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第3章 星に願いを
第26話 千鶴と宮本 ③
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①
「おい、また千鶴へのプレゼントか?」
平野が呆れた口調で宮本に声をかける。
皆が、ゾンビ達の追跡をうまくかわしながら、時に撃退しながら、抗生物質などの医薬品や保存食等の食料品を求めて街を進んでいくなか、宮本は千鶴が喜びそうなものが置いてありそうな店を見ると、隊列が外れて漁りに行っていた。
それを見て、隊長である平野が咎めようというわけだ。
しかし、頭ごなしに言ってもその場で生返事をするだけで、心にまでは届かないだろう。
だからといって、千鶴はそんな価値のある人間じゃないぞと言ったところで、反発心で余計にのめりこむだけだ。
平野は慎重に言葉を選びながら、やんわりとちょっとずつ忠言するつもりであった。もし、宮本が大して使えない人間だったら罰して捨ておいただろう。
しかし、今となっては宮本は天国のエースの1人であり、みんなからの信頼も厚い。自分ですら助けたこともあるが、助けられたこともある。
「わかってるよ。ごめん。ちょっとこれだけ回収したらすぐ戻るからさ」
そういって、宮本は荒れ果てた街の宝石店の棚のガラスをハンマーで割っていくと、がさっと手に取れるだけ多種多様なアクセサリーをリュックに詰め込んだ。
千鶴がどんなものが好きなのかわからなかったから、それっぽいものを乱雑に詰め込んだのだ。
それを、平野はため息をつきながら、「度を超すようならクビにするぞ。天国で好きなだけ千鶴といちゃいちゃしてろよ」と言った。
「それは、困る! すまない! 本当にごめん! これで今日は終わりにするから」
「今日は?」
「うっ」
「チーム全体を危険に晒すつもりなら、本当に回収班から外すぞ」
「わかってる。わかってるよ」
平野は、宮本の憔悴した様子を見て、これは千鶴以外の良い女をあてがってやらなきゃならんかもなと真剣に検討しはじめる。
1回や2回ではなくなってきた。
ここ最近、毎回隊列から勝手に離れて、やれブランドの服だ、やれブラだ、ショーツだ。しまいには、宝飾品ときたものだ。
それらを全て、千鶴に渡しているのも知っている。
瀬沼もたまに、本来の目的ではない物を回収しようとするが、瀬沼は皆が喜ぶものを回収し、多くの人に配っている。だから、少しはご愛敬ということで、目溢ししてきたが、宮本は、千鶴にしか渡していない。
平野がガリガリと頭をかきながら、思案する。こういったときに頭に浮かぶのはネクロ野郎だ。
(あぁ、面倒くせぇ。あいつは、生きた女には興味を示さなかったから管理が楽だったなぁ)
目的のためには手段を選ばない冷酷さをもった現実主義、それでいながら仲間にはわりと熱く遇する。
なにより、こういった極限状態の組織運営では、色恋沙汰一つでも崩壊に繋がる危険性をはらむが、ネクロ野郎はゾンビの女にしか興味がないのでそういった心配はない。
自分の隊にあいつがいてくれたら、色々捗ったなぁと思いながらも、今は手持ちのカードで勝負するしかない。
宮本だって、ポテンシャルは十分だ。千鶴にいいようにされていることをどうにか覚まさせてやれば……。
そんな、平野の想いは露と知らず、宮本は手に入れた宝飾品を千鶴に渡した時、今度は最後までやらせてくれるのかそれで頭がいっぱいだった。
②
あの刺激的な出来事の後、それっぽいブランド物の服を回収して渡した時――。
「ありがとう。じゃあ、瀬沼君からもらった服は処分するね」
