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はじまり
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俺は朝のオフィスに足を踏み入れ、いつものように「おはようございます」と声を掛けた。
コールセンターのフロアは、朝から活気がある。
アルバイトや派遣のスタッフが多く、若い女の子たちがヘッドセットを着けて準備をしていた。
彼女たちから「おはようございますー」と、軽やかな返事が返ってきた。
あれから1ヶ月ほどが経過していた。
正直、昨夜の凛の顔が、頭から離れない。
土下座して泣きついてきたくせに、俺の条件を聞いた途端、固まった表情。
許す代わりに俺も浮気するって言ったら、彼女はただ「え?なんで?」と繰り返すだけだった。
何でって何だよ。
自分はしたくせに俺にはするなとか、ありえないだろ。
結局、黙って頷いたけど、心の中じゃどう思ってるんだろうな。
そもそも、俺自身、浮気を公認したところで、何が変わるのか。
けど、少なくてもそれで関係が終わるのであればお互いにとってベストな気がした。
けど…そもそも相手なんかすぐに見つかるわけもなく、仕事に追われ、1ヶ月ほどが経過していた。
こんなしがない普通のサラリーマンが、急に不倫相手を探すなんて、やっぱり現実味がない。
そもそも、既婚者相手に浮気をするなんてリスクもあるわけだし…。
まぁ、最悪そういう店に行って、浮気してる感じの証拠だけ叩きつけて反応を見るのが現実的かもなと、ぼんやりとそんなことを考えながら、席に着いてパソコンを起動した。
画面に映る顧客データのリストを眺めながら、憂鬱な気持ちになっていた。
コールセンターのスーパーバイザーの仕事はオペレーターのサポートをしつつ、自分も電話を取ったり、後は派遣会社との打ち合わせとか、クレーム対応とか、シフトの作成とか報告書を作ったり…と結構忙しい日々であっという間に時間が過ぎる。
そうして、その日も何とか午前中を何とかやり過ごし、昼休みになった。
そして、休憩室で自分で作った弁当箱を開く。
一人で黙々と食べていると、隣の席から声が掛かった。
「どうしたんですか、前原さん。なんか元気ないですね?」
振り返ると、新川好さんが立っていた。
21歳の派遣社員で、オペレーター兼サポーターである。
茶髪のショートヘアが活発そうに揺れていて、社内でも人気の女の子だ。
目がクリッとして、笑うとえくぼができる。俺より6歳下だけど、仕事ぶりはしっかりしてる。
彼女の明るい声に、思わず苦笑いが浮かんだ。
「…あぁ、ちょっと家で色々あってね。気にしないで」
新川さんは弁当箱を持って俺の隣に座り、前のめりになった。
「色々…なるほど。詳しく話してくださいよ! 前原さんにはいつもお世話になってますし、私でよければ相談乗りますよ!」
彼女の瞳がキラキラしていた。
「…あんまり人前で話す話じゃなくてさ…」
「じゃあ、今日飲みに行きましょう! ね! 仕事終わりに、近くの居酒屋で!」
その圧に押されて、俺は頷いてしまった。
今までだったら、こういうのもキッパリ断ってたけど、もう…いいよな。
帰りが遅くなることだけ告げて、飲みにいくことにした。
仕事が終わって、新川さんと連れ立ってオフィスを出た。
そして、近くの居酒屋に入り、個室風の席に座る。
それからビールが運ばれてきて、乾杯した。そういや、酒もしばらく飲んでなかったなー…。
新川さんはジョッキをぐいっと傾け、「あー、美味しい! 前原さん、今日は私の奢りですよ。で、何があったんですか?もしかして、奥さんと何かありました?」と、聞かれる。
女の勘というやつなのだろうか…。
まぁ、誰かに話したかったし丁度いいか。
俺はため息をつき、先日の出来事をぼかしながら話した。
妻の浮気現場を目の当たりにしたこと、そして、怒りのあまり咄嗟に許す条件として俺も浮気するとか言ったこと。
お酒のせいもあり、溜まっていたストレスを吐き出すように全てを暴露した。
しかし、そんな俺の話を新川さんは真剣に聞いてくれた。
そして、彼女の表情が、次第に変わっていく。
驚きから、同情、そして何かを思いついたような表情。
話が一段落すると、新川さんがジョッキを置いて、俺の目を見て言った。
