異世界に来たって楽じゃない

コウ

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第百十七話

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 戦時報酬の支払はきっちりと。カード払いはダメ。ニコニコ現物払い。
 
 
 燃え盛るヴァンパイアの横で報酬を払い、もがき苦しみ抜いてから、朝日に当たってヴァンパイアさんは灰になった。
 
 最後まで話が出来なかったのが残念だ。彼なりの正義があったのではと思うと、文明人として話し合いが必要だったのでは……    彼の名前は何だっけ?
 
 アラナは、早々に床に押さえ付ける様にヤったら思いの外、それが良かったらしい。やっぱり猫は狭い所が好きなんだね。
 
 プリシラさんに至っては、何とかライカンスロープにならないギリギリのラインでラブラブな時間の時を過ごし、ヤバくなったら神速を使う荒業で撃沈した。
 
 そして、ソイツはやって来た。音もなく、唐突に、いきなり、前触れもなく僕の左の脇腹から右に三本の光が貫通していった。
 
 「ぐえっ!」
 
 マジにこんな声が出るんですね、レーザーで貫かれると。思わずプリシラさんの豊満な胸に血を吐き出してしまった。
 
 「汚ねぇなぁ」
 
 お前、それがレーザーに腹を貫かれた人に言う言葉か!    少しは心配しろ!    なんでお前は撃たれてないんだ!?    ヤってる事は同じだろ!
 
 「ソ、ソフィアさん、いきなりですね……」
 
 誰が撃ったかなんて、この世にレーザー撃てるヤツが他にいるものか!?    子供が玩具を持ったみたいに、使いたいから使ったは止めてくれ。
 
 「お楽しみなんですね。下僕のみなさんの脚は元に戻しましたよ」
 
 「お、お疲れさまです。僕のお腹も元に戻してくれると嬉しいのですが……」
 
 僕は吐いてはダメなような、どす黒く赤い血を左右の脇腹と口から続々と流していた。
 
 「くそ!   いい加減どけよ。いつまで乗ってるつもりだ」
 
 これが団長に言う言葉ですかね。これが怪我人に言う言葉ですかね。これが今まで突き刺してた人に言う言葉ですかね。これが……
 
 「あら大変、急がないといけないわ」
 
 何故、服を脱ぐ。戦時報酬を払うのか?    百歩譲って、治してからでも遅くないだろ。二百歩譲ったら、出血多量で死ぬぞ僕は。
 
 ……払ったよ、戦時報酬を……    百八十歩譲って。二人で血だらけになりながら。正確に言えば僕の血が吹き出しながら。ピュッピュッと血が出るんだね。左右の脇腹からピュッピュッと。
 
 払い終わった時にソフィアさんの意識が飛んで、気持ち良さそうに寝てたので、さすがに起こした。とても身体が冷えた感じになって来たし、治してもらわないと死んじゃいそうだから。ひっぱたいて起こそうかと思ったけれど、さすがにね……    後が怖いし。
 
 僕は、もう何をしに来たのかな……    
 
 ……ダークエルフだ!   ダークエルフを助けに来たんだった。別にヴァンパイアなんて殺さなくても良かったのかな。自己紹介も曖昧だし、彼の名前さえ聞いてないよ。
 
 「終わったか、帰るぞ」
 
 はあぁ?    ダークエルフはどうした!?    美人のダークエルフを助けに来たんだよ。ヴァンパイアなんてどうでもいいんだよ。
 
 「プリシラさん、ダークエルフはどうなりましたか?    それにヴァンパイアの下僕になった人達も」
 
 「知らねぇ」
 
 殺す!   
 
 頼むからちゃんと働いてくれ。いや、働いたんだけど、アフターケアも仕事のうちだからね。僕達は大儀でみればサービス業なんだから。
 
 今回、雇ったのは僕になるのかな?   まあ戦時報酬も支払ったし、お金の契約は無かった事にしてしまおう。
 
 その後は乗せられるだけ馬車に乗せて、乗り切れない人は歩きで街まで向かった。もちろん僕は歩いてプリシラさんは乗って。
 
 戦時報酬の件だがクリスティンさんは何もしていないからと報酬を拒否し、オリエッタは後払い、ルフィナは払えと言ったので神速のデコピン喰らわせた。
 
 ダークエルフの二人はヴァンパイアの下僕になる前だった。下僕になっても大元を倒した時点で元に戻るし問題ない。後はこの二人からハルモニアの情報を聞いてからケイベックの海岸を目指そう。出来るだけ他には立ち寄らず、一直線に、夢の海岸へ。
 