そう言って、千鶴は宮本の手を引いて、古臭い昭和の匂いがする一戸建ての外観とは裏腹に綺麗にリノベーションされた内装の家の中に招き入れた。
「綺麗になってるんだね。びっくりだ。一人で住んでいるの?」
「ううん。他にも妹と友達の女の子がいるよ」
「うん?」
「よそ見しちゃだめだよ?」
「あ……あぁ……もちろん」
そのまま、階段を登って2階の千鶴の自室へ入る。
部屋の中は、いくらかは宮本のセンスでは理解が難しいものがあったが、おそらく千鶴的に可愛いとされるグッズに溢れていてとても終末世界の部屋とは思えなかった。
他の女の子の部屋を覗く機会もあったが、多くはまるで男子の部屋とさほど変わらず、機能性を重視したものとなり、可愛いとされるものはあっても1割程度しか見受けられなかった。それだけ、嗜好品にまで手をのばす余裕がないのだ。当たり前の話である。
しかし、この部屋は、まるで天国中から可愛いを集めたように見える。
これだけの物資はどこから……誰から集められたのだろうか。
自分以外にも……貢いでいる人間はいるのだろうか……。
「ほら」
宮本は千鶴の声にはっとして思考を中断した。
目の前には、自分に向き合って千鶴が両手を広げている。
ハグの合図かと思って、宮本は思わず千鶴をぎゅっと抱きしめた。
「あはは。甘えん坊さん。よしよし。でも、今はそうじゃないの」
そう言うと千鶴はケラケラ笑いながら、宮本を押しのけた。
頭の中をクエッションマークだらけにして宮本は千鶴をじっと見つめると、千鶴は恥ずかしそうに顔をほんのり上気させながら
「瀬沼君の服……嫌なんでしょ? いいよ? 破いて?」
宮本は、洋服を破るなんて行為はしたことがなかったので、面食らった。そもそもそんなに簡単に衣服とは破けるものなのだろうか?
にこにことして待っている千鶴をよく観察する。
裾の縫い目からならいけるだろうか?
宮本は、おずおずと両手を伸ばして白いブラウスの左側の裾の縫い目を両手で左右に思いっきり力をこめて引っ張った。
自分が想像していたより、あっさりと縫い目に沿ってぶちぶちと上に向かって破けると、破けたところからわずかに白いレースがあしらわれたブラの一部がのぞけた。
思いのほか簡単に破けるということがわかってからは、その中に隠されている千鶴の肌と胸を見たくて力任せに破いていった。
ある程度破ったところで、千鶴が無残な姿になったブラウスをするすると脱いでいく。
宮本は、千鶴の白いブラに胸の谷間、そして、思わず撫でまわしたくなりそうな美しい柔肌に視線をとられた。
思わず押し倒したくなる衝動に駆られながらも、自分の女神様だからこそある種畏敬の念に襲われて、手を出したくても手を出せないジレンマに襲われる。
「何してるの?」
「え?」
「着せてよ。持ってきてくれた”あなたの”服を」
千鶴の視線が艶めかしく自分をねっとりと見つめている。
「あぁ……あぁ……」
宮本はよくまわらない頭で、まるで夢遊病の人のように、ぼんやりとしたまま持ってきた服を広げる。
可愛いといえばピンクだろうというステレオタイプなセンスで選ばれた、薄ピンク色のブラウスのボタンを外して千鶴に着せていく。
着せていくと、思った以上にサイズが大きくブカブカとしていて、なによりも生地は薄くて下のブラや肌がうっすら透けて見えた。
「あ、ごめん。サイズが……」
「いいのいいの。これはわざと大きめに作られたタイプだから。セーフ。でもこれ透けちゃうね。これ用のインナー揃えなきゃ」
「あぁ……」
千鶴が自分の姿を部屋の鏡に晒して、右に左に身体をひねったりしながら自分を確認している。
床には、自分が破った瀬沼のブラウス。
まるで、自分が瀬沼を打ち倒したような錯覚を感じ、戦いの興奮に近いものに酔いしれる。そのうえ、目の前には愛する女神様が自分の貢ぎ物に身を纏う姿。