「じゃあ、その浮気相手、自分が立候補します!」
「…は?」
いきなりの言葉に、俺は固まった。
ビールが喉に詰まりそうになる。
「…え、冗談でしょ?」
すると、お酒のせいかそれとも照れているのか、彼女は頰を赤らめながら、続けた。
「実は前から狙ってたんですよ、前原さんのこと。社内で一番頼りになるし、優しいし。でも、既婚者さんだから諦めてたんです。けど、今の話聞いて、チャンスかもって思っちゃいました。…私じゃだめですか?」
俺は戸惑った。
まさか、そんなことを言われるなんて。
新川さんは可愛いし、社内の男どもがチラチラ見てるのも知ってる。
なのに俺みたいな既婚者の浮気相手をするなんて…。
「いやいや、そういうわけには…ほら、職場も一緒なわけで、大変なことになるかもしれないし…」
「私は構いませんよ」と、そう言われた。
その表情に心が揺れた。
でも、彼女の積極的な視線に、拒否する言葉が出てこない。
それから、少し気まずくなったが、新川さんは相変わらず明るく振る舞ってくれた。
そうして、居酒屋を出ると、ぐいっと背伸びをしてから、「じゃあ、近くのホテルに行きましょうか」と手を引かれた。
一瞬、迷ったが自分が相談した上で好意を伝えてくれて、その浮気相手に名乗り出てくれた何これを拒絶するのは違うと思い、そのまま街のネオンがぼんやり光る中、俺はついていった。
そのまま、近くのラブホテルの部屋に入ると、彼女はドアを閉めて俺に抱きついてきた。
「前原さん、今日は私が癒してあげますね」と言った。
凛とは違うその積極性に心が揺らいだ。
初めての彼女が凛で、初めての相手が凛だった。
凛はいつも消極的で、俺がリードする形だった。
でも、好さんは積極的だった。
茶髪を振り乱して、俺のシャツを脱がせ、唇を重ねてくる。
彼女の体は若々しく、そして肌が熱い。
そのまま、ベッドに押し倒され、彼女の手が俺の体を這う。
息が荒くなり、今までにない快楽が体を駆け巡った。
凛との営みとは比べ物にならない、激しい快楽に飲まれるのであった。
◇
事後、ベッドに横たわりながら、俺は天井を見つめた。
罪悪感と満足感が混ざる。
そうか…こういう感覚なんだな。
初めて理解した。
「…前原さん。やばいです。私…前よりずっと好きになっちゃいました…」と、言われてしまうのであった。
コールセンターのフロアは、朝から活気がある。
アルバイトや派遣のスタッフが多く、若い女の子たちがヘッドセットを着けて準備をしていた。
彼女たちから「おはようございますー」と、軽やかな返事が返ってきた。
あれから1ヶ月ほどが経過していた。
正直、昨夜の凛の顔が、頭から離れない。
土下座して泣きついてきたくせに、俺の条件を聞いた途端、固まった表情。
許す代わりに俺も浮気するって言ったら、彼女はただ「え?なんで?」と繰り返すだけだった。
何でって何だよ。
自分はしたくせに俺にはするなとか、ありえないだろ。
結局、黙って頷いたけど、心の中じゃどう思ってるんだろうな。
そもそも、俺自身、浮気を公認したところで、何が変わるのか。
けど、少なくてもそれで関係が終わるのであればお互いにとってベストな気がした。
けど…そもそも相手なんかすぐに見つかるわけもなく、仕事に追われ、1ヶ月ほどが経過していた。
こんなしがない普通のサラリーマンが、急に不倫相手を探すなんて、やっぱり現実味がない。
そもそも、既婚者相手に浮気をするなんてリスクもあるわけだし…。
まぁ、最悪そういう店に行って、浮気してる感じの証拠だけ叩きつけて反応を見るのが現実的かもなと、ぼんやりとそんなことを考えながら、席に着いてパソコンを起動した。
画面に映る顧客データのリストを眺めながら、憂鬱な気持ちになっていた。
コールセンターのスーパーバイザーの仕事はオペレーターのサポートをしつつ、自分も電話を取ったり、後は派遣会社との打ち合わせとか、クレーム対応とか、シフトの作成とか報告書を作ったり…と結構忙しい日々であっという間に時間が過ぎる。
そうして、その日も何とか午前中を何とかやり過ごし、昼休みになった。
そして、休憩室で自分で作った弁当箱を開く。
一人で黙々と食べていると、隣の席から声が掛かった。
「どうしたんですか、前原さん。なんか元気ないですね?」
振り返ると、新川好さんが立っていた。
