竜王様のヘタレな恋 ーR18バージョンー

Arara

文字の大きさ
53 / 144
魔法学校編

魔法競技大会

しおりを挟む
 ハイネケンでは年に二度校内競技大会を開催しており、冬と夏の恒例行事として行われている。
 競技大会の目的は、学んできた魔法技術を披露する場の提供、および対戦を通じて級友と切磋琢磨させる事である。
 能力と実践を重んじるハイネケン魔法学校らしい行事だ。
 
 競技会は午前の予選の部と午後の本選の部に分かれており、その試合の勝ち負けは単純明快、制限時間10分以内に相手の胸のポケットに挿した黄色いハンカチーフを奪い取れば勝ちというもの。
 どんな魔法を使っても良いが、殺傷能力の高いいくつかの魔法は禁止されており、また、腕には魔力の出力制限のためのリミッターを装着しての試合となる。
 そして制限時間内で勝負がつかなかった場合は、判定により決まる。
 判定方法は、二人の審査員によって、魔法の発動までの早さや魔法の正確さ・鋭さ・用いた魔法の種類などを加味した魔法技術面の点数と戦略・戦術など実践技術面の点数が付けられ、その合計点数によって判定される。
 今回エントリーしたのは、やる気満々向上心の高い新入生40名と魔法に自信のある上級生20名。
 自信のない上級生は、早々に新入生に負けるのを見越して、怪我を装う者や端から競技会を野蛮な行為と吹聴する者など、自身の無様な様を晒さないよう立ち回っている。
 
 まずは午前中に行われる予選で勝たねばならない。
 わたしは気合を入れ直した。
 まあ、予選は楽勝だろうけど、決勝戦まで戦う事を考えると、魔力の消費は出来るだけ少ない方がいい。
 途中でディーンやジョシュに当たれば、それなりに苦戦を強いられる事になるだろうし。
 ディーンは学校に通い始めの頃こそ苦戦したものの、順調に魔法が使えるようになり、その豊富な魔力でぐんぐん実力を伸ばしていた。
 
 競技場はまだ予選だというのに結構な人数の人達が観戦している。
 今年は王宮関係者が新入生の下見に大勢来ているらしい。
 だから、王宮配属の魔法使いの職を狙っているクラスメイト達は、とても張り切っている。
 
 わたしは競技場の観戦席をぐるりと見回し、アルが来ているのを確かめた。
 出入口近くの目立たない場所に他のみんなと一緒に陣取っていたけれど、竜族御一行様は揃って長身で美形なので、すごく目立ってる。

 予選は競技場を二つに仕切って、二試合同時に出来るようになっていた。
 対戦相手はくじで決められ、一人目は虫這い結界によってギャーギャー喚いている間に、二人目は、前の試合を見られていて近寄って来そうになかったので、転移魔法で移動し黄色いハンカチーフを抜き取った。
 
 ディーンとジョシュも予選を勝ち進み、本選ではどこかで当たるだろう。
 ティムも予選では圧倒的な強さを見せつけている。
 今年は実力のある生徒ばかりなので、どの試合も見応えは十分、観客席は大いにわいている。
 わたし自身も、この競技会での勝敗が運命を左右するというのに、楽しくて仕方がない。
 わたしだけでなく、ティムもディーンも他のクラスメイト達も、どんな魔法が飛び出すのか、わくわく目を輝かせてこの競技会を楽しんでいた。
 

 本選はトーナメント方式で、優勝候補のわたしとティムは、途中で当たらないよう組まれていた。
 張り出されたトーナメント表をじっくり見ると同じブロックにジョシュがいる。
 ふーん、お母様の意図を感じるわね。
 ハイネケン家の姉弟対決は大いに盛り上がるに違いない。
 そして、ディーンはティムと同じブロックだ。
 わたしとしては、ディーンには是非頑張ってもらって、ティムが手強い相手にどういった戦法をとるのか、よーく見せてもらいたいところである。

 もう! もうちょっと頑張りなさいよ!
 ティムの魔法をもっと研究したかったところなのに、ディーンは全然、善戦してくれなかった!
 ディーンの放った魔法は、アルが言っていたように何故か無効化されて、戸惑っている間にハンカチーフを奪われてしまった。

 わたしとジョシュの戦いは、転移魔法の応酬となった。
 最終的には持続力のあったわたしに軍配が上がったけれど、魔力を大量に消耗させられてしまった。
 会場は高度な転移魔法のやりとりに大歓声の盛り上がりを見せ、ハイネケン伯爵家の者としては一応義務を果たしたと言えるだろう。

 優勝戦はやはり予定通り、ティムとわたしの対戦となった。
 わたしはこの試合に臨むにあたり、ティムの魔法に関してある仮説を立てた。
 そしてそれを確かめるべく、一つ一つ試して行く。
 やはり、火、水、氷、風、全ての魔法が無効化された。
 
 そして、転移すれば逃げられ、結界を張っても無効化され、わたしは今成すすべもなく、ティムの風魔法に翻弄されている。
 地面をいいように転がされ、つむじ風に巻き上げられたかと思えば、落とされた。
 ディーンの時のように、すぐにハンカチーフを奪いに来ることなく、わたしをいたぶるような真似をするのは、おそらくアルが出て来るのを期待してのことだろう。

「助けに来るかと思ったけど、来ないね。残念だけど、そろそろ制限時間だから、勝負をつけさせてもらうよ」

 ティムは蹲って動かないわたしにゆっくり近付いて来る。
 もう少し、もう少し、わたしはその時をじっと待った。
 ティムがわたしのハンカチーフに手をかけようとしたその時、わたしはある場所に転移した。
 わたしの仮説が正しければ、ティムにわたしの居場所が感づかれることはないはず。
 ティムがいなくなったわたしをきょろきょろ探す中、わたしはそこから手だけをにゅうっと伸ばして、ティムのハンカチーフを抜き取った。

「あ!」

 ティムが声を発したのと同時にわたしは姿を現し、ハンカチーフを掲げて勝利を宣言したのだった。

「なんで? どうして?」

 ティムはどうして奪われたのかが理解出来なくて、呆然としている。

「ティム、約束は守ってもらうわよ?」

「そんなことより、どうやったのか教えろ!」

「そんなの、教えるわけないじゃない。でも、まあ、約束のお願いを聞いてくれたら、教えてあげてもいいけど?」

「何だよ! 早く言えよ!」
 
「わたしのお願いはね、わたしが親分になって、あなたを子分にするって事なの」

「は!? 何だよ、それ」

「つべこべ言わないで。今からあなたはわたしの子分よ! 子分はね、親分の言う事を聞かなきゃいけないの。ティム君、分かった?」

 わたしの言葉にティムは地団太を踏んで、その場からプイッと消えてしまった。 
 もう、ティムったら、精霊のくせに、本物の子供みたいなんだから。


 この後の表彰式、どうするつもりなのかしらと心配していたのだけど、結局それは杞憂に終わった。
 なぜなら、表彰式の2位のところには別の生徒がいたから。
 そして、皆それをおかしいと感じていない。
 初めからいなかったかのように、ティムの存在そのものが掻き消えていた。





 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...