支配欲が満たされ、充実した満足感が身体を満たしていく。
「今度、良いのがあったら探してくるよ」
「ごめんねぇ! 女もののインナーなんてわからないよね? 探したくないよね?」
「そ、そんなことないよ。他の人にも頼まれることあるし」
「ふーん。そっかぁ」
鏡から自分の元へ千鶴がとてとてと歩いてきて、ん? どうしたの? といった感じに手を後ろで組んで、やや前かがみに、そして、顔をほんの少し傾けて上目づかいで宮本の顔を見上げる。
自分がどの角度で見られて、どのようにすれば相手は可愛いと思うか、全てを把握しているような様子だった。
人によってはあざとさに胸やけがしてしまいそうなその仕草に、だが、宮本はその可愛さに全力で抱きしめたくなる衝動に襲われる。
女神様の怒りを買わないように、その透けて見えているブラにめがけて手をゆっくり伸ばす。
「触るの?」
「あっ! ごめん!」
宮本はさっと慌てて手を引っ込めようとした。
すると、千鶴はその手を掴んでぐっと自分の元へ引き寄せる。
動揺していて重心がぶれていた宮本は、やや前かがみ気味に千鶴の方へバランスを崩したところを、一歩足を前に出してなんとか踏みとどまる。
あぶねっ!押し倒すところだった!とひやっとしたところに、千鶴の顔が自分の顔に近づいて、唇と唇が合わさった。
舌を絡め合わない、至って軽い口づけであったが、前にニアピンで終わらせられた宮本にとっては、夢のような出来事だった。
そのまま、しばらく数秒重ね合わせたところで、すっと千鶴の方から唇を離して
「また、何か良いものがあったら持ってきてね」
千鶴が甘くささやくと、宮本の腕に自分の胸をぎゅっと押し付けた。
「も、もちろん……もちろんだよ……」
③
宮本が千鶴とのやりとりを思い出しながら、天国へ帰還すると様子が変だった。
元々天国の場所にいた先住民たちと、小川たちが大きな声で言い争っている。
最初の一か月は助け合い精神で仲良くやってきたが、田舎独自の文化と街で育った自由気ままになれた人々の間では、徐々に価値観のずれによる言い争いが始まっていて、それをうまいこと元政治家の人間たちや多田のカリスマでうまいこと抑え込んでいたが……。
命の危機を感じていたころは争う余裕もなく過ごしていたが、気持ちに余裕ができてくるといらぬことが気になってしまうようだ。
「これは、最悪2つに割れるかもしれねぇなぁ」
後ろから平野が厄介そうといった面持ちでため息をつきながら言った。
その予感は、すぐに的中することになる。
先住民の考えを尊重する多田一派と、自由気ままな生活を取り戻したい小川一派で抗争状態に発展していく。
元々、小川の我欲が強いうえに多田のことが憎く思っていたこともあり、個人的な私怨は積怨となり、天国を崩壊へ導いていくこととなる。
この日、宮本は散発する諍いを鎮圧するために、あちこちに駆り出され千鶴に会いに行くことができなかった。
そして、突然に小川一派が至るところにバリケードを設置し、一方的に天国を半分に分断してしまった。
強引に主に西が小川一派の支配地域、東が多田一派の支配地域と勝手に定められた。
当然ながら、小川一派とされる支配地域の人間が全員小川一派というわけではない、多田一派の人間でありながら、急に今日からここに居る人間は小川の指示に従え!ということになってしまったわけだ。
「千鶴……」
そして、千鶴は小川一派の地域に居を構えていた。
千鶴の身の安全を願いながらも、トンネルを除くと山の急な崖のような斜面を超えていけなくてならず、超えれないことはないが、小川の伏兵を警戒して動くことはできなかった。
