異世界に来たって楽じゃない

コウ

文字の大きさ
116 / 292

第百十六話

しおりを挟む
 
 羨ましいとは、まさにこの事。
 
 
 屋敷の中に入ってから抵抗の一つも無く、ヴァンパイアのいる玉座の間まで一直線。大きな扉を力一杯に開けるとそこには……    ハーレムかよ。
 
 中央の王の椅子に座っているのは中年のダンディなオヤジ。それはヴァンパイアだろうからいいとして、問題はその回りだ。
 
 その回りには一糸まとわぬ女性が……   なんて羨ましいんだ。これがハーレムだろ。これぞハーレム!    一人の男に仕える美しい女性達。
 
 美しい女性はこちらにもいるけど「仕える」と言うのは違うかな。殺し合いなら何度もやってるけど。それは僕達が殺し会うほど仲がいいと言う証拠だね。
 
 ただ、やはり裸はどうだろうか……   
 裸だと全てを見てしまっている感があって楽しみが少なくなってしまっている様な気がする、世の中の女性がクリスティンさん並みなら構わないが、やはり服は大切だと思うね、女性のファッションは四季を通してセンスが光るものがあり、例え露出が少ない服装としても、そこから想像の羽を羽ばたかせる受け手側の責務を果たせば問題はない、むしろ露出が少ない時こそ、妄想力が必要とされてくる、その妄想力が男としての……
 
 「何用だ……」
 
 重々しい声が部屋に響く。うるせぇ、バカヤロー!   人が考え事をしてる時に話し掛けるんじゃねぇ!
 
 お前に用は無いんだよ。お前のハーレムの服装が問題なの!    脱がせばいいって、その短絡的な女性蔑視が問題なの!   女性の美しさを引き立たせる為には服装も大切なアイテムの一つなんだから……
 
 お前に用が有るんだよ。何の為に一時間もかけて馬車に揺られて来たと思ってるんだ!    か弱い女性をこんな目に合わせて人として許せん。成敗してやるから覚悟しろ……
 
 「白百合団、団長のミカエル・シン、アシュタール帝国男爵と申します。この度は私どものダークエルフがこちらに居ると聞き及びまして……」
 
 「団長、ちょっといいであるか。ヴァンパイア、お主も血の探究者なら血に付いて調べたはずである。その研究結果を見せて欲しいである」
 
 「貴様は誰ぞ……」
 
 僕が話しているんだか、割って入るなよ。それに「血の探究者」って何?   カッコいいなぁ今度、使ってみよう。
 
 「我はネクロマンサーのルフィナ。不死の女王を使役する者である」
 
 「ほう、ネクロマンサーか。お主は……」
 
 僕を完全無視した会話で五分くらい盛り上がった後、ルフィナは楽しそうに部屋を出ていった。ヴァンパイアの研究成果を見に行く為に。
 
 「ルフィナ姉さんは何しに来たっすかね?」
 
 ヴァンパイアも自分の研究の成果を、誰かに認めてもらいたい気持ちがあったのだろう。快く笑顔でルフィナを見送っていた。
 
 「自分の欲望を満たすためかな……   それよりもヴァンパイア!   ここに居るダークエルフは僕の……」
 
 「僕も殺るッス」
 
 一陣の風を残してアラナはヴァンパイアの元へ。不思議だ僕はここに居るのに、誰にも気付かれて居ない感じだ。何で僕を無視するのかな。勝手に殺ってもアラナへの危機感は感じないけど僕の存在の危機感を覚える。
 
 話は自己紹介までは終わっていたよね。ここに来た目的はの途中だったけど……    ヴァンパイアさんの自己紹介がまだだたけど、僕も殺っちゃおうかな。いいのかな?
 
 アラナのソードガントレットを受け止めていたヴァンパイアの頭を僕は縦に割った。卑怯かも知れないけど女性を裸にして側に置いた時点で、執行猶予は付かない!    即断即決、女性はもっと大事に扱うべきだよ。
 
 割った手応えが無いままに、ヴァンパイアは黒い霧から多数のコウモリになって宙を舞う。僕達から離れた所で一つに固まりヴァンパイアの姿を形どった。
 
 忘れてませんよ。ヴァンパイアがコウモリになるくらいの事は。ただ、ここまで手応えも無くなるとは思ってもみなかった。忘れていた訳では無いですよ。
 
 「アラナはヴァンパイアを切った事はありますか?」
 
 「無いッス。合わせていた剣が力もなく霧になったッス」
 
 さて、どうしたものか……   考えはあるんだよ、一応……
 
 不死の女王と殺り合った時に思ったけれど、この世界に完璧な不死者など無い。有るのは死ににくい体だけ。要は死ぬまで殺せばいい。いつかは魔力が枯渇して存在を維持出来なくなるまで。
 
