持ち上げられるアラナ。落とされるアラナ。ただし、落ちた先にはバスターソードが待っていた。
「ぎゃっ! ぎゃぁあっあぁぁ…」
こいつ、僕とアラナのパンツを脱がしたうえで凝縮させ、アラナを肉棒に突き刺さる様に落としやがった!
「■■■■、融解!」
躊躇わず肉棒を元の姿に! アラナに突き刺した肉棒への締め付けや暖かい気持ち良さより、今何が必要なのかを優先させる!
「プリシ……!?」
「■■■■、凝縮」
再び復活を遂げた肉棒は、アラナを突き刺し天を目指す。締め付けほ増し、再び優しい暖かさが包み込む。
「あぁ…あ! あ…にゃ…にゃぁ…にゃ…ふ…」
バカヤローが! 僕達は奇襲の為に身を隠してるんだぞ! 狭いクローゼットで性行為を勤しむ為じゃないんだ!
「■■■■、融解!」
でも、ちょっと惜しかったかな。シチュエーションとしてはナイスだ。狭いく暗い中で、アラナを押し付けて無理矢理はナイスだ。 ……だから、戦の真っ最中なの!
「■■■■、凝縮」
こいつ、バカぁ? こんな事は時間のある時に合意の元でやってくれ。三度目の正直か、二度ある事は三度あるか、再びアラナを貫き天を目指す肉棒。思わずアラナを抱き締め、より深く刺さった。
「■■■■、融解! いい加減にしろ、プリシラ!」
隠れているのに大声を出す。これで見付かったら、奇襲の意味が無くなるだろ! これでオーガにクローゼットの扉を開かれた時には、どんな顔をして挨拶すればいいんだ。
「■■■■、凝縮。そろそろ無理だろ……」
またしても悪魔の魔法を唱えるプリシラ。本当に、本当に無理だからね。こんな時に出来る訳が無い。
「■■■■、融解。 ……融解。 ■■■■、融解!」
既に魔法とは関係が無くなっていた。そそり立った僕の肉棒は解ける事も無くバスターソードの形をとったまま、アラナを突き刺し秘部を抉る。
「あぁ…はぁ…… あにゃ…んっ… んっ!」
「さて、準備も整ったし報酬を払いな!」
整ってしまった…… 返す言葉も無い……
しっかりしろ、相棒! こんな時にトランスフォームしてどうするんだよ。いくら魔法のせいとは言え、敵陣の真っ只中に入るんだぞ!
むしろ、しっかりしてしまったから「しっかり」と起ってしまったのか…… 無念……
だが、諦める訳には行かない。僕達は傭兵で戦いの最中だ。こんな事で時間を無駄にしたくない。
だが、ここまで育ってしまった相棒を静める手立ては一つしかないのも事実だ。
「アラナ…… いくよ……」
神速!
アホか!? 貴重な神速を使ってどうする! アラナには悪いけど、神速を使って直ぐに終わらせると言う訳にもいかない。
楽しんじゃおうかな。
アホか!? 楽しんでどうする! 敵の音はまだしないけど、直ぐにでも攻め込んでくるんだぞ。相手には未知数のリッチもいるんだよ。
普通に……
「大き…い…ぃす…ぎぃるぅぅにゃあ…ぁぁ」
普通を越えた大きさ、バスターソード。どうしろって言うんだよ。凝縮と融解を繰り返したアラナからは愛液が流れだし滑りが良くなっている。それだけ持ち上げてる手を離せば奥まで刺さって貫通だ。
「しっかり持ってろよ。アラナが死ぬぜ」
この人殺し! お前のせいでこうなってるんだろ! 僕はアラナを必死に持ち上げて、下から打ち上げた。
「ダメエッ…… あ…あっぁ あにゃ…ぁあ!」
ダメと言われても、これを何とかしない事には戦えない。まさか二刀流で戦えと!? 一刀は相手のやいばを受けたら斬り飛ぶ事は必定だ。
「だ、団長…… こんなぁ…はぁ、ぁふ…とこ…ぉろぉ…でぇ… にやぁぁ」
バスターソードの三分の一は咥えたアラナの秘部では、僕を満足させられない。普通にすればもう少し入るのに…… 残りが寂しい。
「どれ、手伝ってやるか」
プリシラさんは左手で肉棒の根本から中央までを扱き始めた。アラナへの動きに合わせたり、時には優しく、時には激しく。なんだろう、この「一竿で二度美味しい」的なものは…… 癖になりそうだ。
「はぁにゃ… にゃふ… にゃふ…」
何が崩れる大きな音がした。心が崩れたのでは無く、物理的な大きな音が。作戦では入り始めたオーガを土魔法の壁で分断し内側に入った物を剣や魔法で殲滅した後に後退。
「も…う…もぉ…っうぅ! ダメぇぇにゃ……」
