異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第百十四話

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 コアトテミテス防衛戦は領軍が来て終結させた形になっている。冒険者達は今までの苦労や人死には何だったんだろうかと嘆いているようだが、傭兵の僕達には上が手柄を取るのは当然だと思っているので気にする事は無かった。
 
 
 気になるのは歩合による、お金の支払いだ。白百合団はかなりの活躍をしたしサンドドラゴンも退治している。これは高給払ってもらえるのではないだろうか。
 
 お金が手に入ったら、海でクルーザーをチャーターしよう。水着の美女とクルーザーでドライブだ。今まで考えた事も無かった至福の時間。
 
 きっと「あ~んっ」とか言ってサンドイッチでも食べさせてくれるかな。ワインも用意しないと。こんな時には赤ワインなのか?    それとも白ワインか?    今から勉強しておかないと。
 
 その為にも報酬はしっかりともらっておかないといけない。でも、その前にコーネリアス・リマー辺境伯に呼ばれているんだっけ。難しい話しは無しだといいなぁ。
 
 白薔薇団との朝食が終わりかけた時、目に入る一筋の光。ソフィアか!?    と、警戒して丸テーブルの僕の正面に座っているソフィアさんを見れば上を指差す。
 
 なんでしょね?    リースさんの手が離れた、と思った時には僕の太腿に刺さる食事用のナイフ。「いちゃラブ禁止」ですね。優しい微笑みでは無くて、声に出して教えてくれたらいいのに……
 
 投げナイフの扱いを誉めて、頭を撫でていると、このまま頭を握り潰してやりたくなる衝動を押さえこみ、白百合団にはいつもの訓示をして自由行動にした。
 
 まだ街の半分は焦土作戦による瓦礫だらけだし、自由にしても変な事もしないだろう。もし、死人が出たら作戦中の死者に入れておこう。
 
 僕は街並みを見つつ、コアトテミテスの領主の屋敷に向かった。屋敷は無事で衛兵に話をするとリマー辺境伯の所に通された。
 
 「シン男爵、良くコアトテミテスを守ってくれた。話しは聞いておる、礼を言うぞ」
 
 ふむ、リマー辺境伯もキノコカットか。流行りなのかな?    あのフワフワ感を出すのにどうやってるのだろうか。どこの美容室でやってもらったのだろう。
 
 「ミカエル・シン男爵です。この度は街を半壊させてしまい申し訳ありません」
 
 リマー辺境伯は髪型に違和感を感じるが魔族ではなさそうだ。魔族特有の気持ち悪さを感じられない。あの時、感じるはずの気持ち悪さは、オリエッタに往復ビンタをもらって、気持ち悪かったから分からなかったのだろう。
 
 リマー辺境伯には全ての事を話しておいた。今回の魔物の進行の裏にいる魔族の存在を。初めのうちは信じられない感じだったが魔物の不可解な行動から察する所もあったのか魔族の存在を受け入れてくれた。
 
 リマー辺境伯は帝国中央にも報告する事を約束してくれたが、僕からも皇帝に言っておこう。この人が魔族じゃないとも限らないしね。キノコカットだし。
 
 白百合団としての報酬も期待以上の額をもらえる事にはなったけれど、街が半壊しているので、すぐにはもらえないらしい。僕としてはさっさとケイベックに行きたい所だから、報酬は傭兵ギルド受け取りにしてもらった。これで何処の傭兵ギルドでも報酬を受け取れる事が出来る。
 
 さて、やはりサンドドラゴンを始末するくらいの戦力を持つ白百合団。ここに残って亡くなった子爵の代わりに統治しないかと話が出たが、有りがたく辞退させてもらった。
 
 やはり「娘と結婚して……」との話も出たけど、せっかく半壊で済んだコアトテミテスを全壊させる訳にはいかないからね。
 
 後から聞いた話だと、街一番の美人らしい。少し惜しい気もしたが、クリスティンさんより美人とも思えないし、残念だが諦めよう。
 
 コアトテミテスでも色々あったけれど、魔剣も返した、お金も稼げた、傭兵としては充分な仕事もした。明日には街を出よう。復興は任せた。だって力仕事は苦手なんだもん。
 
 
 
