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魔法学校編
はじめての喧嘩2
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聡いローリーのことゆえ、全てを理解したのであろう。
ローリーは週末離宮に戻ると、予想した通り、話があると我に会いに来た。
学校に行ったことは正直に謝るしかないが、我も言わねばならんことがある。
「学校に来て監視しなければならないほど、そんなにわたしが信用出来ないの?」
監視? 開口一番、ローリーはおかしな事を言った。
「我は監視などしておらぬ。ただ、ローリーに会えぬのが辛くて、姿を見に行っただけだ」
「あら、そう。あくまでもシラを切るつもりなのね。なら、黒い呪いについては、どう言い訳するつもりなのかしら」
ローリーの言う黒い呪いとは、ローリーに若い雄が近寄らないようにと、ディーンが言いふらした出まかせである。
下心を持ってローリーの半径1メートル以内に近寄ると、黒い呪いが発動し、不吉な事が起きるというものだ。
そこに、我の報復で、つむじ風に飛ばされたり階段から落ちた者が出始め、出まかせが真実味を帯びる結果となった。
「我の番いに近付く者を排除するのは、我の当然の権利だ」
「誰もかれもが、わたしとどうこうなろうとして近付くわけではないのよ?! アルのやきもちのおかげで、学校でわたしとペアを組んでくれる殊勝な人は、ティム以外、誰一人として居なくなってしまったわ。でもまあ、それはいい。ティムの事よ! 大事には至らなかったけど、アルのせいで大怪我をしたのよ! あんな小さな子供に、なんて事するのよ!」
「あれは、奴がローリーを狙って魔法を放ったからだ」
「魔法を暴走させてしまったのよ! 故意にしたわけじゃないわ。アルがわたしを庇ってくれたから、わたしは無事だったって分かってるし、感謝もしてる。だけど、」
「それは違う! 意図は分からぬが、あれはローリーを狙って攻撃したのだ。だから、ローリー、もう学校へ行くのはやめよ。奴は得体が知れぬ。危険だ」
「馬鹿な事言わないで。アルの被害妄想よ!」
「本当の事だ! 我はただローリーの身が心配なのだ。ロー」
「分かった! ティムについては、気を付けるわ。約束する。だから、アルもわたしを信用して学校には来ないって、約束して?」
・・・・・・
「わたしを信じてよ!」
「駄目だ! 危険なのだ」
「アルはいつもそう、危険、危険、危険、危険! あれもダメこれもダメ。分かってる? アルが側にいなければ、わたしには何もかもが危険でダメなの! でも、わたしは魔法使いよ! ただの、何も出来ない貴族令嬢じゃないわ! アルは、わたしを全然信用してない! それは魔法使いとは認めてないって言ってるのと同じよ!」
ローリーのこれまでずっと心の奥に押し込められていたものが溢れ出し、我に向けて一気に吐き捨てられた。
「以前のアルは、いつもわたしの魔法を褒めてくれて、子供だったのに認めてくれてた! 学校には行くから! アルはわたしにとって恩人なだけで、まだ夫でも婚約者でもないんだから、わたしに命令する事は出来ないわ!」
ローリーの激昂は凄まじく、我を圧倒する。
このように癇癪を起こしたローリーを我は見た事が無い。
ローリーはいつも、いつだって、大人びていて、我の面倒を見てくれていた。
「学校に行くのはやめて欲しい。命令ではない。我からのお願いだ」
ローリーは顔を泣きそうに歪めた。
「アルなんて、大っ嫌い!」
我は部屋から走り去るローリーを追いかける事が出来なかった。
追いかけたとして何と言えば良いのか。
ローリーが望む言葉を、我はかけてやることが出来ぬのだ。
ローリーはそのまま離宮を出て、寄宿舎へ戻ってしまった。
我はただ途方に暮れるだけで、何も出来ない。
ローリーに会いたい。
だが、会いに学校に行けば、ローリーは信用されていないと傷つくのだ。
ローリーを傷つけるのは、本意ではない。
我の想いがローリーを傷つける。
その事実が我を打ちのめした。
それから、どのように毎日を過ごしていたのか、我にはよく分からぬが時間だけは経っているようだ。
想うのは、ローリーの事ばかり。
だが、この想いがローリーを傷つけるならば、我は我慢する。
ディーンにあの子供にはくれぐれも注意するようにと言い渡した。
我の代わりにローリーを守ってもらわねばならん。
番いをほかの雄に托す事が、どれほど屈辱的でふがいなくとも。
週末、ローリーが帰って来た。
無事な姿を見て安心する。
声をかけたかったが、ローリーは我を避けて、フェリシアのところへ行ってしまった。
ディーンより、あの子供については特に変わった様子は無いとの報告を受ける。
夕食時、食堂でローリーに会ったが、ローリーはよそよそしく、我は悲しかった。
フェリシア達と楽しげに話しながら食事をするローリーが、とても遠くに感じる。
