隣の同居人

此宮

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4,米田優平*

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「んっ、んぅ…っ」
美蕾が善がった声を上げる。中に挿れた指を3本に増やし、彼女の唇にキスをしながらも「早く終わんないかな」なんて考えている僕は最低なんだろう。
「っゆ、う…!胸、胸さ、わってっ」
彼女は顔を真っ赤にしてそんなことを言ってくるけど、涼しい顔で無視して
「…挿れていい?」
と聞いた。一瞬怒った顔をした彼女は、けれどすぐに頭を縦に振る。その返答に食い気味のまま一息に自分のものを挿れたものの、虚しさは消えない。美蕾は高い声を上げてピンと足を伸ばした。カクカクと痙攣する彼女を気にも止めず、そのまま動く。
「ふぁぅ、待ってなに、っはげしっ……」
美蕾は咎めるような口調ながらも、しっかりと楽しんでいるようだ。単純な女だ。どこか空っぽで隙間風が吹いているような空虚さを見ないふりし、時間だけが無駄に過ぎていった。





太陽が西に傾いてきた頃、美蕾は起き上がり横で本を読む僕を見て満足そうに微笑んだ。彼女はピロートークが大好きらしく、こうして僕が横にいて、終わったあとに一緒にいることを喜ぶ。安いなぁって感じてしまうのは、別に僕だけじゃないだろう。

うんとか、そうだねとかしか答えない僕にも彼女は満足そうに話し続ける。と言っても「今日も良かった」とかその程度の語彙力しか相手にはない。

いい加減僕も面倒になって来て帰ってくれないかなぁと思いはじめた頃、僕の部屋の扉がトントンと控えめに叩かれた。ラッキー!と顔を綻ばせる僕の横で分かりやすく彼女は顔を顰めた。

「はぁい」
と答えると彼女が
「えぇ、出るのぉ?美蕾置いてくの?」
と眉を顰めながら小さい声で聞いてくる。
「居留守使うわけにも行かないでしょ。おとなしく待っててよ」
そう言いながらさっきまで来ていた紺のチェックシャツを羽織り、適当に部屋で過ごしてました、みたいな最低限の見た目に整えた。
彼女はプクッと頬を膨らましてベッドに腰掛けていた。

ドアを開けて目を見張った。そこに立っていたのはドアの高さとそこまで変わりない身長の人間だった。僕もそんなに背の低い方ではないけど、それでも見上げるほど高い。

簡単に言えばさっき、資料に目を通していた例の勝田智浩くんである。

相手も相手でびっくりしたような顔をした後、急に目を逸らして頬を若干赤くした。何その反応食べたい。
「何か?」
少しすました顔で言うと、
「えっと…勝田と申します。今日から隣部屋になったので米田…先輩に挨拶に伺ったのですが、いらっしゃいますか?」
と思ったよりも落ち着いた声で尋ねられた。

おや?僕のこと、もしかして女だと思ってるのかな。……つまらない。
「僕だよ」
そう答えた。つい返事が短くなってしまったのは、少し拗ねてしまったと認めよう。案外僕も美蕾とそんなに変わりない。
「えっ」
「僕」
彼は扉が開いた時以上に驚いた顔をし、また顔を赤くした後青くなりほぼ、無意識のように「すみません…」と小さな声で言った。

何か怯えてる…?僕に、か?むかむかして、少し言葉が冷たくなってしまうのは抑えられなかった。
「よく間違われるんだよね、僕。まぁ宜しくねお隣さん。僕2年だから、全教科科目で会うかもしれないし」
「は、はい」
そう答えた彼が少しだけ身を引いたのは、無意識だったんだろう。
それでも少しつらいけど。

その時。
「ゆーうー?」
美蕾の声だ。初めてその声を聞いて助かった、と感じた。これ以上一緒にいても怖がらせるだけだろうし。
甘えてくる美蕾を適当に流しながら、少しいたずらを仕掛けた。

「じゃ、勝田智浩くん。またね」

下の名を名乗らなかった彼にニコリと笑いかける。「お前を知っているぞ」と刻みつけるように。そうしたら、『恐怖』という存在としてでも彼の中に残るだろうから。



ガチャリと鍵を閉めて、美蕾に振り返る。そこで思わず眉を顰めてしまった。
「ゆ、優。これ何?」
……もっと本棚とかに隠しておけばよかった。彼女が手にしているのは、勝田智浩のことが書かれた紙束。暇になった彼女が、なぜ見ないと思ったのだろう。
「勝田って……今の奴?優、勝田が好きなの?」
オカシイ、と彼女は呟く。そっちに解釈したか……まぁでも今、一番興味があるのは勝田ヤツだ。否定はしない。

「へ、変態!!こんな写真集めて、アタシがいるのに、ひどい…っ」
彼女はヒステリックに叫ぶ。そんな彼女を黙らせるようにまだ、肌けたままの肩を強く握った。幼馴染にすら「あ、アンタその顔怖いわよ!!」と言わしめた得意の顔でゆっくりと言った。彼女が、ヒッと引き攣った声を上げる。



「美蕾、別れようか」



その言葉はなんの感情もなくあっさりと出た。
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