特に、天国に元々あった猟銃、そして、平野達が金森町から持ち込んだ銃火器類をいくらか奪われてしまったのが手痛かった。
しばらく両者のにらみ合いが続いた。
「おい、また千鶴へのプレゼントか?」
平野が呆れた口調で宮本に声をかける。
皆が、ゾンビ達の追跡をうまくかわしながら、時に撃退しながら、抗生物質などの医薬品や保存食等の食料品を求めて街を進んでいくなか、宮本は千鶴が喜びそうなものが置いてありそうな店を見ると、隊列が外れて漁りに行っていた。
それを見て、隊長である平野が咎めようというわけだ。
しかし、頭ごなしに言ってもその場で生返事をするだけで、心にまでは届かないだろう。
だからといって、千鶴はそんな価値のある人間じゃないぞと言ったところで、反発心で余計にのめりこむだけだ。
平野は慎重に言葉を選びながら、やんわりとちょっとずつ忠言するつもりであった。もし、宮本が大して使えない人間だったら罰して捨ておいただろう。
しかし、今となっては宮本は天国のエースの1人であり、みんなからの信頼も厚い。自分ですら助けたこともあるが、助けられたこともある。
「わかってるよ。ごめん。ちょっとこれだけ回収したらすぐ戻るからさ」
そういって、宮本は荒れ果てた街の宝石店の棚のガラスをハンマーで割っていくと、がさっと手に取れるだけ多種多様なアクセサリーをリュックに詰め込んだ。
千鶴がどんなものが好きなのかわからなかったから、それっぽいものを乱雑に詰め込んだのだ。
それを、平野はため息をつきながら、「度を超すようならクビにするぞ。天国で好きなだけ千鶴といちゃいちゃしてろよ」と言った。
「それは、困る! すまない! 本当にごめん! これで今日は終わりにするから」
「今日は?」
「うっ」
「チーム全体を危険に晒すつもりなら、本当に回収班から外すぞ」
「わかってる。わかってるよ」
平野は、宮本の憔悴した様子を見て、これは千鶴以外の良い女をあてがってやらなきゃならんかもなと真剣に検討しはじめる。
1回や2回ではなくなってきた。
ここ最近、毎回隊列から勝手に離れて、やれブランドの服だ、やれブラだ、ショーツだ。しまいには、宝飾品ときたものだ。
それらを全て、千鶴に渡しているのも知っている。
瀬沼もたまに、本来の目的ではない物を回収しようとするが、瀬沼は皆が喜ぶものを回収し、多くの人に配っている。だから、少しはご愛敬ということで、目溢ししてきたが、宮本は、千鶴にしか渡していない。
平野がガリガリと頭をかきながら、思案する。こういったときに頭に浮かぶのはネクロ野郎だ。
(あぁ、面倒くせぇ。あいつは、生きた女には興味を示さなかったから管理が楽だったなぁ)
目的のためには手段を選ばない冷酷さをもった現実主義、それでいながら仲間にはわりと熱く遇する。
なにより、こういった極限状態の組織運営では、色恋沙汰一つでも崩壊に繋がる危険性をはらむが、ネクロ野郎はゾンビの女にしか興味がないのでそういった心配はない。
自分の隊にあいつがいてくれたら、色々捗ったなぁと思いながらも、今は手持ちのカードで勝負するしかない。
宮本だって、ポテンシャルは十分だ。千鶴にいいようにされていることをどうにか覚まさせてやれば……。
そんな、平野の想いは露と知らず、宮本は手に入れた宝飾品を千鶴に渡した時、今度は最後までやらせてくれるのかそれで頭がいっぱいだった。
②
あの刺激的な出来事の後、それっぽいブランド物の服を回収して渡した時――。
「ありがとう。じゃあ、瀬沼君からもらった服は処分するね」
そう言って、千鶴は宮本の手を引いて、古臭い昭和の匂いがする一戸建ての外観とは裏腹に綺麗にリノベーションされた内装の家の中に招き入れた。
「綺麗になってるんだね。びっくりだ。一人で住んでいるの?」
