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第百四十八話
しおりを挟む朝、起きると花園が広がっていた、素晴らしい白百合団の花園が。南国なので一つのベッドに四人も寝ているとさすがに暑苦しい。
驚いた事にリヒャルダちゃんも部屋のベッドを使っていた。もちろん僕の隣にいるのでは無く、隣で寝ているのはソフィアさんだった。
ソフィアさんとも仲良くなれたのは嬉しい事だ。これで白百合団に入団させる障害も少しは減るだろう。
「た、隊長! 敵が来ました!」
僕を隊長と呼ぶのはアンハイムから着いてきた傭兵くらいか。ただドアをいきなり開けるのは良くない。ここにはクリスティンさんがいるのだから。
当然のごとく、瞬時に心臓発作を起こして倒れる傭兵。僕はすぐに近付いて神速の心臓マッサージとソフィアさんの治癒魔法で一命をとりとめた。まあ、いい物を見たんだから仕方がないね。
「全員起床! 完全武装で北門西の独立遊撃隊の場所に集合。プリシラさん遊撃隊の指揮は任せましたよ、リヒャルダちゃんはオリエッタの元へ。ソフィアさん急いで下さい」
「何であたいが指揮を取るんだぁぁ」
まだ眠そうに気だるく緊張感の欠片も無く、全裸のままで横になりながら言いきった白百合団、副団長のプリシラさんはとても色っぽい。
このまま縛り上げて欲望のままに突き上げてヤりたくなるのを、ぐっと堪えた。僕達は傭兵で魔物はすぐそこに来ている。
「聞いてなかったんですか。プリシラさんが指揮を取るんですよ。僕とソフィアさんは横に回り込みます」
「そんで…… どうするんだぁ」
クリスティンさんやアラナはベッドを出て着替えているのに、こいつは戦争する気があるのだろうか。僕はうつ伏せになって寝ているプリシラさんのヒップに目が釘付け。
あぁ、このまま周りの目も気にせず突き捲りたい衝動に駆られる。それほどの美尻。それほどの……
「ソフィアさんが側面から敵の魔法使いを狙撃するんですよ。聞いてなかったんですか。僕は援護に行きますからそれまでプリシラさんが指揮を取るんですよ」
「私は団長とデートです。うふふ」
「……あぁっ! 今、何て言った!」
今まで説明した事をもう一度、言えというのですか。それともソフィアさんのデートの話しに気がいってるのか。人の話は聞いておけよ、そのケツにカンチョウするぞ! ……間違いなく手が臭くなりそうだから止めておくけどね!
「プリシラさん、しっかりして下さい。早く立って。着替えを手伝いましょうか。指揮を取るんですよ、任せましたからね。ソフィアさんは先に西門に行って下さい。馬が二頭、待機しているので僕が来るまで待っていて下さい。リヒャルダちゃんは僕とオリエッタの所へ。僕はオリエッタからハルバートをもらって西門に向かいます」
「誰も「やる」なんて言ってねえ」
この野郎はまだ話を引き伸ばすつもりか。敵が来てるんだよ、寝ている場合じゃないんだよ。起きて戦え、顔を洗え、歯を磨け
「リヒャルダちゃん準備は出来てるね── 先に行きまよ。クリスティンさんにプリシラさんを任せますよ」
僕はリヒャルダちゃんを連れてオリエッタの所に向かった。約束していたハルバートを借り受けないと。
砲台に向かう道すがらリヒャルダちゃんに話し掛けても「はい」くらいしか返って来ない。初の実戦で緊張しているのが初々しくて可愛いね。まあ、何かあってもオリエッタの側を離れなければ大丈夫でしょ。
オリエッタは砲台の上で黒いゴスロリを着て大の字になって眠っていた。慣れて来ればこのくらいは出来るんだよ。変な所は見習わないで、相手の長所を見習ってね。
「オリエッタ、敵が来ましたよ。いつまで寝てるんですか!?」
僕に気づくとオリエッタは背中を見せて転がり無視する様に眠ってしまった。 ……何か怒らせる様な事をしたのかな?