 昼前には宿屋に着き、待ち構えていたレイナちゃんとダークエルフの二人が喜び抱き合っていた。良い事をした後は気持ちがいい。
 
 白百合団も頑張ってくれたし、夜通し戦ったのだから今日は休んで英気を養ってくれ。僕も寝る、ぐっすりと、刺される事も、レーザーで焼かれる事もなく……
 
 
 
 「良き人……」
 
 まあ、そうくるよね。情報を聞かないといけないんだもん。その後は体液の注入もあるし……   三人分かぁ。
 
 「みなさん、お疲れさま。今回は大変な目に合いましたね。怪我とかしてませんか?   食事は取りましたか?    部屋に入る時はノックを三回ですよ。黙って入って、寝ている人の耳元で急に話し掛けてはいけませんよ」
 
 さすが僕の雇った影だけある。いつ寝首をかかれていても気が付かない、いつ寝込みを襲われても気が付かない。
 
 「良き人。この度は、私どもの為にありがとうございます。アイナとミイナ、両名と共に準備は出来てます」
 
 二人は薄手の服をするすると脱いでいく。僕はそんな彼女達を僕は止めた。下着に手が掛かるのを待ってから。
 
 体液を補充しないと体が腐る影。抱かれる事が嫌なのか、腐りのペナルティーが怖いのか、それとも進んで抱かれたいのか分からないが、その前にやることがある。
 
 アイナとミイナが行った、ハルモニアの情報は大切だ。魔王がいるとするノルトランドと唯一繋がる大橋がある国。ハルモニアの出方次第で僕達の方向も変わる。
 
 時間的にまだ余裕がある。だからこそ重要なケイベックに立ち寄ってから、ハルモニアに進もうと考えていた。僕を待っている青い海、水着の美女。
 
 「ハルモニアは……」
 
 ハルモニアは地理的にケイベック、ロースファーの北で、二国を蓋にする形である青森県だ。岩手県との……    ロースファーとの仲は良くないがケイベックとは普通にやっている。仲が悪くとも戦争状態にはなってもいないし、ハルモニアとしては魔王の国、ノルトランドで取れる魔石の収集に重きを置いている。
 
 前世の異世界での記憶と少し違うような気もするが、この記憶も宛には出来なくなってきてるから仕舞っておこう。ただ協力者や一緒に戦った人達の記憶も薄くなってしまったのは残念だ。共に戦い笑い合っただろう記憶。寂しいね。
 
 一つだけ、報告の中でノルトランドに魔石を取りに行った、冒険者の帰還率が悪くなったのが気になる。もしノルトランドで軍を整備し、それに見つかったとしたら生かして帰す事はしないだろう。
 
 やはりケイベックの海は諦めてハルモニアの海にするべきか……   魔王の進行と趣味を両立させるためにはハルモニアしかないのか。水着の美女と浜辺で遊ぶのはハルモニアしかないのか。
 
 コアトテミテスに戻ってサンドリーヌ大森林を通って、ロースファーを突き抜けてハルモニアに行く方がケイベックの海岸に行くよりだいぶ時間が掛かる。戻るのが嫌だなぁ、せっかく来たのにまた一日かけて戻るのか。
 
 ……でも、戻ろう。なんだか嫌な予感がする。魔王が動き出す予感が。このタイミングでの報告、コアトテミテスでの足止め、謀られている気がする。あの神ならやりかねない。
 
 僕が水着の美女と遊ぶのを邪魔するのか!?    時間の変更なんて大陸を移動させるのと同じくらい楽じゃないのか!?
 
 ハルモニアの大橋に到着と同じにして魔王の進軍。やるだろうなぁ、あの神なら。それなら、それで魔王を倒して終わりにしてやろうか。そんなエンディングなら神様は面白いと思ってくれるのだろうか。
 
 もうすぐ動き出すであろう魔王軍。面白いエンディングを望む神。なんだか真面目な話で気が滅入ってきた。
 
 今は色々あるけど楽しい。回りは美人、美少女に囲まれて、刺されて、斬られて、撃たれて、たまに毒を盛られて……   
 
 前世の薄れた記憶で、ボロ負けして結構な数の死人が出てるし不幸になった人も数知れず。それを繰り返さない為にも少なからず影響を及ぼしてきたし、出来るだけの準備もした。
 
 それで水着の女の子と遊ぶのはお預けなのかよ!    ハルモニアの大橋に行って魔王様をぶっ殺して、この話はお仕舞いにしてやる。面白いエンディングなんて知らねぇ。
 
 行って、殺って、ヤる。これだな!
 
 よし!   決めた!  ハルモニアに行こう。決心すれば滅入った気持ちも吹っ飛ぶ。何だかやる気が出てきたぜ。
 
 
 まずはこのヤる気を三人に分け与えよう。
 
 
 
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