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1,勝田智浩
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平年よりも暖かかった気温の影響で今年は桜が早く散った。
校門の前でどこかの親が子供の名を呼びながら記念撮影を求めている。それを他人事みたいに聞きながら勝田智浩は少し背を曲げて目立たぬように端に寄った。
190に届きそうなこの身長と普通にしているのに仏頂面になる表情のお陰で、そちら側の人間に見られがちな勝田はうんざりしていたし、本当は喧嘩も苦手である。高校時代はその見た目だけでなんとかしのいできたが、見た目だけ極道チックな自分がここに来て目立ってしまったらこの4年間は地獄になるだろう。怖い先輩にガン飛ばされて袋叩きにされるのがオチだ。せっかく一からやり直そうとしていた勝田にとってこのことは最重要である。
「うわ!君1年?随分背が高いねぇ」
早速声をかけられた。スーツを着ていないから先輩だろうか。短く刈った黒髪で大きな口を開いて笑う人だ。
「サークル決めてない?良かったらラグビー部どう?」
こちらの見た目に怖気づくことなく話してくる体格のいいその人はにこにことチラシを渡してきた。ラグビー部のものだった。
「え、いや。あの」
突然のことに吃りながら言葉を口にすると、彼はハハハと笑った。屈託なくて明るいものだった。
「別に強制じゃないから安心してよ。君みたいに身長あったらスポーツ選び放題だろ。…っとすごい荷物だな。寮生か?部屋まで案内してやろうか」
「いえ…悪いですし」
目を逸らしながら言うと首を傾げられたが、この人も勧誘中だろう。忙しいに違いない。
「気にすんな。ところで部屋は何処だ?邪魔じゃなければ改めてスカウトさせてくれよ」
「ハァ……えっと、206号室です」
「20…6…?うわ……」
あからさまに顔をしかめた。
「……?何かあるんですか」
勝田が聞けばいや、と頭を振ったものの声を潜めて忠告してくれた。
「あまり大きな声じゃ言えないんだが、多分君の寮兄になる男……彼は信じない方がいい。悪い噂が出回ってるんだ」
途端に脳内にはガタイの良い怖い目つきの男と、「終わった」の4文字が浮かんだ。
「君の寮兄…米田はどこかのおえらいさんの息子らしくてな…喧嘩っ早いって噂もあるし、女が何人いるかわからねぇって言われてるしな」
まぁ噂だから俺はなんとも、と彼は続けたが既に勝田は萎えていた。無理無理無理そんなとこで生きてけない。
「…俺がなんか役に立てることあったら言ってよ。俺、これだから」
さっき押し付けられたチラシの下部に「鼎裕仁(かなえ ひろひと)」という名前とメールアドレスが載っていた。多分泣きそうな顔に見えたんだと思う。
「…ありがとう……ございます…」
勝田が少し頭を下げると彼はよしよしと頭を撫でて頑張れよ!と言ってくれた。
鼎と別れたあとも他の運動部の先輩らしき人に何度か声を掛けられ、そのたびに流れで寮の話になり、米田という会ったこともない男の怖さについて語られ、荷物を置きに寮に着いた頃にはぐったりとしていた。
ハァ……と溜息をつきながら206号室を目指す。最悪、共用なのはキッチンとトイレと風呂、そして入り口のドアだけなのだから多分時間を合わせなければ大丈夫だろう。…今からこんな後ろ向きでこれから先どうすればいいか分からない。
自分の部屋の方の鍵を開け中にはいる。
6畳程度の部屋に荷物を置いて一段落した時には午後4時を回っていた。
………挨拶だけはした方がいいよな…。
挨拶しない方が多分印象悪いし、なるべく純粋そうな一年生を演じられることを祈る。ガンバレ、俺!