学校に戻る前には魔力の口移しが常であったのに、ローリーは何も告げず寄宿舎に戻って行った。
ローリーは週末離宮に戻ると、予想した通り、話があると我に会いに来た。
学校に行ったことは正直に謝るしかないが、我も言わねばならんことがある。
「学校に来て監視しなければならないほど、そんなにわたしが信用出来ないの?」
監視? 開口一番、ローリーはおかしな事を言った。
「我は監視などしておらぬ。ただ、ローリーに会えぬのが辛くて、姿を見に行っただけだ」
「あら、そう。あくまでもシラを切るつもりなのね。なら、黒い呪いについては、どう言い訳するつもりなのかしら」
ローリーの言う黒い呪いとは、ローリーに若い雄が近寄らないようにと、ディーンが言いふらした出まかせである。
下心を持ってローリーの半径1メートル以内に近寄ると、黒い呪いが発動し、不吉な事が起きるというものだ。
そこに、我の報復で、つむじ風に飛ばされたり階段から落ちた者が出始め、出まかせが真実味を帯びる結果となった。
「我の番いに近付く者を排除するのは、我の当然の権利だ」
「誰もかれもが、わたしとどうこうなろうとして近付くわけではないのよ?! アルのやきもちのおかげで、学校でわたしとペアを組んでくれる殊勝な人は、ティム以外、誰一人として居なくなってしまったわ。でもまあ、それはいい。ティムの事よ! 大事には至らなかったけど、アルのせいで大怪我をしたのよ! あんな小さな子供に、なんて事するのよ!」
「あれは、奴がローリーを狙って魔法を放ったからだ」
「魔法を暴走させてしまったのよ! 故意にしたわけじゃないわ。アルがわたしを庇ってくれたから、わたしは無事だったって分かってるし、感謝もしてる。だけど、」
「それは違う! 意図は分からぬが、あれはローリーを狙って攻撃したのだ。だから、ローリー、もう学校へ行くのはやめよ。奴は得体が知れぬ。危険だ」
「馬鹿な事言わないで。アルの被害妄想よ!」
「本当の事だ! 我はただローリーの身が心配なのだ。ロー」
「分かった! ティムについては、気を付けるわ。約束する。だから、アルもわたしを信用して学校には来ないって、約束して?」
・・・・・・
「わたしを信じてよ!」
「駄目だ! 危険なのだ」
「アルはいつもそう、危険、危険、危険、危険! あれもダメこれもダメ。分かってる? アルが側にいなければ、わたしには何もかもが危険でダメなの! でも、わたしは魔法使いよ! ただの、何も出来ない貴族令嬢じゃないわ! アルは、わたしを全然信用してない! それは魔法使いとは認めてないって言ってるのと同じよ!」
ローリーのこれまでずっと心の奥に押し込められていたものが溢れ出し、我に向けて一気に吐き捨てられた。
「以前のアルは、いつもわたしの魔法を褒めてくれて、子供だったのに認めてくれてた! 学校には行くから! アルはわたしにとって恩人なだけで、まだ夫でも婚約者でもないんだから、わたしに命令する事は出来ないわ!」
ローリーの激昂は凄まじく、我を圧倒する。
このように癇癪を起こしたローリーを我は見た事が無い。
ローリーはいつも、いつだって、大人びていて、我の面倒を見てくれていた。
「学校に行くのはやめて欲しい。命令ではない。我からのお願いだ」
ローリーは顔を泣きそうに歪めた。
「アルなんて、大っ嫌い!」
我は部屋から走り去るローリーを追いかける事が出来なかった。
追いかけたとして何と言えば良いのか。
ローリーが望む言葉を、我はかけてやることが出来ぬのだ。
ローリーはそのまま離宮を出て、寄宿舎へ戻ってしまった。
我はただ途方に暮れるだけで、何も出来ない。
ローリーに会いたい。
だが、会いに学校に行けば、ローリーは信用されていないと傷つくのだ。
ローリーを傷つけるのは、本意ではない。
我の想いがローリーを傷つける。
その事実が我を打ちのめした。
それから、どのように毎日を過ごしていたのか、我にはよく分からぬが時間だけは経っているようだ。
想うのは、ローリーの事ばかり。
だが、この想いがローリーを傷つけるならば、我は我慢する。
ディーンにあの子供にはくれぐれも注意するようにと言い渡した。
我の代わりにローリーを守ってもらわねばならん。
番いをほかの雄に托す事が、どれほど屈辱的でふがいなくとも。
週末、ローリーが帰って来た。
無事な姿を見て安心する。
声をかけたかったが、ローリーは我を避けて、フェリシアのところへ行ってしまった。
ディーンより、あの子供については特に変わった様子は無いとの報告を受ける。
夕食時、食堂でローリーに会ったが、ローリーはよそよそしく、我は悲しかった。
フェリシア達と楽しげに話しながら食事をするローリーが、とても遠くに感じる。
学校に戻る前には魔力の口移しが常であったのに、ローリーは何も告げず寄宿舎に戻って行った。
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