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初恋こじらせ王子3
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「こっちを食ってみるか? 味が変わるとまた食えたりするだろ? お前は少食過ぎるからな。本当はもうちょっと食えた方がいいんだぞ」
食べ始めてすぐ、三段に重ねられた厚みのあるパンケーキを愛美が食べ切れないと言い出した。
愛美に俺のベーコンとレタスのパンケーキを分けてやり、愛美の限定のプレミアムパンケーキ一枚を俺の皿に移す。
さすがに、品切れ宣告を受けている客を前にして、限定のパンケーキを残すのは顰蹙だしな。
「うん」
「でも、無理はするなよ。残りは心配しなくても俺が食ってやるから」
「うん、ありがとう」
移したパンケーキにシロップをかけ食っていると、視線を感じる。
横を向けば、河合と目が合った。
「なんだよ」
「いや、スゲー仲がいいなと思ってさ。とうとう付き合い始めたのかなー、なんて?」
「はぁ? んなわけあるか! 愛美は少食なんだよ。無理に食わせたら、具合が悪くなるだろーが!」
「そりゃそうだけどさ、食いもんをシェアするってなかなかだぜ?」
河合は、愛美が着ていた俺のキャップと上着にチラチラ目をやりながら、俺に何を言わせたいんだか、妙にしつこく食い下がってくる。
「そうか? 俺、いつも妹ともシェアしてるし、食ってやったりもしてるけど? まぁ、ドロドロにとけたソフトクリームを食べれないって差し出された時は困ったけどな」
俺には二歳年下の妹がいて、俺が小学生の頃、その妹は同学年の友達とは遊ばず、俺の後をずっとついて回っていた。
「そ、そりゃ、すげぇな」
「なんでも俺の真似をしたがる妹でさ、」
空手も野球も、服だって俺のお下がりばかりを欲しがって、つい最近までスカートなんて穿いたこともなかった。
俺への執着は半端なく、通常の兄妹の域を超えていたから、学校でも妹の美姫の名前は有名だった。
「俺と同じものを食べるっつっては泣いて、食べれないっつっても泣くもんだから、しょうがねーから、最初から妹の好きなものを俺が注文して、分けてやることにしたんだよ。そうすると黙って食うからさ。さすがに今は別々でも泣かねーだろうけど、妹とはシェアして食うのがクセになってるんだ」
「美姫ちゃんは超ブラコンだもんね」
同小で事情を知ってる川越が会話に割り込んでくる。
「まぁな。でもそれは親父のせいで、美姫のせいじゃない・・・しょうがねぇんだよ」
美姫が俺を異常に慕って傍を離れようとしなかったのは、俺以外に頼れる人間がいなかったからだ。
母親の前では優しい父親が、俺達の前では豹変する。
美姫は、冷酷な親父を怖れ、何も知らない母親を信用しなかった。
今でこそ、親父には親父の考えがあって、サバイバル訓練のような教育を俺達に施していたのだと思えるけれど、あの頃の俺達にそれがわかるはずもない。
幼い美姫が戸惑って、どうすればよいのかわからなくなっても仕方がないことだった。
美姫は、俺を道しるべにするしかなかった。
「お父さんのせいって?」
事情を知らない河崎が俺に聞いてきた。
本当のことを話すわけにもいかず俺が黙っていると、川越がそれに答える。
「大和くんのお父さんは、ずっと単身赴任なのよ」
川越が親父を褒めるのを苦笑いで返す。
親父の擬態は完璧だった。
どうせなら、俺達も騙したままで良かったのに。
「みんな、功ちゃんちに生まれたかったって羨ましがってたけど、お父さんがずっといないって聞いてからは、誰も何も言わなくなった。やっぱり一緒に遊んでくれたり、可愛がってくれるお父さんと暮らせないのは、辛いよね」
「今は、鬱陶しいだけだけどね」
「言えてる」
「確かにな」
「でもさ、美姫も最近は前みたいにまとわりつかなくなったし、勝手に私物を見るなとかノックしろとか、生意気なことを言うようになったんだ」
頭のおかしな親父のせいで情緒不安定になった時もあったけれど、幸いまともに育ってくれた。
今では母さんともちゃんと関係を築けているし、友達もできた。
「ブラコンも、そろそろ卒業かもな」
