妻のNTRを許す代わりに俺もNTRをすることにした

田中又雄

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NTR

 俺、前原亮は、今日もいつも通り会社から帰宅した。

 いや、いつもより少し早かった。
残業が予想外に早く片付いたからだ。

 28歳の俺は、コールセンターでSVの仕事をしている。

 妻の凛は広告代理店で営業をやっている。

 結婚5年目だけど、子供はまだいない。
最近、仕事が安定してきたし、そろそろ子作りに本腰を入れようかって話していたところだ。
なので、夜の営みも、なんだかんだで熱心に励んでいた。

 凛の体は柔らかくて、抱きしめると甘い匂いがして、そんな凛のことを俺は心から愛していた。

 凛との出会いは高校時代に遡る。


 ◇

 あの頃、俺は地元の公立高校で、部活もろくにやらずに勉強ばっかりの冴えない生徒だった。

 凛――当時は絹旗凛――は同じクラスで、明るくて人気者だった。

 黒髪のロングヘアが揺れるたび、周りの男子がチラチラ見ていたのを覚えている。

 付き合い始めたきっかけは、文化祭の準備で遅くまで残った時。

 彼女が突然、「亮くんって、なんか面白いよね。いつも一人で本読んでるけど、何読んでるの?」と、声をかけてきた。

 それから、自然と話すようになって、デートを重ねて、卒業前に正式に付き合った。

 社会人1年目、俺が23歳の時に結婚した。
早いって周りから言われたけど、凛が「亮と一緒にいたい」って言ってくれたのが嬉しくて、結婚をした。

 式はシンプルに、親族だけで挙げた。
凛の笑顔が眩しくて、俺はこれで一生幸せだと思った。

 彼女は献身的で、一途で、可愛くて……理想の妻だった。

 家事も上手で、毎朝弁当を作ってくれる。
仕事で疲れて帰ると、温かい夕食と優しい言葉が待っている。
そんな日常が、俺の支えだった。

 でも、今日の帰宅は違った。
マンションのドアを開けると、リビングから奇妙な音が聞こえてきた。

 息遣い混じりの喘ぎ声と、ベッドの軋む音。心臓がドクンと鳴った。

 まさか、と思ったけど、足音を忍ばせて寝室に近づく。
ドアが少し開いていた。
覗き込んだ瞬間、俺の世界が崩れ落ちた。

 凛が、知らない男に抱かれていた。
彼女の白い肌が、男の汗ばんだ体に絡みついている。

 凛の目は虚ろで、普段俺に見せるより甘い表情を、その男に向けていた。

 二人とも夢中で俺の存在に気づいていない。
部屋には、甘酸っぱい匂いが充満していた。
俺の胸が、焼けるように熱くなった。
怒り? 悲しみ? それとも、吐き気? 
全部が混ざって、頭が真っ白になった。

「何やってんだよ……!」

 俺の声が、思ったより低く響いた。
凛がハッとして顔を上げ、目を見開いた。
男も慌てて体を離す。
凛の顔が青ざめ、シーツで体を隠そうとする。

「亮……! どうして、早く帰ってきたの……?」

 男は慌ててズボンを履き、謝りながら部屋から出ていった。
俺はそいつを睨みつけたが、まずは凛と向き合うことにした。

 リビングに移動して、向かい合って座る。
凛は服を着直し、涙目で俺を見上げた。

「ごめんなさい……亮、本当にごめんなさい……!!」

 彼女は土下座した。
額を床に擦りつけて、「もう二度としないからっ! お願いっ! 許して!」と叫ぶ。

 声が震えていて、普段の凛とは別人みたいだった。

 俺は拳を握りしめ、歯を食いしばった。
正直、許す気なんてなかった。

 腑が煮え繰り返るほど、むかついていた。
なんでだよ、凛。
お前は俺の一番大事な人だったのに。
毎晩、俺と子作りしてたくせに、他の男に体を許すなんて…。
もしかしたら、気づかず自分の子だと思い、あいつの子供を育てることになっていたかと考えると、本当にむかついた。
でも、俺は冷静を装って聞いた。

「出会った経緯を話せ。全部だ」

 凛は震えながら語り始めた。
相手は彼女の会社の上司とのこと。

 会社の飲み会で泥酔した時、ホテルに連れ込まれて関係を持ってしまった。

 それが最初で、それ以来、数回続いていたそうだ。

「最初は抵抗したけど……お酒のせいで、判断ができなくて……。その…それからバラされたくなかったらって脅されて…!でも、亮のことは愛してるの! 本当に!」

 全部聞いた。
詳細を聞くたび、胸が抉られるようだった。
だとしたらさっきの表情はなんだよ。
許せない。絶対に。

 でも、俺は深呼吸して、結論を出した。
なら、対等にするんだ。

「分かった。許すよ」

 凛の顔がぱっと明るくなった。

「本当……?」
「代わりに一つ条件がある。俺も浮気するから」
「…え?」

 凛の表情が凍りついた。俺は淡々と続けた。

「お前が上司と寝たみたいに、俺も他の女と寝る。公認でな。それでチャラだろ?」

 彼女は言葉を失っていた。
許す代わりに、俺も同じことをする。

 NTRの痛みを、共有するんだ。
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