「オリエッタ、どうしたんですか。敵襲ですよ」
僕はリヒャルダちゃんを砲台の端に待たせて近付いてみた。ご飯は送らせる様にしたし心当たりがないのですけど。
「オリエッタ、敵襲ですよ」
僕がオリエッタを覗きこむように見ると、顔を合わせない様にまたまた伏ぎこんでしまった。 ……心当たりは無いのですけど。
「昨日…… 昨日の夜はみんなで楽しんだのです~。オリちゃんも仲間に入りたかったです~」
それか! しかし、どうやって知ったんだ。ここから宿屋までは距離があって見えるはずがない。知られてしまった以上は仕方がないけど、何とかフォローして機嫌を治してもらわないと、レールガンは貴重な戦力だ。
「オリエッタ、ごめんね。あれには理由があるんだよ。オリエッタは敵が来たらレールガンで撃つよね。とても強力な武器で敵の主要な部隊を壊滅出来るくらいだよ。そうなればスコアは稼ぎ放題だよ、サンドドラゴンだって巨人だって一人で倒せるくらいだもん。もし倒しきったらどうする? 「スコアの独り占めだ!」って、言われちゃうよ。そんな時に「夜に楽しんだでしょ」って言い返せるよ」
と、まあ、こんな感じの事を十分ほどかけて説明して、頬にチュッとキスをした。オリエッタは起き上がると僕に抱き付いて「皆殺しにします~」と怖いことを笑って言った。
怖いで思い出したがルフィナのフォローはどうしよう。あいつの事だから使い魔とかで絶対見ているはずた。話し合いに応じる気も無いルフィナの所に、今から行って毒や痺れを喰らったら作戦が駄目になる。
オリエッタにプリシラさんの予備のハルバートを出してもらってから「リヒャルダちゃんをよろしく」と伝え僕はソフィアさんの待ってる西門に向かった。
作戦としては西門から出て、ソフィアさんと敵軍の側面から魔法防御をするであろうリッチを見つけ狙撃する。魔法防御は盾の様なものだ。正面は守れても側面や後ろは改めて魔法を使わないといけない。
正面からオリエッタのレールガン、ルフィナのアンテッドサンドドラゴン、街中からゴーレムや投石機、バリスタからの攻撃の隙を見計らって出来るだけ静かに狙撃する。後は出たとこ勝負だ。
西門に着くと東西の門を守っている第四軍の人だけで馬は用意されているが、肝心のソフィアさんがいない。まさか着替えに手間取っているのかな。手伝えば良かった。
さらに十分ほど待ってやっとソフィアさんが表れた。別に普段通りだし何をやっていたんだ、この忙しい時に。
「遅れました~」
元気な笑顔が眩しい。これがソフィアさんが言っていた様にデートだったらどれほどいいか。
「行けますね? もう敵は……」
とてつもなく派手な砲撃が一発。何かが爆発したくらいの衝撃がこの西門にまで伝わる。
「オリエッタか!? ソフィアさん、急ぎます」
僕達は西門を出て馬を駆って狙撃ポイントを目指す。ソフィアさんは馬の速駆けは不得意だが何とか着いてきた。
ポイントに着く前に敵の規模はどのくらいだろうと稜線を越えて見えた数に僕は驚いた。
見えるだけでサンドドラゴンが三匹、巨人が十五、トロールは分からなかったけどオーガやゴブリンだけでも五千はいた。
「これはヤバいですね」
「そうですね。このままだとオリエッタの独り占めになりそうです」
そういう「ヤバい」ではないんだよ。僕達の総兵力は第四軍まで出来てるから約八百。それに街の人で戦う意思のある人が約五十くらい。
オーガ一体あたり、五人の騎士が必要とされているから少なく見積もって二万五千対八百五十。これにサンドドラゴンや巨人が加わって絶望的な数になる。
が、一発五百ゴールドのオリハルコンがコーティングされたレールガンの破壊力は、サンドドラゴンだって射ぬく。
オリエッタには「出来るだけデカいのを倒せ」と言ってあるし、今また巨人が頭を吹き飛ばされて倒れていった。
「殺りやがりましたね、オリエッタのヤツ」
ソフィアさん顔が怖い。笑ってるようで笑ってないもの。これはオリエッタの一人勝ちになるかもしれないな。
「急ぎましょう」
僕とソフィアさんは稜線から見えないように狙撃ポイントに駆け出した。
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