自室を抜けて似通った扉をそっとノックする。心臓が痛い。
「はぁい」
と思ったよりも明るい声が聞こえて、何かこそこそと話すような声が聞こえた。それから衣擦れの音がしてだんだんと近づいてくる。その間死刑を待つ罪人みたいに緊張していたのは言うまでもない。
ガチャリと扉が開いた。
校門の前でどこかの親が子供の名を呼びながら記念撮影を求めている。それを他人事みたいに聞きながら勝田智浩は少し背を曲げて目立たぬように端に寄った。
190に届きそうなこの身長と普通にしているのに仏頂面になる表情のお陰で、そちら側の人間に見られがちな勝田はうんざりしていたし、本当は喧嘩も苦手である。高校時代はその見た目だけでなんとかしのいできたが、見た目だけ極道チックな自分がここに来て目立ってしまったらこの4年間は地獄になるだろう。怖い先輩にガン飛ばされて袋叩きにされるのがオチだ。せっかく一からやり直そうとしていた勝田にとってこのことは最重要である。
「うわ!君1年?随分背が高いねぇ」
早速声をかけられた。スーツを着ていないから先輩だろうか。短く刈った黒髪で大きな口を開いて笑う人だ。
「サークル決めてない?良かったらラグビー部どう?」
こちらの見た目に怖気づくことなく話してくる体格のいいその人はにこにことチラシを渡してきた。ラグビー部のものだった。
「え、いや。あの」
突然のことに吃りながら言葉を口にすると、彼はハハハと笑った。屈託なくて明るいものだった。
「別に強制じゃないから安心してよ。君みたいに身長あったらスポーツ選び放題だろ。…っとすごい荷物だな。寮生か?部屋まで案内してやろうか」
「いえ…悪いですし」
目を逸らしながら言うと首を傾げられたが、この人も勧誘中だろう。忙しいに違いない。
「気にすんな。ところで部屋は何処だ?邪魔じゃなければ改めてスカウトさせてくれよ」
「ハァ……えっと、206号室です」
「20…6…?うわ……」
あからさまに顔をしかめた。
「……?何かあるんですか」
勝田が聞けばいや、と頭を振ったものの声を潜めて忠告してくれた。
「あまり大きな声じゃ言えないんだが、多分君の寮兄になる男……彼は信じない方がいい。悪い噂が出回ってるんだ」
途端に脳内にはガタイの良い怖い目つきの男と、「終わった」の4文字が浮かんだ。
「君の寮兄…米田はどこかのおえらいさんの息子らしくてな…喧嘩っ早いって噂もあるし、女が何人いるかわからねぇって言われてるしな」
まぁ噂だから俺はなんとも、と彼は続けたが既に勝田は萎えていた。無理無理無理そんなとこで生きてけない。
「…俺がなんか役に立てることあったら言ってよ。俺、これだから」
さっき押し付けられたチラシの下部に「鼎裕仁(かなえ ひろひと)」という名前とメールアドレスが載っていた。多分泣きそうな顔に見えたんだと思う。
「…ありがとう……ございます…」
勝田が少し頭を下げると彼はよしよしと頭を撫でて頑張れよ!と言ってくれた。
鼎と別れたあとも他の運動部の先輩らしき人に何度か声を掛けられ、そのたびに流れで寮の話になり、米田という会ったこともない男の怖さについて語られ、荷物を置きに寮に着いた頃にはぐったりとしていた。
ハァ……と溜息をつきながら206号室を目指す。最悪、共用なのはキッチンとトイレと風呂、そして入り口のドアだけなのだから多分時間を合わせなければ大丈夫だろう。…今からこんな後ろ向きでこれから先どうすればいいか分からない。
自分の部屋の方の鍵を開け中にはいる。
6畳程度の部屋に荷物を置いて一段落した時には午後4時を回っていた。
………挨拶だけはした方がいいよな…。
挨拶しない方が多分印象悪いし、なるべく純粋そうな一年生を演じられることを祈る。ガンバレ、俺!
自室を抜けて似通った扉をそっとノックする。心臓が痛い。
「はぁい」
と思ったよりも明るい声が聞こえて、何かこそこそと話すような声が聞こえた。それから衣擦れの音がしてだんだんと近づいてくる。その間死刑を待つ罪人みたいに緊張していたのは言うまでもない。
ガチャリと扉が開いた。
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