「ううん。他にも妹と友達の女の子がいるよ」
「うん?」
「よそ見しちゃだめだよ?」
「あ……あぁ……もちろん」
そのまま、階段を登って2階の千鶴の自室へ入る。
部屋の中は、いくらかは宮本のセンスでは理解が難しいものがあったが、おそらく千鶴的に可愛いとされるグッズに溢れていてとても終末世界の部屋とは思えなかった。
他の女の子の部屋を覗く機会もあったが、多くはまるで男子の部屋とさほど変わらず、機能性を重視したものとなり、可愛いとされるものはあっても1割程度しか見受けられなかった。それだけ、嗜好品にまで手をのばす余裕がないのだ。当たり前の話である。
しかし、この部屋は、まるで天国中から可愛いを集めたように見える。
これだけの物資はどこから……誰から集められたのだろうか。
自分以外にも……貢いでいる人間はいるのだろうか……。
「ほら」
宮本は千鶴の声にはっとして思考を中断した。
目の前には、自分に向き合って千鶴が両手を広げている。
ハグの合図かと思って、宮本は思わず千鶴をぎゅっと抱きしめた。
「あはは。甘えん坊さん。よしよし。でも、今はそうじゃないの」
そう言うと千鶴はケラケラ笑いながら、宮本を押しのけた。
頭の中をクエッションマークだらけにして宮本は千鶴をじっと見つめると、千鶴は恥ずかしそうに顔をほんのり上気させながら
「瀬沼君の服……嫌なんでしょ? いいよ? 破いて?」
宮本は、洋服を破るなんて行為はしたことがなかったので、面食らった。そもそもそんなに簡単に衣服とは破けるものなのだろうか?
にこにことして待っている千鶴をよく観察する。
裾の縫い目からならいけるだろうか?
宮本は、おずおずと両手を伸ばして白いブラウスの左側の裾の縫い目を両手で左右に思いっきり力をこめて引っ張った。
自分が想像していたより、あっさりと縫い目に沿ってぶちぶちと上に向かって破けると、破けたところからわずかに白いレースがあしらわれたブラの一部がのぞけた。
思いのほか簡単に破けるということがわかってからは、その中に隠されている千鶴の肌と胸を見たくて力任せに破いていった。
ある程度破ったところで、千鶴が無残な姿になったブラウスをするすると脱いでいく。
宮本は、千鶴の白いブラに胸の谷間、そして、思わず撫でまわしたくなりそうな美しい柔肌に視線をとられた。
思わず押し倒したくなる衝動に駆られながらも、自分の女神様だからこそある種畏敬の念に襲われて、手を出したくても手を出せないジレンマに襲われる。
「何してるの?」
「え?」
「着せてよ。持ってきてくれた”あなたの”服を」
千鶴の視線が艶めかしく自分をねっとりと見つめている。
「あぁ……あぁ……」
宮本はよくまわらない頭で、まるで夢遊病の人のように、ぼんやりとしたまま持ってきた服を広げる。
可愛いといえばピンクだろうというステレオタイプなセンスで選ばれた、薄ピンク色のブラウスのボタンを外して千鶴に着せていく。
着せていくと、思った以上にサイズが大きくブカブカとしていて、なによりも生地は薄くて下のブラや肌がうっすら透けて見えた。
「あ、ごめん。サイズが……」
「いいのいいの。これはわざと大きめに作られたタイプだから。セーフ。でもこれ透けちゃうね。これ用のインナー揃えなきゃ」
「あぁ……」
千鶴が自分の姿を部屋の鏡に晒して、右に左に身体をひねったりしながら自分を確認している。
床には、自分が破った瀬沼のブラウス。
まるで、自分が瀬沼を打ち倒したような錯覚を感じ、戦いの興奮に近いものに酔いしれる。そのうえ、目の前には愛する女神様が自分の貢ぎ物に身を纏う姿。
支配欲が満たされ、充実した満足感が身体を満たしていく。
「今度、良いのがあったら探してくるよ」