後退しつつ家や壁を爆破しオーガを押し潰す作戦だ。この家には仕掛けていないから安心だけど前後からサンドイッチ状態の僕は押し潰されて身が出そう。
「アラナ、イクぞ」
本当に身が出た。いや、正確にはアラナの中にぶちまけてしまった白い液体。久しぶりでも無いのに、この量は…… シチュエーションのせいか。
「プリシラさんいい加減にして下さい。トロールの足音が響いたら出ますよ」
「つまんねぇなぁ、せっかくなんだから楽しもうぜ」
パンツを上げながら言うセリフでも無いが、敵が迫って来てるんだ。二刀流は嫌なんだよ。頼むから真面目に戦争してくれ。リッチやトロールを始末しないと、この戦争は負けだぞ。
コアトテミテスの街の半分を犠牲にしてもオーガを止めれるけど、リッチやトロールは簡単にはいかないんだから
トロールが城壁を越えるのはすぐに分かった。大きな者が小さな物をその重量で押し潰す嫌な音。それと同じくして街中でも爆発音が響き始め、今ごろはオーガが圧死しているのだろう。
「行きますよ。リッチを最優先ですがトロールを出来るだけ始末して下さい。黒炎竜は目をえぐったら放置で構わないです。勝手に暴れさせておけばいいです」
「よし!殺るか!」
クローゼットで最後の作戦と服装を整えて僕達の最後の戦いに挑む。その前に……
クローゼットを出てアラナは腰砕けにふらつき、プリシラさんは元気一杯にハルバートを担いだ。僕は後ろからそっとプリシラさんの革鎧と胸の間に手を入れた。
神速の超振動!
ヤられっぱなしってのもねぇ。少しは仕返しをしないと。左手でプリシラさん胸を揉み上げ、声をあげさせ僕は心の中でガッツポーズを決める。
まさか、この事が戦争を早く終わらせるとは思ってもみなかったよ。
扉をぶち破って出た先にはトロールの足が。本当を言うとトロールに「助けて」と言いたかった。扉をぶち破ったのは正しいけど、正確に言うと「ぶち破って逃げた」だ。
超振動と神速を喰らったプリシラさんは何故か激怒し、人型からライカンスロープに変わって、狭い部屋でハルバートを振り回し始めた。
扉をぶち破って逃げた先にはトロールの足が。
僕が「ごめんなさい」と頭を下げてハルバートを避けるとトロールの足が真横に斬れた。僕は倒れたトロールの首を斬りつけ絶命させる。もう敵が誰だか分からない。
「プリシラさん冗談ですよ。落ち着いて下さい」
「死ね、死ね、死ね!」
「姉さん、殺っていいッスか。殺っていいッスよね」
アラナお前もか。腰は大丈夫かい? 休んでいてもいいんだよ。「殺っていい」は「ヤッていい」の聞き間違いかな?
アラナのソードガントレット。ガントレットから伸びる両刃の剣は超振動が付いて無いが、アラナのスピードを活かす小振りな作りになっている。
この二人が組むとスピード勝負になるから息が付けない。クリスティンさんが絡むと心臓が止まって息も出来ない。取り合えず逃げようかと思ったけれど、トロールを倒して思い付いた。そうだ、トロールさんの方に逃げよう。
僕は二つの竜巻に追いかけながらトロールを巻き込んで逃げた。巻き込まれたトロールは竜巻の刃にボロボロにされ死んでいく。逃げ遅れたら僕がそうなるのかと思うとゾッとする。
「てめぇ、いい加減に死ね」
嫌ですよ。死ぬくらいなら押し倒しますよ。押し倒して時の果てるまでプリシラさんを突きまくりたい。
「姉さんが輪番の時に剣を交える理由が分かったッス。あぁ最高ッス」
変な事を覚えないで下さい。普通が一番ですよ普通が。ただクローゼットの狭さは良かったね。やっぱり猫は狭い所が好きなのかな。
もう誰に止められるのだろうか。僕はリッチを見つけ、二人に先行して攻撃を仕掛けた。全力で打ち込んだ訳ではない。かなり手加減した一刀をリッチは防御魔法で弾いた。
「邪魔だ!」
リッチの防御魔法を切り裂き、頭から真下に切り裂くプリシラ・ライカンスロープのハルバート。これを見た時に超振動の盾で止められるか不安になってきた。
僕が逃げれば死体が増える。リッチもトロールも黒炎竜さえも、二つの竜巻を止める事は誰にも出来ない。勿論、僕にも出来ない。
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