「成長したんだね」
「ああ」
美姫は美姫で、自分の足で歩き始めている。
イカレた親父から守ってやらねばならない幼い妹はもういない。
食べ始めてすぐ、三段に重ねられた厚みのあるパンケーキを愛美が食べ切れないと言い出した。
愛美に俺のベーコンとレタスのパンケーキを分けてやり、愛美の限定のプレミアムパンケーキ一枚を俺の皿に移す。
さすがに、品切れ宣告を受けている客を前にして、限定のパンケーキを残すのは顰蹙だしな。
「うん」
「でも、無理はするなよ。残りは心配しなくても俺が食ってやるから」
「うん、ありがとう」
移したパンケーキにシロップをかけ食っていると、視線を感じる。
横を向けば、河合と目が合った。
「なんだよ」
「いや、スゲー仲がいいなと思ってさ。とうとう付き合い始めたのかなー、なんて?」
「はぁ? んなわけあるか! 愛美は少食なんだよ。無理に食わせたら、具合が悪くなるだろーが!」
「そりゃそうだけどさ、食いもんをシェアするってなかなかだぜ?」
河合は、愛美が着ていた俺のキャップと上着にチラチラ目をやりながら、俺に何を言わせたいんだか、妙にしつこく食い下がってくる。
「そうか? 俺、いつも妹ともシェアしてるし、食ってやったりもしてるけど? まぁ、ドロドロにとけたソフトクリームを食べれないって差し出された時は困ったけどな」
俺には二歳年下の妹がいて、俺が小学生の頃、その妹は同学年の友達とは遊ばず、俺の後をずっとついて回っていた。
「そ、そりゃ、すげぇな」
「なんでも俺の真似をしたがる妹でさ、」
空手も野球も、服だって俺のお下がりばかりを欲しがって、つい最近までスカートなんて穿いたこともなかった。
俺への執着は半端なく、通常の兄妹の域を超えていたから、学校でも妹の美姫の名前は有名だった。
「俺と同じものを食べるっつっては泣いて、食べれないっつっても泣くもんだから、しょうがねーから、最初から妹の好きなものを俺が注文して、分けてやることにしたんだよ。そうすると黙って食うからさ。さすがに今は別々でも泣かねーだろうけど、妹とはシェアして食うのがクセになってるんだ」
「美姫ちゃんは超ブラコンだもんね」
同小で事情を知ってる川越が会話に割り込んでくる。
「まぁな。でもそれは親父のせいで、美姫のせいじゃない・・・しょうがねぇんだよ」
美姫が俺を異常に慕って傍を離れようとしなかったのは、俺以外に頼れる人間がいなかったからだ。
母親の前では優しい父親が、俺達の前では豹変する。
美姫は、冷酷な親父を怖れ、何も知らない母親を信用しなかった。
今でこそ、親父には親父の考えがあって、サバイバル訓練のような教育を俺達に施していたのだと思えるけれど、あの頃の俺達にそれがわかるはずもない。
幼い美姫が戸惑って、どうすればよいのかわからなくなっても仕方がないことだった。
美姫は、俺を道しるべにするしかなかった。
「お父さんのせいって?」
事情を知らない河崎が俺に聞いてきた。
本当のことを話すわけにもいかず俺が黙っていると、川越がそれに答える。
「大和くんのお父さんは、ずっと単身赴任なのよ」
川越が親父を褒めるのを苦笑いで返す。
親父の擬態は完璧だった。
どうせなら、俺達も騙したままで良かったのに。
「みんな、功ちゃんちに生まれたかったって羨ましがってたけど、お父さんがずっといないって聞いてからは、誰も何も言わなくなった。やっぱり一緒に遊んでくれたり、可愛がってくれるお父さんと暮らせないのは、辛いよね」
「今は、鬱陶しいだけだけどね」
「言えてる」
「確かにな」
「でもさ、美姫も最近は前みたいにまとわりつかなくなったし、勝手に私物を見るなとかノックしろとか、生意気なことを言うようになったんだ」
頭のおかしな親父のせいで情緒不安定になった時もあったけれど、幸いまともに育ってくれた。
今では母さんともちゃんと関係を築けているし、友達もできた。
「ブラコンも、そろそろ卒業かもな」
「成長したんだね」
「ああ」
美姫は美姫で、自分の足で歩き始めている。
イカレた親父から守ってやらねばならない幼い妹はもういない。
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