21歳の派遣社員で、オペレーター兼サポーターである。
茶髪のショートヘアが活発そうに揺れていて、社内でも人気の女の子だ。
目がクリッとして、笑うとえくぼができる。俺より6歳下だけど、仕事ぶりはしっかりしてる。
彼女の明るい声に、思わず苦笑いが浮かんだ。
「…あぁ、ちょっと家で色々あってね。気にしないで」
新川さんは弁当箱を持って俺の隣に座り、前のめりになった。
「色々…なるほど。詳しく話してくださいよ! 前原さんにはいつもお世話になってますし、私でよければ相談乗りますよ!」
彼女の瞳がキラキラしていた。
「…あんまり人前で話す話じゃなくてさ…」
「じゃあ、今日飲みに行きましょう! ね! 仕事終わりに、近くの居酒屋で!」
その圧に押されて、俺は頷いてしまった。
今までだったら、こういうのもキッパリ断ってたけど、もう…いいよな。
帰りが遅くなることだけ告げて、飲みにいくことにした。
仕事が終わって、新川さんと連れ立ってオフィスを出た。
そして、近くの居酒屋に入り、個室風の席に座る。
それからビールが運ばれてきて、乾杯した。そういや、酒もしばらく飲んでなかったなー…。
新川さんはジョッキをぐいっと傾け、「あー、美味しい! 前原さん、今日は私の奢りですよ。で、何があったんですか?もしかして、奥さんと何かありました?」と、聞かれる。
女の勘というやつなのだろうか…。
まぁ、誰かに話したかったし丁度いいか。
俺はため息をつき、先日の出来事をぼかしながら話した。
妻の浮気現場を目の当たりにしたこと、そして、怒りのあまり咄嗟に許す条件として俺も浮気するとか言ったこと。
お酒のせいもあり、溜まっていたストレスを吐き出すように全てを暴露した。
しかし、そんな俺の話を新川さんは真剣に聞いてくれた。
そして、彼女の表情が、次第に変わっていく。
驚きから、同情、そして何かを思いついたような表情。
話が一段落すると、新川さんがジョッキを置いて、俺の目を見て言った。
「じゃあ、その浮気相手、自分が立候補します!」
「…は?」
いきなりの言葉に、俺は固まった。
ビールが喉に詰まりそうになる。
「…え、冗談でしょ?」
すると、お酒のせいかそれとも照れているのか、彼女は頰を赤らめながら、続けた。
「実は前から狙ってたんですよ、前原さんのこと。社内で一番頼りになるし、優しいし。でも、既婚者さんだから諦めてたんです。けど、今の話聞いて、チャンスかもって思っちゃいました。…私じゃだめですか?」
俺は戸惑った。
まさか、そんなことを言われるなんて。
新川さんは可愛いし、社内の男どもがチラチラ見てるのも知ってる。
なのに俺みたいな既婚者の浮気相手をするなんて…。
「いやいや、そういうわけには…ほら、職場も一緒なわけで、大変なことになるかもしれないし…」
「私は構いませんよ」と、そう言われた。
その表情に心が揺れた。
でも、彼女の積極的な視線に、拒否する言葉が出てこない。
それから、少し気まずくなったが、新川さんは相変わらず明るく振る舞ってくれた。
そうして、居酒屋を出ると、ぐいっと背伸びをしてから、「じゃあ、近くのホテルに行きましょうか」と手を引かれた。
一瞬、迷ったが自分が相談した上で好意を伝えてくれて、その浮気相手に名乗り出てくれた何これを拒絶するのは違うと思い、そのまま街のネオンがぼんやり光る中、俺はついていった。
そのまま、近くのラブホテルの部屋に入ると、彼女はドアを閉めて俺に抱きついてきた。
「前原さん、今日は私が癒してあげますね」と言った。
凛とは違うその積極性に心が揺らいだ。
初めての彼女が凛で、初めての相手が凛だった。
凛はいつも消極的で、俺がリードする形だった。
でも、好さんは積極的だった。
茶髪を振り乱して、俺のシャツを脱がせ、唇を重ねてくる。
彼女の体は若々しく、そして肌が熱い。
そのまま、ベッドに押し倒され、彼女の手が俺の体を這う。
息が荒くなり、今までにない快楽が体を駆け巡った。
凛との営みとは比べ物にならない、激しい快楽に飲まれるのであった。
◇
事後、ベッドに横たわりながら、俺は天井を見つめた。
罪悪感と満足感が混ざる。
そうか…こういう感覚なんだな。
初めて理解した。
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