「ごめんねぇ! 女もののインナーなんてわからないよね? 探したくないよね?」
「そ、そんなことないよ。他の人にも頼まれることあるし」
「ふーん。そっかぁ」
鏡から自分の元へ千鶴がとてとてと歩いてきて、ん? どうしたの? といった感じに手を後ろで組んで、やや前かがみに、そして、顔をほんの少し傾けて上目づかいで宮本の顔を見上げる。
自分がどの角度で見られて、どのようにすれば相手は可愛いと思うか、全てを把握しているような様子だった。
人によってはあざとさに胸やけがしてしまいそうなその仕草に、だが、宮本はその可愛さに全力で抱きしめたくなる衝動に襲われる。
女神様の怒りを買わないように、その透けて見えているブラにめがけて手をゆっくり伸ばす。
「触るの?」
「あっ! ごめん!」
宮本はさっと慌てて手を引っ込めようとした。
すると、千鶴はその手を掴んでぐっと自分の元へ引き寄せる。
動揺していて重心がぶれていた宮本は、やや前かがみ気味に千鶴の方へバランスを崩したところを、一歩足を前に出してなんとか踏みとどまる。
あぶねっ!押し倒すところだった!とひやっとしたところに、千鶴の顔が自分の顔に近づいて、唇と唇が合わさった。
舌を絡め合わない、至って軽い口づけであったが、前にニアピンで終わらせられた宮本にとっては、夢のような出来事だった。
そのまま、しばらく数秒重ね合わせたところで、すっと千鶴の方から唇を離して
「また、何か良いものがあったら持ってきてね」
千鶴が甘くささやくと、宮本の腕に自分の胸をぎゅっと押し付けた。
「も、もちろん……もちろんだよ……」
③
宮本が千鶴とのやりとりを思い出しながら、天国へ帰還すると様子が変だった。
元々天国の場所にいた先住民たちと、小川たちが大きな声で言い争っている。
最初の一か月は助け合い精神で仲良くやってきたが、田舎独自の文化と街で育った自由気ままになれた人々の間では、徐々に価値観のずれによる言い争いが始まっていて、それをうまいこと元政治家の人間たちや多田のカリスマでうまいこと抑え込んでいたが……。
命の危機を感じていたころは争う余裕もなく過ごしていたが、気持ちに余裕ができてくるといらぬことが気になってしまうようだ。
「これは、最悪2つに割れるかもしれねぇなぁ」
後ろから平野が厄介そうといった面持ちでため息をつきながら言った。
その予感は、すぐに的中することになる。
先住民の考えを尊重する多田一派と、自由気ままな生活を取り戻したい小川一派で抗争状態に発展していく。
元々、小川の我欲が強いうえに多田のことが憎く思っていたこともあり、個人的な私怨は積怨となり、天国を崩壊へ導いていくこととなる。
この日、宮本は散発する諍いを鎮圧するために、あちこちに駆り出され千鶴に会いに行くことができなかった。
そして、突然に小川一派が至るところにバリケードを設置し、一方的に天国を半分に分断してしまった。
強引に主に西が小川一派の支配地域、東が多田一派の支配地域と勝手に定められた。
当然ながら、小川一派とされる支配地域の人間が全員小川一派というわけではない、多田一派の人間でありながら、急に今日からここに居る人間は小川の指示に従え!ということになってしまったわけだ。
「千鶴……」
そして、千鶴は小川一派の地域に居を構えていた。
千鶴の身の安全を願いながらも、トンネルを除くと山の急な崖のような斜面を超えていけなくてならず、超えれないことはないが、小川の伏兵を警戒して動くことはできなかった。
特に、天国に元々あった猟銃、そして、平野達が金森町から持ち込んだ銃火器類をいくらか奪われてしまったのが手痛かった。
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