 そして僕は袋に詰め込まれている。何故でしょうか?    僕は何も悪い事はしてないのに。悪い事はしてないよ、昨日の夜は皆で食事を取って、僕は一人で寝たんだよ。一人でね。
 
 気が付けば馬車の上。この振動は馬車のだしルフィナやオリエッタの話し声も聞こえる。僕は袋らしき物に入れられ猿ぐつわを噛まされ、裸で目隠しをされ、誰かを抱き締める様に腕を縛られて頭が痛い。
 
 多分……   ソフィアさん。抱き心地で分かる。ソフィアさんの背中に手を回すように手首を縛られて触る事も出来ない。何故にソフィアさんを抱き締めて馬車に乗せられているのか?    なぜ裸なのか? 
   
 では、説明をプリシラさん、どうぞ……
 
 「起きたか腐れ」
 
 ぐへっ!
 
 いきなりの脇腹にトーキック!    突き刺さる爪先は安全靴の様に強化されてる。猿ぐつわで、まともに声も出せない。普通の悪者なら「起きろ!」と起こす為に蹴る事はあるだろう。起きているのに蹴るプリシラさん、貴女は何者デスカ?
 
 「黙って聞け」
 
 猿ぐつわをされて喋る事も出来ないんだよ。メチャクチャ固くしやがって。このまま口が広がったらどうするんだ!?    窒息するとか考えなかったのか!?
 
 「昨日の夜の事だ。お前、リマーの娘を嫁に貰う話をしたろ。部屋に戻ってからソフィアが光出してな。危ねぇと思ったからお前を起こしに行ったのに、お前が起きなくてよ。ソフィアに抱き付かせても眩しいから、袋に二人とも入れて馬車に詰め込んだって訳だ。コアトテミテスをぶっ壊したくねえだろ」
 
 理解は出来た。だがその前に僕を起こす件が分からん。この頭の痛みからしてカカトを頭に落としたろ。起きれる訳ねえよ。きっと、そのまま気絶したんだよ、僕は。
 
 それで光るソフィアさんと一緒に馬車で袋詰めか!    爆弾抱えている身にもなってくれよ。結構、怖いんだぞ。
 
 「まだソフィアは光ってるな。次の街まで行けば大丈夫だろ。明日には着くからそのままな。飯は我慢しな、トイレに行きたくはないだろ」
 
 ソフィアさんが光っているのは、目隠しをされていても目を開けば隙間からの光で分かる。仄かに感じる暖かさに、次の街まで抱き締められていたら低温火傷になりそうだ。
 
 せっかくなら輪番をしたい所だけど馬車では、いちゃラブ禁止で手が縛られているから、触る事も出来ないんだよ。僕はソフィアさんの柔らかさと爆発の恐怖だけを感じて、次の街まで荷物のように運ばれていたら、どれだけ幸せか……
 
 「起きましたか……」
 
 目の前、五センチと離れていない所から囁く鳥の囀りが。とても優しく慈愛に道溢れた核爆弾を僕は抱き締めている。
 
 「プリシラさんも酷いですね……    口にロープだなんて」
 
 ロープだったのか!?    どうりで変な味がすると思ったよ。こんな時はタオルにしてくれ、清潔な新品ので頼む。
 
 「取りますね」
 
 優しいソフィアさんは、汚いロープをほどいてくれた。出来れば、手を縛られたのも取って欲しい。決して逃げようとしてじゃないんだ。ちょっと痺れてるだけ。逃げたりしないよ、メテオは逃げ切れないし。
 
 「あら、ヨダレが出てますよ」
 
 口を開きっぱなしなんだから、ヨダレも出るさ。いい大人として恥ずかしいが、猿ぐつわなんてされた事はないんだからね。初めての大人になってからのヨダレ。
 
 それを舐め取るソフィアさんの舌。気持ちいいやら恥ずかしいやらで、下半身が元気になるのは男の性か。
 
 「あら、あら、どうしちゃったんですか……」
 
 分かってるくせに……    あぁ、そうさ、元気になったのさ。ソフィアさんの柔らかい裸を抱いて、キスみたいに舐められたんだから相棒が起き出すのも無理は無い。だが、ヤバい。このままだと突き刺さる。いや、突き刺したい衝動が沸き上がる。
 
 「ソ、ソフィアさん、もう少し離れて……」
 
 言って気付く、僕はバカだと。ソフィアさんに手を回して離れられ無くしてるのは僕の方じゃないか。それでも離れようとしても二人で入ってる袋の中。逃げ場無し。相棒の逃げ場も無し。
 
 それなら逆に、ぴったりと着けばいいのでは?    入れる必要は無いんだ。二人の間に挟み込むようなポジションを取れば問題ない。……これだ!
 
