不良だった俺が極道にならず医者になった理由

Arara

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損な役回り2

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「ぐっ、くるし・・・は、なして・・・」

 首から手を離し、今度はコブラツイストをかける。

「なぁ、青木、お前さー、これから河合にプロレスに誘われたら、俺も誘ってくれよ。こんな楽しい遊び、お前達だけでするのはズルイからな。いいだろ? 隠れてやったりしたら、俺拗ねるぞ?」

 おどけて言うと、クラスの男連中が笑った。
 調子にのってた河合が痛めつけられて、留飲を下げている者、怒った俺にビビってすり寄せてくる者、周りから浮くのが嫌で愛想笑いをする者、笑った理由はたち位置によって三者三様だが、正義は俺に傾いた。
 仲間の石井や小出ですら、ヒーヒー言ってる河合を助けられない。
 友達は大切だけど、己の身はもっと大切だからだ。
 

「プロレスの件はそれでいいが、暴言については、どう落とし前をつけさせるかな」

「悪かった、謝る! 高岡さん、ごめん!」

 その時、3時間目が始まるチャイムが鳴った。

「次はないぞ」

 脅して河合を突き離すと、仲間の連中が駆け寄ってそそくさと席に連れて行く。
 クラスは重い空気にどんよりと包まれた。

「愛美、気にすんな。お前に注意されて、ムカついた腹いせの言葉だ。少なくとも俺は、お前が一生懸命頑張ってるのを知ってるし、応援してやりたいと思ってる」

「私もお荷物だなんて思ってないわ。愛美さんを見てると、自分も頑張ろうって思えるもの」

「「私も」」

 川越達が援護射撃をしてくれた。
 俺一人の言葉では説得力に欠けるから、ありがたい、助かる。
 愛美へのフォローはこれで大丈夫だな。

「馬鹿かとはしょっちゅう思うけどな、そういう奴だから、しょうがねぇさ」

 俺が愛美を貶すと川越がそれに乗っかってくる。

「愛美さんはそれでいいのよ。むしろ、そのままでいて欲しい」

「はあ?! 川越、それは言い過ぎだ」

 俺と川越のやりとりを聞いて、クラスの連中が笑う。
 ようやくクラスの空気感が変わった。

 あー、やれやれだ。
 本当に川越のアシストには、頭が下がる。

 俺は、KYな愛美がクラスでやらかす度に、爪弾きに遭わないよう、その対応で四苦八苦している。
 俺のように一人でも平気な奴ならいいけど、愛美はクラスの連中が大好きで、仲良くしたいと思ってるからだ。
 愛美がクラス内の友人関係に干渉するのも、好きであるがゆえの事。
 本人は良かれ・・・と思って行動しているのだ。
 だからKYなんだが。
 
「青木は逆に読み過ぎだ。進んで損な役回りを引き受ける必要はない。お前はコイツの無神経さを見習うべきだな」

「え? 無神経?」

「無神経だろーが。俺の忠告を無視しやがって。この俺に楯突くのは、お前くらいなもんだ。このKY女め! お前にはデコピンの刑だ」

「イタイッ!」

 愛美に軽くデコピンをすれば、クラスは大爆笑になった。
 明るい雰囲気になったところで、今度は、河合にフォローを入れる。
 
「河合、さっきは恥かかせて悪かったな。ついカッとなっちまってさ」

 俺が下手に出れば、河合もメンツが潰れずに済む。

「いや、俺の方こそ悪かったよ。高岡さんにも、・・・・・・青木にも。調子に乗り過ぎた」


 河合が単純な奴で助かった。
 逆恨みされると困るからな。
 恨みが俺に向くのなら構わないけど、愛美に危害が及ぶような事態だけは、どうしても避けなければならない。
 
 クラスの連中を脅して宥めてご機嫌とって、最近面倒なことばかりさせられてる・・・・・・・気がする。 

 青木に説教しといてなんだけど、一番進んで損な役回りを買って出てるのは、俺じゃね?





  
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