 焼き肉ニンニク定食があるのかは知らない。十字架はたぶん無い。聖水は教会に行けばあるのかも知れないけど教会になんか行った事がない。
 
 本当なら七人がかりで、袋叩きで殺ろうと思っていたけれど、何故かここには二人だけ。いつの間に減ったんだろう。
 
 「アラナ、死ぬまで殺せばいいから。一撃より手数で勝負するようにね」
 
 「はいッス。この人は団長より弱いッスね」
 
 そういう事は言葉にしてはいけませんよ。まあ正直なところ大した事は無い。他のメンバーも連れて来たけど戦力過多だね。普通の人なら手も出せないから、ここまでヴァンパイアを増やせたのだろうけど、人の女に手を出したらいけませんね。
 
 「改めて始めましょうか。狂犬病に注意してね」
 
 「はいッス」
 
 アラナの心地いい返事と共にヴァンパイアを切り刻み始めたが、アラナはこんなに速かったかな?   僕は神速を使って、切っては霧になるヴァンパイアを追い掛けているのに、アラナも平然と付いてくる。
 
 さすがに神速並とはいかないけれど人間離れした速さは凄いものがある。今ならプリシラさんのライカンスロープといい勝負が出来そうだ。
 
 問題が有るとすれば一つだけ……
 
 「飽きたッス」
 
 集中力が足らない事。十五分で飽きてしまうとは……
 
 「アラナは下がっていいですよ。他の下僕さん達は動かない様なので休んでいて下さい」
 
 これでも不死の女王を相手に半日以上は神速を維持出来たからね。あの時の場合と今回はかなり違うけど、モード・ツーにもならない相手なら一方的に殺れる。

 そんな感じが二時間も続けば僕も飽きてきた。だって弱くてつまらない。本当にヴァンパイアなのだろうか。イメージ的には苦戦もあったりしていたけど……    まさかこいつは下僕レベルなのか!?
 
 さらに一時間。アラナも途中で参戦したり休んだりで時間が経ったが一方的な事は変わらない。不死の女王の時の様なギリギリ感が全く無い。つまらん。
 
 「そろそろ死んでもらえませんか。戦っていても面白く無いんですけど……」
 
 言ってから、しまった!   と、思った。こういう事は一生懸命やっている人に言ってはいけませんよね。ただ、どうしても一方的なもので……
 
 「き、貴様、何者だ……」

 あれ?    自己紹介の途中だったかな。ずいぶんと失礼な事をしてしまった。挨拶も無しに三時間も殺し続けたのか。反省するのは僕の方だ。
 
 「失礼しました。僕は白百合団、団長のミカエル・シン男爵と申します。この度は……」
 
 「ヴァンパイアってのはこうやって殺すんだぜ!」
 
 聞き覚えのある声と共にヴァンパイアの胸から白木の杭が、ビックリ箱の様に飛び出た!    
 
 「プリシラさん!   挨拶の途中なのに……」
 
 白木の杭に刺されたヴァンパイアは青い炎を上げて燃え上がる。全身が松明の様に燃え広がり、声にならない悲鳴をあげてのたうち回った。
 
 「遅せぇから迎えに来たぜ!   こんなのに何時まで掛かってるんだ」
 
 「頑張ったんですけど、しぶとくて仕留め切れませんでした。    ……クリスティンさんはどうしました?」
 
 「あいつならソフィアの所で待たせてるぜ。邪魔されたく無いからな」
 
 お目付け役で残しておいたクリスティンさんを置いて来たのかと思ったよ。    ……邪魔ってなあに?   
 
 「アラナ、暇だったろ。これからが本番だぜ。戦時報酬、欲しけりゃ奪いな」
 
 「欲しいッス。退屈で仕方がなかったッス」
 
 お前らアホだろ。まだ燃え上がってるヴァンパイアを尻目に武器の矛先を僕に向けるアホ二人。なんでこうなるの?
 
 「待って下さい。ヴァンパイアだってまだ死んだか分からないですよ。それにダークエルフの二人だって探さないと…」
 
 全部を言い終わる前に斬りかかって来た。今日はどうも話が出来ない日らしい。そう言えばヴァンパイアさんの名前も聞いてないや、てへっ。
 
 さあ、アホ二人!    掛かって来いや!    コアトテミテスの様にはいかねぇぞ!   返り討ちにしてやるよ。
 
 
 幸いにもモード・ツーを温存していたお陰で勝てましたが、普通にしませんか?    柔らかいベットで、何かお酒でも飲みながら。こんな硬い地面と燃え盛るヴァンパイアの側では無く……    悲鳴が五月蝿いんですよ。   
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

処理中です...