 「あぁん、もう団長ったら……    は…ああっあぁ…んん」
 
 しまった!    狙いが……    二人の間に挟み込むはずだったのに。何故か腰が落ちて、何故か突き上げて、何故か気持ちいい。
 
 「あぁあぁ…はぁん…んっんん!」
 
 ソフィアさんも気持ち良くて、良かった良かった……    じゃねえ!    この後、どうするんだ!?    どうすればいい!?    いや、する事は分かってる。ピンポイントで腰を突き上げ、突き下ろし、中をこねくりまわす。
 
 袋にはいったまま……    無理だろ、動けないよ。さっき入ってしまったのは偶然に過ぎない……    偶然では無いけれど、事故でも無いし……    必然?
 
 どうしよう。このままで次の街まで行くのか?    行けるのか?    刺したままで「はい、お仕舞い」は、通じないよな。
 
 「もっと……    かき回してぇぇ」
 
 そのリクエストにはお応え出来ません。この電話番号はただ今、使われておりません。    ……どうしよう。
 
 そして閃く、さすが僕!    こんな事があったじゃないか!    狭いクローゼットで満足に動けないけど、動いた相棒を思い出す。
 
 ■■■■、凝縮。そして、■■■■、融解。さらに凝縮。もう一度、融解。とどめの凝縮!    続けて、融解。
 
 「あひゃぁ……  なに、これぇ…    はぁが…ぁはあ…ぁん…」
 
 腰を動かさなくても、相棒だけ伸び縮みする僕の必殺技。ソフィアの秘部を幾度も抜き差して、奥底までノックした。
 
 「あひゃ!」
 
 激しい一突きに、我慢が出来なくなった僕が声をあげる。
 
 「うるせぇんだよ!    ヤるなら静にヤれ!」
 
 激しい一突きは、プリシラさんのピンポイントのケツキック。肛門に穴が空くかと思った~。もう空いてるけどね。恥ずかしいから、これ以上は広げないで。
 
 「邪魔すんな、プリシラ!」
 
 ここで、このセリフを言える人は僕では無い。僕の目の前の人が、重低音を響かせて吠えるのと一緒に背中が焼けるような痛みが……    レーザー撃ったのか!?    適当に!?
 
 あんなのが頭に当たったら死ぬ。プリシラさんはナイフを投げても怪我をさせないようにするけれど、ソフィアさんのレーザーに容赦は無い。
 
 凝縮、融解、凝縮、融解、凝縮、融解……     そして、キスを!    激しく無くてもいい。突き続ける事に意味があるんだ。少なくともソフィアさんは僕の方に集中する!
 
 「はぁむ……あふぅ… むぅうふぅ……」
 
 口を押さえて声をあげれないように。だけれど、下からは突き続ける。これなら誰も怪我をしなくて済む。俺様的完全勝利……
 
 「はぐっ!」
 
 不意の心臓麻痺。ケツキックが終わったと思ったら、静に襲い掛かるクリスティンさんの悪魔の一刺し。回避不可的完全敗北……
 
 「勝手にやってろ!」
 
 プリシラさんの戦線離脱はありがたい事だけど、なぜ、クリスティンさんが参戦するのか意味が分からん。女心の勉強が必要なのか!?
 

 
 目的の次の街まで、悪魔の血を使った魔力と、心臓マッサージの神速を使い続け、夕方近くに街に入れた。そして僕は精神的にまいってしまった。袋から出された僕達はもう寝たいの一心だった。寝たい、一人で寝たい、ゆっくり寝たい。頭の中にはそれだけだった。
 
 僕は食欲も無くて宿屋のベッドに転がった。輪番は停止しているので、明日の朝までゆっくり休める。目を閉じると、コアトテミテスの街を思い出す。
 
 いろんな事が思い出されていく。これが想い出になるのかと感慨深いものもあるが、続きは夢の中で……
 

 「良き人……」
 
 ……来たかぁ。忘れていた訳では無いよ。
 
 
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